FacebookやAmazon、Microsoftがビジネスを大きく成長させるために実施したとされているグロースハック。
グロースハックはアメリカのシリコンバレーをはじめとする、海外の大手企業で用いられ、その事業やサービスに大きな成長をもたらし、日本でも注目されるようになりました。
この記事では、グロースハックを実践し事業を成長させた事例を用いて、グロースハックとは何か、グロースハック成功に導くステップ、必要となる組織について紹介します。ぜひ参考にしてみて下さい。
グロースハックとは?
グロースハックとは、2010年にアメリカQualaroo社CEOショーン・エリス氏によって提唱された「グロースハッカー」という職種が元となって生まれた言葉だそうです。「真っ先に見ろ」「見たあとにすぐやることを決めて」「手を打て」というのが基本的な行動の概念で、これらを通じて自社の製品・サービスを成長(グロース)させていく手法ですね。
グロースハックは、英語でGrowth Hackと表記され、Growthは「成長」を意味し、Hackは「テクニック」「手法」のような意味で使われています。プロダクトの持続的成長を行うための手段・戦術がプロダクト自体に組み込まれている、ということです。
例えば、以下のような手法です。
- SNSシェア等、ユーザーが友だちにサービスを紹介しやすい機能を取り入れる
- 自社が持つ情報・コンテンツを外部メディアに無償提供して認知度を上げる
- ターゲットユーザーに無償で利用させて価値を体験させる
こうしてみるとグロースハックは具体的な手法を明示していることがわかりますね。
グロースハックとグロースマーケティングの違いについては「グロースハックとグロースマーケティングの違い」で説明していますので、参考にしてみて下さい。
グロースハック成功事例
あるファッションECサイトでは、グロースハックを用いてわずか15分でEC購入率を大幅に改善することに成功しました。
このECサイトは35歳〜49歳の女性をターゲットとしたファッションを中心としています。価格は他のECサイトよりも少し高めで、高感度な商品を扱っています。売上目標をKGIにおき、「購入者数を増やす」を含む、KGIを達成するためのKPIを複数設定しています。
「AARRRモデル」と呼ばれるグロースハックを施す際によく用いられるフレームワークを使用して、購入者を増やすという点に注力しました。
そこでまず、購入者がどのような行動を行っているのかを把握するために、ユーザー行動の分析、さらにペルソナ分析をし、事細かに購入者のデータを集めていきました。
通常なら数週間かかる作業を、同社は行動分析ツールを活用しわずか数分で終わらすことに成功しました。分析結果を基に仮説を立て、A/Bテストを行うことで
・カートへの投入率:122%
・コンバージョン率:156%
・購入者数:114%
という大幅な改善に成功しました。
詳しい解説はリンク先をご覧ください。
AARRRモデルについては「AARRRモデルでグロースハックを実践する」を参考にしてみて下さい。
グロースハック成功に導く6Step
グロースハックを成功に導くためには6つのステップがあります。
Step1: サービス・製品の開発
Step2: データを基に現状把握
Step3: 仮説を立てる
Step4: 実践&検証
Step5: 検証して改善を施す
Step6: 1〜5を高速で繰り返す
それぞれ紹介します。
Step1: サービス・製品の開発
まず、グロースハックを成功させるためには、良いサービス・製品を開発する必要があります。
グロースハックにおいては、完璧な製品を提供するよりもその都度ニーズを満たすために改善を施すことが大切です。そのため、初めから100%の製品を出そうとしてローンチまでに時間をかけるよりも、まず出して反応を見て改善する、といったことを念頭に置いておくことで、より早く結果にたどり着けるようになるでしょう。
Step2: データを基に現状把握
次にサービスを運用していく中でユーザーのデータを収集し、分析していきます。収集したデータを基に、現状どのような課題があるのかを把握します。ユーザーの特性や性別、年齢といった基本的な情報はもちろんですが、グロースハックを施すためには「行動分析」を行うことが大切です。
ユーザーがいつ、どこで、どんな行動を行っているか?その行動はサービス提供者にとって望ましいものなのか、それとも避けるべきものなのか?といった観点でユーザーの行動を詳細に分析します。
グロースハックの成功はデータの収集と、分析の正確さに依存するため、丁寧に行うようにしましょう。
Step3: 仮説を立てる
データを基に現状を把握できれば次は、仮説を立てます。
例えば行動を分析した結果「継続的に利用してくれている人は〇〇という行動を取る傾向にある」といったデータを取得をできれば、「〇〇という行動を増やせば、継続的に利用してくれるユーザーが増える。そのために〇〇のボタンをわかりやすい場所に設置すればよいのではないか」といった仮説を立てます。
Step4: 実践&検証
仮説を立てれば、次は実践してテストなどで検証をしていきます。よく使用される方法はA/Bテストで、実施の際にはツールを導入するのが一般的です。
グロースハックにおいてA/Bテストは下記のような場面で用いられます。
・広告やボタンの画像やデザイン
・ページのエンゲージメント率測定
・コンバージョン率測定
Step5: 実装して改善を施す
次に、検証後の機能やサービスを実装します。実装後のデータも収集、分析が必要です。ユーザーの反応を伺いながら、データを基にまた新たな課題、つまりユーザーが心地よく使用できていない部分についてどのような改善を施すことができるか考えます。
Step6: 1〜5を高速で繰り返す
実装して改善を施すことができても、ここで終了ではなく、そこからさらに改善を施すためにStep1からStep5までを何度も繰り返します。
このループを行う上で大切なのが「高速に回すこと」です。
高速に回すことで常にユーザーのニーズをサービスに取り込むことで、継続的に利用してもらえるようになり、継続的に事業が成長する仕組みを作り上げることができるのです。高速で施策を回すことを「Rapid Iteration」とも呼び、サービスの持続的成長を目的とするグロースマーケティングにおいては「行動理解」「的確な目標・指標設計」と共にこれら3つの軸が重要視されています。
一般的にグロースハック実施のためにはOODAループが用いられます。OODAループとはObserve(観察)、Orient(方向付け、状況判断)、Decide(決定)、Act(行動、実行)の頭文字をとったもので、私たちが生きる複雑で混沌とした世界を生き抜くために必要なフレームワークです。
OODAループについては「より早く!OODAループを加速させる方法 3選」でより詳しく解説していますので参考にして下さい。
グロースハックに必要な組織体制
グロースハック実施には、それに合わせた組織体制として以下の2点が必要となります。
1.グロースハックを担当するグロースハッカーの設置
2.全社員が必要な時に必要なデータを取得し有効的に活用できる環境構築
それぞれ解説します。
グロースハックを担当するグロースハッカーの設置
一般的には、グロースハックを実施するためには社内でグロースハックチームを作成します。その中でも特にグロースハックの責任を担う人をグロースハッカーと呼び、先導して指揮をとります。つまりはチームのリーダーのことです。
グロースハッカーが担う業務は主に、技術的な知識を用いてマーケティング上の課題を解決しつつ、新たな方法で効率をあげ、サービスが持続的にグロースする仕組みを作ることなどがあります。
Facebookなどの大企業でもグロースハッカーを設置し、成功へと導きました。
Facebookのグロースチームがどのような方法でグロースハックを成功に導いたかについては「Facebookの成功を支えたグロースチーム」で詳しく紹介しています。ぜひ見てみて下さい。
また、グロースハッカーにはなるためには「データドリブン思考」「ラピッドイテレーション」が必要とされています。データ分析などに対する専門的な知識も兼ね備えていることが必須条件でしたが、現代では優秀なツールが登場し、データ分析への壁もとても低くなりました。
グロースハッカーについては「グロースハッカーとは?データを駆使したプロダクトのグロース」で詳しく紹介していますので、参考にしてみて下さい。
全社員が必要な時に必要なデータを取得し有効的に活用できる環境構築
グロースハック実施に伴い必要となる点二つ目の「データドリブンな環境」とは、社員誰もがデータに基づいて意思決定を行える環境のことです。
従来の日本社会では上司の経験や勘を頼りに意思決定を行う、何をするにも上司の許可が必要で、実施までに時間を要してしまうという光景がよく見られました。
しかし、現代においては時間をかけて意思決定を行うよりも、まず行動に起こしてしまってそこから得られた情報を基に新たに施策を施す、といったスピード感が重要です。
そこで、アクションまでの時間を縮小し、なるべく多くの施策を打ち、常に改善を施せる環境が必要となります。
データの民主化については「やたら勘と経験で語る上司に教えたいデータドリブン」で詳しく説明していますので、参考にしてみて下さい。
まとめ
グロースハックとは、企業・サービスの持続的な成長を目的とするマーケティング活動であるグロースマーケティングを行うための手法・テクニックです。
グロースマーケティングでは「高速に施策を回す」の他、「顧客理解」「的確な目標・指標設計」の3つ軸に焦点を当て、事業の成長を目指しています。
グロースハックを実施する際にもこの3つの軸を念頭に置き取り組むことで、より大きな成果を出すことができるようでしょう。Amplitudeなどのツールを活用して、より顧客の行動理解を深め、より素早くOODAループを回しましょう。