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グロースマーケティングゆく年くる年|2024年の振り返りと2025年の展望とは?

2024.12.17

DearOneの小林と申します。グロースマーケティング部という部署で主に「Hightouch」の営業や導入の支援を行っています。最近鍋に入れる野菜のポジションが固定化してきました。

早いもので2024年も終わりを迎えようとしています。皆さんはいかがでしたでしょうか?

すでに毎年恒例になりつつある「グロースマーケティングゆく年くる年」ですが、今年も海外マーケティングツールを専門に扱うDearOneが、日本とグローバル両方の視点から2024年のトレンドと2025年の展望についてお話しします。

2024年のデジタルマーケティングのトレンド

2024年もグロースマーケティング界隈のメインは引き続きAIでした。

昨年の「ChatGPT」が火付け役となったAIブームですが、24年ではそれぞれのマーケティングツールからAIを活用した機能がリリースされ、「AIをプロダクトにどう組み込んでいくか」の試行錯誤が多くみられました。

当社で取り扱っているHightouchにもAIを活用した分析機能がリリースされたり、AmplitudeにはChatGPTのようにプロンプトで分析チャートを生成してくれる機能のリリースなど、ベンダー側のAI対応がますます活発になってきています。

また先日発表されたSalesforce社の決算では、AI機能を搭載した製品の需要が、市場の予想を上回る売上高につながったとのニュースもあり、AI機能に関する需要は、来年以降も引き続き高まっていることが伺えました。

ここから踏み込んでグローバル、日本市場それぞれの2024年の動向を見ていきます。

グローバルの動向

AIプラットフォーム

クラウドDWHを提供するSnowflakeやDatabricksが自社をAIデータプラットフォーマーと定義し打ち出し、AWSやGCP、AzureなどメガプラットフォーマーもAIに注力するなど、AIを活用するためのプラットフォーム競争が本格化しました。

ただ一方で、このプラットフォーム競争において各社の方向性としては、自社プラットフォームだけに閉じるではなく、3rdパーティのAIモデルも使えるなど、これまでよりもオープンな傾向が見て取れます。

その背景の一つとしては、ユーザーもまだどのAIモデルが最適かを見極めている状態であることや、モデルごとに特徴やコスト感が異なり使い分けが必要なことなどが挙げられます。

データレイクハウス

データレイクハウスとは、データレイクとデータウェアハウスの特徴を組み合わせたデータ管理のアーキテクチャを指します。

AIや機械学習が普及するにつれ、構造データだけでなく、非構造データを基盤の中で扱うニーズも増えています。

・構造データ:CSVなどの列や行のフォーマットで表すことができる構造化されたデータ
・非構造データ:画像や音声、SNSの投稿内容など画一的に構造化されていないデータ

これまでS3*1Amazon Simple Storage Service(Amazon S3)などのオブジェクトストレージのサービスがデータレイクとして担っていた構造データ、非構造データ問わずに扱える特徴と、DWHが担っていた列や行単位での細かいデータへのアクセスや大量データの高速処理の特徴、これらを掛け合わせた「データレイクハウス」のアーキテクチャの普及と活用がここ最近でかなり進んできました。

また、こうした新たなアーキテクチャでは、扱うデータの種類やデータを保持する場所がより複雑化する問題もありますが、それに対して、データの管理、ガバナンスを行うためのソリューションも多く登場しています。

例えば、データレイクハウスのサービスを提供するDatabricksではUnity Catalogというデータガバナンスのソリューションを同時に提供しており、構造化データや非構造化データ、機械学習モデル、ノートブック、ダッシュボード、ファイルを、クラウドやプラットフォームを問わずにシームレスに管理できます。

またその他には、GoogleのLookerのような、データ活用の中で使われるそれぞれの用途における指標の定義(“売上”はどのデータを集計したものか。税引前か。キャンセルされた商品も含むのか、ディスカウント前後のどちらの数値なのか。など)を管理するようなサービスの活用も進んでいます。

国内の動向

3rdパーティデータから1stパーティデータへ

日本国内においては、AIへの注目が集まるほかに、デジタルマーケティング領域全体では引き続き、3rdパーティクッキー規制などを背景に1stパーティデータへの移行が進みました。

ただ一方で、ここ最近では「3rdパーティデータが規制されるから」ではなく「自社ユーザーの深い理解やより高度なOne to Oneマーケティングのために」という理由で1stパーティデータの活用が行われるようになってきています。

その中で、1stパーティデータの活用基盤としての「CDP」や、新たな広告チャネルとして注目されている「リテールメディア」、社外のデータを掛け合わせて更なる価値を生むための「データクリーンルーム」などが界隈の大きなトピックでありました。

関連記事:1stパーティデータ活用おいて必要な具体的な対応

CDP

今や、企業が自社のユーザーデータを収集しそれを1stパーティデータとしてマーケティングに活用することは必須になっています。そしてデータの重要性が増すにつれ、1stパーティデータの収集、加工整形、連携を担うCDPのニーズも高まっています

CDPを導入することで企業は自社の持つさまざまなデータソースからデータを収集し、それをユーザーIDなどに紐づく形の顧客軸のデータをして管理することができます。

データ活用のためには「データをどのような形で持つか」という観点が重要になりますが、マーケティング活用においては、最終的なユースケースである分析や各チャネルでの施策においてユーザーID軸のデータが求められることがほとんどです。

そのためCDPのような基盤で、ユーザーIDに紐づけた形でユーザーの属性や行動に関するデータを持っておくことでさまざまなチャネルでのOne to Oneマーケティングが可能になります。

関連記事:1stパーティデータ活用のプラットフォーム「CDP」とは?

リテールメディア

データに基づくOne to Oneマーケティングの注目とともに、TVや新聞を使ったマス広告からのシフトも始まっています。その中で昨今注目を集めているのがリテールメディアです。

リテールメディアとは、小売事業者が自社のプラットフォームやチャネルを活用して広告を提供するマーケティング手法のことです。具体的には、小売事業者が持つWebサイトやアプリを広告媒体として利用し、広告主が自社商品やサービスを消費者に直接訴求できる仕組みです。

これまで難しかった、購買情報を用いた精度の高いターゲティング訴求や、それが購買に結びついたかの効果検証が可能になります。

消費者にとっても、これまでのメーカーからの広告体験はCMやチラシなどのマス向けのものか、個別の企業やブランドに会員登録することで得られる特別なオファーのどちらかがほとんどでしたが、リテールメディアによって普段のスーパーやドラッグストアでの買い物の中でパーソナライズされた広告を受け取ることができるようになります。

現在は国内の各社が自社のリテールメディアネットワークを構築しており、自社の1stパーティデータを使ったビジネス開発が進むことが予想されます。

関連記事:今「リテールメディア」が注目される理由とは?

データクリーンルーム

リテールメディアに代表される「1stパーティデータを活用したマーケティング」が台頭してくると共に、各社のデータを掛け合わせるためのソリューションも求められるようになってきています。

データの掛け合わせにおいて、ユーザープライバシーなどに配慮した形で各社のデータを掛け合わせるための「データクリーンルーム」の技術が、今年あたりから特に注目されています。

個人が特定できない状態を維持しながら各社が持つデータを掛け合わせることで、購買データを使った広告効果の測定やより精度の高いユーザーの分析、セグメント抽出が可能になります。

データクリーンルームでは、1stパーティデータと2nd/3rdパーティデータを個人が特定されないデータ環境に入れ、それらのデータの掛け合わせによるインサイトのみを結果として取り出すことができます。

例としては、自社のユーザーに関する会員情報やデモグラ情報とAmazonのような買い物サイトでの商品検索、閲覧、購入などのデータをクリーンルームに入れ、掛け合わせて得られる「自社のユーザーAさんはここ半年でキャンプ用品に興味がで始めた」「Bさんは2年ほど前にお子さんが生まれた可能性が高い」といったインサイトのみを結果として取得し、ユーザーのプロファイルを強化することなどが可能です。

グローバルではAWSやGCP、SnowflakeやDatabricksといった大手データプラットフォームからデータクリーンルームのサービスが提供されているのに加え、国内でもNTTドコモなどがこの分野のサービス展開を始めています。

参考:ドコモ データクリーンルーム

他にも大規模のユーザーデータを保持する企業がデータクリーンルームに関するサービスを提供し、自社のデータを付加価値とする新たなビジネスの創出を行っています。

2025年デジタルマーケティングの大予言

ここからは個人的な意見も交えながら、グローバル・日本国内それぞれの、2025年の業界トレンドや展望を話していきます。

グローバルの動向

いよいよAIの本格的なビジネス活用のフェーズへ

グローバルでは、2025年にはいよいよAIのビジネス活用とそれによる収益を生み出すことが本格化することが予想されます。

その背景として、各企業でAIモデルやマーケティングツールのAI機能の検証が進んでいることの他に、AIを活用するためのデータの整備が整いつつあることが挙げられます。

これまでも、企業ではデータを活用するためのデータの整形や整理、標準化などが行われてきましたが、ソリューションとしてのAI技術がより具体的になったことを受け、ビジネスでの運用に乗るレベルにするため、よりパフォーマンスを高めるためのデータインフラの整備が改めて行われています。

こうしたAI活用の地盤が整備できていることで、新しいAIソリューションにおいてもスムーズに実際のビジネスでの活用が進んでいくのではと考えています。

その中で、ここからは数あるAI機能やサービスの中で鉄板となるようなものや組み合わせが生まれ始め、それに伴うサービスの淘汰が始まるのも遠く無いと感じています。

また、どのサービスやソリューションを使うのかということに加え、企業ごとにどのシステムにどのデータを集めるか、いわゆるデータの重心をどこにするのか、ということもトピックとして挙げられるのではないかと考えます。

AIをより効率的に、高い効果を発揮するためには質が高く、大量のデータを使う必要があります。そして、そのような中心的なデータソースが決まると、そこに最適化する形でますます多くのデータが集まってくるデータグラビティ(データが蓄積される場所にアプリケーションやサービスが引き寄せられること)と呼ばれる事象が発生することが考えられます。

その中で企業はAIなどの最大限の活用のために「何を」だけでなく「どこで」といった観点でも考える必要が出てくるのではないでしょうか。

国内の動向

データ基盤構築の後にくるデータ整備とマーケティング活用

日本国内では、SnowflakeやDatabricks、BigQueryといったクラウドDWH製品の導入やそれらを中心としたデータ基盤の構築がひと段落し、基盤の中身としての各種データの整備が進んでいきます。

現在、構築が進んでいる企業のデータ基盤の主な用途は分析やレポーティングといったものですが、データの整備や活用が進むにつれ、先述のデータクリーンルームなどのデータの収益化やマーケティング施策での活用もより進むと思われます。

その中で、これは既にいくつかの先進的な企業では起こっている動きですが、これまでCDPツールなどが担っていたマーケティング向けのデータ基盤の役割も、企業の統合されたデータ基盤に担わせていくと考えられます。

構築した統合データ基盤をデータソースとして、マーケティング施策にも活用することで、これまでCDPツールにも入れていたデータの二重の管理コストがなくなり、統合データ基盤にあるより多種多様なデータを使うことが可能になります。

基幹システムからの連携が難しかった顧客属性や購買データ、商品に関するデータなどを使ったユーザーセグメントの作成や、これまでツール単位、チャネル単位で行っていたターゲティングが、データ基盤からそれぞれにデータを連携することで、チャネル横断で同じデータを使って施策を行うことができるようになります。

これはグローバルではすでに「コンポーザブルCDP」というシステム構成のコンセプトとして普及しており、これが日本でも注目されるのではないかと思われます。

関連記事:これから注目を集める「コンポーザブルCDP」とは

また、多くの日本企業が抱える課題「施策の効果検証が十分できていない」に対して、データソースがデータ基盤になり、そこでデータの収集も行われることで、チャネル横断での検証や分析、レポーティングが可能になりデータの整合性もより信頼できるものとなります。

データ基盤の構築や整備が進むにつれ、基盤を中心としたデータのサイクル、ETLやリバースETLといったパイプラインの構築にも注目が向けられそうです。

「企業横断のデータエコシステム」の構築

自社のデータ整備と共に他社のデータとの掛け合わせも注目され、業界内や業界横断など様々な形で幾つかの企業グループによって、データのエコシステムを作る構想も進むのではと考えています。この流れは、事業会社にとって以下のようなメリットがあります。

【マーケターへのメリット】

  • ファッション業界の各企業のデータを掛け合わせた、より正確な業界全体のトレンド分析や企業横断でのユーザーの好みの把握
  • 特定の観光地周辺の商業施設やホテルのデータ、位置情報、旅行前のタイミングのクレジット決済データなどを掛け合わせた、観光客のより詳細なプロファイリングの作成や商圏分析、旅行前の行動も組み合わせた分析

ただ、3rdパーティクッキー規制問題と同様に、エンドユーザーのデータをどのように扱っていくのかは最大限の注意が求められ、プライバシーなどの問題が発生した場合には多くの企業に影響が出ることが想定されます。

個人的には、企業の「ユーザーの許諾さえ取れば大丈夫」という姿勢が強すぎてしまうと思わぬ反発や問題が噴出することもあるのではないかと思っています。ユーザーのデータを扱うステークホルダーがより幅広くなっていく中で、そのリスクも同時に広がることには注意が必要だと考えます。

最後に

今年のまとめとして思うままに書いていたら大分長くなってしまいましたが、最後まで読んでいただけましたら幸いです。

私自身、この1年多くの企業様の商談や、データ活用のイベントなどに参加し、企業の目線が本格的に「集めたデータをいかに使えるようにしていくか」にシフトしつつあると感じています。MAツールなどはすでに導入している企業でも、より大量で高品質なデータが集められるようになったことで「データを使いこなすためのツールの見直し」を行う動きが起こり始めています。

来年も、既にデータ活用の取り組みが進んでいる企業、そうでない企業どちらにおいても「データの使いこなし」は重要トピックとして注目されるのではと思っております。

来年も皆様にとって良い一年になることを祈っております。

【この記事の著者】

【この記事の監修者】

References
*1 Amazon Simple Storage Service(Amazon S3)

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