こんにちは。安田です。
アプリ開発とデジタルマーケティングを支援する株式会社DearOneでBtoBマーケティングを担当しています。そんな私が初心者マーケターにもわかるように解説していくこのコーナー。
記念すべき第1回では「グロースマーケティングとグロースハック」の違いについて解説しました。
まだ読んでいない人は、以下の記事を先に読んでいただく方が、理解が深まると思いますので、ぜひ読んでみてください。
そして今回、初心者マーケターにもわかるように安田が解説するコーナー第2回のテーマはこちら。
データドリブンとは?成功させるポイントや利用ツール、データドリブンマーケティングの実践ノウハウを紹介
データドリブンとは?
データドリブンとは、データ分析結果に基づいてビジネスの意思決定を行うことです。
顧客に関するありとあらゆる行動データをもとに分析します。顧客を深く理解してビジネスに生かす手法であり、グロースマーケティングを成功させるための大切な考え方の1つです。これまでも売上データやWebのアクセスログを分析してマーケティング施策を実行してきたけれど、それと何が違うの?と感じる方もいることだと思います。そこを理解するためにもデータドリブンが必要な理由を説明します。
データドリブンマーケティングとは?
データドリブンマーケティングとは、データを活用したマーケティング手法のことです。「データドリブン」だけでも、データに基づいたマーケティングのことを意味することがあります。本来はデータドリブンマーケティングと呼ばれ、マーケティング施策をより効果的なものにするためにはデータを用いてより正確に市場動向、顧客情報を把握することが大切です。
米国Forbes誌によるデータドリブンの解説は こちら や こちら、Harvard Business Review誌による説明は こちら や こちら をご参照ください。
データドリブンマーケティングの大敵:勘と経験のマーケティング
皆さん、マーケティングをやられていれば、今までに一度は上司から広告やカタログ等の制作物の修正、作り直しを指示されたことがあるでしょう。
『ここは文字をもっと大きく』
『色は赤の方が目立つ』
『なんかセンスないんだよなぁ』
など。
変更の理由が明確ならまだ良いのですが、上司の好みで言われてるだけなんじゃない?と思った経験は誰しもあるはず。
また、マーケティング施策としてキャンペーンを企画した際にも、
『俺が若いころはこういう施策で大きな実績をたたき出したんだ』
『ユーザーが求めているのはこちらに決まっている』
『お前は顧客の声を聞いていない』
と上司の勘と経験の範囲内に企画を修正されてしまうことも多いでしょう。
しかし、今はそんな勘と経験に頼っている時代じゃないんです。
上記の典型的な日本企業とは正反対の、欧米のデータドリブンマーケティングについては こちら や こちら をご参照ください。
データドリブンが必要とされている背景
それでは、なぜデータドリブンが必要とされるようになったのでしょうか?
なぜ現代では上司の経験や勘に頼って意思決定をすることがだめなのでしょうか?
それは、皆さんご存じの通り、ユーザーの趣味嗜好は多様化し、ニーズの変化の速度は早く、これまでの延長線上での予測が困難だからです。
これまでデータ収集の世界では、市場で何が起こっているのかということをハガキなどのアンケート調査などで推し量っていたんですが、これは限定データでしかなく、本当の意味での顧客ニーズを捉えきれているとは言えないのです。
また、現代ではデジタルマーケティング・データ処理技術が大きく発展しました。
顧客行動を把握して、データとして蓄積できるツールが次々に誕生しており、「来店」「購買」「サイト来訪」など、顧客の全ての行動がデータ化されてトラッキングが可能。顧客を理解して、一人ひとりのニーズを満たす方法が揃っているのです。
前述したような時間だけが取られて、何も生み出さない非合理的で非生産的なコミュニケーションをやめたいと思いませんか。
そのためには、上司も部下もデータをもとに会話する、データドリブンが必要なのです。
データドリブンマーケティングが必要とされる背景には、主に「顧客・ユーザーの購買行動の多様化」、「デジタル/グロースマーケティング技術の進歩・発展」、「費用対効果のより良いマーケティング施策の普及」の3つがあります。
顧客・ユーザーの購買行動の多様化
顧客のニーズや嗜好が多様化し、それに応じたマーケティング施策が求められるようになったため、データドリブンマーケティングの重要性が高まっています。このため顧客・ユーザーの購買行動の多様化によって、従来のマーケティング手法だけでは効果的なターゲティングやパーソナライゼーションが困難になりました。
データドリブンにデータを活用することで、顧客の行動データや嗜好データを分析し、適切にターゲティング/パーソナライズがなされた施策の展開が可能となります。
ユーザー行動分析については以下の記事もご参照ください。
デジタル/グロースマーケティング技術の進歩・発展
また、Web解析、ソーシャルメディア分析、広告効果分析などのツールやプラットフォームが普及し、マーケターは膨大なデータを取得することができるようになるなどデジタル/グロースマーケティング技術の進歩・発展により、日々膨大な量のデータが生成されるようになりました。
このような状況下では、データドリブンマーケティングが必要不可欠で、データを収集・分析することで初めて、効果的な施策立案や意思決定を行うことができるといえます。
Web/アクセス解析については以下の記事で詳しく解説しています。
費用対効果のより良いマーケティング施策の普及
さらに、費用対効果のより良いマーケティング施策の普及もデータドリブンマーケティングが求められる大きな一因です。
従来のマーケティング手法では予測や評価が難しく、また効果を事前に見積もることが難しいケースが多くありました。しかし、データドリブンマーケティングでは、過去のデータや実績を基に予測モデルを構築し、施策の効果を事前に見積もり、評価することができます。
これにより、限られた予算やリソースを最適に活用することができ、費用対効果の高いマーケティング施策を展開することができるようになります。
以上のように、データドリブンマーケティングに基づきデータを最大限活用することで、現代のビジネスシーンにふさわしい、より効果的/効率的なマーケティング施策を展開することが可能になるのです。
データドリブンマーケティングを成功させる4つのステップ
データドリブンマーケティングを実施するには下記の4ステップを踏むことが重要です。
Step1:データ収集
Step2:データの可視化
Step3:データ分析・アクションプラン検討
Step4:アクションプラン実行
順を追ってそれぞれ紹介します。
Step1:データ収集
データドリブンマーケティングを実施するにはまず、データを収集する必要があります。
データを収集するにあたり、重要となるのが「目的を明確にすること」です。ここで、よし、わかったぞ。データを集めるぞ!と、勢いよくとりあえず集める方がいますが、要注意。
データ収集の目的は、「有効的に活用してビジネス拡大」が大半だと思いますので、無闇に始めて、不必要なデータを集めても成果を出すことはできないでしょう。まず何のためにデータを集め、どのようなデータが必要となるのかをはっきりとさせることが大切です。
データをうまく利用するためには、データの取得時点から一貫性を持って貯めていくことが重要となります。方法に関しては以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてみてください。
Step2:データの可視化
データ収集が完了すれば、データの可視化を行います。データの可視化とは、数字で表わされているデータを、一目見れば理解できる形にすることです。
例えば多くの場合は、データを表や図で表します。数字だけではなかなか把握しづらいデータを、パッと見るだけで具体的に理解できるようになります。
Step3:データ分析・アクションプラン検討
データを分析しやすい形に変えれば、次は実際に分析して、アクションプランを検討します。分析結果をもとにして、ユーザーがどのような点で満足しているか、満足していないかを考えます。
顧客が不満を感じている点がわかれば、何が要因となっているのか仮説を立て、それに対して打つ施策を検討します。仮説を立てる際は、多角的に物事を見るようにしましょう。方法としてはツールの活用がおすすめです。手作業でも行えますが、莫大な時間を要してしまい、その間に欲しいデータも変わってしまいます。せっかく終了したのに、もうすでに不必要なものになってしまった…というのは是非とも避けたいですよね。ツールについては後ほど紹介します。
Step4:アクションプラン実行
アクションプランの検討ができれば、実行に移します。
実行して終了ではありません。実行したプランに対するユーザーの反応を再度データとして収集します。そして分析を行い、仮説を立て、アクションプランを実行というサイクルを回すことが重要です。ここではいかに短い期間でサイクルを回せるかが鍵となります。
データドリブンマーケティングを支援する5つの活用ツール
Web解析ツール
Web解析ツールは、自社サイト上での訪問者の行動や、流入元、使用されているデバイスなど、Webサイトについてのデータを可視化するツールです。PV数や、直帰率、MAU(Monthly Active User)などの行動データを集計し、計測してくれます。
定点観測(PVやMAUのような結果の数字を分析すること)に適している「Google Analytics」、課題探索(ユーザー行動の要因を分析すること)に適している「Adobe Analytics」、行動理解(ユーザー行動を細かくデータとして収集し分析すること)に適しているAmplitudeなどがあります。
サイト上のユーザー行動や特性を分析し、コンバージョン数や訪問者数アップを目指すためのアクセス解析については以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
マーケティングオートメーション(MA)
マーケティングオートメーションは、マーケティング作業や実行フローを自動化するためのツールです。従来手動で行っていたために時間もコストもかかってしまっていましたが、自動化することで、時間とコストを削減し、他の活動に費やすことができるようになります。
代表的なMAツールには、データ統合やメール配信、アプリ通知など非常に多くの機能を搭載しているb→dash(ビーダッシュ)などがあります。
MAツールについては こちら や以下の記事もご参照ください。
セールスフォースオートメーション(SFA)
セールスフォースオートメーションとは、営業プロセスにおける活動を自動化することで、営業管理システムとも呼ばれています。「見込み度の高い営業リストの自動作成」、「営業メール送信の自動化」「スケジュール調整の自動化」など、営業時に重複する作業の自動化を行い、効率化が目的です。
代表的なツールとしては「Salesforce」などがあります。
カスタマーリレーションシップマネジメント(CRM)
カスタマーリレーションシップマネジメントとは、顧客との関係性を維持し、収益アップを目指すことです。「顧客関係管理」や「顧客管理」などと訳され、顧客を中心に考えて収益の最大化を目指します。
顧客との関係性を構築しながら、データを集め、分析することでより効果的なアプローチが可能です。
代表的なツールには「Microsoft Dynamics 365 CRM」などがあります。
データドリブンやパーソナライズ化されたマーケティングに有効なCRMツールについては以下の記事で詳しく解説しています。
ビジネスインテリジェンス(BI)
ビジネスインテリジェンスとは、蓄積されたままのデータを分析し、可視化し迅速な意思決定に役立てるツールです。企業ではデータを収集するものの、蓄積されたままで使用されておらず、無駄になってしまっているものがあります。データを分析し有効的に活用することで、ビジネス・製品のグロースに導くことが可能です。
データドリブンや、DXなどデータを用いた改革の重要性が増しているため、より注目されており、代表的なツールとしては「Tableau」などがあります。
データドリブンマーケティングの課題
データの見える化がうまくいかない
データドリブンを進めていく上で、よく躓くポイントがデータの見える化がうまくいかないことです。データドリブンでは、ただの数字であるデータをグラフや表、図など客観的に見て理解できる形に変換しなければいけません。
データ構築が目的化する
次に企業が抱える課題として、データ構築が目的化してしまうということがあります。データドリブンを進めるためにデータを収集して、分析をしても活用にまで至らないケースがあるということです。
データのクオリティが低い
不正確なデータや欠落しているデータが多いと、正確なターゲティングやアクションの評価ができなくなります。また、そもそも実際に貯蓄するデータの量は莫大なものになりますし、それらを全て分析するとなると莫大な量の時間を費やすことになるためマーケティング活動全体に悪影響を及ぼす可能性があります。そのためデータドリブンマーケティングにはクオリティの高いデータを利用することが重要で、少しでもデータの質を高めて、精度の低いものは削除するのが望ましいでしょう。
継続的にサイクルを回せない
そして、データを用いてマーケティング施策を実行しても成功するとは限りません。失敗に終わっても、それをまた「成功へつなげるデータ」として次に繋げていく必要があります。改善のサイクルを回し続けることが、成功の鍵となるでしょう。
データドリブンの成功事例
ここまでで「データドリブンとは何か」、「データドリブンがなぜ必要なのか」について理解していただけたかと思います。
ここからは実際にデータドリブンを成功させた事例を紹介します。何事も実際の例を基に落とし込むことでより理解が深まりますよね。
データドリブン成功事例:顧客分析で縮小気味の市場で過去最高の売上|Fender
ギターの製造販売を行う会社で、アメリカではギブソン社などと並んで、世界でも屈指の企業として認知されているFender社の事例を紹介します。
同社は、2020年9月時点で前年より4割増で、過去最高のセールスを記録しているそうです。このまま推移すれば、2020年の売上高は過去最高の10億ドル(約1千億円)台代に達する見通しとのことです。
ギブソン社はフェンダー社よりも半世紀近く古くからある老舗中の老舗のブランドで、多くの一流アーティストも使用しており、世界中に愛好者が存在します。
市場縮小により2012年頃からオンキヨー、ティアックなどの音楽機器メーカーを買収するなどし、総合音楽メーカーとして、ギター以外の部分に活路を見出そうと取り組んでいました。
既存のファンを中心に周辺機器の拡大を目指そうとした戦略は間違いではなかったかもしれませんが、「モノを売る」にこだわってしまい、業績は好転せず、2017年には過去10年エレキギターの販売市場が3分の2に急激に縮小し、赤字に転落。
そして翌年の2018年に破産申告をしてしまうことになりました。
一方のフェンダー社もギター市場が縮小をしていたことから、困難な状況にあることはギブソン社と変わりませんでした。そこで、同社は顧客データに立ち返り、分析を進めることを決断。
すると、多くの新規顧客を維持できずにいる現状があり、市場も縮小気味でも、顧客購入者層をサポートし、離脱を防ぐだけでも業績回復は十分可能性があることを見出しました。
さらに、オンラインでのレッスンがもっとユーザーに受け入れられる可能性があることも、発見しました。
そこで「挫折させない」というコンセプトのもと、2017年に「Fender Play」というサービスをリリース。
これらのアプリサービスも、顧客データを分析したことで見えたものでした。
データドリブンマーケティングの考え方を基に、顧客分析をし、行動を理解することで縮小気味にあった市場でも大きく飛躍することに成功したのです。
「体験を売る」ことで顧客とのタッチポイントを持ち続け、さらに行動データを起点にしてサービスのブラッシュアップをするという点は、グロースマーケティングが目指す姿の代表例と言えるでしょう。*1出典:『グロースマーケティング(Growth Marketing)』|株式会社DearOne
データドリブン成功に欠かせない、データの民主化
データの民主化とは
ここまででドリブンについて紹介しましたが、データドリブン実現に向けて必要不可欠な要素があります。「データの民主化」です。
データの民主化とは、一企業において多くの社員がデータを有効活用できる環境を構築することを意味しています。従来データ分析は、データを扱うことを仕事とするデータサイエンティストが取り組んでいました。しかしデータ分析を専門家に頼むことで、迅速な意思決定からは離れてしまいます。
さらに、データの分析結果に基づいて意思決定を行うデータドリブンでは、データの新鮮度が施策の結果を大きく左右するため専門家に頼むことは効率的では無いのです。そこで、社員一人ひとりが必要なタイミングで、必要なデータにアクセスできて、有効的にデータを活用できる環境を構築することが重要なのです。
データの民主化については以下の記事で紹介していますので、参考にしてみてください。
またユーザーインタビューとデータドリブンによる理想的な定性・定量分析を実践している企業の成功事例については以下の記事をご参照ください。
まとめ
ということで今回は「データドリブンとは?データドリブンマーケティングのポイントや注意点を解説!」として、縮小気味のギター市場で、見事に飛躍を成し遂げたフェンダーの事例を紹介しました。
データドリブン、データドリブンマーケティングとは、顧客の全量データを分析し、分析結果を基にビジネスに生かそうということで、ビジネスをグロースさせるために大切な考え方です。
お役に立ちましたでしょうか。
それではまた今度。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
次回のテーマは『知ったかぶりして語れるオムニチャネルとOMOの違い』です。この2つの言葉の違いを正しく話せる人は少ないのでは?
*1 | 出典:『グロースマーケティング(Growth Marketing)』|株式会社DearOne |
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