このサイトをご覧になっているみなさんは何らかのプロダクトをお持ちで、そのプロダクトをグロースさせたいと思っている方が多いのではないでしょうか。
ECサイトをお持ちならより購買してもらうサイトにしたい、メディアサイトをお持ちなら記事をたくさん読んでもらいたいなど、プロダクトによって成長させたい課題は変わってくると思います。では、どうやってその課題を解決しますか?どうやってプロダクトをグロースさせますか?今回はあなたのプロダクトがグロースできるポイントを簡単にご説明したいと思います。
AARRRモデルとは?
グロースハックのAARRRモデルって?
プロダクトをグロースさせようと思う時、グロースハックという手法を使う方が多いと思います。グロースハックとは、ドロップボックスを急成長させたショーンエリスという人物が提唱した手法で、世界的に有名な多くのプロダクトを始め、今でも広く使われているグロースの手法になります。そのグロースハックで用いられているフレームがAARRRモデルになります。「アーモデル」「アールモデル」と読まれることが多いです。
AARRRとは、以下グロースに必要なフェーズの頭文字を取っています。
(A) Acquisition ユーザー獲得
(A) Activationユーザー活性化
(R) Retention 継続
(R) Revenue 収益化
(R) Referral 紹介
それでは、それぞれのフェーズを詳しく見てみましょう。
AARRRのフェーズとは?
1. Acquisition ユーザー獲得
まずプロダクトをリリースした時に、潜在顧客にプロダクトを使ってもらう、これがグロースの最初のフェーズ、ユーザー獲得になります。
アプリをリリースしても誰もダウンロードをしてくれなったり、サイトを立ち上げても誰も見にきてくれなかったり、使ってくれるユーザーがいなければそもそもグロースなんてできません。なので、まずはユーザーを獲得することから始めます。
主要KPI:新規訪問者数、ページビュー数、新規登録顧客数
2. Activation ユーザー活性化
アプリをダウンロードしてくれても使ってもらえてなかったり、広告などで誘導まではしたけど、全然サイトを見てくれていなかったり。
それだと良いプロダクトとは言えません。ですので、次のフェーズはユーザーを活性化させること、すなわちプロダクトを使ってもらうことになります。そこで重要なのはユーザーがあなたのプロダクトに価値を感じていることです。PMF(プロダクトマーケティングフィット)という言葉がありますが、PMFがこのフェーズでは重要になってきます。
主要KPI:チュートリアル突破数、オンボーディング完了数、トライアル完了数
3. Retention 継続
プロダクトを使ってくれていても、1回使って終わりだとユーザー数も増えないし、いくらユーザー獲得してもキリがありませんよね。次のフェーズ継続では、ユーザーに長く、何度もプロダクトを使ってもらうことを目指します。毎日使ってくれるユーザーが多ければ、自然にMAU(Monthly Active User)も増えますし、サイトの活性化にもつながります。
主要KPI:継続利用ユーザー数、再訪問頻度
4. Revenue収益化
ユーザーもたくさんいて、プロダクトも継続的に使ってくれている。そうなるとそのプロダクトはかなり良いものになっているのではないでしょうか。そうすると次のフェーズではそのプロダクトで収益を得ることを考えると思います。すなわち収益化です。多くのプロダクトは何らかの収益を得るために作られていると思います。ECなら扱っている商品の売上ですし、メディアサイトなら広告収益かもしれません、また音楽ストリーミングアプリのようにプロダクトの使用自体で収益をあげているものもあるでしょう。あなたのプロダクトに合った収益化を目指しましょう。
主要KPI:購入ユーザー数、購入金額
5. Referral 紹介
最後はReferral紹介です。収益化まで成功したら、もっと多くのユーザーに使ってもらいたいと思うはずです。その時に既存のユーザーに友達などを紹介してもらう、すなわちReferral 紹介を行いましょう。SNSなどのシェアなどもここに含まれます。既存のユーザーからさらに潜在ユーザーを増やします。そしてその潜在ユーザーにより、最初のAcquisition ユーザー獲得に戻って、またAARRRを繰り返します。このIteration(イテレーション、繰り返し)こそがグロースハックの手法となっています。
主要KPI:紹介ユーザー数、SNS共有数
Amplitudeを使ってグロースハックしよう!
AARRRモデルを活用することで、グロースハックを施し、事業成長を目指せるということは理解していただけたでしょう。
どのようにAARRRモデルを実務に活用すれば良いのかわからないと思われたかもしれません。しかし、AARRRモデルの活用はそんなに難しいことではありません。
まず、AARRRモデルをよく見て下さい。
全てユーザーの行動が軸になっていることが理解できます。
例えばAcquisition(ユーザー獲得)では、ユーザーがどこから来ているのか、Activation(ユーザー活性化)では、プロダクトの使用を開始してくれているのか、Retention(継続)では、どれくらいの頻度で使用してくれているのか、Revenue(収益化)では、ユーザーの行動によってどれくらい収益を上げることができているか、Referral(紹介)では、ユーザーの友人や家族に商品をおすすめしてくれているのか等、AARRRモデルのフェーズを一つずつ解決するためにはまず、ユーザーがあなたのプロダクトでどのような行動をとっているのかを事細かに把握することが重要なのです。
ユーザー行動を把握することができれば、AARRRモデルを元にして計測すべき指標設計を行います。
指標はタクソノミー設計
指標設計の段階で、AARRRモデルを元にタクソノミー設計と呼ばれる「データ管理を効率的行うための準備」をします。
つまり、プロダクトの成長全体を見られるように設計していくのです。
簡単に説明すると、タクソノミー設計とは「データを取得時点から一貫性をもって貯めるための準備作業」のことです。ユーザーの行動を、一過性をもって管理できるように、計測するイベント(Webサイトを閲覧した、バナーをクリックした、購入した、等)を設計していきます。さらに、各イベントに対してイベントプロパティとして、行動を行ったページのURLや流入元、ボタンの種類等の情報を付与できるように設計します。
タクソノミー設計の手順等、詳しくはこちらの記事で解説していますので参考にしてみて下さい。
タクソノミー設計で指標を設計できれば、Amplitudeを使用して指標を計測できます。AmplitudeはアプリやWebなどのオンラインデータと、店舗POSなどのオフラインデータ全てを結合して、ユーザー行動分析を簡単に行うことができる分析ツールです。AARRRモデルを元にタクソノミー設計を用いて指標を設計しAmplitudeを使って計測し、そこから分析を行うことでプロダクトを改善させてグロースを目指すのです。
お客様の行動を理解し、データに基づいて改善を繰り返すことでグロースに大きく近づくことができるでしょう。
AARRRモデルを使用して事業成長に成功した事例
ここからは、AARRRモデルを使用して事業を大きく成長させた企業をご紹介します。AARRRモデルは顧客基盤を拡大し、事業成長を目指すのに適したフレームワークです。新規顧客獲得から収益化までを顧客にとっても理想的な流れで行うことができ、Apple、Twitter、Dropbox、LinkedInなどの世界を代表する企業がAARRRモデルを用い、ビジネスを大きく成長させました。
Acquisition(ユーザー獲得):Yumi
Yumiはフランスで新鮮な野菜ジュースの宅配事業を行っている企業です。理想のターゲットは25〜35歳では「健康への興味関心は高いが、自分で作るのは面倒臭い」と思っている方、35〜45歳では「健康的なライフスタイルの必要性は感じているが、時間がない方」と年齢層によって異なります。
同社は顧客獲得のためにさまざまな手法を試しました。例えばインフルエンサーマーケティング、リファラルプログラム、オフラインでの販売、栄養士との連携、パートナーメールキャンペーンなどです。
インフルエンサーマーケティングでは、ニッチな分野で非常に影響力のあるブロガーと関係性を構築するのに成功し、ブログ内で紹介をしてもらうことで大きな関心が寄せられ、多くの顧客獲得に成功しました。
リファラルプログラムでは、新しい顧客を連れて来る度に7ユーロ(900円程度)の報酬がもらえるということで大きな話題となりました。
このように興味が集まると共に、オフラインでの販売を開始。オフライン店舗では外出時に飲みたくなったら購入をすることはもちろん、そこで気に入ってもらえればオンラインで1週間分購入するといった、リテンションの導線にもなっているのです。
また専門家と連携をすることで栄養学を熟知し、「製品の品質にこだわっている」といった権威性、地位を獲得することができました。製品の質がよくなければ簡単に他社に乗り換えも可能なため、新規ユーザー獲得とともに、高品質の製品を提供し顧客価値を上げることが大切です。
Activation(ユーザー活性化):Apple
Activationの段階において重要なことは「ユーザーの好みのコンテンツを提供すること」です。ユーザーひとりひとりに合ったコンテンツを提供することで、彼らの興味を引き、アクティブユーザーに育てることができます。
Apple Musicは登録初期段階においてユーザーに「好きな歌手」「嫌いな歌手」を尋ねることでユーザーの関心を集め、利用を促しています。さらにこれらの質問をすることでデータを収集し、アルゴリズムに利用することで後にユーザーに送るプッシュ通知の正確性を向上させることが可能です。
Retention(継続):Twitter
Twitterは通知機能を使用し、ユーザーが継続して利用するように促しています。TwitterなどのSNSではよく通知機能が用いられ「他者の行動を通知する」ことで、より多くのユーザーが再度利用するよう仕組まれています。
Retentionの段階ではアクティブユーザーがサービスに戻ってきて、再び利用する仕組みを作ることが重要です。
Referral(紹介):Dropbox
Dropboxは、AARRRモデルの事例によく使用されます。
同社はインターネット上でファイルを保存・共有できるプラットフォームを提供しており、登録するだけで2GBのオンラインストレージを無料で利用できます。製品の共有を容易にし、さらにユーザーが「共有したい」を思えるようなインセンティブを組み込んだことで、ユーザー数を爆発的に増加させることに成功しました。
具体的には、Dropboxに友人を招待、招待された友人が登録し、ソフトウェアをダウンロードする度に、招待者と招待された側の友人の双方に500MBのストレージをプレゼントするという仕組みです。この施策のおかげで、15ヶ月間の間に登録者数が60%以上も伸びたことが明らかになっています。
口コミで製品認知を広げる「口コミマーケティング」は、圧倒的なコストパフォーマンスを誇ります。友人がおすすめする商品は他人がおすすめする商品よりもいいものだと判断するため、どれだけ「友人に紹介したい」と思わせることができるかが重要です。
Revenue(収益化):LinkedIn
LinkedInはユーザのニーズを満たすためにそれぞれに対応するプランを提供することで収益化をしています。
無料でも使用できますが、LinkedIn Premium(有料版)では無料版では提供されていないサービスを提供しています。
多くのアプリ、例えばゲームであれば無料で利用できるものがほとんどです。しかし、進むにつれて難易度も上がっていき、課金しなければこれ以上進めない、という絶妙のタイミングで課金されるような仕組みを組んでいます。
また、ゲーム内で課金をしなければアバターをオリジナルにすることができないなど、ゲームに対して感情を持たせ、特別感を生み出すことで収益化を行うなども多く見られます。