CRMとは、企業が顧客との関係を管理し、関係性を強めることで顧客満足度の向上、リテンション率の増加につなげる取り組みのことをいいます。この記事では、CRMが必要とされている背景や、CRMに取り組みを進めるためのツールや選び方まで解説していきます。
CRMとは?
CRMは、Customer Relationship Management(カスタマーリレーションシップマネジメント)の頭文字を取った略語で、日本語では顧客関係管理や顧客管理と呼ばれます。「顧客関係」や「顧客関係管理」という言葉の通り、CRMは既存顧客を対象としたマーケティングを指します。既存顧客に対してきめ細かな対応をしてエンゲージメントを高め、リピート購入やLTV(顧客生涯価値)の向上につなげていく考え方です。
既存顧客を維持するという考え方は、昔から存在しています。ただ、顧客数が限られている時代には、既存顧客の維持は顧客管理台帳などと組み合わせながら営業担当者が実施するものとして考えられていました。また、顧客数が膨大になってくるBtoC、とくにネットサービス等の場合には、既存顧客をきめ細かくケアすることは難しいと考えられていました。
しかし、ITとWebマーケティング技術の進化によって、CRMツールを使うことで膨大な顧客数があっても、それぞれの顧客をきめ細かくケアしていくことが可能になりました。顧客ニーズが多様化した現代、顧客のことをしっかりと把握し、それぞれのニーズにを満たすための施策を打っていく必要が増し、CRMの概念が注目されています。
CRMとOne to Oneマーケティング、ハイパーパーソナライゼーション
顧客のことを理解して、それぞれのニーズを満たしていくという意味では、CRMはOne to Oneマーケティングやハイパーパーソナライゼーションに通じる部分があります。One to Oneマーケティングやハイパーパーソナライゼーションは、既存顧客に限定したものではありませんが、顧客の属性や取引履歴、行動データ等を基にして、それぞれに最適なアプローチをしていこうという考え方です。
既に取引がある既存顧客は「自分のことを理解して、自分のための提案をして欲しい」というニーズを強く持っており、CRMに取り組むうえではOne to Oneマーケティングやハイパーパーソナライゼーションの考え方が土台となるでしょう。
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CRMが必要とされる背景
既存顧客の維持という概念は昔からあるものです。なぜ今CRMという形で、既存顧客へのマーケティングが重視されているのか、理由を確認します。
顧客ニーズの多様化
1つ目の理由は顧客のニーズ、行動が多様化している点です。
インターネットが普及して情報をいつでもどこでも得られる社会となったこと、また、多様な個性や価値観が認められる時代になったことを受けて、顧客ニーズは非常に多様化しています。消費者一人一人が欲しい商品が異なり、情報を入手する手段も多様化しています。そのため、テレビCMや新聞広告などのマスマーケティングだけでは、顧客一人一人のニーズを満たすことができなくなりました。
テレビCMなどのマスマーケティングは認知度を向上させるうえでは今も有効です。ただし、前述の通り、多様化したニーズを満たすことは難しくなっています。とくに一度取引をしている既存顧客ほど、自分のデータや購買履歴を知っているからこそ、“自分のための提案”をしてくれることを企業に求めています。
顧客一人一人に最適なものを提供するマーケティング手法をOne to Oneマーケティングと呼びますが、One to Oneマーケティングを成功に導くためには、顧客情報をしっかりと貯めて、分析し、活用することが重要となります。この既存顧客向けのOne to Oneマーケティングこそが、CRMの中核となります。
顧客ニーズの把握
顧客ニーズが多様化した中で、顧客ニーズを把握する重要性も増しています。顧客一人一人のニーズを把握することは、前述したOne to Oneマーケティングを実現する上でも要となってきます。現在のCRMはCRMツールの導入・活用とセットになった概念であり、CRMツールを導入することで顧客それぞれの属性、購買履歴、問い合わせ、資料のダウンロード、Webやアプリ上の行動などを把握して、また紐づけて分析することが可能になります。
こうしたデータに表れた顧客ニーズを活用することで、精度の高いOne to Oneマーケティングが可能になります。CRMツールに蓄積された顧客の購買履歴と行動履歴などを掛け合わせることで、顧客が今後必要とする、興味を示すであろう商品やサービスの予測も可能になります。また、データを分析することで、顧客ニーズに合わせた新たな商品・サービスの開発、カスタマーサポートの仕掛けも可能になるでしょう。
新規顧客獲得 < 既存顧客維持
CRMが重視される3つ目の理由は、新規顧客の獲得以上に、既存顧客の維持がビジネスにおける重要度を増してきたからです。
一般的に、新規顧客の獲得にかかるコストは、既存顧客の維持にかかる費用の5-10倍と言われています。従って、たとえば、同じ売上でも既存顧客がしっかりと維持されて広告費がかかっていない状態と、広告費を使って新規顧客を獲得している状態では、ビジネスの収益性は大きく異なります。
もちろんビジネスを成長させる上で新規顧客の獲得は必要不可欠です。しかし、既存顧客を維持できていない状態で、広告費をかけて新規顧客・売上をつくるのは自転車操業をしているようなものです。既存顧客がしっかりと維持してこそビジネスの収益性が担保されますし、事業拡大に向けた広告費の投下等もしやすくなります。
現在はさまざまな技術の発達により、物理的な距離、また今までの業種区分等を越えて企業間の競争が行われる時代です。だからこそ、既存顧客をしっかりと維持することが重要であり、CRMが必要とされています。
LTV(顧客生涯価値)の向上
CRMによる既存顧客ケアの重要性は、新規獲得と既存維持のコスト差ということ以外に、LTV(顧客生涯価値)という視点でも語られます。
既存顧客がサービスをリピートする、また、他のサービスを使う、利用額を増やしてくれることで、顧客のLTVが高まります。LTVの向上はビジネスの収益向上につながりますし、LTVが高いほど新規獲得にコストを投下することも容易になります。
たとえば、1人の新規顧客を獲得して見込めるLTVが5万円だとすれば、広告費に使えるのは5万円が上限です。一方で、1人の新規顧客を獲得して見込めるLTVが20万円だとすれば、1人の顧客を獲得するのに20万円まで使えます(これは極端に表現しており、業界や職種によりますが、実際にはLTVの20-30%程度が標準的な上限値です)。このようにCRMが強く、LTVが高まるほど、じつは新規開拓でも優位に立てます。
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マーケットシェアの維持・拡大
日本国内が少子化傾向にあることは誰もが知っている通りです。また、グローバルに見ても先進国の人口は横ばいに近い状態となっており、日本と近い東アジアや東南アジアの人口も横ばいから減少に向かう見込みです。
人口動態は「既に起こった未来」とも言われるぐらい、確実に予測できるものです。もちろん人口が増加するエリアや市場もありますが、中長期で見た時に大幅な成長が見込みにくい、減少が予測される市場で事業を展開する日本企業も多いでしょう。
市場規模が横ばい・縮小になれば、限られたマーケットの中でシェアを奪い合うことになり、競合他社との差別化がますます重要になっています。
CRMを活用することで、顧客情報や状況を把握して的確なターゲティングやマーケティング施策を打つことができます。これによって商品・サービスを含めたトータルの顧客体験(UX)で競合他社と差別化し、既存顧客を維持・拡大することができるでしょう。
顧客管理の脱属人化
事業を持続的に運営する上では、顧客管理/ケアを脱属人化することも重要です。「既存顧客の嗜好性をしっかりと把握して、きめ細かくケアしている営業のAさん」といった存在は、短期的には非常にありがたいものですが、中長期的には顧客ケアの属人化は経営のリスク要因にもなります。
Aさんに依存した顧客ケアは、Aさんがいなくなると「サービス品質が低下した」と顧客に思われてしまう状態です。CRMツールを導入することで、顧客情報を一元管理し、勘や経験だけでなく、メールの開封やWeb上やアプリ内の顧客の行動データ等と絡めて、高品質な顧客体験を組織として安定的に提供できる状態にする必要があるでしょう。
属人化からの脱出は、生産性の向上や新人の戦力化スピード向上等にもつながります。顧客管理が属人化して営業やマーケティング担当を動かせない組織と比べて、既存顧客のケアをしっかりと標準化・仕組化した組織は、新規で人員を採用・育成して事業を拡大していけますし、新たな工夫や挑戦をする余地も生まれるでしょう。
インサイドセールスや営業の効率化
顧客の情報収集がWeb上で行われるようになり、ECも発達していますが、高額商材や無形サービス、また、BtoBサービスなどの分野では、インサイドセールスや営業などの“人”が生み出す介在価値も重要です。こうしたインサイドセールスや営業などの“人”が介在する仕事は労働集約になりやすいからこそ、CRMツールを活用して、生産性の向上、効率化を図ることが重要です。
CRMツールを活用することで顧客情報を一元管理し、顧客情報を把握するための時間や手間を削減できます。また、CRMツールに顧客とのコミュニケーション履歴が蓄積されることで、スタッフは顧客とのやりとりを随時把握・共有し、顧客に最適な提案を行うことができるでしょう。さらに、ツール内に蓄積されたデータを分析することで、工数を投下すべき顧客やケアすべき顧客を自動的に抽出することもできます。
CRMツールの基本機能
現在のCRMは、CRMツールの活用が前提となってきます。顧客情報、購買履歴や商談記録の管理、また、問い合わせデータや資料のダウンロードデータの管理。外部ツールとも連携し、Webやアプリ内の行動データと紐づけての分析やアラート、One to Oneマーケティングの実践に向けたパーソナライズしたアプローチの実施などは、CRMツールがなければ実現不可能です。CRMツールがどんな機能を備えているかを紹介します。
顧客情報管理
CRMは「顧客関係管理」というぐらいですので、顧客情報の管理が根幹となる機能です。顧客情報の中には、氏名や連絡先といった基本情報から、個人であれば性別、生年月日、勤務先、家族構成、趣味や関心事などの属性情報、企業であれば業界業種、規模、従業員数、決算月、年商といった企業属性に加えて、窓口となる相手や決裁者などの部署、役職、連絡先などの情報も含まれてきます。CRM利用企業の事業や提供サービスに応じて、必要な項目情報も変わってくるでしょう。
いつどんな商材をいくらで購入したかといった購買情報/取引履歴もCRMにおける非常に重要な顧客情報です。こうした顧客情報がより詳細になり、そのデータをしっかりと分析することで、推察できる顧客の人物像や行動パターン、また購買ポテンシャルなども解像度があがり、最適な施策を施すことが可能となります。
商談管理
商談管理は、商談や案件と呼ばれる情報を顧客に紐づけて管理する機能です。商談管理はSFA(Sales Force Automation、営業支援システム)とCRMで重複するような機能になりますが、多くのCRMツールが持っている機能です。
ECサイトやオンラインゲームなど、オンラインやアプリ上で決済まで完結するような場合には商談と呼ばれるプロセスは存在しませんが、個人向けでも住宅や自動車のような高額商材、またBtoBサービスなどの場合は、営業が介在する商談や案件と呼ばれるフェーズが存在し、売上を創出する上で非常に重要なプロセスになってきます。
問い合わせ管理
顧客からの問い合わせ管理も多くのCRMが持っている機能です。顧客数が多くカスタマーサクセス(サポート)チームがいたり、コールセンターがあったりする場合には、問い合わせ管理機能を使って、問い合わせ対応を効率的に管理します。
また顧客からの問い合わせ情報は、商品やサービスの改善、またサポートの改良などにつながるヒントです。一元管理することで、問い合わせ数が多いものに対してよくある質問を設置したり、要望が多い機能を開発したりすることが可能になります。
また、顧客からの問い合わせに限らず、顧客との接触履歴なども同じようにCRMツールに残すことが可能です。問い合わせに大してどう対応したか、どんなやり取りをしたか等を記録に残すことで、コールセンターと技術部門、営業などが、部門・職種を超えた共通認識を持って、顧客対応や提案が可能になります。
メール配信
既存顧客へのアプローチ方法として、メール配信機能も多くのCRMツールが持っている機能のひとつです。CRMツール内の顧客情報をセグメントに分けて、メールを配信することができます。
メール配信機能では、開封率やリンクのクリック率などのデータも収集可能になっていることが多いでしょう。データを活用して、商品案内のメールを開封した顧客や商品リンクをクリックしたけど問い合わせには至らなかった顧客に、インサイドセールスチームからアプローチするようなことも実施されます。また、メール配信のデータを分析することで、メール配信を行う適切な時間、適切な文章量なども検証でき、その後のメール配信に役立てることもできます。
最近は、顧客へのアプローチはより高度化されており、顧客によってメール配信の内容を変える、配信時間を変える、メールだけでなく、アプリでプッシュ通知をしたり、顧客がアクセスしたときにWebで表示するコンテンツを自動的に変えるなど、よりOne to Oneにパーソナライズされたアプローチや、多様なアプローチチャネルの活用が求められています。結果として、CRMツールのメール配信機能だけでなく、CRMツールを外部ツールと連携させてアプローチを実施することも増えています。
SFA/MAツール等とのデータ連携
CRMはここまでの機能紹介からも想像できる通り、商談管理を実施するSFAや、見込顧客(リード)へのアプローチを実施するMAツール等とも連携の必要が生じるシステムです。たとえば、既存顧客から問い合わせが来て商談が発生すればSFAの領域と重複しますし、既存顧客がWebにアクセスしたり資料をダウンロードしたりすればMAツールの領域に重なってきます。また、One to Oneマーケティングを行うと思えば、CRMに蓄積されている顧客情報や購買履歴のデータと、Webサイトやアプリ内の表示をカスタマイズするCMSと連動する必要があります。
従って、多くのCRMツールは上述した商談管理やメール配信のようにSFAやMAツールと重複する機能を持ちつつ、同時に、SFAやMAツール、また、マーケティングツールとデータ連携するための機能を持っています。簡易な商談管理やメール配信はCRMツール内の機能で提供しつつ、より高度な取り組みを実施したい顧客にはデータ連携を使ってもらうことで専門の外部ツールと組み合わせて活用してもらうイメージです。
フォーム・アンケート作成
フォーム作成機能もCRMツールに標準的に持っている機能のひとつです。サービスへの問い合わせや資料請求、また、セミナー/ウェビナー、イベント実施といったことに使える申し込みフォームを作成できます。申込履歴は自動的にCRMツールに格納され、顧客情報を紐づいて蓄積されますし、申込者の一覧を抽出することも可能です。過去の購買や申込履歴からセミナーに興味がありそうな顧客を抽出してメール配信すれば、新規顧客向けの広告などよりも効果的に申込を獲得できるでしょう。
また、アンケートフォームを作成し、フォームを配信、また結果を集計・分析するような機能を持っているCRMツールも多くあります。アンケートを利用すると顧客の声をダイレクトに回収できます。アンケートを活用することでプロダクトを改善し、より顧客のニーズを満たしたものが提供可能になります。
データ分析(レポート)
CRMツールでは蓄積された顧客データや活動データを、さまざまな切り口で抽出・レポーティングすることが可能です。また、レポートはグラフでの表示も可能です。たとえば、「20代、男性、関東在住の顧客が、直近1年で購買した履歴」を抽出することも可能ですし、「商品Aの売上構成を、年代×性別で見てみるとどうなるか?」といった分析も可能です。また、作成したレポートを定期的に自動配信することが可能なCRMツールもあります。
こうしたデータ分析を通じて、事業成長に向けたヒントや状況の変化などを掴み、施策につなげていくことができます。
データ可視化(ダッシュボード)
多くのCRMがレポート機能に加えて、複数のレポート結果や作成したグラフを、1枚の画面上に表示できるダッシュボード機能を持っています。ダッシュボード機能は、簡易なBIツールともいえます。
たとえば、顧客構造を一目で見たいということであれば、
- 顧客のエリア・年代・性別などによる内訳データ
- 直近の新規流入顧客数
- 一定期間にわたって購買がない休眠顧客数
- 休眠から復活した顧客数
- 購買金額の累計が一定以上になっているロイヤル顧客のアクティブ/休眠の比率
といったものを1枚の画面に入れると概況を把握することができるでしょう。
タスク・スケジュール管理
CRMツールには、タスク管理やスケジュール管理の機能も備わっていることが多いでしょう。一般的なグループウェアとの違いは、CRMのタスクやスケジュールは顧客情報と紐づけて管理される、作成すると自動的に顧客情報と紐づく、活動履歴に登録される点です。
これによって、「この顧客には、3カ月後に進捗の確認で電話してみよう」「○月○日に商品のデモンストレーションが決まった」「この顧客には、依頼された顧客事例をメールで送付した」といったデータがCRM内に蓄積され、かつ、タスクやスケジュールとして漏れなく管理されます。
ドキュメント管理
タスク管理やスケジュール管理と同じように、ドキュメント管理の機能もCRMに搭載されていることが大半です。CRMで管理されるドキュメントは、大きく2パターンあり、1つは顧客と紐づけて管理されるドキュメント、もう1つは顧客向けに準備されているドキュメントです。
前者は、たとえば、A社宛の見積書、B社向けの提案書、といった個別の顧客向けに作成・準備したドキュメントです。これを「いついつに提出した」といった履歴や顧客情報に紐づけて登録することで、後々フォローしたり、社内で情報共有したりすることが容易になります。
また、後者は標準的なサービス案内や顧客事例、競合比較といった顧客向けの資料です。CRM内で顧客向け資料を管理することで、「CRM上で顧客のAさんにサービス提案書をメールを送る ⇒ 送った履歴がAさんに紐づいて自動で残る ⇒ 資料の感想を伺う電話をかけるタスクを登録する」といった形で、インサイドセールスや営業の活動を効率化します。
CRMとSFA、MAの違い
顧客管理に関して、CRMとよく似た言葉が存在します。それがSFAとMAです。SFAとはSales Force Automationの頭文字を取った略語で、日本語では「営業活動自動化」と呼ばれています。またMA(Marketing Automation)はマーケティング活動で繰り返し行われる定型的な作業や、人手だと多大なコストと時間がかかる複雑業務を自動化し、効率的に行うためのツールのことです。これら三つはいずれも似て異なり、最も大きな違いはその目的です。
SFA:営業活動の組織化と効率化を支援
SFAは営業活動の組織化や効率化を支援するためのツールで、営業担当者が見込み顧客を管理し、営業プロセスを効率的に実行するための機能を提供します。
見込み顧客の情報や進捗状況、商談履歴などを一元化し、営業活動の計画やフォローアップの管理を支援するほか、見込み顧客の情報収集や営業スケジュールの管理、見積もりや契約の作成、顧客とのコミュニケーションのトラッキングなどの機能を提供します。
これにより、営業担当者が営業活動を効率的にスケジュールし、商談の進捗状況をリアルタイムで把握し、適切なフォローアップを行うことができるようになります。
SFAでもCRMなどと同様、営業活動自動化のために顧客情報を管理しますが、その目的はあくまでも営業活動の効率化です。営業の仕事は顧客リスト作成、テレアポ、提案書・企画書作成、訪問販売など多岐にわたりますが、これらのほとんどが繰り返し行われる作業です。SFAではこれらを自動化することで、営業担当者はその分を他の仕事に取り組み、売上向上を目指すのです。
MA:マーケティングプロセスの自動化と効率化を実現
MAはマーケティングプロセスを自動化し、効率的なマーケティング施策を展開するためのツールで、マーケティングキャンペーンの計画、実施、評価を自動化し、ターゲットユーザーに対してパーソナライズされたメッセージやコンテンツを提供します。
顧客の属性や行動データを基にセグメントを作成し、適切なタイミングでメール、ソーシャルメディア投稿、Webサイトコンテンツなどを自動配信するほか、顧客の反応や行動に基づいて自動的に追跡やフォローアップのタスクを生成し、マーケティングプロセスの効率化を図ります。
具体的例としては、MAを利用して、顧客に対して自動的にメールキャンペーンを実施することなどが一般的です。その際、顧客の行動(ex. Webサイトの訪問、特定のリンクのクリック)に基づいてターゲットユーザーをセグメント化し、個別のメールを送信しますが、このメールは顧客の興味やニーズに合わせてカスタマイズされており、特別なオファーや関連商品の情報を含んでいるためとても効果の高い施策です。
また、MAシステムは、メールの配信後の顧客の行動(ex. メールの開封、クリック)をトラッキングし、自動的にフォローアップのアクション(追加情報の提供、セールス担当者へのリマインダーなど)を生成します。
このように、MAが主に営業での業務効率化を目的としているのに対し、CRMはMAなどで獲得した顧客との良好な関係の構築を目的としています。つまり、新規顧客獲得関連の活動支援を行うのがMA、そして既存顧客関連の活動支援に用いられるのがCRMだというわけです。
CRM:顧客との関係性を強化し、顧客情報を管理
これらSFAやMAに対し、CRMは顧客との関係性を強化し、顧客情報を効果的に管理するためのシステムだといえます。
顧客データの収集・統合・分析を行い顧客との関係構築を支援するほか、顧客の購買履歴、行動パターン、コミュニケーション履歴などの情報を一元化し、これにより企業は個々の顧客に合わせたサービスやマーケティング施策を展開することができます。
CRMは顧客情報の更新や追加、セグメントの作成、顧客とのコミュニケーションの履歴管理などの機能を提供するため、顧客からの問い合わせに迅速かつ個別の対応を行ったり、セグメントごとに異なるキャンペーンを展開したりすることが可能になります。
このように、CRMは「顧客関係管理」という日本語訳が表す通り、顧客との関係を構築、さらには良好なものへと強化していくために顧客情報を管理し、活用するツールです。
要約すると、CRMは顧客との関係性を強化し、顧客情報を管理するためのツール。SFAは営業活動の組織化や効率化を支援するツールで、MAはマーケティングプロセスを自動化し、効率的なマーケティング施策を展開するためのツールになります。
これらのツールは相互に補完し合い、効果的な営業活動とマーケティング施策を実現するために活用されます。
CRM、SFA、MAを適切に組み合わせて使用することで、効率的なマーケティング活動や顧客との良好・強固な関係性の構築を実現することができるでしょう。
CRM、SFA、MAそれぞれの特徴と違いについては以下の記事もご参照ください。
CRMツールの導入メリット(効果)
CRMツールを導入することでどのようなメリットがあるでしょうか。改めて簡単に確認しておきます。
一気通貫した情報管理
1つ目は、一気通貫した情報管理を行える点です。
顧客の対応履歴情報がマーケティングやインサイドセールス、営業などの部署の垣根を超えて共有されていないケースも散見されます。そのため、最適とは言えない施策を施したり、フォローアップを行えていないことがありました。CRMツールでは情報を一気通貫して管理できるため、部署間での情報共有も自動的に実現し、常に最新の情報を元に、シームレスに顧客へのアプローチや適切なフォローアップが可能となります。
顧客満足度とLTV向上
2つ目は、顧客満足度とLTVの向上を目指せることです。
CRMツールで収集した顧客情報は、社内全体で共有できます。部署内、また場合によっては営業個人などで管理されていると、会社全体で適切なサービス提供が出来なくなります。たとえば、ある商材を提案して断られたばかりなのに、同じ商材のプロモーションを入れてしまうようなこともあるでしょう。また、インサイドセールスと営業、カスタマーサクセスで情報が連携されていなければ、同じことを何度も伝えないといけなくなったり、依頼したことが伝わらなかったりして顧客満足度は低下します。CRMツールを使うことでこうした問題は解決されます。
また、CRMツールで一元的に集約された顧客情報やデータをしっかりと分析することで、顧客の嗜好性を予測して、最適なタイミングで最適なコンテンツを最適な場所で届けられるようになります。これにより、顧客のリピートやアップセル、クロスセルが実現し、LTVと収益性の向上につながります。
グロースエンジンの実行・改善の高速化
3つ目が、グロースエンジンの実行・改善を高速化できる点です。
グロースエンジンとはPDCAのように「マーケティング施策の実行・検証・改善のサイクルを回すこと」を指します。CRMツールを使用することで、顧客情報が蓄積され、データを元に顧客の動向を分析し、プロダクト改善に役立てることができます。顧客の情報収集や購買行動がWebやアプリを中心となっている現在、データを蓄積して分析・検証・改善を実施するグロースマーケティングはビジネスの成長に欠かせません。
グロースエンジンについては以下の記事「グロースエンジンとは?」で解説していますので、ぜひご覧ください。
CRMツールの導入デメリット(課題)
CRMツールは「魔法のランプ」ではありませんので、導入することで生じるコストや工数、また導入の留意点もあります。デメリットとも言える部分もしっかりを把握・想定することで、より効果的な運用を目指しましょう。
導入・運用コストがかかる
CRMツールの課題1つ目は、導入・運用コストがかかる点です。CRMツールの種類は様々で、費用も異なります。発生する費用は製品によって異なりますが、初期費用+毎月の利用料で安くはない費用がかかってきます。
また、導入に際してかかるコストは費用だけではありません。社内にCRMツールの利用メリットを浸透させ、入力等がきちんと実施される、そして、活用されるようにするには、多くの時間を費やす必要もあり、人的コストも発生します。
運用に携わる人は、CRMの使い方をマスターしなければいけなく、使いこなせるようになるまでには、それなりの時間とリソースの確保も必要となるでしょう。また、CRMツールの効果が明確になってくるまでには時間がかかる場合もあり、結果を出すまでにはかなりのコストを投資する意思が求められます。
効果が出るまでに時間を要する
2つ目に知っておくべきは、効果が出るまでに時間を費やすケースも多いということです。CRMツールは導入してすぐに効果が現れるものではありません。中長期で運用してこそ効果を実感できます。
一方で、一番大変なのは導入のタイミングです。初期設定も必要となりますし、費用もかかります。さらに従来の業務プロセスからの変化を、関係する全員に共有し、入力などがスムーズに、また確実に実施されるようにケアされる必要があります。
このように費用や工数もかかってくると、早々に効果や結果を求める声も出てきます。運用上のポイントとして、すぐに成果が出そうな箇所を押さえておき、小さくても良いので早期の成功例を生み出すことは大切です。同時に、確固たる意志を持ち、成果が出ると信じて運用をやり抜くことも求められるでしょう。
入力や運用負荷が生じる
CRMツールを導入すると、入力や運用負荷が生じることも一般的です。とくに営業やインサイドセールスなど、既存顧客のケアに多くの人がかかわっている場合、そうした現場メンバーにとっては「入力しないといけないものが増える」「必ず入力してください」と言われることは負荷になります。
前述した通り、「CRMツールからメールを送ることで自動で顧客に紐づけられる」など生産性をあげる便利な機能を紹介していくことがポイントです。また、なるべく余計な負荷や二重入力が生じないように事前に調整しておくことが非常に大切です。
さらに外部データとの連携がしっかりしているCRMツールを選定して、基幹系に入っている購買データや既存で使っているMAツール内の行動データなど、データの同期や連携を自動化することで、データの入力や運用負荷を減らすことも重要です。
ありがちなCRMツール導入の失敗事例
マネジメントに使われず既存の管理方法に依存してしまう
インサイドセールスや営業などの人数が多い組織でCRMを導入した際に、起こりがちな問題がマネジメントに使われないケースです。たとえば、CRMを導入したのに、営業会議における受注の見込管理や顧客構造の管理が、従来までのエクセルやスプレッドシート、営業個人の手帳管理によってされている状態です。会議等もCRMのダッシュボードやレポートではなく、エクセルやスプレッドシートを見ながら会議が実施されます。
こうなると、営業にとってエクセルやスプレッドシートの更新とCRMツールの入力が二重になりますので入力負荷は大きくなり、日常のマネジメントで使われないCRMツールへの入力が進まなくなります。現場のマネージャーからも「CRMツールは意味があるのか?」といった声もあがりますし、データが入力されないと成果もあげにくくなります。
現場のマネジメント、会議に使われる資料をCRMツールを基盤としたデータに切り替えることはCRMツールの導入を成功させる上で何より重要です。
データの信ぴょう性がなく使われなくなる
2つ目の問題は、データの信ぴょう性です。上述したような経緯でインサイドセールスや営業の入力がされなくなると、例えば、顧客との接触や提案履歴、興味関心などのデータが欠落することになります。また、例えば、基幹系とCRMツールが同期しておらず、顧客のプロフィールや属性情報が最新データに更新されていなければどうでしょうか。法人向け事業であれば、従業員数などのデータが定期的に更新されていなければ信ぴょう性は減少していきます。
データ分析を元にマーケティングのヒントを見出したり、施策を打っていく際、データに信ぴょう性がない状態は致命的です。「半分ぐらいは入力されているけど・・・」や「あまり当てにならないんだよね」というデータを分析しても、意味ある結論は得られません。データがきちんと入力・更新される状態、最新データが自動で取得・同期されているような状態をつくることが重要です。
推進者の異動・退職によって活用が止まる
CRMツールの活用が定着し、事業運営とマーケティングに欠かせないツールという認識が定着した状態になれば話は別ですが、そこに至るまでのフェーズで、推進者が異動・退職してしまうとツール活用が一気に停滞することがあります。
CRMツールの導入から定着・活用は、数カ月で終わるものではなく、ある程度中長期的な展望を持って導入する必要があります。また、CRMツールを活用していく上で、導入初期はプロジェクトオーナーや現場の推進者の働きかけが非常に大切です。現場のマネジメントに協力者をつくり、成功事例を早期に作ることなども重要です。ビジョンを持った推進者がいなくなることで、こうした動きが一気に停滞してしまうのです。
CRMツール導入の3ステップ
ステップ1:システムの選定
CRMシステムを選定する際には、自社が必要とする機能やサービス、予算、導入期間、セキュリティ、システム利用者数などを明確にし、複数のCRMシステムを比較検討することが重要です。導入に当たっては社内の意見をまとめ、プロジェクトチームを組織して各部署や担当者間で調整することも不可欠です。
選定したCRMシステムを実際に導入する前には、トライアル版やデモ版を試用したり、実際に運用している企業の事例などを参考にしましょう。CRMツールの選定基準に際しては、後の章で詳しく紹介しますので参考にしてください。
ステップ2:導入準備
CRMツールの導入にあたっては、以下のような準備が必要です。
1.収集するデータの整備:CRMツールに必要なデータを整理し、不要なデータを削除することでシステムの効率化につながります。
2.データの移行方法の決定:既存のデータを新しいCRMツールに移行する方法を決定し、具体的なスケジュールを設定します。
3.システムのカスタマイズ:CRMツールを自社の業務に合わせてカスタマイズし、必要な項目や機能を追加することで、現場がより使いやすいシステムにすることができます。
4.ユーザーのトレーニング:CRMツールの使い方や操作方法を従業員にトレーニングすることで、システムの活用度合いが高まり、成果の向上や業務の効率化につながります。
ステップ3:アフターサポート
CRMツールの導入後には、以下のようなアフターサポートも不可欠です。
1.システムの保守や障害対応:システムの不具合やトラブルが発生した場合、いかに早急に対応できるかが重要です。事前にベンダー側などと保守契約やサポート契約を結んでおくことで、安心してシステムを運用することができます。
2.ユーザーからの問い合わせへの対応:ユーザーからの問い合わせや要望に対しても、迅速かつ適切な対応が求められます。ユーザーサポート窓口を設け、メンバーへの適切な教育やトレーニングを実施しておくことが、ユーザーの不満や問題の即座な解決につながります。
3.システムの改善やアップデート:CRMツール、とくにクラウド型のサービスは常に進化しています。新しい機能やサービスが追加された際には必要に応じてアップデートを行い、絶えずシステムを改善しておくことが必要です。
失敗しないCRMツールの選び方
CRMツールを導入する際には既存システムからのデータ移管や業務フローの調整、外部システムとの連携など、多くの工数や費用が生じます。本章では自社に適したCRMツールを選択するためのポイント、選択の基準となる情報を解説します。
クラウドorオンプレミス
CRMツールを、システム視点で大きく分けると、クラウド型とオンプレミス型に分けられます。クラウド型であれば、オンラインで提供されているSaaSサービスを契約して、データ等もオンライン上に保管する形です。一方で、オンプレミス型の場合は、自社で用意したサーバ上にシステムをインストールして構築する形です。
クラウド型のCRMツールは、初期費用が圧倒的に安い、小規模から始めてユーザー数等に応じてスケールさせやすい、ベンダー側でセキュリティやシステムの運用・保守を担保してくれる、常に機能がバージョンアップされていくといったメリットがあります。
規模が大きくなる(アカウント数が多くなる)と、ランニング費用はオンプレミス型よりも高くなることもありますが、初期費用の安さやバージョンアップ等のメリットが大きく、通信速度が飛躍的に向上した現在、CRMツールはクラウド型のものが主流になっています。オンプレミス型で構築する明確な理由がなければ、クラウド型のCRMツールを選択することが一般的でしょう。
国産or海外
CRMツールを提供者が国内ベンダーか海外ベンダーかという視点で分類することもできます。
国産のCRMツールは、開発元が国内だからこそ、カスタマーサポートが使いやすく、最新機能等も常に日本語対応して提供されるといったメリットがあります。一方で、各種ITツールやネットサービスが米国発でグローバル提供されているものが多いのと同じように、CRMツールも米国ベンダーが大半です。大規模に提供されているからこそ、外部ツールとの連携、バージョンアップの頻度、最近でいえばAIを活用したデータ分析やマーケティング活用などの先端機能への投資と実用化のスピードなどが圧倒的に優れています。
CRMツールは活用に向けたサポートやコンサルティングも重要ですので、日本法人がない、日本に信頼できる販売代理店がないといった海外ベンダーのCRMツールはリスクがあります。ただし、日本法人や代理店がしっかりあれば、国内/海外でこだわる必要はなく、機能面の充実度などから選択すればよいでしょう。
汎用型or特化型
CRMツールを見る視点として、汎用型と特化型という視点もあります。
汎用型というのは、業界や業種を問わず使えるCRMツールです。ノーコードで広範囲にカスタマイズできるようになっており、自社のビジネスに合わせて項目などをチューニングすることが出来ます。一般的なCRMツールは汎用型です。
一方で、特化型のCRMツールというのは、特定業界に限定して提供されているCRMツールです。特定業界に絞り込む分、汎用型と比べるとカスタマイズ性や提供規模、バージョンアップ等では見劣りしますが、はじめから業界固有のプロセス等に併せて開発されていますので、CRM実施における固有事情が多い場合などは、導入がスムーズとなる利点があります。たとえば、不動産や旅館・ホテルといった業種では、こうした特化型CRMツールが提供されています。導入を検討する際、自社の業界に特化したCRMツールがあるかは調べてみてもよいでしょう。
導入目的と必要機能
上述したようなシステムやコンセプト的な視点から先で最も重要なのが、導入目的と必要機能の照らし合わせです。CRMツールを何のために導入するのか。そのために必要な機能は何か。どれぐらいの顧客数を扱うのかを明確にして、選定に入りましょう。
導入目的や必要機能が明確になっていないと、多くの機能が揃っている方が良いCRMツールではないかと思ってしまいます。もちろん多機能であることは魅力の一つですが、多機能になるとコストも高くなってくることも多いでしょう。自社の必須機能は明確にしておきましょう。
なお、CRMツールは顧客情報と付随する様々なデータを蓄積して活用するもので、長期間にわたって使用します。従って、導入時点で解決したい課題や実現したいゴールと共に、中長期で実現したいビジョンも描いておき、その上でツールを選定すると良いでしょう。
他ツールとの連携や拡張性
前述したようにCRMツールを活用しようと思うと、外部ツールと連携させることが増えてきます。SFAやMAツール、また、基幹系や勘定系システム、ECサイトやアプリ、Webコンテンツを管理するCMS系のツール、SNS、また、DWHやBIツールなどです。こうした外部ツールとの連携機能をデフォルトで持っているとCRMツールだと将来的な利用拡張が容易です。
広い意味でCRMツールと言われるものの中には、特定の機能、たとえばメール配信機能やSNSマーケティング機能など、特定の機能にフォーカスしたようなツールもあります。短期的な課題解決やゴール実現には特定機能に特化したツールは安価で魅力的に見えますが、中長期でどんなCRMを実現したいかを考えてCRMツールは選択しましょう。
カスタマイズ性
候補となるCRMツールがいくつかに絞られてきたら、細かな点もチェックしていく必要があります。その一つがカスタマイズ性です。汎用的なCRMツールは、データのテーブル、項目、ワークフローなどを自由にノーコードでカスタマイズできます。自社の業務に必要なカスタマイズが出来るかを確認しましょう。
なお、クラウド型のCRMツールを導入する時、現状の自社業務を完璧にクラウド上に移管しようと思うと専用の開発が必要になることが多々あります。しかし、導入時点であまりカスタマイズをやり過ぎると、クラウド型CRMツールの魅力であるバージョンアップした機能が使えなくなることがあります。CRMツールに合わせて自社の業務フローを変えるぐらいの感覚を持っていると、CRMツールの導入・活用がスムーズになります。
使い勝手
CRMツールは、マーケティング、インサイドセールスなどをはじめ、さまざまなメンバーが触ることになります。また、マーケターにとっては日々触るツールになるでしょう。従って、感覚的な“使い勝手の良さ”も大切です。インサイドセールスやフィールドセールスなど、個別にデータ入力したり、モバイルから入力・閲覧したりするユーザーにとっては入力や個別情報の閲覧、逆にデータ分析などに利用するマーケターにとっては分析テンプレートや分析スピード、データ分析からアプローチ設定へのスムーズな連携などが重要でしょう。
CRMツールの多くはデモ環境が用意されています。少し手間はかかりますが、ある程度絞り込んだらデモ環境を準備してもらって、触ってみることも大切です。
サポート体制
CRMツールは、導入するだけでは成果は生まれません。しっかりと使いこなす必要があります。従って、活用のベストプラクティスを提供し、自社にあわせた運用を提案してくれるサポート体制は非常に重要です。
説明会や導入研修を行っても、実際に使い始めると細かな質問が沢山出てきます。社内の推進者と連携して活用をサポートしてくれる体制があることが大切です。また、カスタマイズの設定方法などに関して、Web上に情報がある、マニュアルやWeb上でのカスタマーサポートがしっかり提供されている等もポイントです。
セキュリティ
CRMツールには、顧客情報や購買履歴などの重要データを蓄積していきますので、セキュリティレベルは極めて重要です。高いセキュリティを求められる官公庁や大手金融機関での利用実績を始めとして、大手企業への導入実績が多くあればシステムのセキュリティ対策はある程度安心できるでしょう。
また、システム設定に加えてデータのアクセス範囲やエクスポート権限などアカウント権限の区分け、アクセスできるIPや期間の制限、多要素認証など、自社内での情報漏洩や不正アクセスなどを防ぐための機能があるかどうかも重要です。
費用
CRMツールの費用は、クラウド型の場合は、初期費用(イニシャル費用)+アカウントやデータ量などによる従量課金(ランニング費用)の組み合わせになっていることが大半です。
従量部分は、使える機能によってアカウント費用が違ったり、外部ツールとの連携にオプション費用が発生する、標準のデータ量を超えると追加費用が発生するなど、意外と複雑なこともあります。導入時点での想定費用に加えて、中期的なビジョンも踏まえて費用を検討しましょう。
なお、CRMツール自体の費用に加えて、導入時は既存ツールからのデータ移管、外部ツールやカスタマイズで生じる開発、ベンダーのツール勉強会への参加などで費用が発生することもあります。費用を見積もる際にはこの辺りも検討しておきましょう。
CRMツール導入時のポイント
CRM導入の際に、大切なポイントを3つ紹介します。
目的を明確にしてスモールスタートする
CRM導入の際は、まず導入目的を明確にしましょう。様々なCRMが存在しますので、目的にあった機能を兼ね備えているものを選ぶ必要があります。まず導入して考えながら運用する!といった方も見受けられますが、余りおすすめできません。目的が明確でなければ、ツール選択も適切になりませんし、運用していても次々と課題が出てきて疲弊してしまうでしょう。
導入の際にはスモールスタートを検討してみてください。CRMツールを初めて使うという場合、導入によってどのような変化が起こるか予測も困難でしょう。そのため、準備をしてから導入することはもちろんですが、最小限の規模でスタートすることで、仮にうまく運用できなかった場合のリスクを最低限に抑える、また、対象を絞ることで早期の成功事例も創出しやすくなります。
クラウド型のCRMツールであれば、初期費用は比較的安価ですし、スモールスタートにすることで運用費用も安くなります。アカウントの追加や蓄積するデータの追加は、後からでも実施できますので、CRMツールの活用はスモールスタートではじめることがお勧めです。
運用体制の構築
CRMツールを導入して結果が出るまでには時間がかかりますし、データの処理や運用にもある程度の体制が必要です。従って、しっかりと運営のできる社内体制を整えることは重要です。特に、スモールスタートから全社に展開する、また既存システムからの切り替えになる場合などは、社内全体で運用できるように体制を整えましょう。
CRMツールを最大限活用するためには、社内での共通認識が不可欠です。CRMツールを活用することで企業は顧客との関係性を強化し、長期的な利益を得ることができますが、そのためにはCRMツールを導入・活用する重要性を社内で共有することが必要です。
社内での周知に当たっては各部署の協力を得ることが重要です。特に営業部門やカスタマーサポート部門といった顧客と直接接触する部署は、CRMの活用に大きく関わってきます。これらの部署に対してCRMツールの導入の意義や活用方法を十分説明し、協力を得ることが必要です。CRMツールの活用によって得られるデータを各部署間で共有することで、より効果的な施策の実施につなげることができるでしょう。
分析・改善の繰り返し
CRMツールを活用して成果をあげるためにはデータ分析が欠かせません。顧客の属性や行動履歴などを分析することで顧客の嗜好や需要を把握し、それに基づいた的確な施策を実施することができます。
例えば、定期購入する傾向がある顧客に対しては、定期購入のオファーや割引を提供することで再度の購買を促すことができるでしょう。また、分析結果に基づいて新しいキャンペーンや商品を企画することも可能です。また、データを分析することで、特定の購買パターンやセット購入の傾向を見出すことも出来るかもしれません。このように、データを分析することで顧客との関係強化や売上向上につながるヒントを見出せます。
データの分析と改善施策の実行を、どれだけ素早く動かせるかがビジネスグロースの鍵です。CRMツールは利用期間が長ければ長いほど、データも蓄積し、より詳細な分析が可能となり、より効果的な施策を打つこともできるようになります。一度や二度分析・改善してやめてしまってはCRMツールが本来持つ力を最大限に利用できずに終わってしまいます。体制を整え、PDCAを高速に動かしていきましょう。
CRMの効果的な活用方法
CRMを活用する上では、以下3つのポイントが重要です。
定期的なデータ更新と分析
CRMを効果的に活用するうえで、データの定期的な更新と分析が欠かせません。まず、CRMには顧客の最新データが蓄積されていることが必要です。これにより、顧客のニーズや行動を正確に把握し、効果的なマーケティング戦略を立てることが可能になります。
また、データをただ収集するだけでは十分ではありません。集めたデータを定期的に分析し、分析結果をもとにマーケティング戦略を見直すことが重要です。
具体的な手順は以下の通りです。
1.CRMシステムに最新の顧客データを入力更新する
2.集めたデータを分析し、顧客の動向やニーズを把握する。
3.分析結果をもとにマーケティング戦略を見直し、必要に応じてアクションを起こす
このように定期的なデータ更新と分析を行うことで、CRMはより効果的なツールとなります。
顧客セグメンテーション
顧客セグメンテーションとは、顧客を特性や購買・行動履歴などで細分化して、それぞれのグループに対して最適化されたコミュニケーションを行う考え方です。CRMを効果的に活用するうえでは、顧客のセグメンテーションとターゲティング、セグメントに併せたアプローチが重要となります。
具体的には、顧客データをもとに以下のような観点で分析します。
・属性
・購買頻度・購買額
・利便性・満足度
・顧客のライフスタイル
・商品やサービスの利用状況
こうした情報を元に顧客をセグメントすることで、顧客のニーズに合わせた効果的なプロモーションが実現します。
パーソナライズされたコミュニケーション
CRMを活用する上で、目指す先はパーソナライズされたコミュニケーションです。顧客一人ひとりのニーズやタイミングに合わせたアプローチこそ、RMの真骨頂であり、顧客満足度とLTVの向上につながる活用方法です。
以下にパーソナライズされたコミュニケーションの例を挙げます。
顧客属性 | メッセージ内容 |
新規顧客 | 「初めてのご利用、誠にありがとうございます。」 |
リピーター | 「いつもご利用いただき、感謝しております。」 |
長期間利用なしの顧客 | 「久しぶりのご来店、お待ちしております。」 |
これらのメッセージは、CRMから得られる顧客データを基に作成します。これにより、顧客は自分だけに向けられたメッセージを受け取ることで、サービスへの満足度やロイヤルティが向上する可能性があります。
上記は基本的なパーソナライズですが、属性・購買履歴・行動データといったさまざまな軸によるパーソナライズを実施し、また、メール文章、Webサイトの表示コンテンツ、アプリの通知、キャンペーンの内容、リアル店舗での接客といった様々なタッチポイントで、パーソナライズされたコミュニケーションを実現していくことで、顧客は「自分に向けられたメッセージ」だと感じ、サービスやブランドへのエンゲージメントが向上するでしょう。
高機能なCRMツール「MoEngage」
CRMを成功させるには、顧客を中心にしたカスタマーセントリック(顧客中心)のマーケティングを展開していく必要があります。企業のキャンペーンは「売上を増やしたい」「利益率が高いサービスをプッシュしたい」「在庫のある商品を捌きたい」といった企業目線で行われてしまいがちですが、これではCRMは上手くいきません。
その中で「カスタマーエンゲージメントツール」という概念で注目されているCRMツールが「MoEngage」です。全世界で1,200以上のブランドに導入され、One to Oneマーケティングに取り組むうえで、非常に有効なツールとなっています。
MoEngageの大きな特徴のひとつは、現在のマーケターにとって不可欠なクロスチャネル&リアルタイム配信の機能です。CRMツールに蓄積されたデータを活かして、アプリ・WEB・メール・SMS・リターゲティング広告・SNSといった複数のチャネルで、顧客にパーソナライズされたアプローチを実現できます。
また、これを実践するうえで、マーケターの業務負荷を減らして生産性を高める多彩な分析チャートやAIを活用した自動セグメンテーションなどの機能も搭載されています。
ANAグループが提供してリリースから僅か1年半で90万人以上が利用する人気アプリとなった「ANA Pocket」では、MoEngageを活用したCRMによって、アップセル促進で月間の有料会員獲得を28%増加。また、休眠ユーザーの掘り起こしにも成功しています。どのようなCRMによって、上記を実現したのか詳しくは下記をご覧ください。
また、MoEngageに興味があれば、以下より詳細をご確認ください。
まとめ
CRMとは顧客関係管理のことで、顧客情報を管理・分析し、既存顧客と良好な関係性を築き上げ、売上向上を目指すアプローチです。共有された顧客情報を踏まえた部門横断のフォロー、顧客に合わせたパーソナライズされたアプローチ等を通じて、顧客のエンゲージメントを高め、リピート率やLTVの向上を実現します。
CRM自体は昔からある概念ですが、現在のCRMは、CRMツールを利用して実施されることが基本です。CRMツールを利用することで、顧客のプロフィール、購買履歴、問い合わせ履歴、提案や接触履歴、Webサイトやアプリ内での行動データなどを連携させて、CRMに生かせます。
また、CRMツール内に蓄積したデータを分析して、マーケティング施策に生かすことで効果的なプロモーションを実現したり、商品やサービスの開発・改善につなげたりすることもできるでしょう。
CRMツールは魔法のランプではありませんので、導入してもすぐには効果は現れません。自社の導入目的や状況を踏まえてしっかりとCRMツールを選定し、中長期的な目線で根気強く運用することが重要となります。
効果を最大限引き出すためにはCRMツールの使い方をマスターする必要があります。単なるツールの機能説明だけではなく、自社のマーケティングにどう生かすかという視点で提案してくれるカスタマーサポートや販売代理店があると、CRMツールの効果を最大化できるでしょう。
当社では主にBtoC向けにCRMを促進するツールのご紹介や運用のご支援をしております。CRMに課題を感じている方はお気軽にご相談ください。