あるファッションEC様とのグロースハック事例
今回は、株式会社DearOneのプロフェッショナルサポートによりグロースマーケティングを実践された、あるファッションECサイトの実際のデータ分析から改善施策の実施、効果検証を一気通貫でスピーディーに実現した、いわゆる「グロースハック」の事例をご紹介します。
全体としては、下記のようなお取り組みをさせていただきました。
- Amplitude(アンプリチュード)の導入
- ユーザー行動分析からサイト改善施策の考案
- 改善施策の実施(A/Bテスト)
- 施策の効果検証
今回はこれらの取り組みの中から、2. 3. 4. の内容を一部、ご紹介します。
購入者数を増やすグロースハック
前提
F2層(35歳~49歳女性)をメインターゲットとし、ファッションを中心としたEC事業を運営。
高感度な商品を扱っているため、商品の価格帯は他のECより若干高めです。
ECサイトのKGIとKPI
このECサイトは、売上目標をKGIにおき、 KGIを達成するためのKPIを複数設定しています。
今回はKPIの一つである「購入者数を増やす」ところにテーマをおき、グロースハックに取り組んだ事例になります。
KPIの一つである「購入者数を増やす」
我々DearOneが推奨しているグロース戦略の「AARRRモデル」でいうと、このお客様はAquisition(ユーザー獲得)した後のActivation(ユーザー活性化)、サイト利用から購入者を増やすという点を重視しています。
ペルソナ分析
こちらがペルソナ分析です。
購入者数を増やすため、まず「購入者がどんな行動をとっているのか」ということを、4つのタイプに分けて確認したチャートになります。
ペルソナ分析では、購入経験があるユーザーを4つのタイプに分け、それぞれ似たような行動を取る人たちでグルーピングしています。これをAmplitude(アンプリチュード)は自動で抽出してくれます。
今回の分析では、クラスターAの中に「2回以上購入するユーザー」がより多く含まれていることがわかりました。こちらの16.6%のユーザーに注目して「クラスターAのユーザーが、どんな行動をとっているのか」を行動分析しました。
グレーで網掛けした部分が「ユーザーの行動」とその「平均回数」を表わしています。
たとえば「1. 閲覧履歴を見る」という行動が、全体平均では1.4回に対して、クラスターAのユーザーは9.1回と約7倍の差があり、クラスターAのユーザーがよく閲覧履歴を見ていることがわかります。一方、クラスタB、C、 Dのユーザーは、いずれも閲覧回数が平均を下回っています。
クラスターAのユーザーは、「2. カートを見る」「3. 本人認証」「4. 商品詳細ページを見る」という行動も、全体平均より高いのですが、他のクラスタと比較すると圧倒的に「1. 閲覧履歴を見る」という行動が多かったため、ここが特徴量であると考え、「1. 閲覧履歴を見る」に注目して行動データをさらに深掘りしてみました。
通常、こういった分析をログデータからSQLを使って分析しようとすると、場合によっては数週間かかることもありますが、Amplitude(アンプリチュード)であれば条件変更などの途中の手直しも含めて数分で分析結果を得られます。
ユーザージャーニー分析
「1. 閲覧履歴を見る」という行動を深堀りするため、次のステップでは、「閲覧履歴を見る手前でユーザーが何をしているのか」を確認するユーザージャーニー分析をAmplitude(アンプリチュード)を使って行いました。上記がその結果です。
こちらのフロー図では、48%が「商品詳細ページ」を見た後に、閲覧履歴を見ているということがわかりました。
Amplitude(アンプリチュード)ではこのようにある行動を終着点として設定し、その手前でユーザーがどのような行動を取っていたのかを確認できます。
データから読み解く、ユーザー行動分析
さらに、「商品詳細ページ」(上図)から「閲覧履歴」まで、ユーザーがどういった導線をたどって来たのかを考えました。実際にページを見てみると、直接「閲覧履歴」に遷移するリンクは「商品詳細ページ」の下部にしかなかったです。また、自分の興味がある商品を一覧で見ることができる「閲覧履歴」と似たような機能として「お気に入り」というメニューもあるのですが、「閲覧履歴」と「お気に入り」、この2つのメニューはどちらが「商品購入」に貢献しているのだろうかという疑問が生まれ、さらに深掘りの行動分析を行いました。
コンバージョンを紐解く、深掘り分析
機能別の利用者数を比較するために、これら2つの機能の利用者数と当該機能からの商品購入へのコンバージョン率を見てみました。
上記がその結果です。 左のグラフを見ると、「閲覧履歴を見る」利用者数と「お気に入りアイテムを見る」利用者数では、閲覧履歴の方が3倍以上使われていることがわかりました。
さらに、コンバージョン率を確認しました。
右のグラフをご覧ください。
「閲覧履歴」を見たあとに、商品を購入するコンバージョン率が27%、「お気に入りアイテムを見る」から購入するコンバージョン率が23%ということがわかりました。
利用者数もコンバージョン率も、「お気に入りアイテムを見る」よりも「閲覧履歴」の方が、はるかに高い数字を出していることがわかったのです。
ここまでのすべて分析に要した時間は、なんと15分でした。
ここまでの行動分析の結果をまとめると以下の通りとなります。
- 「閲覧履歴を見る」行動をしたユーザーは商品を購入するコンバージョン率が高い
- 「閲覧履歴を見る」行動の前には、「商品詳細ページを見る」行動をとるユーザーが多い
- 「商品詳細ページ」下部にしか「閲覧履歴」へ遷移できる導線はない
仮説と検証 A/Bテストの実施
上記をもとにして立てた仮説は以下の通りです。
『商品詳細ページから閲覧履歴ページへの誘導を強化すれば、購入数が増える』
上記の仮説を検証するため、A/Bテストを行いました。
A/Bテストでは、メニューに元々あった「お気に入り」ボタンを、「A. お気に入り」と「B. 閲覧履歴」を出し分けるように変更してその効果を比較しました。
A/Bテストの検証結果
A/Bテストの結果は、「閲覧履歴」の方が「お気に入り」に対して、良い成績が出ました。
- カートへの投入率:122%
- コンバージョン率:156%
- 購入者数:114%
この様にして、ユーザーの行動を分析し、仮説を立てA/Bテストを行い実際の効果を検証しながらECサイトを改善し続けることで購入率を向上させ、ビジネスのグロースを目指します。