自動でユーザーと会話するプログラム「チャットボット」。これまでもアプリやWebサイト、SNSなどで見かけることが多かったですが、昨今のChatGPTなど対話型の生成系AIの登場により、飛躍的にその質が高まっています。
本記事では、顧客満足の向上などを通じてグロースマーケティングでも役立つチャットボットに関して、ChatGPTを活用した開発や効果的な運用方法といった観点から解説します。
チャットボットの定義
チャットボットとは?
チャットボットとは「チャット(雑談・おしゃべり)」と「ロボット」を組み合わせた言葉で、ユーザーと自然な言語で対話を行うことができるプログラムのことです。一般的にはWebサイトやアプリ内で利用され、そのWebやアプリの利用者が質問や問い合わせをすると自動で返答をすることができます。
チャットボットは人手不足の解消や、24時間対応の実現、コスト削減など、ビジネスにおいて多くのメリットがあります。また、顧客満足度向上の有効な手段の一つとしても注目されています。
近年、LLM(Large Language Models:大規模言語モデル)の進歩によって、飛躍的にAIによる自然な対話が可能になってきていますが、その中でも特に注目されている生成AIが「ChatGPT」です。昨今はChatGPTを用いることで、より高度なチャットボットの開発が可能になってきました。
ChatGPTとは?
ChatGPTは、米国OpenAI社が開発したWeb上の大量のデータを学習した言語モデルGPT(Generative Pre-trained Transformer)に基づくチャットサービスです。大量のテキストデータを学習し、自然な文章を生成することができることから世界中で多くのユーザーを集めています。
ChatGPTを用いたチャットボットは、以前よりも高度な自動応答が可能になるため、顧客サポートなどの役割を果たすことができます。
ChatGPTを用いたチャットボットは、今後さまざまな業界で普及が進むと予想されます。ChatGPTはあくまでも技術の一部であるため、利用に際しては適切な設計や運用が総合的に求められます。
チャットボットの機能とメリット
自動応答でのカスタマーサポートによるコスト削減
チャットボットの代表的な特徴としては、まず自動応答でのカスタマーサポートの機能が広く知られています。チャットボットが顧客からの問い合わせに迅速かつ適切に回答することにより、人的コストの削減や企業の業務効率化につながります。
従来主流であった、設定したシナリオに沿って会話を進める「シナリオ型」(ルールベース型)チャットボットは、事前に設定されたルールに基づいて自動応答を行います。例えば、商品の在庫状況や価格、営業時間などの基本情報を問い合わせる場合は、あらかじめ用意されたテンプレートに沿って返答を行うことができます。これによって、同じ内容の問い合わせに対する返答を人間が毎回行う必要がなくなることから、人的コスト削減が可能になります。
しかし、カスタマーサポートにおいては想定されたシナリオに基づく応答だけでは不十分で、顧客の問い合わせ内容に合わせた臨機応変な回答が必要になります。その点、ChatGPTをはじめ機械学習が搭載された「AI型」のチャットボットは、チャットボットが扱う分野に合わせてChatGPTの言語モデルを調整することで、高い精度で顧客の問い合わせに対応することができます。
例えば、顧客からの問い合わせ内容によって、商品の選択肢やその説明、サービスの提供方法や手続きの説明など、複数の選択肢から最適かつ具体的な回答を選び出すことが可能です。
カスタマーサポートの解説や、カスタマーサクセスとの違いについては以下の記事もご参照ください。
24時間対応によるユーザーとの接点増加
このようにチャットボットは、事前設定のシナリオ・ルールやAIを活用して自動応答を行うことができるため、24時間365日の対応が可能となります。これにより、時間帯や曜日に関係なく利用者からの問い合わせに対応することができ、全体的なユーザーとの接点が増加するのが大きな強みです。
この際、従来のように電話をかけたり入力フォームを記入してくれるほど熱量の高くないユーザーでも、資料請求などが不要で、なおかつ口語や短文で質問可能なチャットボットであれば気軽に問い合わせができるため、問い合わせ数の増加という形でユーザーとの接点が増加し、それに伴うコンバージョン増などの効果が見込めます。
以上のように、24時間対応が可能なチャットボットは、問い合わせ対応を通じて、ユーザーとの接点を増やすことに有効です。
検索ニーズとのマッチングによる顧客体験(CX)改善
そして、チャットボットはほとんどの質問に対して瞬時に応答することができるため、人間が対応する場合に比べて圧倒的に早い回答が実現できます。
これにより、利用者は待ち時間なくスムーズな対応を受けることができ、質問への迅速な回答によるストレスの軽減などCX(顧客体験)の改善につながります。また、顧客の問い合わせに迅速に対応することで、企業は追加で発生する可能性があった他の問題を回避し、結果として快適なCX提供による顧客ロイヤリティやLTV(ライフタイムバリュー)の向上につなげることができます。
顧客ロイヤリティやLTVについては以下の記事もご参照ください。
顧客満足度を向上させるためにはもちろん、チャットボットの正確性と応答速度が重要であるため、チャットボットは顧客の問い合わせに正確かつ迅速に回答を提供できるよう一定の訓練を経ている必要があります。こうした意味でも、機械学習モデルが自然言語処理を行ってより人間らしい対話を実現し、またより正確に回答を提供できるChatGPTなどを用いたAI型チャットボットの需要が高まっています。正確性と応答速度を高めることで、企業はさらに顧客との関係を強化し、競争力を高めビジネスグロースを図ることが可能です。
ChatGPTを用いたチャットボットの開発
ChatGPTを用いたチャットボットを開発するに当たっては、自社開発と外部サービスを利用した開発との2通りの方法があります。
自社開発の場合
自社で開発する場合は、OpenAIが提供する純正APIであるRestAPIを使用します。ChatGPTのWebUIではJSON形式、マークダウン形式、YAML形式、通常の自然言語形式の4つの形式でチャットボットのスクリプト入力が可能なため、自社サービスや作りたいチャットボットの機能などを踏まえて、最適な形式を選択しましょう。
通常のChatGPTに関してはセキュリティの問題や(正確には前の単語とよりつながりのある可能性が高い単語を推測しているだけなので、嘘をついているわけではないものの)真実でない回答を行ってしまうといった問題がありますが、開発を通じて適切な規定がなされたチャットボットは、特定のリソースやガイドラインに基づいたより専門的なアドバイスやガイダンスを回答・提供できるようになります。
ぜひこちらの記事などを参考に、自社のプロダクト・サービスに最適なチャットボット開発を模索・探究してみてください。*1https://eng-blog.iij.ad.jp/archives/18518
外部サービスを利用する場合
従来のチャットボット開発では上記のほか、FacebookやLINEなどメッセージングアプリAPI、Bot開発フレームワーク、クラウド人工知能サービス、チャットボット作成サービスを利用した開発が多かったですが、ChatGPT搭載チャットボットの開発に対応しているサービスは限られている一方、日々新興のサービスも生まれては消えていっている現状です。
そうした中でもこちらのいくつかの開発サービスが、ChatGPTのメリットなどをわかりやすく解説しながらChatGPTに基づくチャットボット開発を提供しているので、ぜひ参考にしてみてください。*2https://www.chatdealer.jp/
https://www.about.st-hakky.com/chatgpt-solution
https://hitto.jp/
効果的なチャットボットの運用方法
目的に合わせたチャットボットの設計
チャットボットを導入する目的は、企業やサービスによって異なります。例えばオンラインショップでは商品の検索や購入、クレームの対応を行うためにチャットボットが導入されることがあります。またサービスを提供する企業では、顧客からの問い合わせに迅速かつ正確に対応するためにチャットボットが導入されることがあります。
そのためチャットボットを設計する際には、目的に合わせた設計が必要です。具体的には以下のような点に注意する必要があります。
・対象となる顧客層の特定
・対応可能な問い合わせ内容の明確化
・適切な応答パターンの設計
・自然な対話を実現するための言語処理技術の検討
これらのポイントを踏まえてチャットボットを設計することで、より効果的な運用が可能となります。また設計後にはデータ分析による改善や、顧客からのフィードバックを元にした修正作業も必要です。目的に合わせたチャットボットの設計と運用は、顧客満足度の向上や業務効率の改善につながります。
データ分析による改善
チャットボットの運用・改善にあたっては、その基となるデータ分析を行うことが有効です。チャットボットが日々やり取りするデータの分析によって、ユーザーが最も多く問い合わせている内容や、問題が起きている箇所を把握しやすくなり、その結果、チャットボットの改善点が明確になって、より効果的な運用が可能になります。
またチャットボットの性能を向上させるためには、自社が保有するより多くのファーストパーティデータ(1st Party Data)を用いることが重要です。これらのデータは、ターゲットとする顧客からの質問に対するミスマッチを減らすのに役立つほか、チャットボットの運用効果測定にも欠かせません。
データ分析による改善はチャットボットの運用だけでなく、カスタマーサポートやカスタマーサクセス全般において有効な手段です。データを活用し、より効果的なサポートを提供するため、継続的な改善を行っていくことが重要です。
ファーストパーティデータについては以下の記事で詳しく解説しています。
自然な対話を実現するための工夫
自然な対話を実現するためには、ユーザーの表現に合わせた返答、対話の流れを考慮した返答、ユーザーの感情に寄り添った返答など、チャットボットの設計や改善における様々な工夫が必須です。
この際、ユーザーインタビューによる調査などを通じて、ユーザーからのフィードバックを収集することが重要です。ユーザーからのフィードバックをもとに、チャットボットの回答の精度や対応範囲などの改善や顧客満足度の向上が可能になります。
ユーザーインタビューについては以下の記事で詳しく解説しています。
また、データに基づく定量分析と専門的知見に基づいたユーザーインタビューによる定性分析の組み合わせに基づく、高度なインタビュー調査を株式会社DearOneでご支援するサービス「ユーザーインタビュー for OMO / EC」については以下をご参照ください。
以上のような工夫を行うことで、より自然で使いやすいチャットボットを実現することができるでしょう。
まとめ
ChatGPTなどの生成AIの登場により、高度なチャットボットの重要性がますます高まっています。ぜひ自社のプロダクト・サービスに合ったチャットボットを開発・活用し、御社が推進するグロースマーケティングを成功に導いてください。