こんにちは。安田です。
アプリ開発とデジタルマーケティングを支援する株式会社DearOneでB to Bマーケティングをしています。そんな私が初心者マーケターにもわかるように解説していくこのコーナー。
今回で第6回目です。
前回第5回の記事では『マーケティングが行うべき、新規顧客よりも重要な仕事』について解説をしました。
第1回目から順番に読んでいただければ、より理解が深まると思いますので、まだ読んでいただけていない人はぜひ読んでから戻ってきてほしいです。
それでは、今回のテーマを発表します。
デジタルマーケティングに失敗する5つの理由
Here We Go!
デジタルマーケティングの陥りがちな罠
いざ、デジタルマーケティングを実施してみたけど、思っていた通りに物事が進まない、期待していた結果を生み出すことができていないという状態に陥っている方も大勢いることだと思います。
私もこれまで長年マーケティングに携わってきましたが、結果を出せず悔しい思いをしたことが何度もあります。
そこで、結果が出ない原因を調べていくうちに、デジタルマーケティングにおいてマーケターが陥ってしまいがちな「罠」を5つ見つけました。
1つ目は「広告接触直後の瞬間指標のCPI・CPA・ROASだけを追いかける」
2つ目は「初回のユーザー体験が残念なため離脱する」
3つ目は「製品の魅力・UXが磨き込まれていない」
4つ目は「顧客の製品評価を掴めていない」
5つ目は「PMF・PSF視点ではなく、現状の実力から目標を設定」
それではそれぞれ、AARRRモデルに沿って紹介していきます。
まず1つ目の「広告接触直後の瞬間指標のCPI*1・CPA*2・ROAS*3だけを追いかける」とは、その文字が意味する通り、直近での数字しか追いかけておらずに、中長期的目線で広告を運用できていないということです。
AARRRモデルの1つ目のA、Acquisition(新規ユーザー獲得)における罠です。
CPI・CPA・ROASを直近での数字とすると、中長期的数字とはLTV(ライフタイムバリュー)となります。LTVは日本語で顧客生涯価値と訳され、顧客が取引を開始してから終了するまでの期間にもたらした利益の合計のことを指しています。
「広告を見て、購入して終了」ではなく、その後も継続して自社製品を購入してもらえるようにしようということです。
例えばこういうことです。
単価10万円の商品に対し、200万円でWebの広告に出稿し、100件の注文を獲得したと仮定します(広告A)。売上は10万円×100で1,000万円です。この場合のCPAは20,000となります。
一般的にCPAが低ければ低いほど、費用対効果が高かったと言えるのです。
しかし、ここにLTVの考え方を加味することで、CPAが比較的高くても「いい広告だった」と言えるようになるのです。
例で考えてみましょう。
今回も同じ商品、単価10万円の商品に対して300万円でWebの広告に出稿しました(広告B)。
獲得できた注文数は、前回と同じ100件でした。売上は広告Aと同様、1,000万円です。
この場合のCPAは30,000です。
これだけを見ると広告Aの方が結果を出しているように思えますよ。
しかし、例えば、広告Aでは100件の注文を獲得して、その後ユーザーが再び購入に至ることがなかったとします。
そして広告Bでは、広告から購入した100名の全員が1ヶ月後に再び自社製品を購入をしたとしましょう。
さて、この条件ではどちらがいい広告と言えるのでしょうか。
広告費 | 注文獲得数 | 売上高 | |
---|---|---|---|
広告A | 200万円 | 100 | 1,000万円 |
広告B | 300万円 | 200 | 2,000万円 |
表にまとめてみると一目瞭然ですよね。
このようにCPAやCPIなどの瞬間的数字だけを追いかけてしまうと、本来注目すべきであるところまで見えなくなって、機会損失を生むことに繋がってしまうのです。
2つ目の「初回のユーザー体験が残念なため離脱する」とは、これもその文字通りの意味ですが、顧客が初めて製品を使用した際に満足できない、期待していたほどのものではなかったというような理由で初回以降使用をストップしてしまうことです。
AARRRモデルの2つ目のA、Activation(利用開始)における罠です。
失敗をしてしまう例として、Webサイト、スマートフォンアプリを初めて使用する際、サインインを求めるものがよくあります。これは顧客の情報を集め、ビジネスに生かすためによくある方法です。
しかし、顧客の中には「試しに使用してみよう」と気軽に利用してみたいと考えている人も多く、そこでサインインのために多くのフォームを書かなければいけないとなれば、そこで離脱をしてしまうことが多くなってしまうのです。
顧客にとっては、フォームを入力し、その後に得られるリターンがどのようなものかわからないため、顧客が初めて製品を使用する際には、ハードルが高くなってしまいます。
また、IDやパスワードがわからなくてログインをあきらめた経験は、私だけでなく皆さんも一度はあるのではないでしょうか。
3つ目の「製品の魅力・UXが磨き込まれてない」とは、どのように顧客に接触し、購入してもらうかだけを考えてしまい、製品・サービスの魅力を磨ききれていなということです。
AARRRモデルの3つ目のR、Retention(継続利用)における罠です。
皆さんも、期待して購入した製品・サービスをしばらくすると使わなくなってしまった、ということは多いと思います。
人間は基本的に飽きやすい生き物ですからね。
しかしサービスを利用しなくなる原因は人間の性だけでは片づけられません。
もちろん、サービス側にも原因があるのです。
最も分かりやすいのはUXに問題があるケースでしょう。
UXとはUser eXperience(顧客体験)の略です。
なんでUEじゃなくてUXなのかって?
まぁ、多分その方が格好いいからでしょう。
このUX、単純なUI(User Interface)の話とはレベルが違います。
UIとは主に操作性、Webサイトやアプリで言えば配色やボタンの配置などによって使いやすい設計をしているか否かです。しかし、UXと表現する場合はその使いやすさを含めて、ユーザーがやりたいことをやりたいときに、違和感なくスムーズにできるという体験を提供するレベルを目指す必要があります。
最近のスマートフォンの予測変換なんて、自分の打ちたい文字を完全に先読みされていて気持ち悪いくらいですよね。違和感なく伝えたい文字を入力できるという体験は、私はもうUIではなくUXのレベルに到達しているなと思います。
最近はこのUXがデジタルマーケティングにおいて重要と言われていますが、本当に重要なんです。ここを無視して、ビジネスを行うことはできなくなってきています。
4つ目の「顧客の製品評価を掴めていない」とは、顧客の製品評価を掴めていないまま、商品・サービスを提供し続けてしまっている状況のことです。
AARRRモデルの4つ目のR、Referral(紹介)における罠です。
顧客が製品に対して、どのように思っているのか。
・ポジティブに評価してもらえているのか
・それともネガティブな意見を持っているのか
・なぜ継続して利用されていないのか
・なぜ新規ユーザーは活性化していないのか
ここを把握しない限り、製品の改善、はたまたビジネスを成長させることは非常に困難となります。そして、製品が改善されなければ、ユーザーは継続して使用をすることはありません。
さらに、顧客は自分が満足をしていない製品を人に紹介することはまずありません。ある程度の満足でも、紹介することはなかなか無いでしょう。
ご自身がこれまでに他人に商品を紹介したシーンを思い出してみてください。
「この商品めっちゃ良かったよ。」
と友人や家族に紹介をすることがあっても、
「この商品まあまあ良かったよ。」
と紹介することはありませんよね。
そのため、顧客がどのように製品を評価しているのかを把握し、その評価を製品の改善へと生かし、顧客が継続して利用し続け、自然と紹介をしたくなるようなものへと磨き上げることが大切なのです。
5つ目の「PMF・PSF視点でなく、現状の実力から目標を設計」とは、顧客視点で目標を設定しようということです。
AARRRモデルの5つ目のR、Revenue(収益化)における罠です。
製品・サービスがグロースし収益を生み出す、ということはその製品・サービスが市場に受け入れられる(PMF:Product Market Fit)しているということです。しかし、売上目標を設定する際にはこうした市場視点ではなく、現状の実力から目標を設定してしまうことは多いのではないでしょうか。
例えば、日本の企業ではこんな目標設定が多いのではないでしょうか。
年度末が近づき、来年度の事業計画を策定する時期になると、経営企画部門から各部門へ来期の売上目標設定の依頼が来ます。各部門で売上目標を設定するのですが、その際に参考にする数値はこういったものです。
・経営企画部門がまとめた全社の売上目標対前年比
・昨年度の自部門の売上目標の対前年比
・自部門の上位組織の売上目標対前年比
つまり、社内の他の部門が設定した前年比成長率を参考にして、そこと大きく乖離の無い目標を設定することで、社内における目標の妥当性を担保しようとするのです。
「全社の売上目標成長率+10%の目標を設定して、全社を牽引します」みたいなメッセージが事業計画に書かれるわけですね。さて、この目標のどこに顧客視点があるのでしょうか。
ここまでの説明でお分かりのように、現状の実力から目標設定を行うということは「企業視点」でビジネス成長を考えていることを意味しています。
しかし、グロースを施す上で大事なのは「顧客視点」で考えることなのです。現状の実力から目標を設定することは、この顧客視点を無視してしまっています。そのためPMFやPSFといった顧客視点で目標を定めることが大切となります。
顧客視点で目標を設定し、そこから実際に必要となるコンバージョン率や、CTR等を算出していることが重要なのです。
グロース時代に適したフレームワーク「AARRR」
ここまで、デジタルマーケティングの陥りがちな罠についてAARRRモデルに沿って紹介しました。
AARRRモデルでは、新規顧客獲得だけに注力をしているだけではなく、リテンション評価も行えるフレームワークとなっています。
あれ、AARRRモデルについてそれほど説明してませんでしたよね?
ここで解説をしますね。すいません。
AARRRモデルは、Acquisition(新規ユーザー獲得)、Activation(利用開始)、Retention(継続利用)、Referral(紹介)、Revenmue(収益化)の頭文字を取って作られた略語です。読み方はなんだと思いますか?
「アー」です。「アー」
ちなみに、海賊指標とも呼ばれており、その由来は、海賊の叫び声に似ているからだそうです。
海賊の叫び声って「アー」なんですね。初めて知りました。
AARRRモデルは、ロイヤルカスタマー化を行うために大切なフレームワークです。ロイヤルカスタマー化することで、顧客が繰り返し製品を利用してくれるようになり、持続的に収益を上げることが可能となります。
継続的な成長を目的とするグロースマーケティングとも相性がいいので、よく使用されています。
グロースマーケティングでは「行動理解」「高速に施策を繰り返す」「的確な目標・指標設計」の3つを軸に、ボトムファネル、どのようにして継続的に製品を使用してくれる顧客、ファンを作り出すかに注力しています。
そうなんです。
AARRRモデルはまさにグロースマーケティングが目標としている、継続的な成長を目指すとためのフレームワークとなっているのです。
まとめ
この記事ではデジタルマーケティングに失敗する5つの理由を、AARRRモデルに沿って紹介をしました。グロースマーケティングと、AARRRモデルはとても相性がいいのですね。
お役に立ちましたでしょうか。
それではまた今度。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
次回の記事では『カスタマサポートとカスタマーサクセスの違い』について紹介をします。両方とも聞いたことのある言葉だとは思いますが、この二つの違いを説明できる方は少ないのでは?