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「生産性の向上」こそがAmplitude導入がもたらす最大のメリット|TRiCERA| 【DearOne】Amplitude(アンプリチュード)導入インタビュー

2023.04.19

amplitudeのご相談は、
国内初パートナーのDearOneまでお問い合わせください。

行動分析ツール「Amplitude」国内総代理店の株式会社DearOneは、現代アートのグローバルマーケットプレイスECサイト「TRiCERA ART」を運営する株式会社TRiCERA(トライセラ)に同ツールを導入頂いています。

今回はCEOの井口様に、行動分析ツールAmplitude導入の決め手や導入後の変化、Amplitudeを活用した具体的な改善事例についてお話を伺いました。

課題:
  • 先行指標に基づいたユーザー行動データの活用ができておらず、施策に活かせていない
効果:
  • 先行指標を容易に取得でき、改善施策・戦略も容易に
  • 分析時間の短縮により、PDCAを素早く何度も回せる   
  • マジックナンバーの把握により会員登録率最大2倍
  • 一人一人の社員の生産性向上に寄与
展望:
  • Amplitudeでのデータ分析を基礎知識として社内に根付かせる
  • ツールの有効な使い分けによる生産性向上

126ヶ国約7,800人のアーティストの約78,000作品を扱う現代アートのグローバルマーケットプレイスECサイト「TRiCERA ART」

COPYRIGHT 2023 株式会社TRiCERA
COPYRIGHT 2023 株式会社TRiCERA

DearOne 神津|
Amplitudeをご導入いただいた御社のサービスと、特徴を教えてください。

TRiCERA 井口様|
弊社は「現代アートのグローバルマーケットプレイス」として「TRiCERA ART(トライセラアート)」というECサイトを運営しており、現在、7,800人を超える世界中のアーティストが弊社のマーケットプレイスに参加しています。しかも、126ヶ国以上のアーティストが参加するアジア最大級の規模を誇り、扱っている作品数も78,000点を超えております。このようにアーティストを世界中から集めていることに加え、世界中の方が実際に購入できるサービスであることが特徴です。

現在までに40ヶ国以上に出荷実績があり、世界中の方が世界中のさまざまなアーティストの作品をいつでもオンラインで見たり購入したりすることができ、それが手元に届くというサービスです。

先行指標を容易に取得できるAmplitudeに着目

Amplitude導入時のデータ活用に関する課題

DearOne 神津|
Amplitude導入時、何かデータ活用に関する課題はございましたか?

TRiCERA 井口様|
従来使っていたGoogle Analytics(GA)はじめ、世の中にWebサイトの検証ツールはいろいろありますが、大半がコンバージョンをWebサイトにおける一番重要な指標に置いています。その中にもマイクロコンバージョンやマクロコンバージョンなどいろいろありますが、「結果指標」という名の通り、あくまでもそれらは「結果」でしかありません。

そんな中でAmplitudeに着目したのは、「先行指標」が取れるというところです。その先行指標を基に改善の施策・戦略を組み立てていかないと実際の結果にはつながりません。なぜかというと、結果指標は際限なく細分化されブレークダウンされてしまいがちだからです。

そうではなく、いかに先行指標を捉え、トラッキングして、そこに対する打ち手を考えていくかが重要ではないかと考えたのが、Amplitude導入の経緯でした。

Amplitudeを知ったきっかけ

DearOne 神津|
Amplitudeを知ったきっかけを教えてください。

TRiCERA 井口様|
かなり昔にさかのぼりますが、実はDearOneさんにお願いする以前から、Amplitudeアメリカ本社のWebサイトに直接登録していました。どうして元々Amplitudeを知っていたかというと、弊社は前述のように現代アートのグローバルマーケットプレイスで、外国籍ユーザーの比率も高く、また私自身も元々外資系企業に勤めていたので、まず探していたのがグローバルなツールだったんです。

「グローバルツールの方がベストプラクティスが貯まっているだろう」という考えの下、基本的に日本語のツールからは探さずグローバルツールを探すわけです。確かその中でAmplitudeと出会ったと記憶しています。そこで、当初はAmplitudeに登録し、自社だけで導入しようと試みました。

ところが、実際には自社だけでは難しくて全然できませんでした。とても細かい話ですが、例えばタクソノミー設計*1 … Continue readingの仕方や、それをどう実装していくかという部分が実はものすごく難しかったです。

中でも特にタクソノミー設計が全然できず、そういった経緯からAmplitude日本法人の方からDearOneさんをご紹介いただいたというわけです。

私自身も前職や前々職でIT関連のプロジェクトも経験していたので、私がそこにフルコミットすれば自社独力での導入もできたかもしれませんが、やはりCEOとしてさまざまなことをしなければならない中で、そこに対してリソースを割くことは難しい状況でした。よって、プロにお願いしてしっかり設計をすることが、Amplitudeをきちんと使う上では必須だと実感しました。

例えば、包丁もきちんと使わないと怪我をしますよね?結局、どんなツールもきちんと使うという前提があって初めて機能するので、そういう最初の部分が実は一番肝要です。その最重要の部分は、やはり知見を持っている人と一緒に構築していくということに、私は一番価値を感じました。

インタビュー取材中の株式会社TRiCERA 井口様

Amplitudeを選んだ理由、導入の決め手

DearOne 神津|
先ほど、GAを使われているというお話でしたが、他にも分析ツールを使ったり検討されたりはしていましたか?

TRiCERA 井口様|
はい。例えばヒートマップのツールや、当時ZOHOといういわゆるERPのパッケージサービス企業がサイトレコーディングのツールを提供していたので、それらを導入しユーザー一人一人の導線を動画で追うなど、定性的な分析は結構行っていました。

DearOne 神津|
定性分析だけではなく、定量的な部分をもう少し強化しようということでAmplitudeの導入を検討されたのでしょうか?

TRiCERA 井口様|
はい。Amplitude導入において重視したことは、「マジックナンバー*2 … Continue reading」分析の機能です。タクソノミー設計後に、どのイベントがどういったコンバージョンに一番影響しているのかという部分の分析や、またマジックナンバーを探り当てていくことがAmplitudeなら非常に容易です。

また、よく言われている話ですが、従来であればSQLでコードを書いて、ああでもないこうでもないと計測して1ヶ月かかっていたところが、Amplitudeならデータ分析に1日もかからないためPDCAが早く回せるといった点が重要なポイントでした。

DearOne 神津|
分析にかかる時間が短くなったことで、PDCAをどんどん回せるということが導入の決め手になったのですね。

TRiCERA 井口様|
そうです。もちろんPDCAの結果と一口に言っても、それをデイリー、ウィークリー、マンスリーの何で見ていくのがいいのかは、Webサイトやアプリなどサービスのビジネスモデルによって異なります。

弊社の場合は基本的にウィークリーで見ていくのがいいと考えており、各種指標をもとに「この施策は当たっていた」、「ではこの数値をもっと改善すると、ここが伸びるはずだ」といった具合に、KPIをベースにマイクロコンバージョンにつながる先行指標を改善させることで結果指標も改善できます。

Amplitude実装までのスピード感

DearOne 神津|
Amplitude実装までのスピード感はどのような印象でしたか?

TRiCERA 井口様|
実装自体はタクソノミーさえ作れてしまえばエンジニアリング的にさほど難しくはなかったです。

あとは設計した通りにどんどんやっていくだけの話になるので、もちろん弊社の場合はスタートアップ企業だからスピード感が他社よりも速い自信はあるわけですが、タクソノミーが出来上がってから実装にかかった時間は2〜3週間程度でした。

しかし、タクソノミー設計が一番難しいです。特に弊社みたいなマーケットプレイスの場合、設定イベントがかなり多くなってきます。現状は特に買い手側にフォーカスしてタクソノミー設計をしているのですが、マーケットプレイスには本来、売り手と買い手の両方が存在して、どちら側にもイベントが存在するはずです。ですから、将来的にはさらに膨大な量になっていくと思います。

イメージとしては楽天を思い浮かべていただけたらと思いますが、出品者であるアーティストと作品側のイベントも今後増やしていけたらと考えているので、イベント数がこれから何倍にもなっていくと考えると、タクソノミー設計がますます重要になってくることは間違いありません。

ただ、実装を手伝っていただいたDearOneのエンジニアさんに、「TRiCERAさんは通常の7倍くらいイベントがありますね」と言われたので弊社はやや特殊なケースかもしれません。大量のイベントの中から取捨選択することが必要だったので、それも結構大変でしたね。

リストが山のようにある中、実際に行いたいビジネス要件を一つ一つ「これも要りますか?」と要・不要で厳選していくことはなかなかハードです。でも、それをやっていくと、要らないと思ってた要件が実は要るものだったりすることもあるので、やはり重要なプロセスだと思います。

実際にタクソノミー設計を行った印象

DearOne 神津|
タクソノミー設計はいかがでしたか?

TRiCERA 井口様|
DearOneさんと契約を交わしたのが11月で、Amplitudeが動き出したのが1月でしたから、2ヶ月くらいですね。タクソノミー設計と同時に、実装の方も並行して進めていました。

どんな企業も、Webサイトからさまざまな指標を取ってくるときに、例えばマーケティング部署はAが欲しい、カスタマーサクセスはBが欲しいなどと、そこの調整や意思決定が難しいと思います。弊社の場合は、Amplitudeのプロジェクトには全部を把握している私が入っていたので、通常より早く進められたという側面もあると思います。

SDP(Amplitudeスタートダッシュプログラム)を利用しての所感

DearOne 神津|
Amplitude導入時の複数回のオンボーディング講習から成るSDP(Amplitudeスタートダッシュプログラム)をご利用いただきましたが、こちらはいかがでしたか?

TRiCERA 井口様|
ケーススタディー的な形で進めていけることや、「こういうところが主要の機能で、それぞれのケーススタディーはこうです」といった整理がとてもわかりやすかったです。

もう一つ良かったのは、「私たちはこういうことに課題を感じていて、こういうことをやりたいです」という思いに対しても、例えばコホート分析も含めさまざまなフィードバックがもらえ、「では、まずこれをやってみましょう」といった形でアドバイスをいただけたのはありがたかったです。

それによって、実装した後もスムーズに回していけましたし、新しくやりたいことが出てきたときも、スタートダッシュプログラムの中で培ったベースの知識を応用して作ることができました。

DearOne 神津|
独力では導入が難しかったところが、スタートダッシュプログラムでしっかりサポートがあった結果、御社の中で実装が実現したということでしょうか。

TRiCERA 井口様|
はい。アメリカ本国のAmplitudeに登録した際には、そのようなプログラムも何もなかったので「これどうやって使うんだろう?」と途方に暮れていましたからね。そこをDearOneさんにスタートダッシュプログラムという形で提供していただけたことはとても大きかったです。

マーケティング担当や開発担当など、私も含めたメンバー・社員やさまざまな役割の担当レベルでどうツールに習熟していくか、それぞれにおけるフェーズが不可欠です。

そこがすごく重要なポイントだと思っていて、例えばエンジニアリング的な実装の問題や、タクソノミー設計、そして実際にツールを使う人の問題などは、会社によって事情が大きく異なる部分です。そのため、それぞれの分野に長けたスペシャリストを適切にアサインできるかというと、必ずしもそうではなく、なかなか難しい部分があると思います。ですから、そこを一気通貫でご支援いただけることが一番大きいと感じています。

Amplitudeというのは本当に優秀なツールなので、使い方さえわかって習熟度も上がれば、結果的に我々がやりたいことを実現する一番の近道であると言えると思います。

インタビュー取材中の株式会社TRiCERA 井口様2

Amplitude導入後の効果

運用メンバーの構成の変化

DearOne 神津|
運用メンバーは、最初は数名でのスモールスタートでしたか?

TRiCERA 井口様|
はい。最初はマーケティングのメンバーは入れずに、UXディレクターとディベロップメントディレクター、それからプロダクトマネージャーとで取り組んでいました。

そうしたメンバーで主要機能をしっかり把握し運用していき、それを実際にプロダクトチームやUXチームのKPIに活かしたりしていました。

マーケティングの方でもAmplitudeの情報を使っていろいろ施策を立てていくことが重要ですから、その後徐々にメンバーを増やしていきました。マーケティングチームは元々、マクロに結果指標を見ることができるGAを確認していることが多かったのですが、どういう施策を立てるかというときには、先行指標を取って「ではこうしましょう」といろいろ仮説を立てられるAmplitudeの方が有効です。もちろん、会社によって使い分けもあるとは思いますが、GAだけで仮説を立ててしまうと先行指標まで追い切ることができなくなりますが、一方、Amplitudeを活用すれば時間の短縮や施策の精度向上が実現できます。

私たちはそのようにツールを使い分けていますから、マーケティングチームは第1フェーズではなく、第2フェーズから入ってもらうことにしました。具体的にはAmplitude上にダッシュボードを作り「データとしてはこういう状況になっている」とマーケティングチームに対して共有した上で、そこから見出される課題などについて、マーケティングチームからプロダクトチームに共有されたフィードバックに基づき「それでは、この要素を分析していこう」と進めていく形にしていました。

ですから、当初はマーケティングチームがAmplitudeを触ることはありませんでしたが、今は結構直接見ています。ただ、他部署まで広げてメンバーを増やしていく上で難しい面が一つありました。弊社はもらった資料や取られたデータ、そして要約などの知見を全てNotion上にまとめているので、例えば「スタートダッシュプログラムの録画を見てください」もそこで共有するのですが、ライブでレクチャーを受けるのと、レクチャー録画を見るだけとでは、結構習熟度に差が出てくると感じていました。

例えば「こういうデータを見たい」と言えば、やはりメインで取り組んでいる人たちの方がすぐに出せますので、それ以外の人たちをどうツールに習熟させていくかは難しいポイントだと感じています。

DearOne 神津|
それが今後、御社の中でAmplitudeを活用していく上での課題と言えそうでしょうか。

TRiCERA 井口様|
特に人の入れ替えや役割変更などがあったときに、どうやってAmplitudeのノウハウやナレッジなどをしっかり貯めて引き継いでいくかは、今後の課題/リスクではあると思います。

Amplitudeを活用することでの社内の変化

DearOne 神津|
業務効率化や従来できなかったことの実現など、Amplitudeを活用して何か定性的な面で変わったことはありましたか?

TRiCERA 井口様|
作業時間の短縮という意味では、従来「本当はこういう風にやりたいが、それにはSQLなどにかかる工数が膨大に掛かるからできない」となっていたことが、Amplitudeによってできるようになったことが一番大きいです。

例えば統計に則った重回帰分析などに基づき指標を出すことは、Amplitudeだと簡単にできているように見えますが、これを実際に人がやろうとしたら結構大変です。それをすぐに出せることが、Amplitudeの一番いいところだと思います。

また、それによってあるイベントと別のあるイベントの間にある、コンバージョンをはじめとする「相関関係」を測れることが、Amplitudeのもう一つ大きな特徴だと思います。つまり、「ある特定のイベントを行う人は、他のどのイベントを実行する確率が一番高いのだろう」と、そのユーザーグループなどを分析していくことができることは、とても大きなポイントだと思います。

もちろん、相関関係と因果関係の違いには気をつけなければなりませんが、この相関関係が先行指標の前提条件として必要になります。なぜなら、仮説を立てるに当たっては、まず相関関係があり、そこにさらに因果関係があるのかを検証していくことになるからです。それができるようになったことがAmplitudeを実装しての一番大きな変化でした。

インタビュー取材中の株式会社TRiCERA 井口様3

マジックナンバー把握で会員登録率が1.5〜2倍にアップ!

Amplitude分析からの施策事例

DearOne 神津|
実際にAmplitudeを使った施策の具体的な事例について教えてください。

TRiCERA 井口様|
例として、2種類の施策を紹介します。

まず1つ目の施策としては、弊社のグローバルマーケットプレイスでは、つい最近まで「ゲスト購入」という会員登録をしなくても購入可能な仕組みがありました。「会員登録がどれくらい購入に寄与するのだろうか?」と考え、その会員登録数を伸ばすことや、また「どこのページで訴求するのがいいのだろうか?」といった分析につなげていました。

2つ目は「お気に入り機能」に関するもので「この作品が好きだ」、「この作家が好きだ」といったユーザーの嗜好が、コンバージョンとどれくらい関連があるかを分析しました。それに基づき、例えば「これくらいお気に入りをしてくれたらクーポンをあげます」といった施策を打つことによってコンバージョンアップにつながるのではないかという検証に今取り組んでいるところです。

ちなみに弊社の場合、基本的には「お気に入りに12作品以上入れてくれているユーザーは、購入する傾向にある」というマジックナンバーがAmplitudeでの分析からわかっています。ただ、もちろんこのマジックナンバーは規模などさまざまな要因によって変わってきますので、そこは常にモニタリング/トラッキングして追っていく必要があります。

また、ユーザーのタイプが変わるとマジックナンバーも変わってきます。そうした変数みたいな要素は常にあって、その辺りも考えながらAmplitudeによる分析に基づき施策を打っていくことが必要です。相関関係と因果関係の違いの認識と分析に加え、Amplitudeを導入して一番重要なことは、Amplitudeはすごいツールだが、完璧なツールではないと認識することです。

完璧なツールなどこの世の中に存在しませんし、定量分析に基づく安易な発想・施策ではない定性的な検証・分析は今のところ人間にしかできません。ですから、全部を素晴らしいツール任せにするのではなく、きちんと人間が頭を使って考えないといけない部分はやはり残っています。

相関関係と因果関係について定量的に見られるツールがあっても、それを定性的な視点から見直したときに本当に正しいのかどうかについては、必ず人が判断するようにするということを常に考えておく必要があります。

Amplitude分析に基づく改善事例

DearOne 神津|
なるほど。その上であえてAmplitudeでの分析結果を用いた改善の事例があれば教えてください。

TRiCERA 井口様|
私たちはAmplitudeを使ってどういう経路でどういう行動をするユーザーが最も会員登録をしているか検証・分析をしてきました。実はマーケットプレイスでは最初にトップページから来る人が一番多いわけではありません。例えば、ある作家のページにダイレクトでランディングする人や、個別の作品のページ、あるいは作品リスト一覧ページにランディングする人などと結構分かれます。

その中で、最初にどこにランディングすると一番会員登録数が多いのか。つまり、どこの数を増やしていくと会員登録率が上がるのかが確かにわかってきました。それによれば、UUに対して0.2%程度だった会員登録率が、実際に約0.3~0.4%と1.5〜2倍に上がった例もありました。そうした傾向を掴み、どのような行動やアクションがマイクロコンバージョンや先行指標にインパクトするのかを把握して施策を立てることがとても重要です。

そのため、トップページにランディングさせることだけが正解ではなく、ユーザーをいかに回遊させてトップページに戻すかがポイントだと考えました。つまり、Amplitudeで分析したユーザー行動履歴に照らして、ユーザーをシンプルにトップページに集めるだけではなく、セッションや滞在時間を含めどんどん回遊をさせる方向に持っていき、さらにトップページに戻してから会員登録をさせることが重要だとわかったわけです。

そのほか、会員登録しているユーザーは1回目のセッションではなく、かなりの割合で2回目のセッションで登録を行っていることもわかってきました。そこに対してどのような施策を打つことでWebサイトをリピート訪問してもらうか考えるという方針でやってきました。

Amplitudeをフル活用しているので他にも事例はたくさんあって、例えばちょうど今取り組んでいる部分では、決済プロセスのどこで離脱が発生しているのかに関して、特にフローの部分で何が問題になっていたかが判明しました。

具体的には、買う意志がないのにカートページなどの決済チェックアウト関連のページを押しているユーザーがいることがどんどんわかってきました。

実はこのカートに追加してくれるユーザーの割合がマイクロコンバージョンとしてとても重要なのですが、その中にカートに作品を追加するわけでもないのに、カートページを見ている人が一定数いたわけです。意図はわかりませんが、おそらく弾みで押してしまったようなユーザーがいるということをきちんと把握していくことが意外と大切になります。

Amplitude上でそれぞれのイベントを設定することで、カートに追加したユーザーや、そこからチェックアウトのプロセスを始めたユーザーがどのくらいの割合でいるかがわかります。それが把握できることで初めて問題がある部分も可視化でき、「この1番目のステップを変えよう」「2番目のステップを変えよう」といった議論につなげることが可能になります。

それによって何がわかったかというと、そもそもカートを見ているユーザー数の中に、必ずしも購入意思のないイレギュラーな数字が入ってきていたため、分母が大きくなったり小さくなったりして、KPIをモニタリング/トラッキングすることが難しくなり、数字の改善や悪化が正確にわかっていないということでした。

そこで、Webサイト上で「カートを見る」ボタンを押したユーザーが、その後カートに何も追加していなかったら、ポップアップで「カートに何も入っていません」と表示されるようにしたところ、誤ってカートボタンだけ押すユーザーが減り、私たちが意図した通りの改善が実現しました。

DearOne 神津|
つまり、Amplitudeの分析に基づくポップアップ施策によって、イレギュラーな数字を計測しないように改善できたということですか。

TRiCERA 井口様|
はい。もっともKPIの改善というより、さらに精緻にしていったという表現の方がぴったりします。また、Amplitudeを導入したら同時にやるべきことは、Webサイトをより自分たちの作りたい形にしていくために、UX全体をユーザーにとってフリクションレスなモデルに整備していくことで、これこそ事業全体のKPI改善のために欠かせません。単に施策に活かすというだけではなく、常にそういったUX改善をしていくことがとても重要です。

ポップアップ画面/COPYRIGHT 2023 株式会社TRiCERA
ポップアップ画面/COPYRIGHT 2023 株式会社TRiCERA

Amplitude導入がもたらす一番重要なポイントは「生産性の向上」

Amplitudeでのデータ活用を共通認識・基礎知識として社内に広めたい

DearOne 神津|
今後Amplitudeをどのように活用していかれますか?

TRiCERA 井口様|
現在、メインの分析ツールはAmplitudeと言って間違いなく、私たちはさらなるグロースのステージに差し掛かっていこうとしているところですのでAmplitudeのデータに対する共通認識を社内外の関係者にもっと広めていきたいです。

また、現在「これについてはAmplitudeをこう使えば分析できる」といった突っ込んだ会話ができるのが、社内ではまだ私のほかに数名くらいしかおりません。だから、まず分析ツールでどのような分析ができるのかという軸をしっかり理解できる人材を増やすことが急務だと考えています。

例えば、マーケティングチームやオペレーションチームなど、さまざまなチームから「こういうことを分析したい」という要望が上がってくるときに、「それってAmplitudeで見られるね」という会話が自然に出てくるようになれば、情報の連携や課題に対する正しい答えの共有がしやすくなるはずです。

反対に、各担当やキーパーソンが「本当はこういう風なことを知りたいが、わからないから」と諦めてしまう状況は避けたいところです。ですから、「それはAmplitudeでならできるよ」という会話ができるようになる、最低限の土壌の整備や知識・スキルの共有を、社内全員に対して広めていけたらと思っています。

ただし、これは結構難しい話であることも確かです。例えば、実はExcelでも知られざる機能がたくさんありますが、基本的にはみんな、普段自分が使っているレベルの機能しか理解していないことが通常です。

そうすると、そもそもそういう機能があると知らないと「それはExcelでできるかもしれない」、「Amplitudeなら実現できるのでは」などといった発想には結び付かないですよね。

一般的なITリテラシーと同様、Amplitudeなどのツールにどういうケイパビリティがあるかという初歩的な知識があるかないかで仕事上、大きな差が生まれてきます。単純に知識があれば「こうすればいい」という共通認識に対して掘り下げていけば済むだけの話であっても、そもそも知識がない人にとっては共通の土台に立てないがために、大きな損失を生むことにつながってしまいかねません。

ですから、まずはAmplitudeというツールではこういうことができるなどといった知識をしっかり持たせることで、ITリテラシーの底上げを図っていくことも不可欠であると実感しています。

(左から)DearOne広報神津、TRiCERA 井口様

今後、DearOneに期待すること

DearOne 神津|
DearOne社に今後期待することを教えてください。

TRiCERA 井口様|
Amplitudeの発展形について考えたとき、現代のツールにはAPI連携をはじめさまざまな可能性があると思います。ただ、同じAmplitudeベースの連携でも、いろいろ組み合わせて高額な構成にすることも、反対に安価な構成にすることもできるはずです。そうした選択肢やオプションについて、DearOneさんで扱っているツールにとどまらず、今以上に「こういう風にしてみてはどうでしょう」とさまざまな可能性を提案・提示していただけるとうれしいです。そうすることで、Amplitudeを最大限活かせる状況も生まれてくるでしょう。

端的に言うといろいろなサービスと組み合わせることで、それぞれの企業に応じた最適な事業を成長させるオプションプランを含めた提案を定期的にしてもらえたりするとありがたいですね。

DearOne 神津|
ありがとうございます。そこはまさにBest of Breedで、どういう組み合わせが御社に最適かも考慮に入れ、しっかりご提案・ご支援させていただけたらと思います。

TRiCERA 井口様|
こう申し上げるのも、DearOneさんだからこそできることだろうと期待しているからです。ベストツールは時代ごとに結構移り変わっていき、またツール自体もどんどん進化していきますから、その都度全てリプレースしていては、莫大なトランジションコストがかかってしまいます。

一方、Best of Breed、つまりコンポーネントベースで考えたときにはフルリプレースではなく、今使っているものより明らかに優れたツールがあるとわかっている部分だけをリプレースすることが有効です。

ですから、Amplitudeベースであってもそうでなくても、事業の中でやりたいことと、それに最適な複数のツールとの連携について整理していただけたら、それらをDearOneさんのクライアントがBest of Breedでオンボーディングして連携していくことで、例えばクライアントのチャーンリスクは減るだろうと想像できます。ベストな組み合わせの提供であれば、それをやめて代替物を探すことはなかなか難しいですから、戦略上の差別化も図れると思いました。

DearOne 神津|
御社ではそのようにAmplitudeも使いつつ、GAでしか見られない部分も別途見つつ、それぞれのツールのいいところを使い分けていくご予定でしょうか。

TRiCERA 井口様|
使いやすさに加え、ツールごとに数字を取るためのアルゴリズムやその考え方はそれぞれ異なるので、私たちとしては事業に合った形でそれぞれ使い分けていくというスタンスです。その使い分けがうまくできれば、事業のKPIなどに対して有効な施策や打ち手を確実性を持って迅速に打てるようになりますので、生産性が大幅に増すことが期待できます。

これは一番大事なポイントかもしれませんが、Amplitude導入の最大のメリットは、作業が短くなって効率が上がるといったことではなく、生産性が上がることです。

PDCAが速くなって業績が伸びると、従業員一人あたりの売上高もおそらく伸びています。この生産性というポイントこそ、Amplitudeを導入する最大のポイントだと考えます。少なくとも私自身は、そのポイントを何よりも重視して、導入の意思決定や現在の改善施策に取り組んできています。生産性すなわちプロダクティビティは、従業員一人あたりGMVや限界利益などの経営指標に直接インパクトを与えますからね。

DearOne 神津|
本日は貴重なお話、本当にありがとうございました。

References
*1 タクソノミー設計:データを取得時点から一貫性を持って貯めるための準備作業。「イベント設計」「イベントプロパティ設計」「ユーザープロパティ設計」の3ステップから成る。
*2 マジックナンバー:ユーザーが特定のアクションを規定回数以上行うとサービスの継続率や収益などの重要指標が飛躍的に向上する、先行指標となる数字。

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