CV(コンバージョン)とは、英語で書くと「Conversion」、日本語に直訳すると変換・転換といった意味で、マーケティング分野で「成果/目標地点」、具体的には購入・登録・会員登録などを指す言葉です。
Webマーケティングでは日常的に使用される単語であり、分析や施策のゴールも「CV(コンバージョン)を増やす」ことになるケースが多いでしょう。ただし、CVと言っても、さまざまな種類のCVが存在し、また、関連した用語等も知っておくことが大切です。
記事ではCVの意味や種類、計測方法、そして、アプリ/WebマーケティングにおけるCVを増やすポイントの基礎を解説します。
CV(コンバージョン)とは?
CV(コンバージョン、英語Conversion、日本語訳:変換・転換)は、マーケティング分野において「成果/目標地点」を指し、Webサイトやアプリ、広告への訪問者が定めたゴールに至ることを意味します。たとえば、ECサイトやサブスクサービスであれば「購入」や「契約」、また商談等のステップを伴うサービスであれば「資料請求」や「問い合わせ」、また、メディアであれば「会員登録」や「メルマガ登録」、アプリであれば「ダウンロード」などがCVです。
CV(コンバージョン)とCV数
CVした件数や訪問者数を、「CV数」と呼ぶことが一般的です。いかにCV数を増やすかがマーケターのミッションとなることが多いでしょう。
CV(コンバージョン)とCVR(コンバージョン率)
CVRは、分母となる訪問者のうち、CVした件数の比率です。従って、CVR=「CV件数 ÷ 訪問者数×100」で計算できます。
分母となる訪問者数は、状況に応じて様々な数字を使います。
- 一定期間にサイトを訪問したユニークユーザー数(UU)
- あるメールマガジンでWebサイトに誘導するリンクをクリックしたユーザー数
- Web広告で出稿したバナーのクリック数
CVRが上昇すれば、同じ訪問者数でもCV数が増え、広告や施策の効果は高くなります。たとえば、既存顧客向けのメールマガジンで同じ500人がクリックした場合に、CV件数が5件であれば「5 ÷ 500×100」でCVRは1%になります。
CV(コンバージョン)とCPA(シーピーエー)
CPAは、Cost Per Acquisitionの略称で、「CVを1件獲得するのにかかった費用」を指します。CPAは「広告費等 ÷ CV数」で計算されますので、たとえば、50万円で広告出稿して100件のCVが獲得できれば、CPAは50万円 ÷ 100件で5,000円です。
CPAは、CVを増やすためにWeb広告などを展開する上で非常に重要な指標であり、CPAが低い広告手段ほどコストパフォーマンスが優れているということになります。
CPA = 広告費等 ÷ CV数
となりますので、CPAを下げるためには、訴求や導線を改善してCVRを高める、文言やクリエイティブ等を改善して訪問者数を増やす、もしくは様々な工夫で広告費を小さくする(またはクリック単価等を小さくする)ことになります。
CV(コンバージョン)の具体例
CVといっても、ビジネスの形式によって様々なものがあります。ここではCVの具体例を確認しておきましょう。
商品やサービス購入
ECサイトやサブスク、Webサービスなど、Web上で購入が完結する場合には、CV地点は商品やサービス購入となることが多いでしょう。CV数で売上が決まってきますので、データ分析を通じて改善等を繰り返していくことが非常に重要です。
見積依頼
BtoCでも価格が少し高い、またBtoC/BtoB共にケースバイケースで価格が変わるようなサービスの場合には、CV地点が「見積依頼」になっているケースもあります。
たとえば、BtoCであれば、中古住宅や中古自動車の買い取り、引っ越しサービスなどのWebサイトで、CV地点が見積依頼になっているのはイメージしやすいのではないでしょうか。
問い合わせ
BtoBの場合には、問い合わせ等がCV地点となることも増えてきます。とくに専門性が高いサービスなどで、ユーザーに「こういう状況ですが、対応できますか?」「こういう場合にどうしたら良いですか?」などの相談したいニーズがある場合には問い合わせがCV地点になることも多いでしょう。
また、見積依頼や資料請求などをメインのCV地点としたうえで、Webサイト内に問い合わせ機能を付けていることも良くあります。
資料請求
ユーザーは広告等を見た時点では、見積依頼や問い合わせをするほどニーズが明確になっていないケースもあります。資料請求をCV地点にすることで「まずは資料で詳細を知りたい」「何社か資料をもらって一旦自分で比較、絞り込みたい」といったニーズを拾いやすくなります。
資料ダウンロード
資料請求の心理的なハードルを更に下げたものが資料ダウンロードです。「今すぐ資料が手に入る」ということをフックにして、CVRを高めることができます。
資料請求や資料ダウンロードをCV地点にする場合には、直接的なサービス資料、自社サービスの案内ではなく、ユーザーの疑問に応えるお役立ち資料をCV地点にすることでCVRを高めるという手法もよく取られます。
たとえば、「マーケティングツールAのサービス案内」「Aの顧客事例」などが購買に距離が近い資料だとすれば、「失敗しないマーケティングツールの選び方」「マーケティングツールを使ってCVを増やすポイント」といったものがお役立ち資料です。
アプリダウンロード
最近は、BtoCサービスを中心にアプリを通じてサービス提供するケースも増えています。手元のスマートフォンを想像していただくと有料サービスから無料サービスまで、SNS、インターネットバンキング、オンラインゲーム、新聞やニュース、生成AIなど、さまざまなアプリが入っているのではないでしょうか。
アプリを通じてサービス提供する場合、最初のCV地点はアプリダウンロードになります。広告などを通じて、Google PlayストアやApp Storeに誘導してアプリをダウンロードしてもらう形です。その場合には、アプリのダウンロードが最初のCV地点となり、その後に、会員登録 ⇒ 購買や有料課金といったCV地点が生じることになります。
無料体験やサンプル請求
無料体験やサンプル請求の申込なども、CV地点のひとつです。
たとえば、EC、とくにダイレクトマーケティングの手法が使われる健康食品などは、サンプル請求や無料のお試しをCV地点とすることでユーザーの心理的ハードルを下げているケースが多くあります。また、体験型のサービス、たとえば、スポーツクラブや学習塾なども無料体験がCV地点になっているなどは想像しやすいでしょう。
最近はクラウド型のサブスクサービスなどで「初回○日間無料」といったオファーを通じて、無料体験を提供しながら個人情報やクレジットカード登録などを実施してもらうケースもよく見かけます。
イベントや説明会・面談申込
イベントや説明会、面談申込なども、CV地点として比較的多いタイプです。説明会はユーザーからすると1対多の構造になるので参加しやすいイベントであり、提供側もインタラクティブにコミュニケーションしながらニーズを喚起したり、自社の有意性を伝えられる場となります。そのため、説明会などは多少高額な無形サービスなどでよく使われるCV地点です。
また、個別性が高いサービス、たとえば、転職(人材紹介)や結婚相談、保険といったサービスの場合、面談・相談などがCV地点になっていることもあります。
会員登録
オンラインサービスなどの場合には、会員登録をCV地点にしているケースも非常に多くなります。たとえば、SNSやニュースサイトなどのメディアサービス等で特に多く見られます。また、最近は様々なクラウドサービスでも無料会員をCV地点にしていることもあります。
たとえば、無料のニュースサイトやメディア等などで会員数やWeb訪問者数などが広告販売するための商品力になるケース。また、クラウドサービスで無料会員はサービスの機能限定があり、無料で会員登録してもらった後に有料メニューにアップグレードしてもらうといったケースも考えられます。
メルマガ登録
ハードルが非常に低いCV地点としてメルマガ登録を用いる場合もあります。BtoBの場合、専門性が高い無形サービスなどは信頼を得るために、メルマガで情報提供を重ねていって商談創出や問い合わせなどにつなげるケースがあります。
BtoCの場合、メルマガ登録の代わりに、LINEの「友だち登録」を使ったり、InstagramやX(旧Twitter)等でフォローしてもらうといったCV地点が用意されているケースもあります。スタンプのプレゼントやキャンペーンやクーポン等をフックにして「友だち登録」してもらう、また、店舗等でその場でフォローしてもらうといった施策もよく見かけます。
CV地点をユーザーにとって心理ハードルが低いものにすれば、CVRを高め、CVを獲得しやすくなります。但し、最終的なゴール(購入・契約・売上)につながるまでのステップは長くなりますので、最終成果までつながっているかをきちんと検証することが欠かせません。
ビジネスやマーケティング手法によるCVの違い
CVの種類は設定するチャネルによっても大きく異なります。先ほどはCVの種類を網羅的に紹介しましたので、本章では逆にビジネスやマーケティング手法に応じて、どんなCV地点が設定されるかを見てみましょう。
アプリのCV
アプリ内マーケティングにおけるCVの例は、モバイルオーダーでの注文やクーポンの使用などです。またECサービスの場合にはアプリ内で購入まで完結します。求人サービスやマッチングアプリ等であれば、求人への応募やメッセージの承認などの行動がCVに相当するでしょう。
アプリは顧客データを収集しやすく、ユーザーに接触もしやすい媒体ですので、効果的に使用することでCVRをぐんと上げることもできます。
アプリ内マーケティングを成功させるためには収集したデータを分析し、顧客一人一人に適した施策を施す「One to Oneマーケティング」が大切です。One to Oneマーケティングについては以下の記事で詳しく説明しています。
ECサイトのCV
ECサイトでは、商品やサービスの購入がCVとして設定されます。どれだけ多くの訪問者を獲得できても、購入(=CV)に至らなければ収益にはつながりません。ユーザーが購入するまでの障壁を減らし、スムーズに決済できるようにすることが重要となります。
ECサイトでCVを増やすためには、獲得できる豊富なデータをきちんと分析して、高速でPDCAを回していくことが大切です。ECサイトでCVを増やすためのデータ分析やKPIについては、以下の記事で紹介しています。
企業サイトのCV
企業サイトでは「問い合わせ」「資料請求」などが一般的にCVとして設定されます。
企業サイトは必ずしも商品販売だけが目的ではないため、目的によってCVは異なります。例えば、採用が目的の場合はエントリー(応募)がCV地点になり、製品の紹介ページであれば「見積依頼」や「資料ダウンロード」がCV地点になるでしょう。目的と手法を踏まえてCV地点、また検証方法をしっかり決めておくことが大切です。
メディア・コミュニティサイトのCV例
メディアやコミュニティサイトの場合、「メルマガ登録」「イベント登録」などがCV地点として設定されることが多くなります。
前述の通り、メルマガ登録やイベント登録はCVするまでの心理ハードルは低いものの、それ自体がビジネスの成果に直結するCVではありません。こうした最終的に目指すCV(多くの場合は購入や受注・契約)などの手前にあるCVをマイクロCVと呼びます。
CV(コンバージョン)の重要性と活用メリット
CVはWebマーケティングの成果指標
紹介してきた通り、CVは商品・サービスの購入や有料サービスの申込などのように売上そのものであったり、売上につながる資料請求や見積依頼といった重要な指標になります。だからこそ、Webマーケティングでは、サイトやアプリ上で完結できるゴールであるCVを成果指標としてマネジメントを行っていきます。
短期的には、CVRの向上に向けた導線やUI・訴求等の改善、また、訪問者数の増加に向けた広告施策や広告のクリエイティブ改善。そして、中長期的には顧客のエンゲージメント向上に向けたCRMやUX改善などです。
Webマーケティングやアプリマーケティングは、ユーザーの行動を精緻に追跡できることが特徴です。大量のデータを取得することが出来ますが、データが膨大だからこそ、データ分析をする軸がないと悪戯に時間を浪費してしまうことになります。CVを成果地点として設定することで、課題解決や効果検証、データ分析もスムーズになるでしょう。
CVでマーケティングの費用対効果を判断する
CVはWebマーケティングの成果指標ですので、CVを軸として施策の費用対効果を検証します。前述した通り、CV1件獲得するのにかかる費用をCPAと言います。マーケターは、CVを増やすと同時に、CPAを許容範囲内に維持する、また下げることを求められます。
CPAの許容範囲は、CV1件から幾らぐらいの利益が期待できるのかから逆算して設定されます。たとえば、CV1件から期待できる利益が1万円なのに、CV1件獲得するのにかかる費用が2万円かかったら、CVが増えれば増えるほど赤字になってしまいます。
逆に、LTV(顧客生涯価値)や販管費から逆算して設定されたCPAの許容範囲が1万円で、実際のCPAが9,000円で獲得できていたとしたら、極端に言えば、CPAが1万に到達するまで販促費を増加してCVを増やすことで売上・粗利の拡大につながるかもしれません。
また、広告費だけでなく、UI改善やCVR向上などに向けたシステム開発、投資なども、「それをすることでCVがどれだけ増えるのか?」「CVRがどれぐらい向上する(CPAが下がる)見込みがあるか?」といった視点で意思決定され、また検証されることが多いでしょう。
CV、CVR、CPAといった指標は、マーケティングの費用対効果を想定して意思決定したり、効果検証したりする重要なものです。なお、ECサイトや有料サービスの申込などのようにCV地点が商品・サービスの購入地点である場合には、CV≒売上ですので、よりダイレクトにCVでマーケティングの費用対効果が判断されることになります。
CVを軸としてPDCAのスピードを高める (当初構成案からタイトル修正
Webマーケティングやアプリマーケティングにおいては、CV地点を軸にすることで、サイトやアプリ内の施策、広告宣伝などの効果検証をスピーディーに実施していくことができます。
たとえば、BtoBの高額サービスになれば、商談から契約まで6カ月-1年、2年かかることもあります。このようにWebサイト上で完結しない、また効果検証するために時間がかかる状態では、課題設定や施策のPDCAをスムーズに回していくことが出来ません。もちろんビジネスの最終ゴールに照らし合わせて効果検証すること、たとえば、獲得した資料請求がどれぐらい実際の契約につながっているかの検証は必須ですが、検証にある程度の期間が必要となります。
しかし、Webサイトやアプリ内で完結するCVであれば、基本的に24時間365日、CVが生まれます。だからこそ、UI修正やA/Bテスト、プロモーションの結果なども即日-1,2週間で結果を検証できます。このように短期間で結果が出るCVを軸にしてPDCAを高速回転させていくことが、ビジネスグロースの実現につながります。
CV(コンバージョン)の種類
ビジネスモデルやサイト特性によって、CVには「商品・サービスの購入」「問い合わせ」「見積依頼」「資料請求」「アプリダウンロード」「会員登録」「メルマガ登録」などがあることは先ほど紹介した通りです。本章ではWebマーケティングを効果検証する際に知っておくべきCVの種類を解説します。少しテクニカルな話になりますが、Webマーケティングに携わるうえでは知っておくべき基本知識です。
総CV
総CVは「ユーザーがCVした回数」に焦点を当てた表現です。ある1人のユーザーが2つのCV、例えば、「商品・サービスの購入」と「問い合わせ」に至った場合、総CVは2回とカウントされます。つまり総CVは「何回CVに至ったか」を計測するカウント方法です。
ユニークCV
ユニークCVも、ユーザーがCVした回数に焦点を当てたものである点は総CVと同じです。しかし、明確な違いがあります。それは例えば先程の例、ある1人のユーザーが2つのCVに至った場合、ユニークCVは1回と計測される点です。
総CVが「何回のCVが起きたか?」を計測するのに対し、ユニークCVは「何人がCVしたか?」を計測するものといえます。
クリックスルーCV
クリックスルーCVは、Googleなどで表示される検索連動型広告やディスプレイ広告を見たユーザーが、クリックしてCVに至った際にカウントされます。つまり、その広告を「クリック」してCVにいたった件数です。
クリックスルーCVは「その広告をクリックして何件CVが発生したか?」ですから、広告の効果を考えるうえで最も分かりやすい指標です。
ビュースルーCV
ビュースルーCVも、クリックCVと同様に広告の効果検証などで使われるCVの数え方です。ビュースルーCVは、クリックCVとは違い、「広告を見た(ビュー)が、その場ではクリックせずに違うルートでCVした」場合にカウントされるものです。
少し分かりづらい概念かもしれませんが、たとえば、SNSやWebサイトなどでバナー広告を何度か見かけて少し気になっていたが、その場ではクリックしなかった。ただ、後日メルマガ広告を見て、『そういえば…』と気になってクリックして資料請求した」といった経験はないでしょうか。また「広告を見た際には興味がなくクリックしなかったけど、後から気になりGoogleで検索して購入した」という体験がある方もいるでしょう。
最近のWebマーケティングでは、ユーザーのCookie情報などを使うことでビュースルーCVを計測することが出来るようになりました。Web広告の費用がTVCMを追い抜くような規模感になった中で、こうした「広告の間接的な効果」を計測することで、Webマーケティング全体のパフォーマンスを高めることも大切になっています。
直接CV
直接CVとは「広告などをクリックしてサイトを訪問し、離脱することなくCVに至ったもの」を指します。クリックスルーCVと同じように、広告の効果を考えるうえで非常に分かりやすい指標になります。
間接CV
間接CVは、直接CVと対比される概念で「直接的にCVには至らなかったが、間接的にCVに寄与した」ものを指します。
前述のビュースルーCVなどは間接CVです。また「広告Aをクリックしたが、その時はCVには至らずに離脱した。その後、別の広告BからCVした」といったケースでは、1つめの広告A(クリックしたけど離脱したもの)の効果は間接CVとしてカウントされることになります。
Webマーケティングにおいて、流入したユーザーが離脱せずにそのままCVに至ること(直接CV)は数パーセントです。リアルな購入においても、ウィンドウショッピングをしたり一度は店頭で手に取っても迷ってその日は買わなかったりして、別の日に気持ちを決めて買いに行くということはよくあります。
Webサイトでも同様ですし、Webサイトの場合、他の商品・サービスとの比較は非常に容易ですので、CVの殆どが間接CVになることもあります。こうした間接効果をきちんと計測して貢献を評価することもCVの総数を増やすうえでは大切です。
マイクロCV
マイクロCVは、最終的なCVに至るまでに段階的に設定して、CVに至った際にカウントされるCVです。たとえば、ECサイトにおける最終的なゴールのCVが「購入」だとすれば、マイクロCVは「カート投入」や「お気に入り商品として登録/ブックマーク」になります。
マイクロCVの概念は、KGIとKPIの関係をイメージすると理解しやすいでしょう。例えば、「契約」を最終のCV(=KGI)として設置した際に、そこに至るために「ホワイトペーパーダウンロード」「問い合わせ」「資料請求」など最終的なCVを達成するために踏むCV(=KPI)がマイクロCVです。
マイクロCVを設置することで、プロセスのどこでユーザーが離脱してしまっているのかなどの課題を発見しやすくなります。
KGIとKPIの関係については以下の記事もご参照ください。
CVの計測方法
Webマーケティングの重要指標となるCVを活用するためには計測が必要です。
CVタグの設置
CV件数は、売上件数や資料請求数ですので、極端に言えば、通知メールを数えたり、売上管理ツール等を見たりすれば分かります。ただし、Webサイトやアプリの訪問者数、サイト内の行動、クリックした広告やバナー情報等と紐づけて、Webマーケティングで活用するためにはシステム的にCVを計測する必要があります。
システム的にCVを計測するためには、アクセス解析ツールやマーケティングの検証ツール、また広告媒体から発行されるタグをCVの成果地点などに埋め込みます。たとえば、ECサイトにおける購入の完了画面、また、資料請求のThanksページなどにタグを埋め込むことで、「購入が発生した」「資料請求が発生した」ことをカウントします。
上記のようなCV地点となるページのHTML内に直接タグ情報を書き込むか、Google Tag Managerなどのタグ管理ツールを活用してCVタグは設置します。
マーケティングツールの活用
Web広告を利用する場合には、広告の成果を検証するためには各広告媒体から発行されるCVタグと呼ばれるタグを、CV地点のページに埋め込みます。基本的には広告の種類だけCVタグが必要となり、Google広告のCVタグ、Facebook広告のCVタグ、Instagram広告のCVタグ…といった形です。各広告媒体のCVタグを埋め込むことで、「この広告が何クリックされて、そこから何件のCVが生まれた」といった効果検証が出来るようになります。
なお、Webマーケティングを展開していくと管理しないといけないCVタグやアクセス・行動解析用のタグが複数種類になっていくため、Google Tag Managerなどのタグ管理ツールを利用したり、ADEBiSなどの広告効果測定ツールを使ったりして一括運用していくことが一般的です。
また、CVタグを設定すれば該当の広告媒体とCVの紐づけは取ることが出来ますが、これだけではサイト全体のアクセス状況やサイトやアプリ内のユーザー行動は分かりません。
従って、GoogleAnalyticsやAmplitudeのようなアクセス解析ツールやユーザー行動を分析するためのツールを利用して、サイトの全ページ・アプリ全体にタグを埋め込むことが一般的です。
アクセス解析やユーザー行動分析ツールでは、ツール上で「このページがCV地点」と登録することができます。一般的に、1つのサイト内に購入のCV地点、マイクロCVとなるカート投入、資料請求AのCV地点、資料請求BのCV地点といった形で複数のCV地点を登録することが可能です。
こうしたマーケティングツールを活用することで、サイト全体のCV数やサイト内のユーザー行動、流入チャネル等を分析することが可能になり、ビジネスのグロースに向けてデータを分析してPDCAを回していくことが可能になります。
Webマーケティングにおけるデータ活用とマーケティングツールの活用については、以下のECサイトにおけるデータ分析に関する記事を見るとイメージしやすいと思いますので、ぜひご覧ください。
WebマーケティングでCVを増やすポイント
Webマーケティングでは、CVを増やすことがマーケターに求められますので、CVを増やすうえでの基本となる考え方を確認しておきます。
注力するCVを特定する
まずは向上に取り組むCVを特定することが必要です。サイト内に「購入」と「無料サンプルの申込」「お問合わせ」といった形で複数のCV地点があることは珍しくありません。また、同じ購入でも「商品A」「商品B」「商品C」「商品D」と複数の商材がある、更に同じ商品AのCVでも、コーポレートサイト内のCV地点、オウンドメディア内のCV地点、LPと、複数のCV地点があることもあります。
漠然と「CVを増やす」を考えていると、後述するCVR改善やアクセス数を増やす施策が具体案になりません。何のCVを増やすのか?ということをある程度特定して検討していきましょう。
なお、CVは「訪問者数(アクセス数)×CVR」という数式で表せますので、CVを増やすためには、CVRを高めるか、訪問者数(アクセス数)を増やすかのどちらかになります。
CVRを改善する
CVを増やす際に、非常に重要なことはCVRの改善です。なぜならCVRを高めることで、同じアクセス数でもCVは増えますし、広告等の費用対効果も改善します。CVRを高めるには、以下のような施策があります。
- Webサイトの動線を改善する
- CTA(フォームへの遷移ボタン)やUIを見直する
- 訴求文言やクリエイティブの改善する
- フォームを改善(フォーム最適化)する
- ターゲティングを見直す
- CVしているユーザーの行動を分析する
- リピートユーザーを増やす
- 指名検索からの流入を増やす
- 特典やオファーを付けたり強化したりする
アクセス数を増やす
CVを増やすためには、アクセス数や訪問者数を増やすことも大切です。CVを増やすための施策には以下のようなものがあります。
CVを増やすための施策には以下のようなものがあります。
- 広告の文言やバナーを修正する
- リスティング広告等の入札単価を上げる
- 広告の出稿量を増やす
- 既存リードにメールを配信したりプッシュ通知を送る
- 既存ユーザーのエンゲージメントを強化する
- SEOで流入を獲得する
- ASO(アプリストア最適化)でアプリのダウンロードを増やす
- サービスやブランドの認知度を高める
- クチコミを起こす、ニュース等で紹介される
CVR(コンバージョン率)の重要性
WebマーケティングにおいてCVを増やすうえで、CVRは非常に重要な指標となってきます。
まず、CVRを高めることで、同じアクセス数でもCVが増えます。つまり、広告宣伝を何も変えなくても、CVRを改善すればCVが増えるわけです。
また、CVRはマーケティングの効率性を測り、ターゲティングの適切さやクリエイティブ、広告チャネルを評価する指標でもあります。
CVRが高ければ、同じ広告に出稿してもCPA(CVの獲得単価)が下がり、広告の効果性が高まります。また、CVRが高いということは、作成しているクリエイティブや訴求文言などがユーザーに評価されている、CTAの設置位置やフォーム等も適切であるということになります。つまり、CVRがクリエイティブやターゲティング、広告チャネル等を評価する指標にもなるわけです。
さらにアクセス数を増やす施策の多くは、大きな費用や工数が発生します。CVRを高めれば、アクセスを獲得した後のCV獲得効率が高まりますので、広告宣伝の費用や工数も投下しやすくなります。つまり、CVRを改善すればするほど、ユーザーの新規獲得に費用を投下しやすくなる、規模拡大に挑戦しやすくなるわけです。
CVR(コンバージョン率)の目安
CVRの一般的な目安は、1〜5%程度です。業界やプロダクト、広告手法や流入チャネル、CV地点の設定によっても変わってきますので、CVR改善を考えるうえで、自社のプロダクト、また流入チャネル・CV地点に応じたCVRの目安を知っておくことが大切です。
・Webサイト:一般的には、有料購入>見積依頼>商談設定>資料請求>メルマガ登録といった形で、有料での契約に近づいたり、またユーザーの手間が増えたりするほど、CVRは低下します。
・流入チャネルや広告チャネル:サービス名やブランド名での指名検索ほどCVRは高く、広告や一般名詞での流入になるほどCVRは低下します。また、リスティング広告などでニーズが顕在的なアクセスを獲得する場合よりも、SEO等で潜在的なニーズ・関連KW等からアクセスを獲得した方がCVRは低下します。
・Eコマース:CVRの目安は業界や商品の種類によって異なりますが、平均して1〜3%程度です。高額商品や定期購入になると、CVRは低下します。
・サブスクリプションモデル:CVRの目安は平均して2〜6%程度です。ただし、プランや提供するサービスによっても異なります。
CVR(コンバージョン率)を向上させるポイント
先ほどはCVRを改善する方法として一般的な方法を羅列しましたが、本章ではより丁寧にCVRを向上させる実務的なポイントを紹介します。
UI/UXの改善
CVRを改善する上で最も基本的な概念は、UI/UXの改善です。Webマーケティングにおいて、CVRはUI/UXの評価指標となります。CVRが低いということはUI/UXに課題がある、最適化されていないということです。
UI/UXの改善には、動線の改善、CTA(フォームへの遷移ボタン)やUIを見直し、訴求文言やクリエイティブの修正、フォームの改善(フォーム最適化)、また、サイト外ではメールやプッシュ通知の送付タイミングや文言といったものがあります。
WebマーケティングでUI/UXを改善していく際には、データに基づいて改善箇所を決める、仮説を見出すことが大切です。勘や感覚ではなく、ユーザー行動分析、またヒートマップやセッションリプレイなどのマーケティングツールを用いることで、ページ内のどこでユーザーが離脱しているか、どこのデザインがユーザーを迷わせているかが明確になります。
また、改善箇所を決めたら、次はA/Bテストで施策の効果を測定することが大切です。たとえば、誘導ボタンのデザインを改善する際は、元のボタンデザインと改善したボタンデザインでA/Bテストをすることで、時期要因などを除外して施策の効果性を検証できます。メールやプッシュ通知等に関しても配信対象をランダムに分割して、半分は原稿A、もう半分には原稿Bを送って開封率やクリック率を検証することで、確実にCVRを改善していくことができます。
WebマーケティングにおいてはA/Bテストの実施数がビジネスのグロースを左右すると言っても過言ではありません。マーケティングツールを利用することで、データに基づくUI/UXの改善、A/Bテストの実施なども容易になります。
マイクロCVの活用
CVRを向上させる上では、マイクロCVを活用することも有効です。マイクロCVを設置して計測することで、ユーザーがどこで離脱しているのか、どこにハードルがあるかをより解像度を高めて分析することが出来ます。
たとえば、ECサイトにおいては、「購入」というCVに至る手前には「カート投入」というマイクロCVがあることが一般的です。
カート購入したのに購入しなかったいわゆる「かご落ち」を既存ユーザーと新規ユーザーに分解して分析する、また、「カート投入」したユーザーの特徴的な行動を、カート投入しなかったユーザーの行動データと比較して見出すといったアプローチをすることで、CVR改善への施策案を創出しやすくなります。
また、新規販促の場合には、前述した通りCVRは1-3%程度が一般的です。その場合、最終的な購入をCV地点にすると、特定のプロモーションの改善に向けてデータを分析したくても十分なデータ量が取れないこともあります。そうした場合もマイクロCVを設定しておくことで分析に十分なデータ量を確保し、CVを生み出すための特徴的な行動パターンやターゲットのセグメントなどを見出せることもあります。
リピート率の向上とロイヤルカスタマーの育成
CVRを高めるには、リピート率の向上とロイヤルカスタマーの育成も非常に重要なポイントです。
たとえば、ECサイトで考えてみましょう。自社のECサイトで購入したことがあるユーザーは、商品・サービスの価格帯を知っていますし、操作方法も知っています。そして、扱われている商品・サービスを評価して購入した実績もあります。また、再度サイトにアクセスするということは、購入した商品・サービスに一定の満足度もあると考えられるでしょう。
従って、リピートユーザーというのは、新規ユーザーと比べると圧倒的にCVRが高くなります。従って、リピート率を高めることが非常に重要なのです。リピート率を高めるためには、商品・サービスの満足度は大切です。同時に、商品・サービスや顧客に適したタイミングでリピート購入の案内をする、リピート購入を促進するオファーを設けるといったWebマーケティング、アプローチの工夫も非常に重要です。
リピート率を向上させる中では、ロイヤルカスタマーの育成も意識しておきたいポイントです。ロイヤルカスタマーとは「企業・製品に対して愛着を持って利用してくれているユーザー」のことで、ロイヤルカスタマーのCVRは、新規顧客のCVRの目安1-5%の数倍-数十倍になることもあります。
リピート率の向上やロイヤルカスタマーの育成に取り組むうえでは、リピートしているユーザー(ロイヤルカスタマー)はどんな属性か、サイト内でどんな行動をしているか、特徴的な行動パターンはあるか、いつ2回目の購入をしているか、どこから2回目の購入に流入しているか、2回目購入の促進に効果のあるオファーは何かといったことをしっかり分析して施策を打つことが大切です。こうしたデータをしっかりと分析できるマーケティングツールを活用しましょう。
当社では、リピート率の向上やロイヤルカスタマーの育成に課題がある企業様に、最適なツールの選定やツールの導入・運用支援を行っております。サービスの詳細はこちらをご確認ください。
まとめ
CVは「ユーザーが自社で定めたゴールに至ること」を指し、具体的には商品・サービスの購入、見積依頼、資料請求、会員登録、アプリのダウンロードなどがCVです。CVは売上につながるKPIであり、CVを増やすことが売上向上、ビジネスグロースに繋がる重要な指標です。
Webマーケティングにおいては、CV数、また、アクセス者・訪問者数に対するCVの比率を示すCVR、そして、CV1件の獲得単価を示すCPAなどが非常に重要なKPIとなります。CPAを許容範囲に収めながら、CVRを高め、CVを増やすことがマーケターに求められるミッションです。
また、CVRを改善するためには闇雲に手を打つのではなく、きちんとユーザーの行動データなどに基づいて、UI/UXの改善、マイクロCVの活用、リピート率UPやロイヤルユーザーの育成などに取り組んでいくことが大切です。
こうしたWebマーケティングを実行するうえでは、施策を見出すために必要なデータ分析を容易に実施できる、導き出した施策をスピーディーにA/Bテストなどで実行して効果検証できる環境が非常に重要です。マーケティングツールを活用して、データを活用するプロセスを整え、CVの増加、ビジネスグロースを実現していきましょう。