「ECサイトの売上を上げるための分析を行いたい」
「会員一人一人に合った施策を実施するための分析を行いたい」
など、ECサイトを運営する企業担当者のお悩みをよく伺います。ECサイトを運営・成長させる上では、サイトの分析・解析と施策のPDCAが重要です。しかし、自社ECサイトをどう分析すれば、売上向上につながる有効施策を見出せるかにお悩みの方も多いでしょう。
記事では、ECサイトの分析方法や見るべきKPI、一般的に行われるアクセス解析と施策につなげやすいユーザー行動分析の考え方、そしてECサイトの分析から売上改善へとつなげた成功事例一般的に行われるアクセス解析と施策につなげやすいユーザー行動分析の考え方、そしてECサイトの分析から売上改善へとつなげた成功事例まで幅広く説明します。
ECサイト分析の目的
Webサイト全般に言えますが、サイト内に会員登録や資料請求といった売上UPにつなげるためのゴールがあったりします。しかし、ECサイトの場合、サイト内で購買活動が行われ、「購入(売上)」まで完結すること「売上の最大化」が大きな特徴です。
Webサイト全般とECサイト、それぞれに追うべき細かい指標がありますが、ECサイトの場合、購入件数や購入単価などECサイト固有の指標があります。
Webサイト全般と、ECサイトの追うべき指標の違いを以下にまとめました。
区分 | 分析の目的 | 主な指標 |
---|---|---|
Webサイト全般 | ページ閲覧数の最大化 | ・ユニークユーザー数(UU) ・ページビュー数(PV) ・チャネル別の流入数 ・直帰率 ・平均セッション時間 など |
ECサイト | 売上の最大化 | ・購入件数 ・購入単価(顧客単価) ・購入回数 ・コンバージョン(購入)率 ・リピート購入率 など |
ECサイトは、サイト上で購買活動が完結するからこそ、購入に関する指標が重要指標となり、この点を押さえておくことが重要です。
実際に分析をする時に失敗例としてよくあるのは、細かい指標を追いかけたり、精緻な分析をするあまり、本来追うべきものがわからなくなってしまうことです。分析をする上で基本的な考え方ですが、追うべき指標に対して分析する目的を、まずはしっかり整理しておきましょう。
ECサイト分析の基本的な流れ
ECサイトを分析して売上を最大化するために、適切な手順で分析を進めていくことが大切です。目的の明確化、仮説の検討とデータ収集、そして、実際にデータを分析して検証するという基本の流れを説明します。
1.目的や課題の明確化
冒頭でもご説明した通り、ECサイトを分析する目的は売上を上げることだと思います。ただし、「売上を上げる」だけではどんな分析をすれば良いか曖昧です。従って、分析の前には、目的や解決したい課題をもう一段明確化・具体化することが大切です。
たとえば、
- かご落ちを改善したい
- 商品詳細ページのアクセスから購入までのステップ率(CVR)を高めたい
- 顧客の購買単価を高めたい
- 顧客のリピート率を高めたい
などが、一般的なECサイトの課題として挙げられます。目的や課題によって見るべきデータも分析手法も変わってくるため、まずは目的と課題の整理から始めましょう。
2.仮説の作成
目的や課題を具体化したら、次に仮説を作成します。この時点の仮説は事実を基にしたものではありませんので、厳密なものでなくてもかまいません。
- かご落ちを改善したい
→購入完了までのステップが分かりづらく離脱してしまっているのではないか?
- 商品詳細ページのアクセスから購入までのステップ率(CVR)が低い
→商品詳細ページでの訴求やCTAに課題があるのではないか?
仮説があることで、どのデータをどう分析すれば良いかがもう一段絞り込むことができます。この段階での仮説は、ひとつに絞り込まず、なるべく多くの仮説を洗い出すと良いでしょう。そのうえで、確度が高そうなものから検証しましょう。
なお、仮説を立てる時には施策につなげることも意識していくこともポイントです。原因を特定することも大切ですが、売上を最大化するためには何らかの改善・施策につなげる必要があります。
3.必要データを収集する
仮説を作成したら、次は仮説の検証に必要なデータを収集します。かご落ちがどのページで発生しているかというデータなのか、商品詳細ページごとのUU数とコンバージョン数なのか、LTVが高い顧客と低い顧客の比較データなのか、どんなデータが必要かを明確にしましょう。
収集したデータをクリーニングし、分析のために前処理をする必要があります。具体的には、欠損値や異常値の処理、データの統合、データの変換などを行います。
この前処理には、エンジニアリングスキルが求められるため、社内のエンジニアに依頼するか、データ収集・前処理まで行ってくれるツールの導入をおすすめします。
4.分析
必要なデータが揃ったら実際に分析をしていきます。
後ほど「ECサイト分析に役立つヒント」で詳しく紹介しますが、データ分析の基本は「比較」です。単体のデータだけを分析して分かることには限界があります。目標値、期間、商材別、顧客セグメント別、競合サイトとの比較など、どんな比較をすれば良いかも想定しておくと、効率よくECサイトのデータ分析が実施できるでしょう。
また、複雑なデータを用いて高度な分析になるほど担当者に分析スキルが求められるため、分析ツールを導入することをおすすめします。
マーケター自身でECサイト上のユーザー行動を深掘りできるAmplitude
データ分析=定量的な分析と思われる方も多いと思いますが、定量分析をブラッシュアップして施策につなげていくうえでは、データから読み取れる定性的な顧客の心理やニーズを想像することも大切です。
顧客の心理やニーズ、真に求めているものは、行動によって表されています。「買い物カゴに入れたけど、購入に至らなかった」「購入直前で離脱してしまった」などの顧客行動から背景にある心理を考える必要があります。
定性分析をサポートする「セッションリプレイ」とは?
5.施策実行
これらの分析を経て改善のための施策を実行します。
当たり前ですが、施策は実行して終わりではありません。ECサイトの改善はPDCAが重要であり、データ分析を通じて施策を立案・実行し、そしてどのような結果につながったかを再びデータ分析して検証します。
施策が成功した場合、さらに大きな結果を出すためには何が必要なのか考え、また、施策が失敗した場合にはどこが上手くいかなかったかを再度データ分析で確認します。そして、再び仮説を立て、施策を実行し、結果検証を行うというPDCAを回します。ECサイト成長のためのサイクルを繰り返すことで、売上の最大化を実現することが出来るでしょう。
ECサイト分析に役立つヒント
ECサイト分析に役立つヒントを2つご紹介します。
データ分析の基本は比較
データ分析の基本は「比較」です。比較することでしか数字の良し悪しは判断できません。目標値や平均値と比較したり、期間で比較してトレンドを見ることで、現状が「上手くいっている」もしくは「課題がある」と判断できるわけです。
例えば、ECサイトにおける基本的な比較対象は、以下のようなものです。
①時系列比較
→昨年同時期や昨月の値と比較、また時間単位ごとの推移を見ることで、トレンドを把握する
②ベンチマークとの比較
→現状の値を、設定している目標や基準、また、ツール等を使って競合と比較することで、ギャップを把握する
③グループ間の比較
→ある軸で切ったグループの間で数字を比較することで、優れていたり課題があったりするグループを特定する。また、特徴的な行動を見出す。
目標値や基準値、前年や前月実績、また、ECサイト内の平均値、商品別の比較、顧客セグメント別の比較などを通じて、数字を解釈してデータ分析が進んでいきます。だからこそ、データ分析の仮説を立てる時にも、「どのデータと比較すれば仮説を検証できるか?」「課題が特定できるか?」という視点を持っておくことが大切です。
データ分析の基本については、下記の記事で一般的なデータ分析の基本を解説していますので、ご興味あればぜひご覧ください。
売上(CV)に近い指標からチェックする
ECサイトの特徴は「売上(購入)」までサイトやアプリ内で完結することです。だからこそ、ECサイトを分析する時には、売上(CV)というゴールに近い指標からチェック、改善を考えていくことが大切です。
購入の流れが「トップページ →商品ページ → カート → 購入(CV)」だとすれば、トップページから商品ページへの遷移率を高めるよりも、まずはカート→購入(CV)のステップである”かご落ち”の対策を優先するといったイメージです。
ゴールに近いステップの方が、改善できた場合に売上への即効性もあります。前述した通り、ある程度施策を動かしていくと、「実行することによる売上への影響度」と「実行のしやすさ」という軸で優先度を判断できるようになりますが、データ分析して改善をしていく初期段階は、「購入に近いところ」から手を打つことが望ましいです。
ECサイトで見るべきKPI/指標
ECサイトの分析をする上では、代表的なKPI(Key Performance Indicatoer)/指標を押さえておきましょう。
売上・利益に関するKPI
売上高
売上高はECサイト運営において最も重要な指標です。売上高はいくつかの数式で表現できます。
- 売上高 = 訪問者数 × コンバージョン率’(CVR) × 顧客単価
- 売上高 = 購入件数 × 購入単価(顧客単価)
- 売上高 = 顧客数 × 購入頻度 × 購入単価(顧客単価)
「売上高を上げたい」という時、”売上高”という解像度のままで考えていると、施策が思いつきません。しかし、上記のように売上高をいくつかのKPI/指標に分解していくことで、改善の施策を考えやすくなります。
「売上が落ちた」と大雑把に捉えるのではなく、解像度をあげて、原因が“訪問者数”にあるのか、“コンバージョン率(CVR)”にあるのか、“顧客単価”にあるのか、どこの要素が落ちたのかを分解して捉えることで、対策を打ちやすくなります。
利益率
ECサイトを運営する上で、利益率もチェックしておきたい指標です。使用するチャネルや達成したいゴールによっても異なりますが、ECサイト運営のゴールには一般的に売上高が設定されることが多いでしょう。
しかし、利益率が低ければ売上が増えても、利益はあまり出ません。また、利益率が低いと売上向上に向けて使える販促費用なども限定されがちです。
利益率 = 利益 ÷ 売上
= (売上 – 費用) ÷ 売上
自社のECサイト運営にどんな費用が発生しているかを把握して、利益率を向上する余地がないか、どこを改善すれば利益率が向上するかを考えましょう。
費用には、売上が多少変わっても変わらない固定的な費用(ECサイトの管理ツールやインフラ費用、場合によっては人件費)、売上発生に応じてかかる変動費(カード決済の手数料、商品の仕入れやサービスの提供原価)、また、売上を増やすための広告宣伝費・販促費などがあります。これらの費用で改善できる、また、費用対効果をあげられる箇所がないかをチェックすることも大切です。
トラフィックに関するKPI
アクセス数(訪問者数)
ECサイトに訪れたユーザー数のことで、前述したように、売上を構成する要素の一つと言えます。訪問者が増える=ECサイトを多くの人に見てもらえている状態のため、売上が伸びる可能性が高くなります。
ただし、闇雲に訪問者を増やすのではなく、訪問者の質も重要です。ターゲットに合っていない訪問者を増やしたとしても、返ってCVR(コンバージョン率)が悪化してしまう可能性があるためです。つまり、サイトに訪れる人々がターゲットに属しているか、自社ECで扱う商品に関心を持っているかがとても大切になります。
SEO対策やWeb広告、SNS運用など集客の方法は多岐に渡りますが、ターゲットユーザーが、どのようなチャネルやプラットフォームを使っているのか把握した上で、最適な施策を打つことが望ましいです。
トラフィックソース
KPIに設定するケースは少ないですが、トラフィックソースは一つの指標として把握しておくことをおすすめします。
トラフィックソースは、どのチャネルからトラフィックが来ているか(検索エンジン、SNS、Web広告、直接アクセスなど)を把握し、各チャネルの効果を評価するのに役立ちます。
コンバージョン(購入)に関するKPI
コンバージョン数(売上件数/CV数)
コンバージョン数(売上件数/CV数)は、売上向上に向けてECサイトの分析を進めるうえで、非常に重要なKPIです。ECサイトのコンバージョン数は、一般的には売上件数=購入件数です。「売上高=コンバージョン数×購入単価」ですので、コンバージョン数の増加は売上に直結します。
コンバージョン数 = 訪問者数 × コンバージョン率(CVR)
となりますので、コンバージョン数を増やすには訪問者数を増やすか、コンバージョン率を高めることが必要になります。訪問者数を増やす、コンバージョン率を高めることを目的としたデータ分析は、ECサイトを分析する中でも、最もよく実施されるものです。
CVR(コンバージョン率)
コンバージョン率(CV率)は、一定期間におけるECサイト総訪問者数のうち、購入まで至った人の割合です。
コンバージョン率 = 購入者数 ÷ 訪問者数 × 100
ECサイト全体で考える場合には、一定期間のユニークユーザーを分母にしたり、また、特定のキャンペーン等の場合には、「この広告をクリックしたユーザー数」や「このメールマガジンのリンクのクリック数」といったものを分母に計算することになります。
CVRが低い場合、商品ページの品質や訴求に課題があったり、広告とページの訴求にズレがあったり、また、顧客が購入に至るまでの導線に何かしら問題や使いづらさがあることが考えられます。データ分析を通じて原因箇所を特定して対策する、また次の施策に生かしていくことが大切です。
同じ1,000件のクリックでも、CVRが1%であれば10人の購入ですが、CVRが2%であれば20人の購入になります。CVRが高いということは、獲得効率が高いということになりますので、利益率も高まり、プロモーションにコスト投下等もしやすくなります。
カート離脱率
カートに商品を追加したものの購入を完了しなかったユーザーの割合を指します。「カゴ落ち率」と呼ばれる場合もあります。MAツールを提供するMoEngage社の調査では、顧客の48%がカート放棄をしているという調査結果もあり、ECサイトを運営する企業の多くが改善に取り組んでいる指標です。
カート離脱率が高い場合、その原因を特定することが重要です。決済、配送料金、分かりにくいUIなど、さまざまな要因が離脱の原因となります。これらの要因を分析し、改善策を検討します。
最近では、ユーザーは複数のデバイスを通じてカートに商品を追加する場合があります。そのため、複数のセッションやデバイスからのカート離脱を追跡し、トータルの離脱率を正確に評価します。
デバイスが変わってもユーザー軸で行動を追えるAmplitudeとは?
顧客関連のKPI
顧客獲得単価(CAC)
顧客獲得単価(CAC)は、新規顧客を獲得するためにかかる平均的な費用を指します。具体的には、マーケティング活動や広告キャンペーン、販促活動などにかかる費用を、その期間やキャンペーンで獲得した新規顧客数で割って算出します。
顧客獲得単価を計算することで、ビジネスが新規顧客を獲得するためにどれだけのコストを負担しているかを把握できます。
顧客獲得単価をKPIとして使用する際には、定期的なモニタリングが重要です。マーケティング費用の変動や施策、トレンドによって、顧客獲得単価(CAC)が大きく変動する可能性があるためです。
購入単価(顧客単価)
顧客単価は、商品の購買・サービスの利用1回にどれだけの金額を支払ったのかを示す指標です。ECサイトの場合には、購入単価はコンバージョン1回あたりの単価であり、基本的には「商品単価 × 購入点数の合計」になります。
購入単価を高めることが出来れば、同じコンバージョン数でも売上は向上しますし、広告費等の費用対効果もよくなりますので、利益率が改善します。購入単価を高めるには、高単価の商材を購入してもらう、複数購入してもらう、セットで購入してもらう、他の商材も購入してもらうといった手法があります。
リピート率
リピート率は、商品を購入した顧客のうち、再購入してくれる顧客の比率です。リピート率が高まれば、売上が向上しますし、利益率も高まります。
マーケティングの世界では、「新規顧客を1人獲得するための費用は、既存顧客に1件購入してもらうための費用の10倍かかる」と言われます。
とくにECサイトの場合には、1回目の購入に対しては広告を実施して、また特典を付けて購入してもらうことも多く、広告費や特典・割引費用を考えると、1回目の購入時点では利益率が低いことも多くなります。従って、2回目のリピート購入につなげたり、定期購入してもらったりしてリピート率を高める工夫が非常に重要です。
顧客生涯価値(LTV:Life Time Value)
顧客生涯価値(LTV:Life Time Value)とは、「1人の顧客が自社に生涯でいくら使ってくれるか?」を表す指標です。LTVが高ければ高いほど、購入単価が高かったり、リピート購入していたりすることを意味しています。
LTVが、顧客生涯“売上”ではなく、顧客生涯“価値”となっているのは、「売上」ではなく「粗利」で計算されることが一般的だからです。場合によっては「売上 – 原価 – 1人当たりの新規獲得費用」をLTVとすることもあります。しかし、ECサイトの場合は、計算を簡易化するために「売上」ベースでLTVを計算していることもあります。
売上ベースで計算する場合には、LTVは下記の式で求められます。
顧客生涯価値(LTV) = 平均購買単価 × 購買頻度 × 継続購買期間
ECサイトのデータ分析では、「LTVが高い顧客はサイト内の行動にどんな特徴があるか?初回や2回目の購入パターンに特徴がないか?」や、「LTVが高い顧客はどんな属性か?どこから流入しているか?どうすれば新規獲得できるか?」といった視点で考えることが多いでしょう。
LTVを最大化するには?
ECサイトの分析で使われる基本的なツール
本章では、ECにおけるデータ分析の基礎となるツールを紹介します。すべて無料で使えるツールであり、ECサイトだけでなく、ECサイトに限らずWebサイトにおけるアクセス解析の基本ツールです。但し、無料ツールということで、売上向上に向けてECサイトの本格的なデータ分析をする上では限界がありますので、その点も押さえておきましょう。
Google Analytics4(GA4)
Webサイトのアクセス解析ツールで最も有名であり、基本となるツールが、Google Analytics4(グーグルアナリティクス4)です。Webマーケティングに携わるマーケターの方であれば、使用したことがある方も多いでしょう。
Google Analytics4は、Googleが提供するアクセス解析ツールであり、計測タグを埋めて設定したサイトのサイトのアクセス数やコンバージョン数に関するデータを把握することができます。例えば、サイトにどれだけの人が来たのか(セッション数、UU数、PV数))」「サイトへの流入はどこから生まれているか(流入元チャネル)」「アクセスしているユーザはパソコンとスマフォとどちらが多いか?」「使用されているデバイスは何なのか」「離脱率の高いページはどこか」といったデータを収集できます。
Google Analytics4はサイト内の行動分析も多少は実施できてますが、ツールとして提供される機能の限界もあります。とくに、「ECサイト特有の購買単価や購買単価なども絡めて細かく分析する」「自社で保有するユーザーの属性や購買データと紐づけて分析する」「サイト内のユーザー行動を細かく見たい」といった精緻な分析ニーズには応えられない事が多くなります。
本格的にECサイトを展開して事業として売上向上を目指すのであれば、ユーザー行動分析ツールの方が適している可能性が高いです。
Google Analytics4を使用したアクセス解析と、ユーザー行動分析の違いについて以下の記事で詳しく解説しています。
Google Search Console(GSC)
Google Search Consoleは、名前の通り、“Google Search”、つまりGoogleの検索エンジンから簡易するWebサイトがどう評価されているか、どんなキーワードの検索結果で表示されてユーザーが流入しているかを確認できるツールです。
ECサイトでSEO対策をするのであれば、GSCは評価や流入状況を把握して課題や改善点を見つける基本ツールです。一般的なWebサイトであれば、データ分析の基本はGoogle Analytics4(GA4)とGoogle Search Console(GSC)で十分です。
ただし、GSCはあくまで「自社のサイト(計測タグを埋め込んだサイト)」の状況しか分かりません。そのため、本格的なSEO対策等を実施していくうえでは、SEO対策の専用ツールを使って、競合サイトとの状況比較や競合サイトが流入獲得しているキーワードの検証、また、自社サイトのより詳細な情報を獲得していく必要があります。
Looker Studio(旧Googleデータポータル)
Looker Studio(旧Googleデータポータル)はGA4やGSC、また、Google広告など、Googleが提供するWebサイトやWeb広告に関するツールの情報を一元管理して、自由に表示レイアウトやレポート作成できる、いわゆるBIツールです。
Googleは元々GoogleデータポータルというBIツールを提供していましたが、2020年にGoogleが第3世代のBIツールと呼ばれていた「Looker」を開発・提供するLooker Data Sciences、Inc.を買収。2年後の2022年にGoogleデータポータルを「Looker Studio」と改称して、GoogleのBIツールはブランドをLookerブランドに統一して提供されることになりました。
データ分析そのものを実施するツールではありませんが、Webサイトがある程度の規模になってくると、「複数のツールデータを組みあわせて、状況を可視化したい、ダッシュボードで一元化したい」というニーズが出てきます。その際に活用するツールです。
Microsoft Clarity
Microsoft Clarityは、Microsoft社が提供するヒートマップツールです。ページ内のユーザー行動を可視化するヒートマップ機能、実際のユーザーの動きを動画で見れるレコーディング機能、また、全体のアクセスやデッドクリックの発生状況などが分かるダッシュボード機能などがあります。
ECサイトに特化したものではありませんが、無料でありながら機能やアクセス量・ページ数などの制限がない点が非常に便利です。上述したレコーディング機能(セッションリプレイ)に加えて、ヒートマップもクリックヒートマップ、スクロールヒートマップ、領域ヒートマップなど、CVRの改善に向けた機能が利用できます。
ただし、コンバージョン計測の機能がないため、コンバージョンしたユーザーとしていないユーザーの比較などは出来ませんし、あくまで同一ページ内での分析しかできない点は、本格的にECサイトのデータ分析に使おうとすると物足りない部分です。
ECサイト分析で成功の鍵となるユーザー行動分析とは?
ここまで、基本的な内容に触れてきましたが、もっと深いレベル分析をしたい場合に、重要になってくるのがユーザー行動分析です。
上記で解説したアクセス解析は、アクセス解析は主にECサイトへのアクセスやページビューなどの統計情報を分析するのに対し、ユーザー行動分析は、ユーザーがサイトやアプリ内で実際に行う操作や行動の分析に焦点を当てています。
そのため、ユーザー行動分析はアクセス解析の枠組みを超えて、ユーザーがECサイト上でどのような行動を行っているのかを、より深いレベルで理解し、それに基づいて戦略や施策を立てることが可能です。
ECサイトをグロースさせるユーザー行動分析ツール
前述の通り、ECサイトのグロースを実現する上では、ユーザー行動を分析して、行動の裏側にある心理やインサイトを考察して施策を打っていくことも大切な取り組みです。
また、ECサイトを運営されている企業様の中には、アプリのECや店舗販売を行っている企業様も多くいらっしゃると思います。その場合、アプリと店舗とECサイトをクロスで分析して、ユーザーがどう使い分け、また行き来しているかも分析したいところです。
こうした分析を一元的に実施できるのが「Amplitude(アンプリチュード)」です。
Amplitudeでは、前述したようなオンラインとオフラインを跨いだクロスチャネル分析の他に、ECサイトのロイヤルユーザーが取っている行動の把握、継続率の可視化が可能です。
以下に、ECサイトの分析に適したAmplitudeの分析チャートを3つ紹介します。
①コンパスチャート
ユーザーの行動の相関性を簡単に見ることができるチャートです。例えば、ECサイトで購入するユーザーを増やしたい場合に、購入したユーザーは他にどういった行動をサイト上で行っているのかを簡単に見つけることができます。
上記の例では、購入と相関性の高い行動が上から並んでいます。
1位:カートにアイテムを入れる、2位:カートを見る、等は購入しているので当たり前ですが、3位:広告を見る、が購入の前の行動として良く行われるというのは一つの発見になるでしょう。
最終的な購入(コンバージョン)を増やしたい場合に、購入の前の行動(マイクロコンバージョン)を増やすことから取り組むと、施策も進めやすくなります。
②リテンションチャート
ユーザーがどの程度の継続率でECサイトを訪問しているかを見ることができるのが、リテンションチャートです。
ユーザーにリピート購入してもらうためには継続してサイトを訪問してもらわないといけません。リテンションチャートでは、初回訪問者を100%とし、横軸の時間が経過するごとにどの程度の人が再訪問しているかを見ることができます。
時間が経過して右に行くほどグラフは下がります(再訪問する人の率が下がる)。その中で、再訪問率をいかに高く保てるかが重要です。
チャートでは、ユーザーのセグメント別にグラフを分けることもできます。
上記の例では青いグラフは全ユーザーの平均値です。一方、黄緑のグラフは広告を1回以上見た人のみのグラフです。こうしてみると、広告を見た人の方が再訪問率が高いことが一目で分かります。
こうしたデータを見ることで、たとえば「ECサイトを訪問したユーザーをリターゲティングしてWeb広告を出稿することで再訪問率があがるのではないか」という仮説が作成できるわけです。
③ライフサイクルチャート
ユーザーの利用状態を一目で可視化できるのがライフサイクルチャートです。一般的にECサイトを利用するユーザーの状態は以下の4つに分けられます。
- 新規ユーザー:新しくECサイト利用を開始したユーザー
- 定着ユーザー:ECサイトを継続的に利用しているユーザー
- 休眠ユーザー:ECサイトの利用が減少し、使わなくなったユーザー
- 復帰ユーザー:一度は休眠状態になったものの、再度利用頻度が上がったユーザー
ECサイトでのコンバージョン向上を目指すのであれば、新規、定着、復帰を増やし、休眠を減らすべきです。ライフサイクルチャートはユーザーの状態を4区分で可視化できます。
上のチャートは左から右へ、時系列に沿って週ごとに、ライフサイクル区分におけるユーザー数の推移を示しています。水色(新規)より、赤(休眠)が多ければ、アクティブなユーザー数は減少していることが読み取れます。
ライフサイクルチャートでは、単純な新規ユーザー数を見るだけでなく、サイトを利用したユーザーが定着しているか、休眠しているかといったポイントまで行動を把握することが重要です。
ECサイトでAmplitudeを活用した事例
15分の分析でファッションECにおけるカート投入率を122%に改善
35歳〜49歳女性をターゲットに展開しているファッションECサイトでは、売上目標というKGIを、いくつかのKPIに分解して、達成施策を検討していました。
その中で、「購入者数」というKPIを増やすためのデータ分析をAmplitudeで実施。「2回以上購入しているユーザー」が多く含まれるセグメントの行動分析を実施していくと、特徴的な行動パターンが見えてきました。更にデータを深く分析していくことで、施策へのヒントが見えてきました。
分析結果を踏まえて施策を実施したところ、
カートへの投入率:122%
コンバージョン率:156%
購入者数:114%
という実績を出すことができています。
本事例に関する詳細はこちら
他にもAmplitudeを活用した事例をこちらで紹介しています。
最後に
記事ではECサイトの分析方法を紹介しました。サイトやアプリ内で「購入(売上)」までが完結するECサイトの運営において、事業を成長させるためには適切にデータ分析して、施策へとつなげていくことが大切です。
DearOneでは、本記事でご紹介したAmplitudeの導入や分析のご支援をしております。Amplitudeに興味を持っていただけましたら、お気軽にお問い合わせください。