アクセス解析や分析はできているものの、ユーザーがどのようにプロダクト(サービス)を使っているかまでは把握できていないというお悩みを聞くことがあります。現代のようなデジタル時代に企業が成長を続けるためには、ユーザーがプロダクト(サービス)をどのように利用しているかを理解し、迅速かつ適切な改善を行うことが必要となります。
ここで注目されているのか「プロダクト分析(プロダクトアナリティクス)」です。
本記事では、プロダクト分析の基本概念から、なぜ重要視されるのか、具体的な指標や手順、成功事例、そして主要なプロダクト分析ツールの比較を紹介します。
プロダクト分析とは?
プロダクト分析は、ユーザーの行動データを収集・分析し、ユーザーがどのように製品を使用しているのかを詳しく見ることで製品やサービスの改善を図る手法です。
混同されやすい概念として「アクセス解析」がありますが、アクセス解析は、Webサイトの利用状況を把握するためのものであり、例えば訪問者数、ページビュー、滞在時間などの定量的・統計的なデータに焦点を当てます。
一方、プロダクト分析はデータ分析をさらに一歩進め、ユーザー個々の行動や体験をより深く理解し製品やサービスの改善ポイントを特定します。例えば、顧客がどのように製品を使用しているか、どの機能が最も利用されているかなど、行動の傾向からユーザー理解を促します。
ユーザーのニーズを深く理解し、改善を通じて製品やサービスの価値を最大化できるため、満足度やリテンション率の向上が期待できます。
プロダクト分析を行うためには、AmplitudeやMixpanelなどの行動分析に特化したツールが利用されます。
>>主要なプロダクト分析ツールはこちら(ページ内ジャンプ)
プロダクト分析が重要視される背景
プロダクト分析が重要視される背景には、オンラインでの消費行動が一般的になりつつあることが大きく影響しています。
コロナ禍以降、顧客の購買活動がECサイトやアプリなど、オンラインで行われることが多くなりました。令和3年度総務省の情報通信白書によると、2020年3月以降にオンラインショッピングをする世帯は急速に伸びており、2人以上の世帯では半数以上がオンラインショッピングを利用しています。それに伴い、企業と顧客をつなぐチャネルとして「デジタル」は、大きなチャネルの一つとして捉えられています。
この流れにより、Webサイトやアプリなどからさまざまなデータを取得できるようになり、データ分析が行いやすくなったという背景もあります。
プロダクト分析は、Webサイトやアプリのトラッキングデータや顧客の属性データ、購買データなど、さまざまなデータから顧客の行動を詳細に把握し、製品やサービスの価値を最大化するためのデータに基づいた意思決定を行うことができます。
プロダクト分析で用いられる指標
プロダクト分析は、製品やサービスのパフォーマンスを評価し、改善点を特定するために様々な指標を用います。以下はプロダクト分析で用いられる代表的な指標です。
- エンゲージメント率
- リテンション率
- LTV
エンゲージメント率
エンゲージメント率は、ユーザーが製品やサービスにどれだけ積極的に関与しているかを示す指標です。
エンゲージメント率は具体的に、アクティブユーザー数、セッション数、ページビューなどの指標を掛け合わせて算出されます。高いエンゲージメント率は、ユーザーが製品を頻繁に使用し、価値を感じていることを示します。
リテンション率
リテンション率(保持率)は、ユーザーがどれだけの期間、製品やサービスを使用し続けているかを測定する指標で、リテンション率を高めることは、ユーザーの満足度向上と解約率低減に直結します。
具体的には、1日後、7日後、30日後のリテンション率を追跡することが一般的です。
関連記事:リテンション率とは?リテンション向上の重要性と計算式を徹底解説
LTV
LTV(ライフタイムバリュー)は、ユーザーが製品やサービスを使用する期間中に企業にもたらす総収益を示す指標です。
高いLTVは、長期間にわたりユーザーが製品を使用し続け、多くの収益をもたらすことを意味します。LTVを最大化するためには、前述したエンゲージメントとリテンションを高める施策が重要となります。
関連記事:LTVとは?ライフタイムバリューが重要な理由と計算方法を解説
主要プロダクト分析ツール3つを比較
プロダクト分析ツールとは、製品やサービスがどのように使われているか把握するために、ユーザー行動データを収集・分析するためのツールです。プロダクト分析にはユーザーの複雑な行動データの収集と高度な分析が必要であり、それを実現するものです。
ここでは主なプロダクト分析ツールを3つ紹介します。
※以下は、各社オフィシャルサイトで公開されている情報をもとに株式会社DearOneにてまとめたものになります。2024年10月時点での情報となりますので、詳しくは各社にお問い合わせください。
Amplitude
Amplitudeは3,000社以上での導入実績がある世界No.1*1G2.com, Inc「Grid® Report for Product Analytics / Spring 2024」のプロダクト分析ツールです。
Amplitudeでは世界トップクラスのアナリストたちが利用する厳選されたグロース向け分析テンプレートが14種類用意されており、スピーディかつ高度な分析が可能です。
またAmplitudeでは、店舗データなどのオフラインデータを投入可能なため、アプリやWebサイトでのオンラインでの行動と、店舗のオフラインでの行動を統合し、チャネルを横断してユーザー行動を把握することができます。
日本国内でも、プロダクト分析の必要性は高まっており、パナソニック様やNTTドコモ様、オルビス様など幅広い業界で導入されているツールです。
ツール名 | Amplitude |
費用 | 要問い合わせ ※無料プランあり |
導入実績 | 3,000社以上*2有償プラン導入企業数 |
導入実績例 | ・ニーズを見定めたターゲティングでメール開封率2倍に GDO様 ・マジックナンバー分析による施策実行でROI152%達成 NTTドコモ様 |
日本語対応 | あり |
>>Amplitudeの資料請求はこちら
>>費用に関するご相談はこちら
Heap
画像引用:Heap公式サイト
プロダクト分析ツールでは、定量的な面と定性的な面でそれぞれツールが提供されることが多いですが、Heapは定量と定性の2つを統合し、ユーザーのあらゆる行動を分析できるのが特徴的です。
またサービスに関して、web、iOSアプリ、Androidアプリと複数の形式で提供している場合でも、自動でユーザー行動をトラッキングしレポート化できます。
様々な分析に対応できますので、エンジニアの工数を削減することも可能です。
ツール名 | Heap |
費用 | 3600ドル~ ※無料プランあり |
導入実績 | 10,000社以上 |
日本語対応 | なし |
Mixpanel
画像引用:NTTコム オンライン
Mixpanelはデータが見やすく直感的な操作が可能なプロダクト分析ツールです。データ値が上昇・下降したときの原因を簡単に探ることができ、プログラムを書く必要もないため、 気になるデータを自由に操作できます。
ダッシュボードは必要に応じていくつでも作成できるため、担当者別や分析したい内容別など使いやすい形でデータの閲覧が可能です。AWSやAzureなど外部サービスとの連携もスムーズですので、業務効率化を図ることもできます。
ツール名 | Mixpanel |
費用 | 要問い合わせ |
導入実績 | 26,000社以上 |
日本語対応 | あり |
プロダクト分析ツールの活用・成功事例
プロダクト分析が企業の現場で実際にどのように活用されているのか、成功事例を紹介します。以下で紹介する内容はプロダクト分析ツール「Amplitude」を活用した改善事例になります。
コホート分析でメール開封率を2倍にした事例(GDO様)
ゴルフ関連サービスを提供するGDO様は、プロダクト分析ツールAmplitudeを活用してコホート分析を実施し、メールマーケティングの効果を大幅に向上させました。
コホート分析とは、ユーザーを属性や条件でグループ分けをして、ユーザー動向のトレンドや顧客ニーズを分析する手法です。
GDP様が行った分析から「特定メーカーから新しいドライバーを買おうか迷っているユーザーが一定数存在する」ことが明らかになりました。このようなユーザーは積極的に情報を集めている傾向にあり購買意欲が高まっているため、新たな施策として購入を後押しするようなコンテンツを配信しました。
ユーザーのニーズに合わせたメールの開封率は類似施策と比較して2倍近くになり、実際に受注件数も増加しました。また、データ分析から配信までをAmplitudeで行うことで、マーケティング担当者の時間短縮にもつながっています。
GOD様の事例について更に詳しく確認したい方は以下を参照してください。
マジックナンバー分析で会員登録率最大2倍(TRiCERA様)
現代アートのマーケットプレイスECサイトを運営するTRiCERA様は、Amplitudeを活用してマジックナンバー分析を実施し、会員登録率を最大2倍に向上させました。
マジックナンバーとは、「ユーザーが特定のアクションを規定回数以上行うとサービスの継続率や収益などの重要指標が飛躍的に向上する数字」のことを指し、このアクションを特定するのがマジックナンバー分析です。
TRiCERA様は、ユーザーの行動データを詳細に分析し、「お気に入りに12作品以上入れてくれているユーザーは、購入する傾向にある」というマジックナンバーを把握しました。
マジックナンバーをもとに施策を打つことで、結果的にユニークユーザーに対して0.2%程度だった会員登録率が、0.3~0.4%と1.5~2倍まで上がりました。
TRiCERA様の事例について更に詳しく確認したい方は以下を参照してください。
プロダクト分析ツールでできる分析
このように、各担当者で行うプロダクト分析によりそれぞれの視点での顧客インサイトを形成し、組織全体で共有し、改善活動を行っていきます。
プロダクト分析ツールは、ユーザー行動を詳細に追跡し、製品のパフォーマンスを向上させるためのさまざまな機能を提供します。以下がプロダクト分析で用いられる分析例です。
- ファネル分析
- リテンション分析
- ユーザージャーニー分析
- マジックナンバー分析
- 行動クラスタ分析
ファネル分析
ファネル分析は、ユーザーが特定の目標に到達するまでの過程を可視化します。
これにより、どのステージでユーザーが離脱しているかを特定し、改善点を見つけられます。例えば、購入プロセスのどの段階でユーザーが離脱しているかなどを把握できます。
関連記事:【図解】ファネル分析とは?基礎知識、活用ポイントと事例を紹介
リテンション分析
リテンション分析は、ユーザーが製品をどれだけの期間利用し続けているかを測定する分析手法です。
1日目、2日目、1週間後、数週間後、数カ月後と時間の経過とともにどれくらいのユーザーが製品を利用し続けているかを把握します。1ユーザーあたりの売上を把握できたり、1ユーザーあたりの獲得コストの最適化に役立てられます。
関連記事:リテンションとは?手法や種類・事例を紹介
ユーザージャーニー分析
ユーザージャーニー分析は、ユーザーが製品を利用する際の一連の行動やステップを詳細に追跡し、ユーザーがどのような経路を辿って目的を達成するのかを理解できます。
例えば、ユーザーが初めてアプリをダウンロードしてから、購入に至るまでの全プロセスを可視化します。ユーザージャーニーの各ステップでの行動やエンゲージメントを分析することで、ボトルネックや改善点を特定し、よりスムーズなユーザー体験を提供するための施策を検討できます。
マジックナンバー分析
マジックナンバーとは「ユーザーが特定のアクションを規定回数以上行うとサービスの継続率や収益などの重要指標が飛躍的に向上する数字」を指し、マジックナンバー分析はこの重要指標となる数字を導き出します。
例えばFacebookでは「10日間で7人と友達になる」をマジックナンバーとして見つけ出し、その後ユーザーの継続率を高めることに成功しました。
このように、顧客の行動分析によってマジックナンバーを特定することで、リピート購入やリテンション率を向上させるポイントを見出すことができます。
マジックナンバーを求めることは従来までは非常に大変でしたが、最近ではデータをしっかりと蓄積すれば、自動でマジックナンバー分析ができるようなプロダクト分析ツールも登場しています。
Amplitudeという行動分析ツールを利用すれば、ここまで紹介してきた分析を含め、マジックナンバー分析も数秒で実施できます。
関連記事:グロースのカギとなる魔法の数字 マジックナンバー分析とは
行動クラスタ分析
行動クラスタ分析は、ユーザーを共通の行動パターンに基づいてグループ化する手法です
行動クラスタ分析により、似た行動を取るユーザーをクラスタとしてまとめ、それぞれのクラスタに対して適切なアプローチを見つけられます。
例えば、アプリの使用頻度が高い「ヘビーユーザー」と、頻度が低い「ライトユーザー」を区別し、それぞれに異なるマーケティング戦略やプロダクト改善策を実施します。
これにより、各セグメントのニーズに応じてパーソナライズされた体験を提供し、全体的なユーザー満足度とリテンション率を向上させることができます。
アクセス解析とプロダクト分析の違い
アクセス解析とプロダクト分析は、どちらもデータを基にした意思決定をサポートしますが、その目的と焦点に大きな違いがあります。
アクセス解析 | プロダクト分析 | |
---|---|---|
目的 | Webサイトの訪問者データを収集・分析し、サイトのトラフィックやユーザー行動を把握すること | 製品やサービスのユーザー行動を詳細に追跡し、製品の利用状況やユーザー体験を深く理解すること |
重要視する指標 | ・ページビュー数 ・ユニーク訪問者数 ・滞在時間 ・直帰率 | ・リテンション率 ・LTV ・エンゲージメント率 |
アクセス解析はWebサイト全体のパフォーマンスを評価するために使われ、プロダクト分析は製品やサービスのユーザー体験を深く理解して改善するために使われます。どちらか一方が大切ということではなく、それぞれを効果的に活用することで、企業は顧客の期待に応え、ビジネスをグロースさせることにつなげます。
プロダクト分析は組織全体で行うもの
分析と聞くとマーケティング担当者が行うものと考える方もいるかもしれませんが、プロダクト分析は組織全体で行い、プロダクトの改善につなげるものです。各担当者がプロダクト分析により、得られる効果の一例をご紹介します。
担当者 | プロダクト分析で得られるもの |
---|---|
マーケティング担当者 | 多くのユーザを呼び込むコンテンツや、コンバージョン率が高いユーザー群を特定し、マーケティングメッセージの最適化や精度の高いターゲティングでコンバージョン率改善の施策を行う |
プロダクトマネージャー | ユーザーの行動を理解し、ビジネス目標を達成やユーザー体験向上のための、データに基づいた意思決定や施策の実行が可能となる |
エンジニア | ユーザーがプロダクトをどのように操作するか分析し、よく使われている部分や理解しにくい部分、エラーが起きている部分を特定し、技術的な改善を行うことでUI/UX改善につなげる |
デザイナー | ユーザーのクリックやスクロールのパターンを分析したり、複数のクリエイティブをABテストし、より効果の高いデザインや設置位置を調整することで、クリック率やコンバージョン率を向上 |
組織全体で効率的にプロダクト分析を行うためには、本記事でご紹介したような、プロダクト分析ツールを用いて全員でデータを活用できる仕組みを作ることが重要とされています。
まとめ
プロダクト分析は、ユーザーの行動を詳細に追跡し、プロダクト(製品やサービス)の価値を最大化するために重要な手法です。ユーザーがどう自社のサービスやプロダクトを利用しているかを分析し、ユーザーニーズに素早く対応していく重要性は以前よりも増しており、ユーザーニーズを把握するためにはプロダクト分析が欠かせません。
DearOneではプロダクト分析ツール「Amplitude」の、Amplitude認定資格を持つデータ分析のプロがご要望に応じて導入・運用をサポートいたします。
「成果につながる分析がしたい」「GA4の分析では物足りない」など、分析に関する課題をお持ちの方は、まずはご相談だけでも大歓迎です、どうぞお気軽にお問い合わせください!