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バーチャルエンターテイメントの世界は誰でも参入可能【海外Hot Info】vol.11

2021.12.01

今回はクリエイターに焦点を当て、「NFTやメタバースの世界で活躍するクリエイター」について、株式会社トラストバンクの森杉育生さんにお話を伺いました。

エンタメにとって欠かせないインタラクティブ化。企画とコンテンツがあれば、誰でも参入できる

バーチャルコンサート

三石所長(当時。以下、三石) 今日もよろしくお願いします! 前回バーチャルコンサートについてもお話いただきましたが、エンターテイメント業界において、今どのような変化を感じているのか、まずお伺いできますか?

森杉さん(以下、Mr.モリスギ) ユーザーがデジタル空間におけるライブやエンターテイメントに関与していけるサービスやプロダクトが増えてきたように感じます。たとえば、バーチャルライブ中に次に演奏する曲をオーディエンスの投票でリアルタイムに決めたり、Zoomで自分が踊っている様子をバーチャル空間の中で再現してくれたり。ユーザーが参加して盛り上がるのは昔からエンターテイメントの基本ではありましたが、そうしたインタラクティブ型(双方向に情報発信すること)への移行が、ここ数年でもの凄く進化したように感じます。

三石 なるほど! バーチャルエンターテイメントでは、ユーザー自らが選んだりコミュニケーションを取ったりするような楽しみ方が当たり前になってきているということですね。

Mr.モリスギ Netflixでも、選択肢によってストーリーが分岐するというような、視聴者参加型のコンテンツが生まれています。FacebookとGenvidが提供しているRival Peakというインタラクティブ動画の作品では、登場するキャラクターが全員AIなんですが、その次にとるべき行動を視聴者の投票で決めることもできます。

三石 そのバーチャルエンターテイメントの進化を底上げしている要因は、どこにあるのでしょうか?

Mr.モリスギ 一言で言うと、インフラが整備されたことでしょう。たとえば、FortniteやRobloxのようなデジタル空間上で自由度の高いゲームやコンテンツが製作できるプラットフォームを作るとなると相当大変です。一方で、インタラクティブな動画を作って配信するだけなら、サービス開発のハードルを下げられるようなソリューションが出てきています。

インタラクティブな動画を作るためには、大きく2つの要素が必要です。1つめは、遅延のない動画配信のインフラです。クラウドでゼロから作るとなると大変ですが、動画のアップロードやエンコード、リアルタイム配信まで、開発者向け動画プラットフォームに全てのパイプラインを任すことができます。その分野で代表的なのが MUX です。

2つめの要素がチャットや投げ銭、投票などのいわゆるインタラクティブ機能ですが、こちらも実装を楽に行えるソリューションがあります。代表的なものとして、「Maestro」や「Genvid」がそれに当たります。

このMUXとMaestroを組み合わせることで、Twitchのようなインタラクティブなライブ配信プラットフォームを作ることができます。たとえばSessions Liveという音楽コンサートのライブ配信プラットフォームは実際に上記2つのサービスを使って実装されています。

三石 インフラにそこまで投資しなくても、ちゃんとしたものが作れるようになってきていると。あらゆる人がバーチャルエンターテイメントに参入しやすい環境ができ始めていますね!

Mr.モリスギ 企画とコンテンツ以外のインフラはかなり揃っている状況なので、頑張ればインタラクティブなサービスは誰でも作れます。インフラにリソースを割く必要がない分、アーティストの獲得をどうするかとか、ファンがどうやって応援することができるようにするかというビジネスの核のところにフォーカスできます。
こうしたインタラクティブ型は、おそらくエンタメ業界だけでなくあらゆる業界で標準的になっていくでしょう。たとえばB2Bで製品を発表するオンラインカンファレンスのようなビジネスの場所でもどんどん使われていくと思います。トラディショナルな会社こそ、この流れを見逃してはいけません。「エンタメ世界の話でしょ」といって一線を画していては、乗り遅れてしまうでしょうね。

≪三石所長(当時)`s Memo≫

インタラクティブ型コンテンツを作るためのインフラ環境は、すでに整っている! 企画力とコンテンツ力があれば、誰でもバーチャルエンターテイメントに参入できる

メタバースの世界で活躍するクリエイターになるために、欠かせない資質とは?

メタバース

三石 簡単にコンテンツやサービスが作りやすくなったことで、クリエイターにも影響が出ているのではないでしょうか? クリエイターと非クリエイターという境目がなくなっていて、プロフェッショナルではない一般の人が参入しやすくなっている気がします。

Mr.モリスギ その通りで、これからは「一億総クリエイター時代」が来ると思っています。むしろ現実は既にそうなっていきていますね。クリエイターという定義はすでに非常にあやふやになっていますし、「クリエイターエコノミー」という言葉があるように、「クリエイターが経済を作っていく」という考え方も生まれています。

三石 そうなっていくと、バーチャルとはいえコミュニケーション力を磨くことが重要で、自己表現や発信ができることが非常に大切になってきそうですね。

Mr.モリスギ ただ、オンラインで喋れるようになる必要は必ずしもないのかなと思っていて。NFTアートが数億円で売れるようなアーティストでも、もの凄いコミュ障の人がいたりするんですよね。要は、自己表現できる場所さえあればいいのかなと。TikTokでも音声読み上げ機能が流行ってますし、AIで文章生成できますし、かっこいいアバター作って、合成音声でイケボにしゃべらせたら、現実世界のコミュ力余裕で超えれますよね。

三石 なるほど。今まで「コミュニケーション力」というと、プレゼンの場で流ちょうに喋ることができるとか、笑顔が素敵でとか、そういったイメージがありました。それに限らず、オンラインの中でも発信力を磨くことで活躍できる可能性が大いにあるということですね。

Mr.モリスギ そういう意味では、これからのクリエイターはAIと3Dモデリングをどれだけ使いこなせるかがカギになってくると思っています。
たとえば「GPT-3」といって、僕がブログを100個書いたら、それを学習してテーマを与えると僕っぽい文章を書いてくれるAIも登場しています。しかも、人間が書いたものかAIが書いたものか判別がつかないくらい精度が高いんです。
文章作成やコピーライティングはAIに任せられるレベルまで来ていますから、自分は「どんなコンテンツを届けるか」という部分を考えることに集中できます。なので、AIの最新技術をキャッチアップしてコンテンツ製作に使える人はきっと差別化できると思います。そして、それをビジュアル的に表現する形として3Dアバターやオブジェクトがあります。
「シンセティック・ヒューマン(合成人間)」と言われる、AIで製作したコンテンツやストーリーを3Dアバターが自分の代わりに認知を獲得して人気を得ていく、そんな動きが生まれています。これからは、エンジニアリングとアートとインフルエンサー的な要素をうまく組み合わせられるクリエイターが求められるようになっていくと思います。

≪三石所長(当時)`s Memo≫

これからのクリエイターには、AIを使いこなす能力(エンジニアリング)と、アートとインフルエンサー的な要素を組み合わせる能力が求められていく!

コンテンツとドロップ文化を組み合わせて、唯一無二のブランドを作ることが可能に

ブランディング

三石 前回登場した、限定することで商品の価値を高めるドロップ文化と質の高いコンテンツを組み合わせることで、大きな収益を上げられる可能性は飛躍的に高まりそうですね! 成功している事例があれば、お伺いできますか?

Mr.モリスギ 一つがMSCHF(ミスチフ)です。これがなかなか一言では表現しきれないような面白い会社なのですが、彼らは2週間に1回という頻度で全く新しいプロダクトやマーケティングキャンペーンを行っています。
MSCHFのすごいのが、プロダクトがしっかりバズり場合によっては瞬殺で売り切れてしまうこと。私もいくつか購入しようとチャレンジしましたが、買うことができませんでした。

三石 それはすごい! 「ここが出すものは絶対面白い!」というブランディングというか、ポジショニングが確立しているんですね。

Mr.モリスギ たとえばMSCHFがNIKEの靴をカスタマイズして販売し、話題になったことがありました。靴のソールのエア部分にキリストが洗礼を受けたというヨルダン川の水を入れたエアマックス’97を作って「ジーザスシューズ」と名付けて販売したんです。
初期販売価格1,425ドル(約15万円、聖書のマタイによる福音書14章25節にちなんでいます)で、24足限定でリリースして瞬殺(1分)で売り切れています。これが後ほどプレミアついて一時4000ドル(約44万円)まで高騰しました。しかも面白いのが、これをNIKEに黙ってやったことです。

三石 それは危ない(笑)。

Mr.モリスギ 後ほどリル・ナズ・Xと一緒にSatan ShoesというこれまたNIKEに黙って作った靴を限定666足で出したら、訴えられたんです。でも、訴えられるところまで織り込み済みなんですよ。

三石 訴えられたら話題になるから、どうしても注目が集まりますよね。なるほど、すごいな、それは。

Mr.モリスギ もう一つの事例がSuperplasticです。この会社では、オリジナルデザインのデジタルキャラクターによるタレント業、グッズ販売(アートトイやファッションアイテム)、デジタルキャラクターが登場するメタバース世界を組み合わせた事業を行っています。
Superplasticは、ジャンキーとグギモンというデジタルタレントをベースに、NFTやアートトイを限定数量販売しています。いつも100体〜500体くらいの限定なんですが、軒並み売り切れています。Fortniteにデジタルタレントがプレイできるキャラとして登場したり、アーティストのGorillazとコラボしたアートトイを出したり、面白いコラボも多数やっていてファンを飽きさせないような工夫もしています。

≪三石所長(当時)`s Memo≫

作ったコンテンツとドロップ文化を組み合わせることで、競合に打ち勝つ強いブランディングが可能に

三石 アイデア次第で、すでにあるものが形を変えてさまざまな切り口で販売されているんですね。今回も、すごく面白い話をたくさん伺うことができました! 今後、レガシー系企業がどんな風に対応していくのか、注目していきたいと思います。森杉さん、今回もありがとうございました!


―次回の【海外Hot Info】も、ぜひお楽しみに!

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