マーケティングにおいて、アンケートは貴重なユーザーの声を探るための重要な手法です。自社の商品やサービスに関するユーザーのリアルな意見や要望を把握するためには、アンケートを適切に実施し、その結果を的確に集計・分析することが不可欠です。
商品開発や施策の向上に向けて、アンケート結果を最大限活用するためには、自社のビジネスニーズに適したアンケート戦略を構築することが重要です。アンケートの効果的な集計・分析を通じてユーザーの声を正確に把握し、戦略の質を向上させることで、持続可能な成果をもたらすマーケティング戦略を展開することができます。
アンケート分析の基本ステップ
目的の設定
アンケート調査を行う際には、まず調査の目的を明確に設定することが必要です。最初の目的設定が明確でないとアンケートの作成や実施、分析がうまくいかない可能性があります。この目的の設定によって、どのような情報が必要か、どのような質問をするか、どのような人にアンケートを回答してもらうかなど、様々な要素が決まってきます。
例えば、製品の開発に関するアンケート調査を行う場合、ニーズや顧客の要望を把握することが目的となるでしょう。その場合、どのような人にアンケートを回答してもらい、どのような質問をするかが重要になります。また、目的に合わせアンケートの結果をどのように活用するかも考える必要があります。
このように目的の設定は、調査の成功に大きく関わるため、十分な時間をかけて慎重に行うことが必要です。また、目的達成のために必要な情報を事前に明確にすることには、アンケートの回答者にとっても回答がしやすくなるというメリットがあります。
質問の調整とアンケートの実施
アンケート分析において、質問の調整とアンケートの実施はとても重要なステップです。まず、アンケートの目的を明確にしたら、目的に合わせた質問項目を設定する必要があります。
質問の種類には、選択肢式、自由記述式など、定量的なものや定性的なものがあります。選択肢式は回答率が高く、定量的なデータを収集することができます。一方、自由記述式などの定性的な質問からは、ユーザーの意見に関する深い洞察を得ることができます。
さらにアンケートの実施には、十分な調査人数や適切な調査対象者の選定が必要です。調査人数が少なすぎると正確な結果を得ることができないため、十分な人数を設定・確保することが重要です。また、調査対象者の選定は、調査の目的や対象とする属性に合わせて厳密に行う必要があります。
以上のように、アンケート分析においては質問内容の調整と、適切なアンケート実施に注力することが欠かせません。適切な質問や調査対象者の選定により、より正確な結果を得ることが可能です。
アンケート結果の集計と分析
設定したアンケート調査の目的を達成する上で、アンケートをただ実施するだけでなくその結果を集計・分析することが不可欠なステップとなります。アンケート集計の際のポイントとしては、全体から細部にかけて順番に見ていくことや、データの有意性を考慮することなどが挙げられます。
アンケート集計の方法としては単純集計、クロス集計、自由記述集計があります。単純集計は単一の質問項目に対する回答を集計し、グラフ化することで結果を可視化するものです。クロス集計は複数の質問項目を組み合わせて分析し、相互に関連する結果を導き出す方法です。そして自由記述集計は、回答者が自由に意見を述べた部分を集計・分析する方法であり、テキストマイニングなどの手法が用いられます。
アンケート結果を深く分析するために、後述するクラスター分析、アソシエーション分析、主成分分析、決定木分析などの手法があります。これらの分析手法は、いずれも複数の質問項目を組み合わせて、より詳細な分析結果を導き出すことができるものです。
以上のように、調査の目的を達成するためにはアンケート結果の集計と分析が重要になります。目的に合わせ適切な集計方法や分析手法を選択し、正確な結果を導き出すことが大切です。
アンケート集計・分析の基本ステップ
商品開発や施策の改善を推進するためには、以下のステップを通じてアンケートの集計・分析を行いましょう。
- アンケートの設計と目的の明確化: アンケートを設計する際には、明確な目的やターゲットオーディエンスを定義します。参考記事に示されているように、アンケートの目的に合った質問項目やスケールを選定しましょう。
- データ収集の計画と実施: アンケートの信頼性を確保するために、適切なサンプルサイズを設定し、ランダムサンプリングを行います。また、異なる参照先からの情報を活用して、多様なユーザーの意見を収集することが重要です。
- データの整理と分析: 収集したデータを整理し、定量的な数値データと定性的なコメントを組み合わせて分析します。傾向や優先事項を把握することで、戦略の方向性を明確にすることができます。
- 洞察の抽出と戦略への反映: 分析結果から得られた洞察を引き出し、戦略や施策に反映させることが肝要です。ユーザーの声を基にした改善策を導入することで、顧客満足度を向上させ、市場での競争力を高めることが可能です。
- 持続的な改善と追跡: アンケートは単発的なものだけでなく、定期的な実施を通じて変化するユーザーの意見や需要を追跡しましょう。市場状況やトレンドの変化に即応して、戦略を適宜調整することが成功のカギです。
以上のステップに沿って、自社のビジネスニーズに適したアンケート戦略を構築しましょう。アンケートの効果的な集計と分析により、ユーザーセンタリティを高め、持続可能な成果をもたらすマーケティング戦略を展開することができます。
アンケート分析の方法
アンケート分析には、主にクラスター分析、アソシエーション分析、主成分分析、決定木分析の4つの方法があります。
クラスター分析
クラスター分析とは、マーケティングや市場調査において大量のデータから似た特徴をもったものを集め、グループ化するデータ分析手法です。クラスター分析により、アンケート調査の回答結果などを分析し類似した傾向をもつ回答者をグループ化することで、顧客のニーズや嗜好を把握しターゲット層を特定することができます。
クラスター分析の種類には、階層クラスター分析と非階層クラスター分析があります。階層クラスター分析は、データを木構造の階層に分類する方法で、似た属性を持つデータは同じグループに属し、データが似ているほど同じグループに分類されます。一方、非階層クラスター分析は、あらかじめクラスター数を決め、その数だけグループを作成する方法で、階層クラスター分析よりも高速で処理が可能です。
クラスター分析は、顧客セグメンテーションやマーケティング戦略の立案などに有用な手法とされています。
アソシエーション分析
アソシエーション分析とは、あるアイテムと他のアイテムの関連性を分析する手法です。例えば、ある商品を購入した人が他の商品も購入しているかどうかを調査することができます。
例えば、あるスーパーマーケットで買われた商品のデータに対して、アソシエーション分析を用いてどの商品がよく一緒に購入されるかを調べることができます。「ある顧客がトマトを買った場合、その顧客はどのような商品を一緒に買っている傾向があるのか?」、「コーヒーを買った人は牛乳も買いやすい」といった関連性を見つけることができます。この結果を元に、トマトと一緒に買われる商品をセットで販売したり、コーヒー・牛乳・パンのセット商品の販促施策を行うなどして売り上げを伸ばすことが見込めます。
このようにアソシエーション分析は、主にマーケティングや小売業界で、商品のセット販売や販促キャンペーンの効果測定、カート分析などの用途に広く使われています。
主成分分析
主成分分析とは、多数の変数から情報を抽出するための手法です。多数の変数(=主成分)がある場合、それらを全て分析するのは難しいため、変数の数を減らして分析を行います。
例えば、ある企業の商品に関するアンケート調査があったとします。質問項目は20個あり、それぞれの質問に回答する人数が数百人に及びます。このような場合、20個の質問に対する回答をすべて分析するのは非常に困難です。ここで、主成分分析を使えば、元の20個の質問を数個の新しい変数に変換し、その新しい変数だけで分析を行うことができます。
このように主成分分析は、複雑なデータを扱う場合に有用でデータ解析やマーケティング分野などで多用されています。
決定木分析
決定木(ディシジョン・ツリー)分析は、複数の変数に基づいて分類や予測を行うためのモデルです。この手法では、データの中から最も重要な変数を見つけ出し、その変数に基づいてデータを分割します。この過程を繰り返し、木構造(=樹形図)を形成していきます。最終的に、各ノード(末端)における分類結果や予測結果が得られます。
例えば、あるスポーツ選手が成功するかどうかを予測するために、その選手に特徴的な変数として年齢、体重、身長、平均得点などを考えることができます。これらの特徴量を分析して、最終的にその選手が成功するかどうかを決定するための決定木を作成することができます。
このように、決定木(ディシジョン・ツリー)分析は、データセットの中から最も重要な変数を見つけ出し、その変数に基づいてデータを分割していくことで、分類や予測を行うモデルを構築する手法で、商品購入者の属性や購入動機などの分析に広く用いられています。
アンケート分析のポイントと集計方法
アンケート分析におけるポイント
アンケート分析においては、調査対象の特徴や傾向を正確に把握するため以下のポイントに留意する必要があります。
全体→細部の順番で見ていく
アンケート集計・分析で重要なのは、まず全体的な傾向を把握した上で細かい部分にも目を向けていくという順番です。細部から見てしまうと、そこの意味に注目するあまり全体から見ると偏ったデータばかり集めたりしてしまうおそれもあります。
単純集計で見た全体的な傾向から外れる回答や特定の質問項目での回答傾向を、クロス集計などで把握することで、課題や改善点を明確にすることができます。例えば全体的には好評だった商品でも、一部の質問項目では不評であるケースもあり、その場合は当該部分の改善が必要になります。
このように全体→細部の順番で分析することで、より精度の高いアンケート分析が可能となります。
データの有意性を考慮
アンケート分析において、集計したデータの有意性を考慮することは非常に重要です。データの有意性とは、そのデータがランダムなものではなく、何らかの意味やパターンがあるかどうかを判断することです。
有意性を判定するためにはデータの回答数が十分あるかや、回答者が調査対象の代表として適切かなどを吟味する必要があります。また、データの有意性を判断するためには回答率なども重要な指標となります。回答率が低い場合は偏りのあるデータになってしまう可能性があります。
以上のように、アンケート分析においてはデータの有意性を考慮することが重要で、正確な分析結果に直結します。
有効回答の基準を満たしているかを確認
アンケート分析において、有効回答の基準を満たしているかを確認することが重要です。有効回答とはアンケート回答全体のうち、調査目的に合致する回答のことを指します。例えば、特定の年齢層の意見を知りたい場合には、その年齢層に当てはまる回答だけが有効回答となります。
有効回答の基準を満たしているかを確認するためには、まずアンケートへの回答が完了しているかどうかという観点があります。アンケートには、必須回答が設定されている場合があります。回答必須の質問への回答が完了しているかどうかを確認することで、有効回答かどうかを判断することができます。
このほか、指定された質問内容に回答していない、他の回答と照らし合わせて明らかに異常な数値、そもそも回答していない、対象外の人物が回答しているといったケースは有効回答とは見なされません。
以上のように、アンケート分析においては有効回答の基準を満たしているかどうかを確認することが求められます。アンケート調査の設計や質問内容の選択によって有効回答の割合が変化することがあるため、調査目的に合わせて適切なアンケート設計を行うことが必要です。
アンケート集計の方法
それでは、前述の単純集計、クロス集計、自由記述集計の3つの方法について解説します。
単純集計
直感的にも理解しやすくアンケート分析の最も初歩的な方法の一つである単純集計は、アンケートで得られた各質問項目の回答数を集計し、各回答の割合などの集計結果をグラフや表にまとめる方法です。例えば、ある商品を購入した理由について尋ねた場合、回答者のうち80%が「価格が安かったため」と回答した場合、価格がその商品を選ぶ上で重要な要素であるとわかります。ただし、質問の設計や回答選択肢の選定などが不適切な場合、データが偏って正確な分析結果が得られない可能性があるため注意が必要です。
クロス集計
クロス集計は、複数の質問に対して解答結果を交差させて集計する方法です。これにより、複数の質問についての関係性を見出すことができます。主に単純集計後、「男女別」、「年代別」、「回答別」、「利用頻度別」などのグループに分けて集計することが多いです。具体的には「あなたの年齢は?」と「あなたの職業は?」という2つの質問項目に対して、年齢別に職業を集計することができます。このように、複数の質問項目を組み合わせることで、回答者の属性や特性を明らかにすることができます。
例えば、飲食店についてのアンケートで「好きなジャンル」と「利用頻度」を質問した場合、クロス集計により飲食店の「好きなジャンル別の利用頻度」を知ることができます。以下は、そのクロス集計の一例です。
好きなジャンル | 利用頻度(週1回以上) | 利用頻度(月1回未満) |
和食 | 30人(50%) | 20人(33%) |
洋食 | 10人(17%) | 15人(25%) |
中華料理 | 15人(25%) | 5人(8%) |
その他 | 5人(8%) | 10人(17%) |
このように、クロス集計により「和食の飲食店を週1回以上利用する人が全体の半分を占める」など、好きなジャンルと利用頻度の関係性やどのジャンルがよく利用されているかが見えてきます。このほか、結果の背景にある要因や関係性についても考慮することが重要です。
自由記述集計
自由記述集計は、アンケートにおいて自由に回答を書いてもらう欄への回答内容を集計する方法です。「あなたが今後望むキャリアについて自由に書いてください」などの自由記述欄を設けることで、回答者の意見や感想をより具体的に知ることができます。ただし、自由記述は回答の自由度が高く、そのままではデータの集計が難しいため、手動でカテゴリ分けを行うなどの対応が必要となります。このように、自由記述集計は、数値化できない回答内容を分析する上で有用な方法です。
例えば、自由記述欄に「商品についてのご意見をお聞かせください」という質問があった場合、回答者からは「品質が良くて、満足しています。ただ値段が高いので、もう少し安くしてほしい」というような回答が来るかもしれません。この場合、品質や価格といったキーワードを抽出し、回答者の意見をカテゴリ分けすることができます。
自由記述集計には、手動でカテゴリ分けする以外に自然言語処理技術を用いた方法があります。回答が数値であれば表を作成して統計を取ることが有効ですが、文章の回答であれば集計した文章の中から類似の内容をまとめて共通のカテゴリーごとに分類・選択するアフターコーディングや、文章を単語や文節ごとに区切り、特定のワードの出現頻度や単語同士の関連性を分析するテキストマイニングなどが用いられます。
このように自由記述集計はアンケート分析において重要な集計方法のひとつで、定性的な回答者の声を集めて企業の改善や新商品の開発に役立てることができます。
以上のように、アンケート集計には、質問項目に応じて適切な集計方法があります。回答者から得られたデータを正確かつ有効に分析し、課題解決につなげるためにも、適切な集計方法を選択することが重要です。
まとめ
マーケティングにおいて、自社商品やサービスに対するユーザーの意見を商品開発や施策につなげるには、単にアンケート調査を実施するだけでなくその結果を適切に集計・分析することが不可欠です。
この記事で紹介した単純集計・クロス集計・自由記述集計などのアンケート集計方法や、クラスター分析・アソシエーション分析・主成分分析・決定木(ディシジョン・ツリー)分析などの分析方法を用いて、効果的なアンケート分析を自社のビジネスグロースにつなげてみてください。