コンポーザブルCDPとは、欧米で注目を集める新たなCDPのアプローチです。この概念では、企業が既に保有しているデータウェアハウス(DWH)やその中に蓄積されたデータを最大限活用するために、複数のツールを組み合わせてCDPを構築します。つまり既存のデータ基盤を土台に、柔軟性の高いCDPを実現する方法論を意味します。
自社のユーザーに対する一貫してパーソナライズされたマーケティング施策の提供や、3rdパーティデータ規制によって1stパーティデータ活用の重要性が高まっていることなどを背景に、現在ますます多くの企業やサービスでCDP(カスタマーデータプラットフォーム)の導入や活用が進んでいます。
しかし一方で、システムとしてのCDPの導入や運用においては様々な困難があり、それによって活用が思ったように進まなかったり、想定以上のコストがかかってしまうこともあります。
そこで注目されているのが「コンポーザブルCDP」です。既に米国などデータ活用の先進国では主流になりつつあり、企業が保有するDWHなどのデータ基盤に蓄積されたデータを活用し、さまざまなツールを組み合わせてCDPを構築するという新しいアプローチが注目を集めています。
この記事では、パッケージ型のCDPとコンポーザブルCDPの具体的な違いや、企業の状況に応じてどちらを選択するべきなのかについて解説していきます。
💡また、CDPの役割や活用ユースケース、選び方をまとめた「CDP完全ガイド」を以下から無料でダウンロードしていただけます。
💡CDP(カスタマーデータプラットフォーム)完全ガイド
CDPの導入やリプレイスを検討されている方向けに、改めてCDPの役割や活用ユースケース、失敗しない選び方をご紹介しています。どなたでも無料でダウンロードしていただけます。
コンポーザブルCDPとは?
コンポーザブルCDPとは、企業が持っているDWHなどのデータ基盤や、そこにためられているデータを活用するためのツールを組み合わせることでCDPを構築するコンセプトを指します。主に欧米で主流となりつつある、CDPを実現するための新しいCDPの選択肢です。
コンポーザブルCDPにももちろんメリットとデメリットの両方がありますが、メリットの多くはその登場の背景からも、既存のCDPの課題を解決するようなものになっています。
コンポーザブルCDPにすることで、CDP導入のハードルを下げ、扱うデータ量や加工処理が膨大になった場合でも高いパフォーマンスやコスト最適化を実現することができます。
具体的なツールとしては「Hightouch」が挙げられ、G2の「リバースETL(データ連携)」カテゴリーで1位を獲るなど、世界で高い評価を受けているツールがございます。
NTTドコモの子会社である弊社DearOneは日本唯一のリセラー代理店としてHightouchの提供をしており、様々な企業でお使いいただいています。
コンポーザブルCDPの具体的な4つ特徴
概念的な話が続きましたが、ここでわかりやすく具体的な特徴をご紹介させていただきます。
①企業が持つDWHなどのデータ、リソースを活用できる
・データソースを一元化しデータのストレージ、管理コストを最適化
・大量データの保持、加工をDWHなどで行いコストやパフォーマンスを最適化
信頼性の高いデータ基盤を構築するためにデータソースを一元化し、管理コストの削減に繋がります。
また、大量データ処理にはDWHを活用し、パフォーマンスを向上させつつコスト効率を最大化する設計が可能となり、データやリソースを活用できます。
②必要な機能のSaaSツールの組み合わせで構築できる
・ツールの組み入れ、組み替えが容易
・企業のユースケースに合わせた構築が可能
・機能拡張の柔軟性やスケーラビリティが確保できる
ツールの組み入れや組み替えが容易で、企業のユースケースに最適化された構築が可能であり、さらに機能拡張やスケーラビリティを確保できるシステム設計は、技術進化や市場ニーズの変化に柔軟に対応しつつ、競争優位性を持続的に高める基盤となり得ます。
③データソースを社内環境に限定できる
・外部にデータを置かないためセキュリティ性が向上
・外部ベンダーによるベンダーロックを防げる
データの安全性を確保しつつ、システム運用の自由度と自律性を保つことができます。
④利用機能、ボリュームに応じたコスト体系
・多くのSaaSツールは従量課金のコスト体系で使った分だけの費用にできる
・使う機能のみにコストをかけることが可能に
ほとんどのメジャーなツールは実際に使用した分だけの費用に抑えられますので、必要な機能にのみコストをかける柔軟な運用が可能となり、リソースの効率的な配分とコストの最適化が可能です。
欧米では、すでにBigQueryやSnowflake、DatabricksなどのクラウドDWHとHightouchといったツールを組み合わせたコンポーザブルCDPがデータ活用基盤の鉄板の組み合わせになりつつあります。
具体的なソリューション「Hightouch」について(ページ内ジャンプ)
企業のデータ基盤におけるCDPの役割
違いに入る前に前提として企業のマーケティングデータ活用において、CDPがどんな役割を担い、なぜ重要なのかと言うことについて少し触れておきます。
CDPは、企業が自社のユーザーに対していわゆるOne to Oneマーケティングをするために必要な顧客軸のデータを集め、外部ツールへ連携していく役割を担います。
そして主に収集されるデータとしては、以下が挙げられます。
- Webやアプリ上の行動データ
- POSなどから収集される購買データ
- アンケートやイベントなどその他のユーザーデータ
従来のパッケージ型CDP製品は、上記のような各種データをCDPの環境内に取り込み、ユーザーIDを軸にデータの統合やユーザーセグメントの作成をおこなっていました。
統合されたデータは、BIツールを用いて可視化したり、外部の広告ツール、CRM、MAなどに連携させることで、マーケティング活用のデータソースとして利用されます。
さらに、CDPはDMPなど他のデータ基盤と異なり、主に自社で収集する1stパーティデータを活用する基盤です。そのため、既知のユーザーを対象としたロイヤルティ向上やLTVの最大化を目的とする施策に適しており、これらが主な活用例となります。
CDPツールの概要や機能について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
既存CDP(パッケージCDP)との違い
現在普及しているパッケージ型CDPは、顧客データの収集、統合、活用のそれぞれの機能を有したオールインワン型のソリューションです。
また、パッケージ型CDPは、次のような様々な機能を搭載しており、データ活用のための一連をパッケージ型CDPのみで完結させることが可能です。
- Webやアプリからユーザーの行動データを収集するイベントトラッキング機能
- 収集したデータのID統合機能
- セグメントを作成する機能
- 外部ツールへの連携機能
コンポーザブルCDPと既存CDP(パッケージCDP)の違いには、主に以下の3つが挙げられます。
データの保管場所
パッケージ型CDPでは活用するデータは全てCDPの環境内に投入し、コンポーザブルCDPでは自社のデータ基盤環境に集積されているデータを活用する形になります。
社内に利用できるデータ基盤がなかったり、新たに基盤を構築するのが難しい場合や、CDPとその中のデータを特定の部門だけで使う場合はパッケージ型CDPを導入することでスムーズに利用を開始することができます。しかし必要なデータを全てCDP環境に投入する必要があるため、データの追加や変更があった際の対応や社内のセキュリティ基準に合わせた対応が必要になります。
企業ですでに活用しているデータ基盤があったり、データを社内の環境からなるべく出さずに使いたい場合は、コンポーザブルCDPを採用することでデータソースを自社の環境に閉じて活用することができます。ただし、コンポーザブルCDPはパッケージ化されていない分、自社にどのような組み合わせが最適か常に気を配り選択する必要があります。
システムの柔軟性
パッケージ型CDPではデータのストレージや処理のパフォーマンスがCDP製品のプラットフォームに依存する形になります。データ処理の技術自体が、日々優れたものが出てくる領域となっているため、リリースから時間が経っている製品ではデータ処理の構造的にパフォーマンスがでない場合が多くあります。
一方、コンポーザブルCDPはSaaSツールの組み合わせで構築するため、ツールの自由な組み替えといった柔軟性を持たせることができます。スモールに始めたい場合や特定の部門での利用から始める場合は、最小限の構成から始めることで特徴を活かすことができます。
導入・運用コスト
パッケージ型CDPの場合、導入の際におこなうCDP環境の構築に半年近い時間と高額な費用がかかります。また導入後のCDPへのデータ連携の構築や保守・運用のコスト、CDP内のデータストレージにかかるコストなどは利用が進むと想定以上に増加する場合があるので注意が必要です。
コンポーザブルCDPではすでにデータソースとなる基盤がある場合、導入においてはSaaSツールの連携設定などの少ない設定だけで済み、数日〜数週間の期間でほとんど費用をかけずに始めることができます。
運用においても、大量データ処理に優れたクラウドDWHをデータソースとすることで、ストレージとデータ処理が分離されているためニーズに合わせて必要な所にコストをかけることができます。
社内のシステムを理解しているエンジニアなどの関係者がいるとさらにスムーズに進みます。運用自体はUIが非常にシンプルなため、非エンジニアであってもデータ連携作業が可能となっています。
代表的なコンポーザブルCDPのSaasとして弊社ではHightouchの運用・導入支援をおこなっております。Hightouchがわかる!サービス資料をDL可能ですのでぜひご参考ください。
💡Hightouchがわかる!サービス資料をダウンロードする
関連記事:コンポーザブルCDP(結合型CDP)は、なぜコストを最適化できるのか
コンポーザブルCDPと既存CDP(パッケージCDP)比較表
パッケージ型CDPとコンポーザブルCDPの機能性における違いについては、以下の比較表をご参照ください。
比較項目 | パッケージCDP | コンポーザブルCDP |
---|---|---|
導入の容易さ | データの保持、加工、連携のためのCDPプラットフォーム側環境の構築が必要で半年程度、数千万円程度かかる | すでにDWHなどの基盤を持っている場合、データの保持やクエリ実行がDWH上で行われるため導入作業は数日〜数週間、ツールによってライセンス以外の導入費用もほとんどかからず完了 |
データ処理、 連携パフォーマンス | CDPプラットフォームのパフォーマンスに依存 | DWHのパフォーマンスに依存 |
活用データ | CDPに投入されたデータ | 自社データ基盤にある全てのデータ |
システムの拡張性 | 他ツールとの連携や機能拡張はCDPプラットフォームに依存 | 基本クラウドSaaSの組み合わせで構築するため拡張性が高い |
データセキュリティ | データを外部のCDPプラットフォームに置くため社内のセキュリティ基準などに応じた対応が必要 | データは自社データ基盤で保持されるためガバナンスが比較的容易でセキュリティリスクや対応工数を低減できる |
課金体系 | プラットフォーム料金やパッケージ機能料金、データ量などに応じた従量課金 | 必要な機能に対する料金、データ連携のパターン数などユースケースに応じた従量課金 |
コンポーザブルCDPと既存CDPの比較について、さらに詳しく解説した資料を、以下よりダウンロードいただけます。
コンポーザブルCDPが登場した背景
新しいCDPの形として欧米で主流になっているコンポーザブルCDPですが、その登場の背景としては従来のパッケージ型CDPの課題が重大になってきたことがあります。
従来のCDPの課題
- 利用とともにCDPに入れるデータ量が増えランニングコストが高騰
- 膨大なデータ量やデータ処理にCDPの性能が耐えきれずパフォーマンスが低下
- ツール利用にSQL知識などが求められ機能も多いため使いこなせない
これらは海外企業だけでなく、実際に私たちが普段日本の企業と商談をしていてもよく聞く課題になります。
そして、これらの課題に対して、製品のアップデートではなくCDPの実現方法を変えて解決するというアプローチがコンポーザブルCDPの登場の背景になります。
どのCDPを選択するべきか
では、どういった場合にそれぞれのCDPを選択するのが良いのでしょうか。企業や組織の現状だけでなく、データ活用やマーケティングなどの中長期の戦略とも照らし合わせて考えることが重要です。
これまで紹介したそれぞれのCDPのメリットを踏まえると、一般的に以下のように分けられます。
パッケージCDPが適しているケース | コンポーザブルCDPが適しているケース |
---|---|
自社のエンジニアリソースやデータ基盤の整備が十分でなく、マーケティングチームによる短期〜中期での活用が求められる場合 | データ基盤の構築や運用を行うエンジニアリソースがあり、マーケティングチームやエンジニアチームなど横断で中長期的にデータ活用していく場合 |
実績が豊富なコンポーザブルCDP「Hightouch」
先述の通り、コンポーザブルCDPを構築する場合、海外ではBiqQueryやSnowflakeなどのクラウドDWHと「Hightouch」というソリューションを組み合わせることが鉄板になっています。
Hightouchはシリコンバレー企業が提供するSaaSで、G2の「リバースETL(データ連携)」カテゴリーで1位を獲る*1Best Reverse ETL Software|G2(2024年8月時点)など、世界で高い評価を受けているツールです。
Hightouchではデータ基盤のデータを、広告やCRM、MAなど200以上の連携先に瞬時に連携する機能や、ユーザーセグメントの作成やID統合、BIツールのような可視化など、企業のニーズに合わせた様々な機能を提供し機能単位で契約することが可能です。
NTTドコモの子会社である弊社DearOneは日本唯一のリセラー代理店としてHightouchの提供をしており、様々な企業でお使いいただいています。
主なユースケースとしては、次ようなものがあります。
- Salesforce Marketing CloudでSQLが必要だったユーザーセグメント作成をHightouchで行うことで、SQL不要に
- Hightouchで作成したユーザーセグメントをBrazeなどのMAツールに連携して、パーソナライズ
- Salesforceへのデータ連携やCSVへの吐き出しなど、数百以上のデータ連携パターンをHightouchで一括運用
関連記事:【Hightouch活用事例】1st Partyデータ連携で広告配信・計測効果を劇的改善
関連記事:【Hightouch活用事例】メール配信の仕組み化でリードリサイクルを自動化
最後に
コンポーザブルCDP、パッケージのCDPそれぞれメリットがあるので、あくまで選択肢があることを理解しつつ企業ごとの状況に合わせたCDPを構築することが重要です。
コンポーザブルCDPを検討している方、コンポーザブルCDPの詳細をお知りになりたい方は、お気軽にご相談ください。導入支援はもちろん、事例などのご紹介も可能でございます。
*1 | Best Reverse ETL Software|G2(2024年8月時点) |
---|