オムニチャネルとは?メリットや成功事例から重要性を解説

2023.12.28

買い物をする人々の実に86%*1参考:Omnichannel Marketing: A Complete Guide for 2023 and BeyondMoEngageが、定期的に2つのチャネルを行き来していることをご存知でしょうか。人々は、1つの店から別の店へ移動するだけでなく、買い物中に複数のチャネルを行き来しているのです。

例えば、実店舗で行列に並んでいる間にオンラインで購入したり、店舗で買い物をする際にもスマートフォンを操作し、アプリやWebサイトで関連情報を参照するなどといった行動が当たり前に行われています。

また、87%の小売企業が、オムニチャネル戦略が自社のビジネスにとって極めて重要であると回答していることからも、オムニチャネルマーケティングが如何に重要視されているかを見て取ることができます。

しかし、企業はどのようなオムニチャネル戦略をもって、自社で保有するデータやチャネルを駆使したユニークな顧客体験を提供していくべきなのでしょうか?本記事では、オムニチャネルの基礎知識、事例、実践するためのヒントについて解説していきたいと思います。

オムニチャネルとは

オムニチャネルとは、複数のコミュニケーションチャネルにおいて、ブランドの存在感を示しながら、カスタマージャーニー全体を通じて一貫性がある顧客体験をポジティブかつシームレスに提供するマーケティング戦略の一種です。

コミュニケーションチャネルには、オンラインチャネルとオフラインチャネルの2種類が存在します。

オンラインチャネルオフラインチャネル
・Webサイト
・アプリ・SNS
・Eメール など
・小売店
・イベント
・コールセンター など

「オムニチャネル」と似た用語に、「マルチチャネル」と「クロスチャネル」があります。オムニチャネルについて掘り下げる前に、それぞれの戦略の違いについて一度整理してみましょう。

マルチチャネル/クロスチャネル/オムニチャネルの違い

「マルチチャネル」「クロスチャネル」「オムニチャネル」は、複数のチャネルを扱うマーケティング戦略という点が共通しています。

一見似たようなこの3つの戦略は、顧客体験においてまったく異なる結果をもたらします。

まずは、それぞれの違いを整理しながら、皆様のサービスがどの戦略に該当するかを確認していきましょう。

ビジネス目的と構造の違い

まずは、それぞれの目的や構造の違いについて見ていきましょう。

マルチチャネル/クロスチャネル/オムニチャネルの違い-1

マルチチャネル戦略

マルチチャネル戦略では、企業が取りたいコミュニケーションに重心が置かれ、各チャネルの売上が主要指標となります。それぞれのチャネルは競合関係にあり、データは連携されず、チャネル間のコミュニケーションが分断されています。

クロスチャネル戦略

クロスチャネル戦略では、エンゲージメントの向上が主要指標となり、一部のチャネル間でデータが連携されます。

マルチチャネル戦略

マルチチャネル戦略では、顧客が求めるコミュニケーションに重心が置かれます。そのため、One to Oneコミュニケーションの拡大が主要指標となり、顧客を取り巻くあらゆるチャネル間のデータが連携されます。

顧客体験の違い

それぞれの戦略はどのような顧客体験をもたらすのでしょうか。顧客の視点で違いを見ていきましょう。

マルチチャネル/クロスチャネル/オムニチャネルの違い-2

マルチチャネル戦略

マルチチャネル戦略では、コミュニケーションはパーソナライズされておらず、それぞれのチャネルで一貫性のないメッセージが配信されます。つまり、顧客の興味関心や行動、ブランドとの関係性が無視される為、店舗で高額の買い物をした得意顧客が、翌日に新規顧客向けのメールマガジンを受け取り残念な気持ちになる、といった事態が起こってしまいます。

クロスチャネル戦略

クロスチャネル戦略では、顧客が選択したチャネル同士が連携している場合は一貫性がある体験を得ることができますが、連携していないチャネルを選択した場合は支離滅裂な体験となる危険性があります。

例えば、店舗とアプリはデータ連携がされていて、ECはデータ連携がされていないブランドがあるとします。このブランドは、売上比率が高い店舗とアプリに投資を集中し、売上比率の低いECは後回しにするという、一見合理的な戦略をもっています。この場合、顧客が店舗とアプリだけを使う場合は心地よい体験を得ることができますが、顧客がECで商品をチェックしてから来店するカスタマージャーニーを持っていたらどうでしょうか。ECで顧客の関心が無い商品をレコメンドするなどといった接客を続けると、いつか顧客の気持ちが離れていってしまう恐れがあります。

オムニチャネル戦略

オムニチャネル戦略では、全てのチャネルにおけるデータが統合され、顧客はあらゆるチャネルで一貫性がある、パーソナライズされた体験を得ることができます。顧客は自分自身の意思で好きなチャネルを選択し、どのチャネルを選択しても、顧客の興味関心や行動、ブランドとの関係性が配慮された接客を受けることができます。ECで頻繁に買い物をする顧客が初めて店舗を尋ねた際に、特別なメッセージやノベルティを受け取ったり、好みの商品を推奨されたりすると、ブランドロイヤリティはより高まることでしょう。

その他、よく比較されるOMOについてはこちらの記事で解説しています。

オムニチャネルのメリット

オムニチャネル戦略のメリット

オムニチャネルは前述でも、顧客とってより良い体験を提供できるものと解説しましたが、具体的に以下のようなメリットがあります。

  • 顧客満足度やブランドロイヤリティの向上
  • 利便性の提供による機会損失の抑制
  • データの統合による顧客分析の高度化

顧客とのチャネルが複雑化している近年では、店舗で商品を見てECサイトで買うという「ショールーミング」をする顧客も増えています。このように商品購入までに顧客と接するチャネルが増えても、一人ひとりにあったアプローチで良い体験を増やし、機会損失を防ぐことができるのがオムニチャネルマーケティングです。

またメリットの中でも、顧客分析の高度化は、昨今の顧客行動の変化に柔軟に対応するために特に注力すべき事柄と言えます。オムニチャネルマーケティングは、オフライン・オンライン、チャネルを問わずID軸で統合された一貫性のあるデータをもとに実現されます。データを長期的に蓄積することで、LTV向上などの継続した測定が必要とされる施策にも取り組みやすくなります。

オムニチャネルの事例

オムニチャネルマーケティングが素晴らしい顧客体験をもたらすことがわかりました。それでは、オムニチャネルマーケティングは企業やサービスの成長に必ず必要なものなのでしょうか?MoEngage社が公開している以下の調査や事例をもとに考えてみましょう。

ハーバード・ビジネス・レビューの調査データ

【概要】米国の大手小売企業と顧客の購買行動に関するインタビュー調査
【期間】14カ月
【対象】46,000人の買い物をする人々
【結果】

オムニチャネルマーケティングの事例
  • 対象者の7%がオンラインのみの買い物客であった
  • 対象者の20%が店舗のみの買い物客であった。
  • 73%の顧客が、買い物の過程で複数のチャネルを利用していた

さらにこの調査では、利用するチャネルの多さと顧客の価値の高さが比例することがわかりました。

例)4つ以上のチャネルを利用した顧客は、単一のチャネルを利用した顧客よりも、店舗で9%多く支出している

もう一つ、具体的な例で考えてみましょう。

長い一日の仕事を終えて疲れている人が、家に帰る前に軽くコーヒーを飲みたいとします。しかし、行きつけのコーヒーショップは夕方には混雑することがわかっており、行列に並ぶ気力がありません。このような状況で、もし行きつけのコーヒーショップがアプリでコーヒーを予約注文できるオプションを持っていたらどうでしょうか?

空き時間にアプリで好きなコーヒーを選択し、都合の良い方法で支払いを済ませ、お店に入ってすぐにコーヒーを受け取り、近くの公園でコーヒーを飲んでから帰宅することができます。これを実現したのがスターバックス社で、同社のモバイル決済は全取引の3割を超えており、オムニチャネルマーケティングによって顧客体験を向上させるだけでなく、収益を上げることにも成功しています。

オムニチャネルの実践ステップ

これらの結果から、オムニチャネルはもはや選択肢ではなく、最優先で取り組まなければいけないものということがわかります。新たなマーケティングチャネルが台頭している現代において、従来のマーケティングからオムニチャネルマーケティングに重点を移す時が来ているのです。

では、企業はどのようにしてオムニチャネルマーケティングを始めればよいのでしょうか。この章では、オムニチャネルマーケティングを始めるステップについて解説します。

オムニチャネルマーケティングの実践ステップ

ただし一般的なガイドラインであり、各企業のニーズや状況に応じて調整することが重要です。

STEP1:戦略策定 – ロードマップの作成

オムニチャネル戦略の成功には、明確な戦略的ロードマップが不可欠です。まず初めに、全体の目標とそれに到達するための具体的な手段を明確に定義します。次に、それぞれのフェーズで何を達成すべきか、機能追加や改善事項を時系列に沿ってリストアップしましょう。

【戦略的ロードマップの例】

  • 短期的戦略:オンラインストアと実店舗の在庫情報をリアルタイムに連携
  • 中期的戦略:マーケティング活動の一元管理とパーソナライズ
  • 長期的戦略:AIを活用した顧客体験の最適化

このように段階的に進むことで、全体のビジョンを実現しながらも、各ステップでの成功を確認しつつ進行することができます。

STEP2:顧客体験の明確化

オムニチャネル戦略を成功させるためには、目指すべき顧客体験の明確化が求められます。

まず、「顧客がどのような体験を望んでいるのか」を理解するために、市場調査や顧客インタビューを実施します。その上で、各接点での顧客の行動や感情を明確にし、それを一連の「カスタマージャーニーマップ」に書き出します。以下は、各チャネルにおける代表的な顧客行動と思考のイメージです。

接点チャネル行動/思考
店舗・商品を手に取る:好奇心
・店員とコミュニケーション:安心感
・商品を購入する:実物を手にした満足感
ECサイト・商品詳細を閲覧:興味の掘り下げ
・レビューを確認する:信頼性の確認
・商品を購入する:便利に買えた満足感
アプリ・アプリクーポンを利用:得をした優越感
・来店ポイントを貯める:貯金感覚の達成感

株式会社DearOneでは、現代社会のOMO施策に必須なデータに基づく高度な定量分析と、専門的知見に基づいたユーザーインタビューによる定性分析の組み合わせを実現する支援サービス「ユーザーインタビュー for OMO / EC」を提供しています。詳しくは以下をご覧ください。

STEP3:システム統合

オムニチャネル戦略の実現には、全ての販売チャネル間でデータの連携とシステムの統合が不可欠です。店舗、ウェブサイト、モバイルアプリなど、顧客が接触する全てのポイントで得られるデータを一元管理することで、各チャネルの情報が一致し、顧客への一貫したサービス提供が可能となります。

具体的には、在庫統合や商品統合ができる基幹システムの構築、顧客IDの統合と顧客データを収集・蓄積・活用することができるマーケティング基盤の構築があげられます。こういった仕組みにより、リアルタイムでの在庫確認や、顧客行動に基づいたキャンペーンなどのパーソナライズが実現されます。

STEP4:効果検証と改善

オムニチャネル戦略の導入後は、定量的な効果検証が必要不可欠です。売上やCV(コンバージョン)率、顧客満足度、ROI(投資収益率)など、事前に設定したKPI(重要業績評価指標)に基づき分析を行います。

また、フィードバックも重要なプロセスです。導入後の顧客の反応や意見を収集し、改善点や新たなチャンスを発見するために活用します。これらのフィードバックは、戦略の見直しや修正を行う上で貴重な情報源となります。

オムニチャネルマーケティングを強力にサポートするツール

Amplitude:チャネル横断のユーザー行動分析ツール

Amplitudeはアメリカ発の行動分析ツールで、世界では46,000サービス以上、日本国内でも1,700サービス以上で導入されているプロダクトアナリティクスツールです。

ID軸でWebやアプリなどのオンラインデータとPOSレジなどのオフラインデータを統合し、チャネルを横断したユーザー行動の可視化と深堀分析を実現することができます。

MoEngage:AIが搭載されたマルチチャネルMAツール

MoEngageは、AIを活用した高度なパーソナライズ機能が多数搭載された、アジアNo.1のカスタマーエンゲージメントツール*2【G2 Spring 2023】で「Mid-Market&Small Business Market Leader」を獲得(アジアエリア)です。

アプリ/Web/メールなどのチャネルを横断したシナリオはもちろん、自動セグメント作成や自動シナリオ最適化など、One to Oneマーティングを強力に推進する機能がノーコードで利用できることがMoEngageの強みです。

最後に

インターネットの普及以降、店舗、Webサイト、アプリ、SNSなどの顧客接点や利用シーンの多様化から、オムニチャネル戦略は企業にとって無視できないものとなっています。

一方で、オムニチャネル戦略を成功させるためには、様々な仕組み、組織、リソースの整備や、長期的な分析とマーケティング施策のPDCAが必要であり、一朝一夕で実現できるものではありません。

DearOneでは、オムニチャネルを強力に推進するAmplitudeやMoEngageなどの最新マーケティングツールと、導入・運用の伴走型コンサルティングをご提供しています。

オムニチャネル戦略をどのように実現すれば良いかお悩みの場合は、お気軽にお問い合わせください。

References
*1 参考:Omnichannel Marketing: A Complete Guide for 2023 and Beyond|MoEngage
*2 【G2 Spring 2023】で「Mid-Market&Small Business Market Leader」を獲得(アジアエリア)

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