海外のCRMのトレンド|ハイパー・パーソナライゼーションとは?

2024.05.14

MAの普及により、顧客の名前入りのEメールが送られるようになったのは10年程前のことです。当時は「自分宛てのメッセージが来た!」という感動があったと思いますが、今ではツールが送っていることを皆知っているので、感動が薄れてきていると思います。

名前入りメールの他に、最後に見た商品や、過去に購入した商品をメールでレコメンドするなど、ツールによって実現できる王道のパーソナライズ手法はある種テンプレート化しつつあります。このようなパーソナライズは、何もしないよりは一定の効果はあるのですが、現代の消費者を真の意味で惹きつけるのに必要な深みが欠けているのではないでしょうか。

そこで最近、CRMのトレンドとして新たに登場した観念が「ハイパーパーソナライゼーション」です。

この記事では、ハイパーパーソナライゼーションとは何か、従来のパーソナライゼーションとは何が違うのかについて詳しくご紹介します。また、顧客の期待にこたえるために、どのような要素を企業が取り入れるべきなのかも併せて解説していきます。

ハイパー・パーソナライゼーションとは?

パーソナライゼーションとは、顧客の好みや行動に基づいてパーソナライズされた顧客体験を提供することです。パーソナライゼーションはすでに多くの企業で取り組まれていますが、AIや機械学習、リアルタイムデータを活用し、これまでのパーソナライゼーションをより進化させたものが「ハイパー・パーソナライゼーション」です。

競合他社よりハイレベルなパーソナライズを実現できると、顧客の期待を超える体験の創出や、強固なエンゲージメントが可能となるため、グローバルではCRMのトレンドとして注目されている考え方です。

従来のパーソナライゼーションとの違い

従来のパーソナライゼーションとハイパーパーソナライゼーションの主な違いは、リアルタイムデータの使用と、個別化のレベルという2点です。

従来のパーソナライゼーションでは、過去のデータ(顧客の属性や過去の購入・閲覧履歴など)にもとづいて、次のようなコミュニケーションが行われています。

  • 閲覧履歴がある商品のレコメンド
  • 過去購入した商品と同じカテゴリの商品のレコメンド など

一方で、ハイパーパーソナライゼーションでは、過去のデータに加えて顧客の位置、天気、時刻などのリアルタイムデータを使用して、さらに個別化したコミュニケーションを行います。

  • 天候情報と位置情報をもとに、寒波のタイミングで顧客の好みに合ったコートをレコメンド
  • 位置情報をもとに、周辺店舗で行われているセールと、顧客の好みに合ったセール対象商品のご案内 など

このように、ハイパーパーソナライゼーションは、顧客データにリアルタイムデータを加え、AIによる高度なパーソナライゼーションの技術を利用することで、従来のパーソナライゼーションより一歩進んだ、より関連性の高い顧客体験を提供するものです。

なぜハイパー・パーソナライゼーションが必要なのか

ここまで、ハイパー・パーソナライゼーションとは何か解説してきましたが、なぜ今必要とされているのでしょうか。その理由を3つご紹介します。

データ活用の幅が広がっている

総務省が発表したデータによると、インターネットショッピングの利用率は、全体で73.4%*1令和3年 情報通信白書|総務省。このデータから消費者にとって、オンラインでの購買活動はなくてはならないものとなっています。

オンラインでの購買活動が増えると、企業が持つデータも豊富となります。

  • 顧客の属性情報(性別、年齢、住所など)
  • 顧客の行動データ(流入元や閲覧ページ、購入した商品など)

蓄積された顧客データをもとにAIや機械学習で高度な分析を行うことで、顧客の行動や嗜好をより細かく把握し、個別に最適化された体験を提供しやすくなりました。

顧客が求めるものに応える

企業が保有するデータ量と比例し、消費者が接する情報量もまた、この数十年で飛躍的に増大しました。これに伴い、消費者の情報の取捨選択はよりシビアになり、従来の一般的なマーケティングメッセージの多くは無視されるようになりました。

実際に、MoEngage社が公表した調査では「関連性の高い情報を提供してくれるブランドで買い物をしたい」と答えた顧客は91%*2[New Feature] Introducing Affinity Segments on MoEngageMoEngageに達しており、多くの消費者が自分と関連しない情報を求めていないことがわかります。

なぜハイパー・パーソナライゼーションが必要なのか

消費者は自分に合った情報を提供してくれる企業に対して高いロイヤリティを持つ傾向があるので、パーソナライゼーションの精度を上げることは、顧客の期待に応えるために重要な要素であると言えます。

企業の競争力を高める

多くの企業がオンラインの販路を持つようになった現在において、企業間の競争はますます激化し、企業は獲得した顧客といかに継続的な関係を作れるかということが重要命題となっています。この継続的な関係作りの重要な鍵となるのがパーソナライゼーションの精度です。

特に小売などの類似製品が多い市場において、競合が行っていない高度にパーソナライズされた接客を行うことは、大きな差別化要素となります。

MoEngage社の調査によると、ハイパーパーソナライゼーションの実現により小売業者の収益が25%*3Hyper-Personalization in Retail and its Benefits|MoEngage増加したというデータもあります。

パーソナライゼーションに必要な環境

ここまで、ハイパーパーソナライゼーションの必要性について解説しましたが、ハイパーパーソナライゼーションはパーソナライゼーションのより高度な観念であり、基礎は同じものです。パーソナライゼーションに必要な環境としては、顧客に関する様々なデータの収集、蓄積基盤の構築、ID統合、分析やMAツールなどデータ活用環境の整備などがあげられます。

企業によってデータ活用基盤のあり方はさまざまですが、一般的には以下のようなステップで基盤が構築されます。

パーソナライゼーションに必要な環境
  1. 【ためる】まずWebやアプリをはじめとする多様なチャネルから顧客データを収集
  2. 【整える】ひとつの顧客IDに紐づけて、購買履歴や会員情報などのデータと統合しデータを一元管理
  3. 【使う】顧客データを分析し深層理解、分析内容にもとづく施策の実施やUIUX改善

基盤を構築する際には、ビジネスサイドとエンジニアサイドの両方の視点を設計段階から組み込む必要があります。例えば、マーケティング担当ではないエンジニアが単独でデータ連携を行う場合、使われるデータや活用方法を把握していないため、マーケティング施策に適したデータが収集されない可能性があるためです。

まずは基礎的なパーソナライゼーションに必要なデータや仕組みが整っているか、今一度振り返ってみることも重要です。

当社では、ステップごとにデータ活用基盤を構築するさまざまなツールを取り扱っています。当社の取り扱いツールやご支援の詳細はこちら

ハイパー・パーソナライゼーション実現のヒント

パーソナライゼーションよりも高度なハイパーパーソナライゼーションを行うためには、従来の仕組みに加え、更に包括的な顧客データをリアルタイムで取得し、AIや機械学習で分析・活用することが求められます。しかしながら、全てのデータや仕組みを整えようとすると、途方もない労力とコストを必要としてしまいます。

そこで、ここではハイパーパーソナライゼーションで差別化するために抑えておくべきポイントをピックアップしてご紹介したいと思います。

1.位置情報の活用

顧客に関連するデータは多岐にわたりますが、パーソナライズ施策に有効なデータの一つに位置情報があります。特に店舗やオフラインでのイベントを運営する企業の場合、位置情報の活用は有効なパーソナライゼーションの手段と言えます。

GPS やビーコンテクノロジー*4Bluetoothに使われる技術。Bluetooth Low Energy(BLE)を使用して、周囲のデバイスと通信するための小型のデバイスまたはセンサーのことなどの位置ベースのテクノロジーは、現在の位置に基づいて状況に応じて関連性のあるメッセージを配信することができます。

  • 顧客が店舗に入ってきたときにアプリを介して、プッシュ配信
  • レストランの近くにいる顧客に対して、本日の限定メニューをプッシュ配信

上記の例のように、アプリユーザーの位置情報を集客に利用することができますが、位置情報を気象データや人流データと掛け合わせると、より付加価値の高い情報をエリア内のユーザーに届けることができます。

2.高度なセグメンテーション

顧客セグメントの作成はパーソナライズの基礎となるものですが、ハイパーパーソナライゼーションでは従来のCRMを活用したセグメントを超える、より高度なものが求められます。

具体的には、行動データ、購入履歴、顧客ランクなどのデータに、統計、パターンや関係性、深層学習などのアルゴリズムを加え、より顧客のインサイトに迫るものです。これらは人手や旧来の分析ツールで行うことは困難であるため、AIを活用することが前提となります。

AIを活用した有効なセグメントの例としては、以下のようなものがあげられます。

  • 行動パターン
  • 購買履歴に基づく類似ユーザー
  • ソーシャルメディアのインタラクション
  • 地理情報
  • 予測分析

AIを活用した有効なセグメントを作成できるツール「MoEngage」の機能について以下の記事で解説しています。

3.生成AIの活用

ハイパーパーソナライゼーションの中核には、人工知能、特に生成 AI があります。

生成AIは、アルゴリズムを活用して膨大な量の顧客情報を分析し、マーケティング担当者が各個人に合わせてカスタマイズされたコンテンツを動的に生成できるようにします。ユーザーの対話に基づいて進化する動的で適応性のあるコンテンツ作成はまさにハイパーパーソナライゼーションの目指すところであり、この制度は静的なパーソナライゼーションを大きく上回ることが期待できます。

本来は分析、セグメント作成、コンテンツ作成、インタラクティブな配信まで全てAIで行うことを理想としますが、マーケティング活動の実用においてはまだギャップがある印象です。

MAツールMoEngage生成AI機能について、こちらで解説しています。

ハイパー・パーソナライゼーションを実現するMoEngage

ハイパー・パーソナライゼーションをもっと簡単に実現したい場合は、最新のパーソナライズ機能が搭載されたMAツールを導入することも一つの手段です。

DearOneが推奨するMAツール MoEngageは、AIを活用した高度なパーソナライズ機能が多数搭載された、アジアNo.1のカスタマーエンゲージメント*5【G2 Spring 2023】で「Mid-Market&Small Business Market Leader」を獲得(アジアエリア)ツールです。例えば、MoEngageを活用すると、先ほど例にあげたような位置情報を活用した施策や、AIによる高度なセグメント作成が可能となります。

MoEngageの詳細はこちら

MoEngageの導入事例はこちら

MoEngageを活用したハイパー・パーソナライゼーションの例

MoEngageを活用してどのようなアプローチができるのか、2つの例をご紹介します。

位置情報を使用してプッシュ配信

MoEngageのジオフェンシング機能を活用することで、位置情報にもとづいて効果的なアプローチが可能です。例えば、商業施設に入る小売店の場合、次のように、顧客が商業施設に入ったタイミングで、セールの案内や顧客の好みに合った商品をレコメンドすることができます。

MoEngageを活用したハイパー・パーソナライゼーションの例

位置情報が考慮されたメッセージは、顧客に「自分に発信されたメッセージ」であると感じてもらいやすく、プッシュの開封率も通常のプッシュに比べて数倍に上がったケースもあります。

MoEngageでは、商業施設に入ったタイミングだけではなく、距離を指定して近づいたタイミングや一定時間滞在したタイミングでもメッセージ配信が可能です。

MoEngageのジオフェンシング機能やユースケースはこちら

予測分析によるコンテンツの出し分け

MoEngageには、AIを活用した機能が多く搭載されていますが、ここでは1つ、AIによる予測分析ができる機能についてご紹介します。まず、膨大な顧客データから、将来の顧客行動を予測するためには、顧客一人ひとりの傾向を把握・分析する必要があり、これらを人の手で行うには多くの工数と労力を消費してしまいます。

MoEngageの未来予測機能では、AIがデータから顧客の行動を予測し、その傾向(高/中/低の三種類)に応じた予測モデルを自動で作成することができます。例えば、新商品を発売する場合、新商品を購入する傾向が高いユーザーと低いユーザーを見つけることが可能となります。

新商品を購入する傾向が高いユーザーには5%OFFクーポンを、購入する傾向が低いユーザーには購買意欲を高めるメッセージと割引率の高い15%OFFクーポンをなど、訴求するメッセージやクーポンの種類の出し分けを行うことで、キャンペーンの最適化も図れます。

MoEngageの未来予測機能やユースケースはこちら

他にも、MoEngageには、一人ひとりに最適な時間とチャネルでメッセージ配信できる機能や、コミュニケーションシナリオを最適化する機能など、ハイパー・パーソナライゼーションを推進する機能が多数搭載されています。

当社ではMoEngage導入の他に、施策立案やデータ分析のご支援も行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

References
*1 令和3年 情報通信白書|総務省
*2 [New Feature] Introducing Affinity Segments on MoEngage|MoEngage
*3 Hyper-Personalization in Retail and its Benefits|MoEngage
*4 Bluetoothに使われる技術。Bluetooth Low Energy(BLE)を使用して、周囲のデバイスと通信するための小型のデバイスまたはセンサーのこと
*5 【G2 Spring 2023】で「Mid-Market&Small Business Market Leader」を獲得(アジアエリア)

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