
こんにちは。安田です。
アプリ開発とデジタルマーケティングを支援する株式会社DearOneでB to Bマーケティングをしています。そんな私が初心者マーケターにもわかるように解説していくこのコーナー。
今回で第7回目です。
前回第6回の記事では『デジタルマーケティングに失敗する5つの理由』について解説をしました。
第1回目から順番に読んでいただければ、より理解が深まると思いますので、まだ読んでいただけていない人はぜひ読んでから戻ってきてほしいです。
それでは、今回のテーマを発表します。
カスタマーサクセスとは?カスタマーサポートとの違い
Here We Go!
カスタマーサクセスの目的
カスタマーサクセスを日本語に直訳すると「顧客成功」で、その目的はその名の通り「顧客の成功支援」です。
主にサブスクリプション型ビジネスにおいて設置され、顧客を成功に導くことでLTV(顧客生涯価値)を最大化させることを目指しています。
ん?
似たようなカスタマーサービスって言葉を聞いたことあるけど、あれとは違うの?
はい、顧客に寄り添うという点では同じですが、目的が全く異なります。ズバリ、カスタマーサクセスと、カスタマーサポートの最も大きな違いはその目的。
カスタマーサクセスは、「顧客の成功」を支援するのが目的です。
一方カスタマーサポートは、「顧客の不満」を解消することが目的なのです。
商品を購入して不具合があるとメーカーのコールセンターに電話をしますよね。この電話対応業務がカスタマーサポートのもっとも一般的なイメージです。
カスタマーの成功にフォーカスするか、不満にフォーカスするかでアプローチの方法も大きく変わりますよね。
カスタマーサクセスが顧客の成功を目的としていることはわかっていただけたかと思います。しかし、実際に顧客の成功を支援するとはどのようなことを意味するのでしょうか。
続けて、カスタマーサクセスとは何かについて詳しく説明しますね。
カスタマーサクセスとは
カスタマーサクセスとは上記でも説明した通り「顧客の成功」を支援することを目的としています。
顧客の成功を目的としており、受動的に顧客のニーズ、要望を満たすのではなく、能動的に働きかけて、自社、顧客双方の成功を実現させようということです。
顧客から助けを求められて動き出すのではなく、こちら側から積極的に顧客の分析等を行い、事業成長の役に立てるように動き出すことが必要となるのですね。
例えば、私たちが提供しているSaaS型アプリ開発サービス「ModuleApps」はクライアントの企業公式アプリを作成し、運用するサービスです。
私たちが非常に短期的な目線でビジネスを行えば、ビジネスのゴールはアプリを開発し、リリースすることになってしまいます。
しかし、私たちのクライアントは何のために「ModuleApps」を導入してアプリを作るのか。
それは、私たちのクライアントのさらに先にいるエンドユーザーとの接点を強化し、コミュニケーションを円滑化することでファンになってもらうためです。
私たちのサービスは企業をクライアントとするB to B型のサービスのように見えますが、実際にはその先にエンドユーザーがいる、B to B to C型のサービスです。
この中で、私たちはクライアントがエンドユーザーとうまく接点を持てる、継続的なコミュニケーションを実現する、というクライアントの成功、つまりカスタマーサクセスを意識して事業を行う必要があるのです。
このために、アプリをリリース後も、継続してアプリの利用方法に関する情報提供を行ったり、行動分析ツールAmplitude(アンプリチュード)を使ったアプリ上のエンドユーザーの行動分析を支援しています。
いかがでしょう。カスタマーサクセスのイメージができたでしょうか。
こうしたカスタマーサクセスが注目をされているのにはもちろん理由があります。
カスタマーサクセスが求められる背景
サブスクリプション型ビジネスへの移行
カスタマーサクセスが求められている理由の一つ目は、ビジネスモデルがサブスクリプション型へと移行をしている現状があるからです。
継続的に使用されることで投資を回収できるサブスクリプション型へと移行していることから、詳しくは後述しますが、カスタマーサクセスが追うべき指標であるLTV(ライフタイムバリュー)を意識して、短期的な売上よりも、中長期的にどのように顧客と付き合っていくかに注力することが重要となってきているからです。
「新規顧客を獲得して、購入してもらい終了」
という方法では今後ビジネスを大きくすることが難しくなってきてる現状があります。
そのため、いかにして、顧客に継続的に自社製品・サービスを利用し続けてもらうか、について考えることが大事なのです。
また、利用をユーザーに任せてしまうと商品・サービスの提供する本来の価値をユーザーが体感することができず、結果的に解約に結びついてしまうこともあります。
特にB to Bビジネスでは多額の投資を行って導入したシステムやサービスを使いこなすことができないと投資対効果を上げることができず、しばらくするとコスト削減の対象として解約されてしまいます。
そのため、本来の価値をユーザーに提供し、満足してもらうためにもカスタマーサクセスが重要となります。
市場が成熟し、差別化がつけづらい
カスタマーサクセスが求められる二つ目の理由は、市場が成熟しきっており、差別化を行うのが困難になってきているからです。
現代では、グローバル化が進み世界のどこにいても、同じような製品を作ることができるようになりました。情報社会となった今では、新しい技術や機能を開発しても、すぐに真似され、差別化を行うのが難しくなりました。
そのため、顧客にとっては自分のニーズに合わせて、多くの製品から選ぶことができるようになった一方で、企業にとっては多くの競合の中から選ばれなくてはいけなくなったのです。
カスタマーサポートとカスタマーサクセスの違い
冒頭に、カスタマーサポートとカスタマーサクセスの最も大きな違いはその目的であると上記で述べました。
それ以外の違いは何があるのでしょうか。
違いを表にまとめたものが以下です。
カスタマーサポート | カスタマーサクセス | |
---|---|---|
目的 | 顧客の満足 | 顧客の成果・成功 |
組織の位置付け | コストセンター | 収益ドライバー |
アクション | リアクティブ | プロアクティブ+リアクティブ |
指標 | 効率 | 成果 |
業務 | アフターケア(問い合わせ対応) | 成果管理、顧客ヒアリング、 顧客/ユーザー指導・教育 |
カスタマーサポートは、主に顧客から不具合や改善要望が伝えられてから動き出す組織ですので、顧客から要望を伝えられるまでアクションを取ることができません。
一方カスタマーサクセスでは、顧客のゴールを把握しているため、そのゴールを達成するためにこちら側からアクションを取れるのです。
さらにカスタマーサポートは企業内では一般的にコスト部門としてみなされます。カスタマーサポート要員の人件費は、製品・サービスを販売するために必要なコスト、という位置づけです。
一方でカスタマーサクセスは、この活動によって解約が抑止され、さらに満足度の高い顧客へは上位機能を持つプロダクトへ、または違うプロダクト購入へと繋げることも可能なため、収益を生み出すことができます。
不満解決、コストセンター
成長支援、収益ドライバー
なんとなくカスタマーサクセスの方が良さそうな気がしてきました。
また、「指標」においてもカスタマーサポートはいかに顧客を待たすことなく、迅速に対応できるかという「効率性」を評価しています。これはこれで重要なことです。
一方カスタマーサクセスでは「顧客の成長度」つまり成果を評価するのです。
このように、カスタマーサポートとカスタマーサクセスは似ているように見えて、大きく異なるのです。
カスタマーサクセスが追うべき指標
LTV(Life Time Value: 顧客生涯価値)
LTVとは、ある顧客が、一企業・一製品に対して取引開始から終了するまでの期間に、どれだけの利益をもたらしたのか、を計るための指標です。一般的に新規顧客獲得にかかる5分の1のコストで、同等の収益を得ることができるとされており注目されるようになりました。
CAC(Customer Acquisition Cost: 顧客獲得コスト)
CACとは、新規顧客を獲得するために費やした費用のことです。
Chrun(チャーン)
Churnとは、日本語で解約を意味し、顧客がサービスを解約する際に使われる言葉で、ある一定期間に解約した顧客の割合を表します。解約が大量に発生している場合、顧客が不満を感じているというサインですので、サービスや製品を見直すきっかけとなります。
NPS(Net Promoter Score: 顧客推奨度)
NPSとは、顧客ロイヤリティを測るための指標です。
方法は簡単で、製品・会社・サービスを友人などの親しい人に推奨したいか?を尋ね、1〜10の数値で評価してもらいます。
顧客満足度とよく比較される指標ですが、顧客満足度は顧客が満足したかを測る指標であるのに対してNPSは、顧客が満足した上で「業績にどれくらい貢献しているか」を測る指標で、業績向上を図るために追うべき指標です。
カスタマーサクセス成功事例
カスタマーサクセスを提供することで、大きな成長を成し遂げた多くの企業はたくさんあります。
ここでは名刺管理サービスを提供しているSansanを事例に紹介します。
Sansanは「出会いからイノベーションを生み出す」をミッションに法人向けクラウド名刺管理サービスと個人向け名刺サービス「Eight」を提供しており、名刺をスキャンするだけで、名刺・人脈を管理することが可能なサービスです。
同社はまずオンボーディング(購入後にスムーズにユーザーがサービスを使えるようにするための操作説明、初期設定支援)を重視し、カスタマーサクセス部門を創設しました。業績向上と共に顧客の数が急増し、オンボーディング終了後の利用状況まで把握することが困難となり、「価値を実感してもらう」すなわちリテンション率アップへと移行しました。
その際にカスタマーサクセスプラットフォームの導入を決めたのです。
同社はプラットフォームを導入し、データの収集・統合から施策の実行まで一貫性を持ったプログラムを設計し、運用する、すなわちデータドリブンに基づいたカスタマーサクセスを目指しました。
以前ではフォローしきれていなかった面もあり、カスタマーの変化を見逃してしまうことがありましたが、プラットフォームを導入しデータドリブンな施策を打つことができるようになった結果、お客様の変化をタイムリーに把握することが可能となり、最適なタイミングで接触できるようになり、顧客価値をアップさせることに成功しました。
顧客価値アップに成功した結果として、売上も大きく伸ばすことができました。
カスタマーサクセスに求められるスキルとは
カスタマーサクセスには主に3つのスキルが求められます。「コミュニケーション能力」「課題解決力」「データ分析能力」です。
コミュニケーションスキル
カスタマーサクセスでは、コミュニケーション能力が顧客の成功の鍵をに左右すると言っても過言ではありません。カスタマーサクセスでは顧客と良好な関係を築き、顧客が抱えている問題や課題をコミュニケーションを通していかに明確にできるかが需要です。
課題解決スキル
コミュニケーションを通して明確にした課題を、どのように解決に導くか考えます。様々な観点から問題を客観視し、考えられる解決策の中からベストな方法を洗濯する力が必要です。
データ分析スキル
カスタマーサクセスでは、データを元に問題点や解決策を導き出します。そのため、データから「何が読み取れるのか」を見つけ出すスキルが求められるのです。
まとめ
この記事ではカスタマーサクセスとは何か、またカスタマーサポートとの違いについて紹介しました。その最も大きな違いは「目的」で、カスタマーサポートは「顧客の不満解消」を目的としており、アフターケアを行います。
一方でカスタマーサクセスでは、「顧客の成長」を目的としており、顧客の目標達成のためにこちら側から積極的にアクションを取ることが重要となるのです。
お役に立ちましたでしょうか。
それではまた今度。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
次回の記事では『グロースすれば蝶が羽ばたく。バタフライモデル』について紹介します。
バタフライモデル?何それ。
グロースマーケティングのための新たな考え方ですので、ぜひ参考にしてみて下さい。