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CRMとMA(マーケティングオートメーション)の違いや使い分けのポイント

2024.05.01

デジタルマーケティングの発達に伴って、MAやCRMなどのマーケティング支援ツールの活用は欠かせないものとなっています。一方で、MA(マーケティングオートメーション)とCRM(顧客関係管理)がどのように違い、また使い分ければいいか分からない人もいるでしょう。

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記事では、CRMとMA、またSFAについて、ビジネスプロセスとマーケティングにおける位置づけと特徴、代表的なツール、また使い分けと連携のさせ方、導入時の注意点などを解説します。

CRMとは?

CRMは、Customer Relationship Management(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)の略称で、日本語にすると「顧客関係管理」です。

「顧客との関係を管理する」という名前の通り、購入や契約いただいた顧客との関係を維持・強化して顧客の満足度を高める。また、ビジネス視点ではリピート購入やアップセル・クロスセルなどを通じて、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を向上させていくことがCRMの大きな目的です。

CRMの基になる概念としては「顧客台帳」や「ルート営業における顧客構造」といったものを想像していただくと分かりやすいでしょう。

◆CRMの目的と役割

CRMの目的は、顧客との関係を管理して、顧客との取引を維持・深耕することです。そんなCRMの大きな特徴は、既に取引がある顧客をマネジメントの対象とすることです。

CRMの役割を、たとえば、カーディーラー(自動車販売店)の事例で考えてみましょう。まず初めて自動車を購入いただくまでには、店舗に訪れていただき、数回の商談をすることが多いです。その中で、住所、お名前、家族構成、自動車の利用目的や頻度、選ぶときに気にするポイント、購入予算、ローンを組むようであれば経済状況や収入なども把握します。

商談を経て自動車を買っていただいたら、まず納車があります。そこから定期的に連絡をして、たとえば、使い勝手の確認、定期点検やオイル交換のご案内をしたり、また、スタッドレスタイヤなどのオプション購入を提案することもあるでしょう。時にはこちらからの連絡だけでなく、お客様側からの問い合わせも生じます。

購入から一定の年数が経過する中で、たとえば、お子さんの誕生に伴って最初は夫婦2人用に購入したSUVを下取りしてミニバンの購入を提案する、セカンドカーとして軽自動車の購入を提案する、お子さんの成人に伴って新車を提案するといったことも出てくるでしょう。

このように購入や契約いただいたお客様との接触履歴、購入履歴、問い合わせなどの情報を管理しながら、適切なアフターフォローを提供し、リピートや次の提案などにつなげていくのがCRMの役割です。

◆CRMツールの機能

これまでは、顧客台帳などによってアナログに管理・実施されていたCRMですが、顧客数が増えるに連れてアナログでは対応しきれなくなります。また、デジタルプロモーションが当たり前となり、ECサイトにおける購買履歴、Webからの問い合わせ記録、送付したご案内やキャンペーンなどの開封やクリック履歴などの取得できる情報量も増える中で、CRMを実施するに際してはCRMツールを導入することが一般的になっています。

前述の、カーディーラーの事例でCRMにおいてどんな情報を扱うかの想像がついた方も多いと思います。CRMツールに標準的に搭載されている機能は大きく3つに分類できます。

顧客情報の管理と分析

まずCRMを運用するうえで基盤となるのが顧客情報です。CRMは既に購入・契約いただいたお客様が対象ですので、お客様の個人情報が取得されています。個人名や住所などの基本情報に加えて定量・定性に渡る様々な情報、また法人取引であれば、法人に関する情報、取引先の支社や拠点などの情報、窓口や関係者となる個人の情報という形で顧客情報も複数階層になります。

また、商品・サービスの購入履歴、商材名や単価・数量・受注額・受注日や納品日・担当者といった取引履歴もCRMで管理されることが多いでしょう。こうした顧客情報と取引履歴が、顧客へのアフターフォローや次提案をしていく上で活かされることになります。

CRMに格納された顧客情報と取引履歴は、マーケティング施策を検討する分析の基盤にもなります。たとえば、顧客セグメントとターゲティングに関する分析、商材軸でのABC分析、最終購入日(Recency)・購入頻度(Frequency)・購入金額(Monetary)という3つの軸で顧客をグルーピングするRFM分析など、さまざまなマーケティング施策がCRMツールに格納されたデータを分析することで検討されます。

なお、場合によってはCRMツールと取引データを管理する基幹データベースが分かれているケースなどもありますが、そうした場合には両者のデータ連携が非常に重要となります。

プロモーション管理

顧客情報と取引履歴を基にして展開されるプロモーションやキャンペーンの管理機能もCRMツールに備わっている標準機能のひとつです。

CRMでは取引履歴やデータ分析を基にして、特定の顧客やセグメントに期間限定のキャンペーンを案内したり、お勧め商品をご案内したり、メールを送信したりするといったことが実施されます。こうしたプロモーションの実施と結果の管理機能は、CRMツールでは標準的に実装されています。

最近のデジタルマーケティングでは、メールだけでなく、アプリのプッシュ通知でキャンペーンを実施したり、表示するアプリやWebサイトの画面を顧客によって変更したり、Webサイト内のアクセスログを記録してマーケティングに活用したりすることも一般的です。従って、CRMツールだけでプロモーション管理をするわけではなく、他の各種ツールとデータを連携させてマーケティングを実施することも多くなっています。

カスタマーサポートの管理

CRMツールには、顧客からの問い合わせ等を管理する機能もついていることも一般的です。電話やメールでの問い合わせ、また、最近はWeb上からの問い合わせデータが自動でCRMツールと連携して管理されるようになっていることも多いでしょう。

最近、サブスクリプション型のビジネスモデルが増えた中で、カスタマーサクセスを専門部署として設置する企業も増えていますが、既存顧客のケアとサポートを担うカスタマーサクセスが担う役割はCRMツールが担う役割と同じです。従って、カスタマーサクセスの業務ではカスタマーサポートの管理を始めとしてCRMツールの機能をフルに活用することになります。

なお、こうした問い合わせの管理は顧客への対応品質を高めて顧客満足度の向上とリピート等につなげる以外に、問い合わせデータを分析することで商品の改善や機能開発などにもつながります。

代表的なCRMツール

代表的なCRMツールとしては、Salesforce、Oracle CRM、Microsoft Dynamics 365、Synergy!、eセールスマネージャー 、SAP CRM、Zoho CRM、HubSpot CRMなどがあります。

基本的な機能は類似していますが、適した顧客規模、得意な領域、データ連携の幅広さ、費用などが違います。検討して、自社に適したCRMツールを選ぶことが大切です。

CRM導入のポイントや導入のステップについて、次の記事で詳しく解説しています。

MA(マーケティングオートメーション)とは?

MAは、Marketing Automation(マーケティングオートメーション)の略称です。Marketing Automationを日本語に直訳すると「マーケティング活動の自動化」、意味でいうと「見込客の管理・育成」になります。

マーケティング分野では、見込客の獲得をリードジェネレーション、管理・育成をリードナーチャリングと呼びます。リードジェネレーションとナーチャリングのプロセスで不可欠となってくるのがMAツールです。

顧客に対してアプローチするという点では、MAとCRMは同じです。ただし、CRMは契約や取引した顧客を対象とするのに対して、MAはまだ契約や取引していない見込客を対象とする点が大きく異なります。

カーディーラー(自動車販売店)の事例でいけば、Webサイトを見て「このモデルの在庫ありますか?」と問い合わせだけいただいた方、来店いただいたけど購入いただけなかった方などが、MAの対象となる見込客です。

最近はデジタルマーケティングが発達したことで、メールアドレスだけを入力してホワイトペーパーをダウンロードいただいた方、場合によってはWebサイトにアクセスしてCookie情報だけで識別されている状態の方など、匿名の見込客もMAツールでアプローチする対象となります。

MAの目的と役割

MAの目的は、見込客を獲得・育成する、そして、契約や購買までつなげることです。

再びカーディーラー(自動車販売店)の事例に戻ると、たとえば、問い合わせの数日後に「問い合わせていただいた件の検討はいかがですか?」とご連絡する、ダウンロードいただいたホワイトペーパーの内容に合わせた追加の情報提供や「今ならこのモデルの試乗ができますよ」と案内を送る、匿名ユーザーだとしても過去にアクセスしたWebサイトのページを基にWebサイトに表示するバナーを切り替えるといったことをするのがMAツールの役割です。

このように見込客に情報提供やアプローチをして、問い合わせ、商談、来店、契約などにつなげていくことがMAの役割となります。

見込客へのアプローチは、1店舗だけのカーディーラー(自動車販売店)であれば、リアルに問い合わせや来店いただいた方への実施はできるかもしれません。しかし、一般的に見込客は契約や取引いただいた顧客の十倍から数十倍になります。また、デジタルマーケティングの中では氏名などを取得してない匿名上の顧客も生じてきます。こうした数万件、数十万件といった規模の見込客を、人が管理して、個別にアプローチをカスタマイズして実行することは不可能です。

しかし、MAツールを使うことで、膨大な見込客に対して、個々の問い合わせタイミングやダウンロードいただいた資料、商談の有無などを踏まえたカスタマイズしたアプローチを自動で実行できます。これがMAが「見込客の管理・育成」ではなく、「マーケティング活動の自動化:Marketing Automation」と名づけられた由来です。

MAツールでできること

MAツールでできることには、見込客の「獲得」「育成」「スコアリング」の3つが挙げられます。

見込客の獲得

見込客の獲得は、一般的にはWebサイトや電話などからの問い合わせ、また、ホワイトペーパーや資料のダウンロード、セミナーやウェビナーの参加、アプリのダウンロードなどによって生じます。MAツールでは、こうした見込客の獲得とその後の育成をスムーズにつなげるためにランディングページの作成やフォームの生成機能が備わっている事が一般的です。

MAツールで生成したフォームを使うことで、フォームに入力された情報はスムーズにMAツールに格納され、また、いつ、どんな資料や問い合わせをしたか、問い合わせする前にはどのページを見ていたかといった情報も自動で反映できます。これによって、その後のインサイドセールスやメール、プッシュ通知等によるアプローチの生産性が向上します。

MAツールによっては氏名などが分からない見込客情報も扱えるようになっています。メールアドレスのみ、また、Cookie情報しかない、最近ではLINE IDしかないといった匿名情報にアプローチを重ねることで、個人情報を取得して商談や購買につなげていきます。

見込客の育成

MAツールの主となる機能が見込客の育成です。

獲得した見込客の属性や行動を踏まえて、メルマガ配信や資料提供等を実施して、見込客の関心を高めていきます。メール配信やインサイドセールスによる電話などに加えて、アプリへのプッシュ通知やWebサイトやアプリで表示する画面のカスタマイズ、SMSの配信、また、オンデマンド印刷や発送と連携してMAツールから自動でカスタマイズしたDMやカタログを送るといったことも可能になっています。

見込客の育成をする上では、定期的にアプローチする、信頼につながる情報を送るといったことに加えて、相手に合った情報を送ることが大切です。たとえば、性別や年代に応じて興味を持つ商品やサービスは異なるかもしれません。また、旅行のECサイトでいえば、国内の温泉宿のページをいくつも見ていた見込客と、海外挙式のパッケージを見ていた見込客では、提供すべきコンテンツは変わるでしょう。

BtoBサービスでも、サービス分野の基礎的なホワイトペーパーをダウンロードした見込客と自社サービスの簡易見積もり機能を使った見込客では、サービス導入に関する検討フェーズや熱量が変わり、アプローチを変えるべきでしょう。

本来は見込客一人ひとりに対して、完全に個別なアプローチをすることが理想です。しかし、現実には毎日数百件、数千件といった流入があれば、個別にアプローチすることは不可能です。そこで、上述したような性別や年代、会社規模などの顧客属性、ダウンロードした資料や見ていたWebページのカテゴリといった行動属性などでグルーピングして、グループごとにアプローチの仕方や送る資料、アプローチのタイミングなどを設定することで対応を自動化します。

また、最近では生成AIを搭載したMAツールも登場しています。生成系AIを搭載したMAツールで何ができるのか具体的にご紹介しています。

見込客のスコアリング

MAツールを通じて見込客にアプローチしていくと、さまざまな反応が返ってきます。たとえば、メールを開封する、メール内のURLやバナーをクリックする、案内した追加資料をダウンロードするといった反応です。MAツールでは、こうした顧客の反応を捉えてスコアリングに反映することができます。

スコアリングとは「スコアをつける」、つまり見込客に点数をつけることを指します。ここでいう点数は、受注や購入への近さ、また、LTVの大きさなどを示すものです。スコアリングは、顧客属性、たとえば、会社規模の大きさや見込客の部署や役職など、また、行動属性、どんな問い合わせがあったか、どんなページを見たかといった要素で加点要素などを決めて実施されます。

スコアリングは、見込客育成のアプローチに活用できる要素のひとつです。先ほど見込客の育成におけるアプローチのひとつとして、インサイドセールスからの電話といった方法を記載しました。デジタルマーケティングが発達した現在でも電話によるアプローチは有効な手法です。しかし、インサイドセールスの人数と時間が限られる中で、電話できる件数は限られてきます。従って、電話する際にはスコアが一定以上の見込客にのみ連絡する、スコアが高い顧客から順番に連絡するといった形になります。

また、スコアが一定の基準を超えたタイミングで、購入や契約に向けた最後の一押しをするために特別なキャンペーンの案内を送るといったやり方もあるでしょう。

代表的なMAツール

代表的なMAツールとしては、Account Engagement(旧Pardot)、Adobe Marketo Engage、SHANON MARKETING PLATFORM、SATORI、KARTE、BrazeMoEngage、HubSpot Marketing、などがあります。

MAツールを選定する上では、CRMツールと同じように、適した顧客規模、得意な領域、データ連携の幅広さ、費用などを比較検討することが大切です。

MAツール選定のポイントやおすすめのツールを、以下で詳しく解説しています。

SFAとは?

SFAは、Sales Force Automation(セールスフォースオートメーション)の省略で、日本語では「営業支援システム」などと呼ばれる営業プロセスを効率化するためのツールです。

CRMとMAは主にプロモーション(マーケティング)活動をマネジメントするものでしたが、SFAは営業活動をマネジメントする点が大きく異なります。

また、ビジネスプロセス内での位置づけでいうと、MAで見込客を獲得・育成した後に、商談プロセスをマネジメントするのがSFA、そして、取引・契約後の顧客マネジメントを動かすものがCRMということになります。

SFAは基本的に営業活動(営業部門)がある組織で使われるものであり、例えば、EC専業などであれば、MAとCRMはあってもSFAは導入しない形になるでしょう。

◆SFAの目的と役割

SFAの目的は、商談管理を適切に行うことで営業活動の生産性を高めることです。各商談のフェーズ、顧客の状況、受注までに超えないといけないハードルや不明点、今後のアクションスケジュールなどを一元管理できます。

SFAを使うことで、営業パーソンのセルフマネジメントレベルを高めると同時に、営業マネージャーも適切なアドバイスやケアを提供できるようになります。また、個人、チーム、営業部といった単位での受注や売上見込の管理精度も向上します。

商談の管理項目やマネジメントをツールを使って標準化していくことで、ブラックボックスになりやすかった営業プロセスを標準化し、営業組織の生産性を高める、人材育成をしやすくする役割がSFAには期待できます。

なお、SFAを活用する上では、MAツール・CRMツールとの連携も重要となります。MAツールと連携させることで商談に至るまでのプロセスを把握する。また、商談で失注した際には見込客の育成プロセスに戻すといったことが実現します。また、CRMツールと連携させることで、商談相手との取引履歴や関係性、また、過去の問い合わせなども参考にして商談を進めることができます。

◆SFAツールの機能と代表的な製品

代表的なSFAツールとしては、Salesforce Sales Cloud、eセールスマネージャー、Mazrica Sales、GENIEE SFA/CRM、ネクストSFA、Hubspot Sales Hub、Oracle Sales Cloud、kintone、Dynamics 365 Salesなどがあります。

CRM・MA・SFA、それぞれの代表的なツールで同じブランドが登場していることからもわかる通り、CRM・MA・SFAは非常に連携して使われるツールであり、同じ企業が提供していることもあります。同じ企業の商品であれば、ツール間のデータ連携がスムーズであるといったメリットがあるでしょう。

SFAは、単独で使う前提か、MAやCRMツールと連携する前提かというコンセプトの違いによっても費用や機能が大きく変わる傾向にあります。自社でどのような使い方をしたいか、MA・SFA・CRM間の連携のどこが重要かなどを踏まえてツール選定を進めると良いでしょう。

MA(マーケティングオートメーション)とCRM、SFAの違い

ここまで紹介してきた通り、MA・CRM・SFAは、広い意味での販売プロセス(マーケティングとプロモーション、営業)における顧客アプローチを管理するという点では共通です。

ビジネスプロセスにおけるMA/SFA/CRMの違い

MA(マーケティングオートメーション)とCRMは、プロモーション文脈で使われることは同じですが、対象とする顧客がMAの場合には「見込み客」、CRMの場合には「既存顧客」ということが大きく異なります。

また、MAとSFAは、取引や契約までのプロセスをマネジメントするという意味では同じですが、MAはプロモーションの文脈、かつ、商談プロセスがある場合は商談化するまでのフェーズを中心に使われ、SFAは営業活動における商談管理にフォーカスして使われるという違いがあります。

なお、営業パーソンを介した商談プロセスが存在し、受注単価が高く、顧客数が少ないビジネスではSFAを活用することが多い一方で、商談プロセスが生じないビジネス、たとえば、EC専業やオンラインゲーム、アプリを通じたサービス提供といった業態ではSFAは利用されません。逆に、こうしたサービスでは顧客数が膨大であることが多く、その分、見込客管理のMAツール、既存顧客管理のCRMツールを連携させて活用することが非常に重要になります。

CRM・MA(マーケティングオートメーション)・SFAを連携させる必要性と効果

CRM・MA(マーケティングオートメーション)・SFAといったマーケティング支援ツール・営業支援ツールを連携させて活用することは、ビジネスを成功させる上で非常に重要です。

ここまで説明した通り、MA・SFA・CRMの各ツールは、MAが見込客の獲得から育成、SFAが商談から受注、CRMが既存顧客と、ビジネスプロセスを分担して担っています。

MAからSFAに連携することで、MAによって獲得・育成した見込客の情報をスムーズに営業部門に引き渡せます。商談化するまでに、顧客とどんなやり取りがあったか、顧客はどんなコンテンツに反応していたか、どんなWebページを見ていたかなどの情報があれば、営業部門も商談準備をしやすいでしょう。

また、SFAで受注に至った顧客はCRMでマネジメントされる対象となります。従って、SFAとCRMが連携していることで、受注後のアフターフォローやカスタマーサクセス、そして、リピートやLTV向上に向けた動きもスムーズとなるでしょう。

見込客の獲得・育成、商談、既存顧客のマネジメントというビジネスプロセスは一方向だけで動くものではありません。

たとえば、BtoBにおける商談の受注率は一般に10〜20%程度と言われます。つまり、SFAで管理した商談の80〜90%は受注できずに失注するわけです。MAツールとSFAツールを連携させることで、失注した顧客をMAツールの対象に戻してMAツールとインサイドセールスでケアすることで再び商談化させるといったことも可能になります。

また、MAツールとCRMツールの「見込客」と「既存顧客」という区分は分かりやすいようで、じつは曖昧です。たとえば、既存顧客に対してプロモーションやキャンペーンを実施してリードが生まれたり、一度取引していたが休眠していた顧客が久しぶりに反応した場合、それはMAツールで育成する対象となる場合もあるでしょう。また、Webサイトやアプリなどは見込客も既存顧客も同じようにアクセスするものです。従って、その意味でも、MAツールとCRMツール、そして、Webサイトやアプリ管理などはシームレスにデータ連携して動く必要があります。

マーケティング支援ツールが必要となる背景

CRMやMA、SFAといったマーケティング支援ツールが必要となる背景を確認しておきましょう。自社でツール導入が必要かを確認する上でも、ぜひご覧ください。

ビジネス規模の拡大

まずビジネス規模の拡大は、マーケティング支援ツール導入が必要となる背景のひとつです。たとえば、月間の問い合わせは数件程度、既存顧客も数十社で、既存顧客との高額取引が中心というビジネスであれば、マーケティング支援ツールは必要ないかも知れません。

しかし、ビジネスが拡大して既存顧客が数百社、数千社と増えていけば、アナログや属人的な管理では破綻してしまい、ケアが行き届かない顧客が生じるでしょう。また、月間の問い合わせも数十件、数百件と増えていけば、ツールを使わずに、見込客それぞれに適した内容や適したタイミングでアプローチすることは難しくなるでしょう。更にビジネスが大規模になり、既存顧客や見込客が数万、数十万、数百万の単位になれば、属人的な管理は不可能です。

このようにビジネス規模が拡大すると、各プロセスをMAツールやSFAツール、CRMツールを用いて標準化する、また自動化することが必要です。

デジタルマーケティングの普及

デジタルマーケティングが普及したことも、マーケティング支援ツールの必要性が増している背景です。

デジタルマーケティングの特徴はさまざまなデータを取得できることです。メールひとつでも、開封、クリック、Webサイトでの購買有無などを追うことができます。また、Webサイトやアプリでどのページを見たか、何秒滞在したか、ページをどこまで読んだかといったことも取得できるデータです。こうした膨大なデータを取得、活用するためにはマーケティング支援ツールが必要となります。

さらに、デジタルマーケティングでは、メールアドレスの入力のみで何かをダウンロードしてもらったり、LINEで友だち追加だけしてもらったりするといった形で登録ハードルを下げて、見込客を大量に獲得することもできるようになりました。

MAツールの章でも紹介した通り、Cookie情報と紐づけてアクセス履歴を管理するなど、匿名リードの獲得・育成するという概念もあります。匿名リードを扱えば、育成対象となる見込客の規模は拡大しますし、名前がついていない見込客を人の感性でマネジメントすることは大変困難です。その意味でも、MAツールが必須となります。

データとカスタマージャーニーの分析

デジタルマーケティングの普及と並んで起こってきたのは購買行動の変化です。

マーケティングに携わっている方であれば、顧客の購買行動を表したAIDMAの法則(Attention:注意→Interest:関心→Desire:欲求→Memory:記憶→Action:行動)が、インターネットの発達によってAISASの法則(Attention:注意→Interest:関心→Search:検索→Action:行動/購入→Share:共有)に変化したという話はご存じでしょう。

購買行動における最も大きな変化は「Search:検索」の浸透です。AISASの法則は2005年に電通が商標登録したものです。AISASの法則が提唱されてから約20年が経過した現在、Web上に

「Share:共有」されている情報は飛躍的に増加して、昔は実際に問い合わせたり使ってみなかったりしないと分からなかった情報もWeb上に存在するようになっています。

その結果、何かの商品/サービス等に「Interest:関心」を持ったときに「Search:検索」するという行為は益々浸透して、商品・サービスを提供する側に問い合わせや登録が来る、つまり顧客の「Action:行動」が生まれる前に購買活動の意思決定が終わっている比率はどんどん高まっています。

結果として、マーケティング支援ツールを使って顧客が行動/購買するまでのプロセスを行動データとして取得して、定性的な顧客インタビューなどと併せて、カスタマージャーニーを描いて、マーケティングに反映する重要性が増しています。

カスタマーサポートの必要性

現在のビジネスは、過去と比べるとサブスクリプション×クラウドサービスという形で月額課金型の商材・サービスが増加しています。たとえば、CDやDVDなどは音楽/動画配信サービスに、カセットやCDで販売されていたソフトウェアはクラウドサービスに、ゲームもアプリでの月額やゲーム内課金に変わっています。

売り切り型のビジネスモデルでも、リピート率等を高める上でカスタマーサポートは大切です。しかし、サブスクリプション型のビジネスモデルでは初期売上が安くなる分、解約率(チャーンレート)を押さえて継続率を高めることがビジネスの生命線となってきます。

ECなどのWebサービスも、ビジネスモデルこそサブスクリプション型ではありませんが、アプリ等をダウンロードしてもらってからの再ログイン率を高めて利用を継続してもらうことの重要性などを考えると、ダウンロードや初回購入後のCRMが非常に重要です。

このように現在のビジネスでは、カスタマーサポート/カスタマーサクセスはこれまで以上に重要な概念となっています。結果、CRMツールやMAツールといったマーケティング支援ツールの活用、さらにアクセス解析やコミュニティ形成などを組み合わせて、既存顧客をケアすることが必要となっています。

マーケティング支援ツールで実現すること

マーケティング支援ツールの必要性が増している背景は先ほど紹介した通りです。本章ではマーケティング支援ツールで実現することも紹介します。

パーソナライズされた顧客体験

マーケティング支援ツール、とくにMAツールやCRMツールで実現させるべき大切な要素はパーソナライズされた顧客体験です。カスタマーサポートの重要性が増していることは先ほど紹介した通りですが、見込客の段階から購買後のカスタマーサポートまで、パーソナライズされた顧客体験、心地よい顧客体験()が非常に大切です。

現在の顧客はAmazonや楽天などのECサイトにおける購買履歴を踏まえた商品レコメンド、SNSやニュースサイトにおけるパーソナライズされたタイムラインなどに馴染んでいます。従って、顧客とコミュニケーションを取るうえでは、「自分のためにパーソナライズされたコミュニケーション」を提供することが非常に大切です。

マーケティング支援ツールを導入することで、数千人、数万人に対して、内容やタイミングをパーソナライズしてOne to Oneのコミュニケーションを取ることが可能になります。

マーケティング活動の自動化

パーソナライズされた顧客体験と紐づくのがマーケティング活動の自動化です。マーケティング支援ツール、とくにMAツールを導入することで、事前に設定したシナリオに応じてプロモーションやアプローチを自動化することができます。

「資料Aをダウンロードした顧客にはこのメールを案内する」「○○業界の顧客には事例B、□□業界の顧客には事例Cを案内する」「メールDをコンテンツEをクリックした顧客はシナリオFに、コンテンツGをクリックした顧客にはシナリオHに入る」といった形で、顧客の属性や行動に応じたマーケティング活動を自動化できることがMAツールの最大の魅力です。

効果検証しながら自動化を進めることで、パーソナライズされた心地よい顧客体験(UX)を実現し、マーケティング活動の効果性を高めることができます。

最近のMAツールは、事前設定による自動化だけでなく、AIを搭載してマーケティング活動の生産性向上を強力に支援してくれるようになっています。リードジェネレーション/リードナーチャリングを強力に支援してくれるMAツールがどのようなものか、下記のMoEngageの紹介記事をご覧いただくとイメージできるでしょう。

タイムリーなフォローアップ

マーケティング活動の自動化に加えて、マーケティング支援ツールを導入することでタイムリーなフォローアップも実現します。人が対応していれば24時間365日の対応を実現することは困難ですが、対応をツールで自動化することでタイムリーな対応が可能になります。

「顧客の資料請求にすぐ資料を送付する」「チャットボットで顧客の質問にいつでも回答する」といったことから「資料を送付した3日後に検討状況の確認メールを送る」「資料請求いただいた顧客のうち、商談化していない顧客には2日に1回、全5社の顧客事例を送付する」「最終購入から2週間経過したタイミングで定期購入の割引キャンペーンの案内を送る」といったことも可能です。

また、MAツールであれば顧客の行動に応じたスコアリング、また、SFAツールであれば商談フェーズの更新日、CRMであれば最終購入日といったものをキーにして、社内のスタッフに情報を連携してタイムリーなフォローアップを実現することも有効です。たとえば、スコアが一定の基準を超えたタイミングでインサイドセールスに連携して架電する、商談フェーズが3週間更新されていない案件は営業マネージャーに連携してレビューの対象にする、CRMであれば商品の種類に応じて最終購入日から〇日後に担当営業に連携してアフターフォローとリピート提案の連絡をするといったイメージです。

キャンペーンの効果検証

マーケティング支援ツールを活用することでキャンペーンの効果検証をより高精度に、また効率的に実現することができます。

マーケティング支援ツールを使うことで、まずメール販促やプッシュ通知といったキャンペーン、また、商談の受注率といった情報を容易に集計、分析することができます。現在のデジタルマーケティングでは、開封率やクリック率、ページの滞在時間といった要素も効果検証の対象です。

キャンペーンは、同じタイミングで同じ内容を一斉配信するものだけではありません。たとえば、異なるクリエイティブやオファーの効果を比較するA/Bテストの実施と効果検証、ばらばらのタイミングで送られる「登録翌日に送られる再ログイン促進のプッシュ通知」の効果検証といったものもマーケティング支援ツールを活用することで実現します。

ROIの分析

各キャンペーンの効果検証をする上では、ROIの分析が欠かせません。キャンペーンの効果検証は「開封された」「クリックされた」「その場で購入した」といったものを検証するだけでは足りません。最終的には、そのキャンペーンや施策のROIはどうだったかという投資額とビジネス成果を検証することが必要です。

ビジネス成果を検証しようと思うと、MAツールだけの情報では足りず、ECの購買履歴が格納された基幹データベースやSFAの受注情報、CRMツールなどとデータを連携させて動かす必要もあります。データ連携させることで効果検証のレベルを高めていくことも、マーケティング支援ツールの活用で実現します。

顧客のリピート率とLTV向上

パーソナライズされた顧客体験とタイムリーなフォローアップ、マーケティング活動の自動化やROIまで含めたキャンペーンの効果検証などを通じて、顧客のリピート率やLTV向上を実現させていくことがマーケティング支援ツール導入のゴールです。

MA・SFA・CRMといったマーケティング支援ツールを活用することでマーケティング活動を効率化し、数万人、数十万人といった顧客と継続的な関係性を築き、ビジネスを成長させていきましょう。

CRM・MAを導入する際の注意

CRM・MAを導入する上では、いくつかの点に注意しながらツール選定、導入を進めていくことが大切です。

まず注意すべきことは導入目的とゴールの設定です。CRMやMAなどのマーケティング支援ツールは、導入するだけで成果が生まれる魔法のツールではありません。きちんと運用していくことで成果が上がるものですし、運用するための工数や費用もそれなりに生じます。

導入することで何を実現したいか、どこに機会損失や課題があるのかをきちんと検討し、どれだけのビジネス成果が見込めるかを想定した上で導入を進める必要があります。

また、ツール選定の段階では、自社の顧客数(現在と中期的な未来)、ビジネスモデルの特徴、またデータ連携を考慮して検討することが大切です。とくに顧客数が一定の規模以上になる場合、また、自社で何らかのツールやデータベースが動いている場合にはデータ連携が非常に大切です。

現在のデジタルマーケティングは顧客のさまざまなデータを取得できるからこそ、データを「ためる」「整える」「分析する」「つかう」という流れをどれだけスムーズに回せるかが、マーケティングの生産性や成功を左右します。

とくにMAツールは、CRMツールや購買履歴などが入る基幹データベース、また、アプリやWebサイト・LINEなどの顧客接点を担うインフラ基盤との連携が非常に重要です。膨大なデータをリアルタイムに、また多様なツールと連携させることが必要となりますので、ツール自体の連携性、また、必要に応じてデータ連携をスムーズにするデータインフラの構築も考慮する必要があります。

CRMやMA、SFA等のマーケティング支援ツールを導入して成果をあげるためには、上記のような自社のビジネス成果につなげるための設計、そのためのデータ連携や運用等に関して、適切なサポートを得ることが大切です。ツール自体の機能や性能も大切ですし、自社のビジネス成功やデータ連携に関してアドバイスや事例提供、導入支援や運用サポートを得られるかという点にも注意して、導入を進めることをお勧めします。

以下より、13個のMAツールを比較した資料をダウンロードいただけます。MAツールの選定にお悩みの方は参考にしてください。

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