LTVを最大化するには?3つの方法や事例を解説【.LTV】

2023.12.18

LTV(Lifetime Value:顧客生涯価値)とは、ある一定期間を通じて得られる顧客一人当たりの売上や利益を意味します。LTVを最大化することで、顧客の購買頻度や取引期間を延ばすことができ、ビジネス上大きなメリットがあります。本記事ではLTVを最大化するための3つの方法やツール、そして実際の事例を紹介します。

LTVを最大化させるメリット

少子高齢化が進む日本では現在、人口の減少が進んでおり、新規顧客獲得が困難になっています。マーケティング施策のターゲット層の母数が多く、その数%でもコンバージョンに繋がればよかった従来と違い母数が小さくなったことに加えて、インターネットが普及したことで世界中の競合と戦わなければいけなくなり、商品の差別化も困難になっています。

このため顧客にとっては、類似の商品があればいかに低価格で購入できるかが購買時の選択基準となっており、企業がマーケティング活動の一環として新規顧客獲得を目指すとき、その費用対効果が見合わなくなってきました。

そんな中、効率的にマーケティング活動を行っていくための指標として重要視されるようになった指標がLTVです。LTV最大化を目指す中で、具体的には以下のようなメリットが見込まれます。

  1. 長期的な収益性の向上:顧客の取引期間を延ばすことができ、長期的な収益性が向上することが期待できます。
  2. 市場シェアの増加:顧客ロイヤリティを高めることができ、市場シェアを増加させることができます。
  3. 販売促進効果:購買頻度を上げることができ、販売促進効果を得ることが期待されます。
  4. 顧客獲得・維持コストの削減:顧客獲得や顧客維持にかかる費用を削減することができ、コスト削減効果を得ることができます。
  5. 顧客単価の向上:顧客単価を上げることができ、収益性を向上させることができます。

欧米におけるLTV最大化メリットの解説については こちらこちら で解説されています。

LTVの計算方法

LTVは、ある一定期間を通じて1顧客から得られる売上や利益です。LTVは以下の式で求めることができます。

LTV = ①購買単価 × ②購買頻度 × ③継続購買期間

LTVの算出方法

LTVを最大化する3つの方法

LTVは上記の計算式で求められますので、それぞれの要素を最大化することで、LTVを最大化することができます。

そのため、以下3つの方法が有効です。

①購買単価を上げる

1つ目は購買単価を上げる、です。

購買単価とは、顧客が1度に購入する金額です。店舗であればレシート1枚に記載される金額、ECサイトであれば注文時にカートに入っている金額、サブスクリプションサービスであれば月額費用がこれに当たります。

購買単価は更に以下の3要素から成ります。

購買単価 = a.商品単価 × b.購入点数 × c.購入アイテム数

そのため、購買単価を高めるためには上記のa.~c.を高める施策が必要になります。

a.商品単価を上げる

これは商品自体の価格を上げる施策です。

100円の商品を120円にするなどの値上げになります。

代表的な手法としては以下が挙げられます。

・既存商品をグレードアップして値上げする
・プレミアム版等の上位商品を作る
・パッケージサイズを大きくする
・高品質の素材を使用した商品を販売する
・ブランド力のある商品を販売する

b.購入点数を増やす

これは顧客が購入する商品点数を増やす施策です。

100円の商品を1点だけでなく2、3点や10点まとめて買ってもらうということです。

代表的な手法としては以下が挙げられます。

・同じ商品をまとめて売るバンドル販売を行う
・複数の同じ商品や他の商品がセットになった商品を販売する
・商品のカラーや種類のバリエーションを増やす

c.購入アイテム数を増やす

これは顧客が購入する商品数を増やす施策です。

100円の商品と一緒に、50円や200円の別の商品も買ってもらうということです。

代表的な手法としては以下が挙げられます。

・​​クロスセルやアップセルを行う。例えば、購入を検討している商品の上位版や、他の関連商品をオススメする
・異なる種類の商品を組み合わせたギフトセットを販売する
・ポイント還元制度を導入し、より多くのポイントを貯めるために複数商品を購入するよう促す
・購入履歴に基づいたパーソナライズドなオススメ商品を提示する

ただし、商品単価を上げることは顧客ロイヤリティを損なう可能性もあります。顧客が高い価格を払っても、満足しない場合は顧客が離れる可能性があります。そのため、商品単価を上げる前には、顧客ニーズや欲求を把握し、それに合った高品質な商品やサービスを提供することができるかどうかを確認し、顧客ロイヤリティを維持するための工夫をすることが重要です。

②購買頻度を上げる

購買頻度を上げることでLTVを最大化するためには、顧客にとって魅力的な特典やサービスを提供し、顧客を魅了することが必要になります。購買頻度を上げることで、顧客が長期間にわたって取引を続け、LTVが向上することが期待できます。

例えば、会員制のプログラムを提供し、会員限定のセールや割引などを提供したり、クーポンや割引券を配布して次回購入を促すことで、顧客が頻繁に購入をするよう促すことができます。

購買頻度を上げるには、製品やサービスの使用方法やアドバイスなどを提供することで、顧客にとって魅力的なアフターサービスを提供することも重要です。これによって、顧客が製品やサービスを頻繁に使用し、購入を繰り返すようになることが期待できます。

③取引期間を延ばす

取引期間を延ばすことでLTVを最大化するためには、顧客にとって魅力的なサービスを提供し、顧客ロイヤリティを高めることが必要になります。顧客が長期間にわたって取引を続けることで、顧客の収益が上昇し、LTVが向上することが期待できます。

例えば、顧客の購入履歴や興味に基づくパーソナライズ化された割引クーポンや、プレミアム会員限定のコンテンツや特典といった、顧客にとって魅力的で、競合他社よりも優れた体験を提供することで、顧客の取引期間を延ばすことができます。

顧客にとって魅力的なサービスを提供することで、顧客ロイヤリティを高めることができます。例えば、カスタマーサポートが丁寧なことや、配送が迅速であること、製品に関するアドバイスなどを提供することで、顧客が長期間にわたって取引を続けるように促すことができます。

また、顧客にとって魅力的なアフターサービスを提供することで、顧客が製品やサービスを長期間にわたって使用するようになり、購入を繰り返すようになります。例えば、保証期間が長いこと、製品のアップグレードやアップデートを提供すること、アフターケアなどを提供することで、顧客が長期間にわたって取引を続けるように促すことができます。

取引期間を延ばすには、顧客にとって魅力的なカスタマーエクスペリエンスを提供することが有効です。顧客にとって満足感を持って頂けるように、顧客の声を聞き、顧客のニーズや欲求を把握し、それに対して対応することで、顧客ロイヤリティを高め、顧客が長期間にわたって取引を続けるように促すことができます。

LTVの計算方法および「取引期間」の重要性については以下の記事で詳しく解説しています。

LTV最大化に役立つツール

LTV最大化に役立つツールとしては、行動分析ツールやカスタマーエンゲージメントプラットフォームなどがあります。

  1. 行動分析ツール:Amplitude(アンプリチュード)などのツールを使用し、顧客の取引履歴や行動履歴を追跡することで、顧客の購入傾向や消費行動などを分析し、顧客のニーズや欲求を把握することができます。

行動分析ツールは、顧客の過去の購買履歴を分析し、購買頻度の低い顧客を特定して購買頻度を上げるのに有効な施策につなげることに役立つほか、顧客が商品やサービスを使用している期間や、契約期間に関するデータを分析することで、取引期間を延ばすための最適な戦略策定を立てる上で重要になります。

  1. カスタマーエンゲージメントプラットフォーム:BrazeMoEngageなどのツールを使用し、顧客の取引履歴や行動履歴を統合し、顧客のセグメンテーションを行うことで、顧客に対して適切なターゲティングを行うことができます。

カスタマーエンゲージメントプラットフォームはターゲットとなる顧客に対し、商品購入前や購入後にターゲティング広告やプロモーション、リマインダーなどを行うことで購買単価を上げたり、リピート購入を促進して購買頻度を上げることができます。

このほか、CRM (Customer Relationship Management) システムもLTV最大化に役立ちます。 SalesforceZoho CRMなどのシステムを使用することで、顧客情報を管理し、顧客との関係を深めることができます。顧客に対してパーソナライズされたターゲティングやプロモーションを行うことができ、顧客ロイヤリティを維持しLTVを最大化することができます。

これらのツールやシステムを使用し、LTVを最大化するために、顧客ニーズや欲求を把握し、顧客ロイヤリティを高め、収益性を上げることができます。

LTV最大化に役立つCRMシステムについては以下の記事もご参照ください。

LTV最大化の鍵は「ロイヤルカスタマー」への訴求

LTV最大化において、鍵となるのは「ロイヤルカスタマー」への訴求です。ロイヤルカスタマーとは、長期間にわたって取引を続けている顧客のことです。

ロイヤルカスタマーには高い顧客ロイヤリティがあり、購入を繰り返すため一般的にLTVが高くなります。そのため、ロイヤルカスタマーへの訴求は、LTV最大化において最も重要な鍵であると言えます。

マーケティング法則として有名な「パレートの法則」によると、上位20%の顧客が売上の8割を構成していると言われます。顧客との継続的な関係を構築し、その20%に該当する企業・商品・サービスのファンであるロイヤルカスタマーへ訴求することが、LTV最大化の一番の近道です。

LTV最大化の鍵となるロイヤルカスタマーについては以下の記事で詳しく解説しています。

LTV・顧客ロイヤリティ最大化のポイントと事例

LTV・顧客ロイヤリティを最大化する上で、一番重要なポイントは、「顧客に対する魅力的なカスタマーエクスペリエンス(CX)」を提供することです。顧客は魅力的なCXを通じて顧客ロイヤリティを高め、それが長期間にわたる取引につながります。

魅力的なCXを提供するためには、顧客ニーズや欲求を把握し、適切な顧客をターゲティングすること、顧客に対して高品質な製品やサービスを提供すること、顧客に対してスムーズな取引体験を提供すること、顧客に対して快適なアフターサービスを提供することが重要です。

また、顧客に対してパーソナライズされたコミュニケーションやプロモーションを行うことも重要です。顧客に対して個別にアプローチし、顧客のニーズや欲求に合ったプロモーションを行うことで、顧客ロイヤリティを高めることができます。

以上のように、顧客に対する魅力的なCXを提供することがLTV・顧客ロイヤリティを最大化する上で最も重要なポイントであり、長期的なビジネス成功を得るために必要な戦略です。

顧客への魅力的なCXの提供については以下の記事もご参照ください。

LTV最大化の3要素のうち、購買単価と購買頻度を上げることに寄与した具体的な事例としては「アプリユーザーの店舗への来店を増やしたい」という目的で、DearOneがPLAZA・MINiPLAを運営する株式会社スタイリングライフ・ホールディングス プラザスタイル カンパニー様と取り組んだOMO(Online merges with Offline)のグロースハック事例があります。

Amplitudeでリアル店舗も含めた購入者全体を「アプリを利用しているか」、「利用していないか」で分けて、一人あたりの購入金額と購入回数を比較してみたところ、アプリを利用しているユーザーは、アプリを利用していないユーザーに対して、一人当たりの平均購入金額、一人あたりの平均購入回数ともにアプリ利用者の方が多いというデータが出ました。

この分析結果により「アプリ利用者はロイヤルユーザー化する」という定量的な事実が確認できました。

またAmplitudeの「コンパス」というチャートを使って、「アプリユーザーの店舗での購入につながる行動はどのようなものか」を分析したところ、ホームのクーポンをタップした後は非常に高い遷移率でクーポン利用まで行っていることがわかりました。

そこで「ホームのクーポンをタップ」のタップ率を高めることによって、店舗で使えるクーポンをもっと認知してもらえば、来店促進に結びつけられるのではないかと考えた結果、UI/UXの観点から下記のようなご提案につながりました。

[A]クーポンバナーを押してない方にPUSH通知でお知らせする

[B]クーポンバナーを押してない方にアプリ内メッセージでお知らせする

[C]バナーのサイズやデザインを変更し、クーポンバナーの視認性を上げる

このように、

  1. アプリ利用者のロイヤル化を定量データで把握
  2. 購入につながるユーザー行動の把握から促進案の提示

することによって、実際のLTV・顧客ロイヤリティ最大化施策につなげることができました。

詳しくは下記の記事をご覧ください。

まとめ

・LTVを最大化させるメリットは

  1. 長期的な収益性の向上
  2. 市場シェアの増加
  3. 販売促進効果
  4. 顧客獲得・維持コストの削減
  5. 顧客単価の向上

・LTVの計算方法は

サブスクリプションの場合: LTV=顧客単価×100/解約率
BtoCの場合: LTV=購買単価×購買頻度×継続購買期間

・LTVを最大化する方法は

  1. 顧客単価を上げる
  2. 購買頻度を上げる
  3. 取引期間を延ばす
  4. 粗利率を上げる
  5. 獲得コスト&維持コストを下げる

・LTV最大化に役立つツールは

行動分析ツール

カスタマーエンゲージメントプラットフォーム

CRMシステム など

・LTV最大化の鍵は

ロイヤルカスタマー」への訴求

・LTV・顧客ロイヤリティ最大化のポイントは

顧客に対する魅力的なカスタマーエクスペリエンス(CX)」の提供

LTVについては以下の各記事もご参照ください。

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