顧客分析の鉄板フレームワーク

2022.01.07

マーケティングやプロダクトマネジメント、商品企画を行っていると頻繁に行うのが顧客分析です。

様々な手法で顧客を分析し、その結果をもとに論理的にマーケティングの次の手法を考案したり、プロダクトを改善していく、という流れは多くの企業で根付いていると思います。

しかし、分析の手法がこれでいいのか?と悩むケースや、分析結果がうまく次の施策につなげられない、とお悩みの方も多いかもしれません。

現在、顧客分析も様々なフレームワークが考案され、またその分析を支援するツールも豊富になっています。

この記事では、そういった顧客分析の鉄板フレームワークをご説明します。

顧客分析の目的

顧客分析は、下記3つの目的で取り組まれることが一般的です。

1.現状把握
2.施策立案
3.売上拡大

目的が定まっていない状態で顧客分析を行なっても思うような結果はついてきません。まずは顧客分析を通して何をしたいのかを明確にすることが大切です。

1.現状把握

現状を把握することは、ビジネスがうまくいっているのか、そうでないのかを判断するためにとても重要な指標となります。多種多様なサービス、商品を展開する企業においては、売れている商品と、売れていない商品が出てくることでしょう。

そもそも商品が悪いのか、それとも商品購入に至るまでのプロセスに顧客にとって障壁となるものが存在しているのかなど、何が原因となっているのかを把握することが大切となります。

施策を打とうにもまずは現状を把握していなければ、正しい判断ができません。まずは顧客分析を通して現状を把握し、何を改善できるかを知ることが必要です。

2.施策立案

顧客分析によって現状を把握できれば、施策を考えることができるようになります。

現状を把握するだけで終わってしまってはそこから何も生まれません。ビジネスの現状から課題を発見し、仮説を立て、改善に繋がる施策を立案していくことが大切です。

施策を考え、実行するまでに時間がかかってしまうと、せっかく把握した現状が変化してしまいます。さらに実行しても失敗に終わることもあります。そのため、施策は可能なかぎり早く立案、実行し、実行結果をもとにそのまま継続するのか、また改善が必要なのかを判断し、繰り返し行っていくことが成功への鍵です。

3.売上拡大

顧客分析によって現状把握、施策立案・実行を行えば「この施策は効果があった。」「この施策は失敗だった」と施策の成功・失敗を評価できるようになります。

上記、施策立案でも述べた通り、施策は一度行って終了ではなく、繰り返し行う、打ち続けることが重要です。Amazonなどの大企業も年間に1,000回以上の施策を打っていると言われており、しかしその中で成功した(改善が見られた)ものは50%にも満たないとされています。

このように、施策を高速に繰り返し、失敗しても結果が出るまで打ち続けることで売上拡大に大きく近づくことができるでしょう。

実務で利用する3種の顧客分析フレームワーク

実際に、顧客分析の現場でよく利用される分析フレームワークを3つご紹介します。

1.RFM分析

RFM分析とは、Recently(最近の購入日)、Frequency(購入頻度)、Monetary(累積購入金額)の頭文字からなる顧客分析のためのフレームワークです。RFM分析では、3つの指標をもとに顧客をランク分けし、それぞれの特性にあったマーケティング施策を打つことができます。

顧客分析:RFM分析

2.デシル分析

デシル分析とは、顧客を購入金額順に10グループに分け、それぞれの購買データから顧客を理解するためのフレームワークです。

デシル分析では、購入金額の高いグループには、そのまま継続して購入してもらえるよな工夫が施された施策を打ち、また購入金額が低いグループには他社への乗り換えを引き留めるための試作を打ち、中間層には購入金額を増やしてもらうために、アップセルやクロスセルを促すための施策を打ったりと、購入金額ごとに分類されたグループの特性に適した施策を打つことができます。

しかし、購入金額の多さだけでグループを分け施策を打つというのは単純すぎるため、あくまでも他のフレームワークから得られた結果を補助する指標として取り入れるのがいいでしょう。

顧客分析:デシル分析

3.セグメンテーション分析

セグメンテーション分析とは、顧客を4つの項目によってグループ化し、それぞれのグループどのような特性を持っているのかを分析するフレームワークです。

下記4つの項目によってグループ化します。

  • ジオグラフィック変数(地理学的変数)
    地方・気候・人口密度・都市化の進展度・交通手段など
  • デモグラフィック変数(人口統計学的変数)
    年齢・性別・人種・国籍・所得水準・宗教など
  • サイコグラフィック変数(心理学的変数)
    購入動機・価値観・ライフスタイル・パーソナリティ・社会的地位など
  • ビヘイビアル変数(行動学的変数)
    購買履歴・購買頻度・購買パターン・アクセス方法・購入経路など

セグメンテーション分析は、従来性別、年齢、地域、社会的地位などの属性だけで分類されていたものを、もっと細かく分類するための分析方法です。

顧客分析:セグメンテーション分析

顧客セグメントは属性ではなく行動で設定する

ここまでご説明してきた顧客分析には、最近のトレンドがあります。

それは、属性軸での分析から、行動軸への分析へシフトしてきている、という点です。

これまでは顧客セグメントは性別、年齢、居住地などの属性によって分類されてきました。しかし現代では、インターネットの普及に伴い顧客が自ら情報を得られるようになり、さらにオンラインとオフラインの垣根がほとんど無くなり、常に情報に晒されている状態になりました。

この大きな変化と共に、顧客ニーズも大きく変わり、多様化が進んだのです。こうした現代においては、属性だけで顧客ニーズを正確に把握することが困難となりました。

例えば、お父さん(男性、40代)が持ち主であるECサイトのアカウントを家族で共有しているとします。

アカウントの持ち主はお父さんですが、お母さん(女性、40代)や、娘(女性、10代)もこのアカウントでショッピングしているため、このアカウントで購入されている商品は女性用の服や、化粧品などが多くなります。

しかし、こうした状況で属性だけで分析をしていると、持ち主であるお父さんに向けての商品(育毛剤、髭剃り等)をレコメンドとして提案してしまいますが、当然結果は出ずに終わってしまうのです。

そのため現在は、属性で分析するのではなく、行動ベースでの顧客セグメントが重要視されています。具体的には「購入に至った商品」「買い物カゴに入れたが購入に至らず離脱してしまった商品」「購入をした人」「3ヶ月以上継続して利用している人」などです。

このように行動ベースで分析を行うことで、お父さんのアカウントであっても女性向けの製品が頻繁に購入されていることを発見することができ、そこから分析結果を基に施策を考え、最適なアプローチが可能となります。

特に「購入に至った顧客が共通して取っている行動」や「途中で離脱してしまった顧客が離脱前に取っている行動」などのような、直接結果に結びつく行動を把握することができると、仮説を立て改善を繰り返し行うことで大きく売上を伸ばすことができるでしょう。

行動分析の課題

ここまで、行動分析の重要性をお伝えしました。

しかし、実際に行動分析を行う際にはどのように進めればよいでしょうか?

ユーザーの行動データというのは、主にWebやアプリのログデータです。

これらを社内のCRMに格納された顧客データと突き合せたりしつつ、様々な角度から分析を行っていきます。

当然、データ量が膨大になりますのでExcelで作業することは難しいですので、BIツールを活用したり、場合によってはデータサイエンティストがSQL等のデータベースを活用して分析するケースもあるかもしれません。

しかし、顧客分析に時間がかかったり、特定の人でないと行えないという状況は、スピーディにデータを分析して結果を施策に生かしていく環境ではネックになります。

行動分析により組む際の主な課題は下記の通りです。

・データが複数のシステムに分散しており、すぐに分析に使える状態になっていない
・データを分析するためのツールがExcel等しかなく不十分
・データを分析するために高度なスキルが必要なため、分析業務が属人化している
・データ分析業務が属人化しているため、スピーディに分析できない
・データの分析は分析担当の仕事、と考えてしまい社内にデータ活用の意識が根付かない

こうした課題を解決し、より早く、簡単にユーザー行動分析を行うためには、ユーザー行動分析のツールがおすすめです。

行動分析を簡単にするツール

ここでは、行動分析ツールとして世界中で45,000以上のサービスに導入されている「Amplitude(アンプリチュード)」をご紹介します。

AmplitudeはWebサイトやアプリにタグを設定し、そのタグの発火データを収集することでユーザー行動データを分析するツールです。

タグの発火は単なるページ閲覧だけでなく、ボタンの押下や検索、クリック等細かく設定することが可能ですので、ユーザーの行動を詳細に取得することができます。

さらに、標準で用意された豊富な分析チャートにより、誰でもすぐに行動分析を始めることができます。

以下に、主なAmplitudeの分析チャートを3つご紹介しましょう。

・コンパス

ユーザーの行動の相関性を簡単に見ることができるチャートです。

例えば、ECサイトで購入するユーザーを増やしたい場合に、購入したユーザーは他にどういった行動をサイト上で行っているのかを簡単に見つけることができます。

上記の例では、購入と相関性の高い行動が上から並んでいます。

1位:カートにアイテムを入れる、2位:カートを見る、等は購入しているので当たり前ですが、3位:広告を見る、が購入の前の行動として良く行われるというのは一つの発見になるでしょう。

最終的な購入(コンバージョン)を増やしたい場合に、購入の前の行動(マイクロコンバージョン)を増やすことから取り組むと、施策も進めやすくなります。

リテンション

ユーザーがどの程度の継続率でECサイトを訪問しているかを見ることができるのが、リテンションチャートです。

購入のためには継続してサイトを訪問してもらわないといけません。

このチャートでは、初回訪問者を100%とし、横軸の時間が経過するごとにどの程度の人が再訪問しているかを見ることができます。

当然、右に行くほどグラフが下がる(再訪問する人の率が下がる)わけですが、これをいかに高く保てるかが重要です。

このチャートでは、ユーザーのセグメント別でグラフを分けることができます。

上記の例では青いグラフは全ユーザーの平均値です。

一方、黄緑のグラフは広告を1回以上見た人のみのグラフです。

こうしてみると、広告を見た人の方が再訪問率が高いことが一目で分かります。

・ライフサイクル

ユーザーの利用状態を一目で可視化できるのがこのチャートです。

一般的にECサイトを利用するユーザーの状態は以下の4つに分けられます。

・新規:新しくECサイト利用を開始したユーザー
・定着:ECサイトを継続的に利用しているユーザー
・休眠:ECサイトの利用が減少し、使わなくなったユーザー
・復帰:一度は休眠状態になったものの、再度利用頻度が上がったユーザー

当然、ECサイトでのコンバージョン向上を目指すのであれば、新規、定着、復帰を増やし、休眠を減らすべきです。

ライフサイクルチャートはユーザーの状態をこの4区分で可視化できます。

この例では左から右へ、時系列に沿って週ごとに、ライフサイクル区分におけるユーザー数の推移を表示しています。

水色(新規)より、赤(休眠)が多ければ、総合的な活性ユーザー数は減少しており危険な状態にあると言えます。

逆に休眠が少なく、新規が多ければいずれ定着ユーザーが増えていくでしょう。

単純な新規ユーザー数を見るだけでなく、サイトを利用したユーザーが定着しているか、休眠しているかといったポイントまで行動を把握することが重要です。

行動ベースで顧客分析を行い、成果を上げた事例

では、行動ベースで顧客分析を行って、結果的にカート投入率や購入率を改善した事例を3つ、ご紹介します。

カート投入率を増やす|Amplitudeグロースハック事例

ファッション系フラッシュセールEC la belle vieは、新規ユーザーの購入を増やしたいという目的でECサイトを分析したことにより、コンバージョン(購入)に繋げるためのマイクロコンバージョンを高めるためのヒントを得ることができました。

わずか15分の分析でEC購入率を大幅改善|Amplitudeグロースハック事例

35歳〜49歳女性をターゲットに、高感度な商品を取り扱うファッションを中心としたあるECサイトは、ECサイト上で顧客行動を分析したことで、購入率を大幅にアップすることができました。

ユーザー行動分析によるプロダクト改善

オウンドメディア「PINTO!」、SaaSのSEO対策プロダクト「SEARCH WRITE」、インフルエンサーマーケティングプラットフォーム「Cast Me!」にAmplitudeを導入し、社内の誰でもデータ分析ができる基盤を整えることで「データの民主化」を実現し、プロダクトの機能を生かすか、導線を変えるかといった改善にも役立てることができています。

まとめ

以上、顧客分析の鉄板フレームワークをご紹介しました。

多くのマーケターが利用しているフレームワークには、先人の知恵が詰まっていますので一から自分で考える寄りも効率的に情報の整理ができます。

様々なフレームワークを実際に使用して、自分に合った分析手法を見つけてください。