ECサイトを継続的に成長させていくうえで、初回購入者が再び購入してくれる割合を指すF2転換率は重要な指標のひとつです。この数値が高いほどリピーターが増え、売上の安定化やLTV(顧客生涯価値)の向上につながります。
ECサイトを運営している担当者の中には、すでにさまざまな施策を行っているものの、
「なかなか数値が改善しない」
「結局、割引やクーポン施策に頼ってしまっている」
という課題をお持ちの方もいらっしゃると思います。
こうした課題に対してはデータに基づいて、再購入につながる最適な打ち手を設計することが重要です。この記事では、F2転換率を改善するための施策をGA4やAmplitudeといった分析ツールを活用しながら、データドリブンの視点で分かりやすく解説します。
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F2転換率の重要性と目安
F2転換率とは、初めて商品を購入したユーザーが、2回目の購入へ進むこと割合を数値化したものを言います。
「リピート購入」を示す大切な指標であり、F2転換率が高いということは、商品やブランドに満足し、継続的に使いたいと感じてくれているユーザーが多いということです。つまり、この指標が高まれば自然とリピーターが増え、LTV(顧客生涯価値)も上がっていく傾向にあります。
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F2転換率の算出方法
F2転換率の計算方法は以下の通りです。
F2転換率(%)= 2回目の購入者数 ÷ 初回購入者数 × 100
たとえば、ある月に1,000人が初めて商品を購入し、その中で200人が2回目の購入をした場合、F2転換率は以下のように算出されます。
F2転換率 = 200 ÷ 1000 × 100 = 20%
ここで注意すべきポイントは、「どの期間までに2回目の購入があったか」を明確にしておくことです。たとえば「初回購入から30日以内に再購入した人だけをカウントする」といったように、分析対象とする期間のルールを設定する必要があります。期間を決めずに計算してしまうと、長期的な再購入も含まれてしまい、正しいF2の実態が見えなくなってしまいます。
施策の成果を比較したり、改善の効果を測定したりするためには、期間設定も含めて、F2転換率の定義を統一しておくことが重要です。
F2転換率の目安
F2転換率の水準は業種によって異なりますが、一般的には20%から50%が目安とされています。
食品や日用品のように日常的に使う商品では再購入のハードルが低いためF2転換率は高くなりやすく、家具や家電のように購入頻度が低い商品では数字も控えめになる傾向があります。
ツールで可視化するF2転換率
F2転換率を改善したいと考えていても、まず必要なのは「今どんな状況にあるのか」を正しく把握することです。
そんなときに頼りになるのが、GA4やAmplitudeなどの分析ツールです。これらを活用すれば、F2転換率を正確に“見える化”できるだけでなく、ユーザーがどこで再購入につながり、どこで離脱しているのかを、より具体的に把握できるようになります。
それぞれのツールを使ってF2転換率をどうやって可視化するのか、実際の使い方を交えてご紹介します。
アクセス解析ツール:GA4
多くの企業で使われているGA4は、サイト全体の動向を把握するのに適しています。セグメント機能を使ってF2転換率を算出し、どのチャネルや商品カテゴリが成果に貢献しているかを把握できます。
セグメントと聞くと「なんだか難しそう…」と感じる方もいるかもしれません。
最初は以下でご紹介するようなシンプルな条件から始めてみると、徐々に応用が効くようになり、自社の課題に合わせた分析がしやすくなりますので、ぜひ試してみてください。
【手順】
1.探索レポートを選択する
GA4左メニューから [探索] → [自由形式] をクリック
2.初回購入者(F1)、2回購入者(F2)の2種類のセグメントを作成する
「+」ボタン→「新しいセグメントを作成」→「ユーザーセグメント」をクリック
初回購入者(F1)のセグメントを作成
新しい条件を追加→イベント purchase(購入)を選択

パラメータを追加→イベント数→条件(1回以上)、期間を設定し、適用をクリック
同様の手順で2回購入達成者(F2)のセグメントも作成

※本記事では、簡易的に「期間内の購入回数が1回=F1、2回以上=F2」と定義しています。新規ユーザーか既存ユーザーかを区別せず、まず全体の傾向を把握する目的で活用しています。
3.セグメントを適用して比較する
レポート画面に戻り「セグメントの比較」に、作成したセグメントを適用し、列にアクティブユーザー数を設定する

4.F2転換率を算出
F2転換率 = F2ユーザー(購入回数≥2) ÷ F1ユーザー(購入回数≥1)
例)F1=1,452人、F2=107人 → 7.3%
※この記事では過去30日間という特定の期間のF2転換率を算出しています。
このようにGA4を使えば、F2転換率を、具体的な数字として確認できるようになります。さらに、チャネル別や商品カテゴリ別など作成したセグメントを深掘りして、どんな施策が再購入につながりやすいのかの示唆を得ることができます。
💡GA4を活用した深掘り分析の方法を見る(ページ内ジャンプ)
ユーザー行動分析ツール:Amplitude
一方、Amplitudeは、個々のユーザー行動を深く掘り下げて分析するのに特化したツールです。本格的な分析をもとにF2転換率を改善したいとき、このツールが持つ分析の深さはとても頼りになります。
ファネル分析を使うことで、F2転換率の算出はもちろん、再購入に至ったユーザーに共通する行動パターンを見つけ出すことができます。

【手順】
1. ファネルチャートを選択
作成する→ ファネル を選択
2. ファネルを作成
ファネルの入口イベント 「購入」イベント を設定し、条件で 「履歴カウント(回数)=1」 を指定
→ 初回購入をしたユーザーが対象になります。
- 次のイベントに 「購入」イベント を設定し、条件で 「履歴カウント(回数)=2」 を指定
→ 2回目購入に到達したユーザーが対象になります。
3. 期間を設定
分析期間を「直近30日」や「過去3か月」などに設定
以上の3ステップの操作でファネルが生成され、1回目購入者の数と2回目購入者の数、その割合(=F2転換率)が自動的に算出されます。
Amplitudeでは、ユーザーを行動パターンごとに自動でグループ分けでき、再購入につながっている行動や特徴的な傾向をつかみやすくなります。こうしたインサイトを得ることで、F2転換に直結する“キーとなる行動”を特定でき、その行動を促すための施策(例:商品閲覧を増やすレコメンド施策、レビュー導線の強化)につなげることができます。
ユーザーの全体的な動きを把握したいときはGA4、個々のユーザーがどんな体験をしているかを詳しく見たいときはAmplitude。こうした役割分担を意識しながら使い分けることで、F2転換率の改善に向けた取り組みが、より効果的になります。
F2転換率を高める定番の施策
F2転換率を可視化したあとは「どう改善するか」です。初回購入から再購入までの流れをスムーズにし、自然とリピートしたくなる仕組みを作ることが求められます。
ここでは、効果が見込める具体的な施策をご紹介します。
初回購入時の体験を良くする
初めて商品が届いたときの体験が、その後の行動に大きく影響するというのは、どの業種でも共通して言えることです。そのためF2転換率を高めるためには、初回購入の“体験設計”を丁寧に考えることが欠かせません。
例)
・商品の使い方をわかりやすく解説したパンフレットを同封する→初めてでも安心して使ってもらえる
・ブランドの背景や開発ストーリーなどを伝える読み物を同封する→ブランドへの共感や愛着につながる
・商品到着後にフォローメールやLINEメッセージを送る→買ったあともフォローしてくれるという安心感につながる
こうした細やかな心配りは、「良い買い物をした」という気持ちを後押しし、次の購入の後押しにつながりやすくなります。
次回購入時に使えるクーポンを発行する
初回購入後に「次回使えるクーポン」を届ける施策は、リピート促進の定番でありながら、実際に効果の高いアプローチです。すでに多くのECサイトで実施されていると思います。
ただし、単にクーポンを配布するだけではなく、使ってもらいやすい工夫が必要です。
例)
・有効期限付きクーポン→購買行動を後押しする
・「ご購入者さま限定」「初回限定特典」などの特別感のあるクーポン→特別な体験として受け止められる
・購入した商品と関連性が高い商品のクーポン→購入体験の延長線上で欲しくなるものを提案できる
クーポンはユーザーが「使いたい」と思える仕掛けを作ることで、単なる割引ではなく「再購入を生み出す仕組み」になります。
関連性の高い商品をレコメンドする
初回購入で得た満足感が薄れないうちに、その商品と相性の良い別の商品を、自然な流れで提案できると再購入の可能性はぐっと高まります。
たとえば、スキンケア商品の購入後に、次のステップとして使える美容液や日焼け止めなどをレコメンドすることで、「これも一緒に使ってみようかな」と思ってもらえるチャンスが生まれます。重要なのは、提案する商品とのつながりが分かりやすいことです。関連性が明確であればあるほど、売り込み感は薄れ、むしろ「ちょうど欲しかった」と前向きに受け止めてもらいやすくなります。
接触率を上げる
リピート購入につなげるために欠かせないのは、ユーザーの頭の中で最初に思い浮かぶ存在になることです。
購入から数日以内のタイミングで、商品に関するフォローアップやおすすめ情報をメールやLINEで届ければ、「ちゃんと気にかけてくれている」という印象を与えることができます。1週間後、2週間後といった節目にも、プッシュ通知やSNS広告などを通じてタッチポイントを設けることで、ブランドを思い出してもらうきっかけになります。
ただし、頻度が多すぎると逆効果になる可能性もあるため、「しつこく感じさせない心地よい距離感」が重要です。
とはいえ、「実際にどんな施策で接触率を上げればいいのか分からない…」と感じているEC担当者の方も多いのではないでしょうか。そんな方向けに、リピート購入につなげるための顧客エンゲージメント向上施策をまとめた資料をご用意しました。無料でダウンロードいただけますので、ぜひご活用ください。
データドリブンでF2転換施策を最適化する分析方法
ここまでさまざまな施策をご紹介してきましたが、重要なのは「なぜF2につながったのか」を特定し、その要因に応じた打ち手を選択することです。そのためには、データドリブンによる施策実行が欠かせません。
手始めにGA4を使えば、流入チャネルや商品カテゴリなどの軸でF2転換率を比較することができ、それぞれに最適な施策を組み立てることが可能です。ここでは、実務に活かしやすい2つの分析をご紹介します。
どの視点から分析すべきかに悩んでいる方は、まずここから取り組んでみてください。(ツールで可視化するF2転換率 → アクセス解析ツール:GA4でご紹介した続きの操作になります。)
チャネル別:F2転換率の分析
まず注目したいのが、ユーザーがどこからサイトに訪れたのかという「流入チャネル別」のF2転換率です。GA4では、最初のセッションの参照元やメディアをセグメントとして指定することで、たとえば自然検索、SNS経由、広告流入といったチャネルごとのF2転換の違いを把握することができます。
【手順】
ツールで可視化するF2転換率 → アクセス解析ツール:GA4の続き
1.ディメンションに「ユーザーの最初のデフォルトチャネルグループ」を設定
2.行に「ユーザーの最初のデフォルトチャネルグループ」を設定

※GA4のデモアカウントを使用しています。
購入につながったユーザーが、主にどのチャネルから来たユーザーなのかを可視化することができます。
仮に、広告から来たユーザーのF2転換率が高いという結果が出た場合は、そのチャネルの購買意欲が高いことを意味します。
そうした傾向が見えれば、広告経由のユーザーに対しては購入直後のフォローアップを強化したり、再購入を促すタイミングで優先的に情報を届けたりといった施策が検討できます。チャネルごとの特性を見極めることで、限られたリソースの中でも効率的に成果を上げやすくなります。
商品カテゴリ別:F2転換率の分析
商品カテゴリ別にF2転換率を分析することで、ユーザーの購買特性を理解し、施策の優先順位づけ・クロスセル戦略を立てやすくすることができます。
【手順】
ツールで可視化するF2転換率 → アクセス解析ツール:GA4の続き
1.ディメンションに「Item category(アイテムのカテゴリ)」を設定
2.行に「Item category(アイテムのカテゴリ)」を設定

※GA4のデモアカウントを使用しています。
商品カテゴリ別にF2転換率を分析することで、どのカテゴリが再購入につながりやすいのか、あるいはそうでないのかを把握できます。たとえば、F2転換につながりやすいカテゴリでは、使用サイクルに合わせて最適なタイミングでリマインドを行うことで、自然な再購入を促すことが可能です。
反対に、F2転換につながりにくいカテゴリでは、関連商品のレコメンドや延長保証の提案といった間接的なアプローチが効果的になります。
このように、カテゴリごとのF2転換率の傾向を押さえておくことで、「どのカテゴリにどんな施策が合っているか」を判断する材料になります。全体の平均値だけで判断してしまうと、施策の優先度を見誤るリスクもあるため、カテゴリ別の視点を取り入れることが、より精度の高い改善へとつながります。
その他、GA4では購入単価別のF2転換率分析、さらに細かいカテゴリ別のF2転換率分析など、深掘り分析を行うこともできます。ただし、こうした分析を正しく行うためには、事前のデータ設計や分析ノウハウが必要です。
当社では、これまでのデータ分析ノウハウをもとにGA4のデータ設計から具体的な分析までをご支援しております。ぜひお気軽にお問い合わせください。
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💡関連記事:【完全版】GA4分析の基礎から応用の行動分析までわかりやすく解説
F2転換率改善の高度な分析/施策事例
ここまで、GA4を活用した基本的なF2転換率の分析方法をご紹介してきました。しかし、より具体的なユーザー行動のパターンを深く掘り下げたい場合には、Amplitudeのようなユーザー行動分析に特化したツールが非常に有効です。
ここでは、実際にAmplitudeを使ってF2転換率の向上に成功したアパレルECサイトの事例をご紹介します。
アパレルECサイトのユーザー行動分析事例
このアパレルECサイトは、競合が多いためいかに初回購入者をリピーターに育てるかが重要な課題となっていました。Amplitudeを導入してからは、「購入者数の最大化」を主要なKPIに設定し、その達成に向けてF2転換を含むユーザー行動の分析を強化していきました。
最初に取り組んだのは、購入経験のあるユーザーをグループに分けて傾向を探るペルソナ分析です。

Amplitudeの機能を活用してユーザーを4つのタイプに分類したところ、2回以上購入しているユーザーは、他のグループに比べて「閲覧履歴」を見る回数が圧倒的に多いという傾向が見えてきました。全体平均では1.4回だった閲覧回数が、そのグループでは平均9.1回に達しており、F2転換との強い関係が示されました。
この発見をもとに、チームは「閲覧履歴を見る」という行動の前後をさらに深く分析しました。

すると、多くのユーザーが「商品詳細ページ」を閲覧した後に閲覧履歴にアクセスしていたことが判明しました。
ただし、閲覧履歴へのリンクは商品詳細ページの下部にしか配置されておらず、ユーザーが気づきにくい構造になっていたのです。そこで、「閲覧履歴」への導線を改善することで購入率が上がるのではないか、という仮説を立てました。
この仮説を検証するために、ナビゲーションメニューに「閲覧履歴」ボタンを新たに設置し、既存の「お気に入り」ボタンと出し分けるA/Bテストを実施しました。

その結果、「閲覧履歴」ボタンを表示したグループでは、カート投入率が122%、コンバージョン率が156%、購入者数が114%と、すべての指標で改善が見られました。わずか15分程度の設定と分析でここまでの成果が出せたという点も、Amplitudeの大きな強みの一つです。
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まとめ
F2転換率は、単なる再購入の指標ではなく、顧客がブランドとの関係を深めるスタート地点ともいえます。
本記事で紹介したように、F2転換率は可視化したあと深掘り分析することで、なぜ再購入につながったのかを解像度高く捉え、次の打ち手に直結する示唆を得られます。まずはGA4によるチャネル・カテゴリ・単価別などの分析を行い、さらに一歩踏み込んだ行動理解を目指すならAmplitudeのようなプロダクト分析ツールの導入が効果的です。
当社では、GA4の分析支援やAmplitudeの導入/分析支援など、マーケティングデータの分析を幅広くご支援しております。
「データ分析のノウハウがない…」「今やっている分析が正しいのかわからない…」など、どんな課題をお持ちの方でもまずはお気軽にご相談ください。
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