KPI(Key Performance Indicator)とは、企業にとってもマーケターにとっても、結果を出すための不可欠な要素です。正しい目標設定が成功の第一歩であり、それを達成するためのプロセスを正確に把握することは極めて重要です。KPIはこのプロセスを明瞭に指し示し、ビジネスの成長に大きく寄与します。
KPIはビジネスのパフォーマンスを測定し評価するための指標であり、主要な成果を定量的に追跡するために使用されます。これにより企業は戦略的な方向性を確立し、目標に向かって進むための具体的なステップを踏むことができます。
この記事では、KPIの定義やKGI(Key Goal Indicator)との違い、KPIの設定方法、およびKPIの活用に関するメリットについて詳しく紹介します。正確なKPIの設定は今やビジネスの成長において不可欠であり、KPIを適切に活用することで結果を最大化し、競争力を高めることができます。
したがって、KPIを正しく設定し事業をグロースさせたい方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。正確なKPIの設定こそが、ビジネスグロースの成功に向けた重要な一歩です。
KPIとは?
KPIとは、「KeyPerformanceIndicator」の頭文字を取った略称で、日本語では「重要業績評価指数」と訳されます。ビジネスの最終目標であるKGI(Key Goal Indicator)を達成する上で重要となるプロセスの状況を計測するための定量的な指標で、マーケティング活動においても非常に重要な役割を担います。設定したKPIの進捗や施策による影響を測定することは、改善のためのデータ分析や戦略立案に役立ちます。
例えばECサイトの場合、KGIは売上額や利益額であり、KPIはCV件数、単価、コンバージョン(CV)率などが設定されることが多いでしょう。これらのKPIは、ECサイトの成長や改善のための指標として使用されます。また製品開発の場合、KGIはリピート率や売上であり、KPIは製品の利用率や顧客満足度などになるかもしれません。
KPIツリーとは?
KPIツリーとは、組織の最終目標(KGI)を達成するために必要なKPIを階層的に整理した図表です。
KPIツリーを使うことで、各KPIが全体の目標に向けてどのように貢献しているかを視覚的に把握できます。KPIツリーは、トップレベルの目標(KGI)からスタートし、KGIを達成するために必要な主要な成果指標をブレークダウンしていきます。目標達成に必要なプロセスがKPIに落とし込まれることで、各階層での進捗管理が容易になります。
KPIの具体例
KPIはビジネスの目標達成に向けた重要な指標です。以下に、さまざまなビジネス領域、とくにマーケティング領域で使用されるKPIの具体例を紹介します。
ビジネス全般のKPI
・売上高
・粗利益
・営業利益
・純利益
・顧客満足度(CSAT)
・顧客維持率
営業・販売プロセスのKPI
・受注件数
・受注単価
・顧客単価
・新規顧客獲得数
・リード転換率
・平均販売価格(ASP)
・成約率
インサイドセールスのKPI
・有効商談数
・創出見込金額
・商談設定率
・アポイント数
・リードクオリフィケーション率
・コールドコール数
カスタマーサクセスのKPI
・顧客維持率(リテンション率)
・ネット・プロモーター・スコア(NPS)
・顧客ライフタイムバリュー(CLV)
・チャーン率
・顧客満足度(CSAT)
メールマーケティングのKPI
・コンバージョン数
・コンバージョン率
・クリック率(CTR)
・開封率
・メール配信停止率
・リード育成スコア
Web広告(リスティング等)のKPI
・広告費用対効果(ROAS)
・コンバージョン数(CV数)
・コンバージョン率(CVR)
・コストパークリック(CPC)
・クリック率(CTR)
・インプレッション数
動画マーケティングのKPI
・コンバージョン数(CV数)
・コンバージョン率(CVR)
・クリック数
・クリック率(CTR)
・シェア数
・視聴完了率
・視聴回数
コンテンツマーケティング/SEOのKPI
・問い合わせ数
・ホワイトペーパーダウンロード数
・コンバージョン率(CVR)
・ページ滞在時間
・オーガニックトラフィック
・クリック数
・検索結果への表示数
・被リンク数
・記事制作数
ECのKPI
・売上
・注文件数
・平均注文額(AOV)
・購入頻度
・カート放棄率
・顧客ライフタイムバリュー(CLV)
・商品返品率
・訪問者数
KPIと、KGI・OKR・KSF・KDIとの違い
KPIに似た言葉に「KGI」「OKR」「KSF」「KDI」などがあります。混同されて捉えられていることもありますので、違いを把握しておくことが重要です。
KPIとKGIの違い
KGIは、「Key Goal Indicator」の頭文字を取った略称で、日本語では「重要目標達成指標」と訳されます。最終目標が達成されているかを測定するための指標のことです。KPIが目標達成までのプロセスを評価するものに対して、KGIは「売上目標」「営業利益」などの、企業全体の最終的な目標数値を計測する指標を指します。KPIとKGIは基本的にセットで使われることがほとんどです。
例えば、「売上5,000万円」をKGIに設定した場合、その目標を達成するために「アクティブユーザー数」や「購入金額」「離脱率」などの売上を変動させる要因をKPIとして設定することができます。最終的な目標である「KGI(売上)」に対して、達成のために必要となるプロセスの達成度を測るもので、ゴールまでの「中間指標」であると言えるでしょう。
KPIとOKRの違い
OKRとは、「Objectives and Key Results」の頭文字を取った略称で、日本語では「目標と主要な結果」と訳されます。OKRはビジネスの生産性を高める手段として、アメリカのカリフォルニア州に本社を置く半導体メーカー、インテル社で生まれたものです。IT大手企業であるGoogleやFacebookが導入したことで、近年注目を浴びています。
OKRの特徴は、従来の計画方法よりも比較的高い頻度で設定、追跡、再評価をする点です。
OKRはその名の通り「目標と主要な結果」を測定するものであり、KPIなどで設定される「業績をアップする」などの一般的な目標とは異なり、「求められる結果」も明確に測定できる指標となっています。例えば、「業績をアップする」をOKRに設定した場合、そこには「1万人の新規顧客を獲得する」などのような「数値で結果を管理できる」事柄も同時に設定する必要があります。
KPIとKSFの違い
KSFとは、「Key Success Factor」の頭文字を取った略称で、日本語では「重要成功要因」と訳される、成功への鍵や要素のことです。従来は、経営用語として使用されていましたが、現在では「目標を達成するための要因」という広い意味で、ビジネス現場においても幅広く使用されています。
事業を成長させるための要素はいくつかありますが、その中でも特に大きな影響を持っているものがKSFです。KSFがプロジェクトの成功要因を洗い出すための指標であるのに対し、洗い出した要因を定量的な指標へと変えるのがKPIの役割となっています。
KPIとKDIの違い
KDIは「行動目標」を意味する「Key Do Indicator」として一般的に知られていますが、「主要診断指標」を指す「Key Diagnostic Indicator」の略称としても使用されています。
まず前者の「Key Do Indicator」とは、達成したい目標のための「行動を計測可能な数値で定めた指標」のことです。
実業家である冨田和成氏が2016年に出版した著書で使用した造語で、どのような行動を積み上げれば目標達成できるかを考え、具体的なアクションを定量化します。例えば、WebサイトのPVアップを目標とした場合、記事を1日に⚪︎件投稿する、リライトを1週間に⚪︎件行う、などがKDIとして設定可能です。
後者の「Key Diagnostic Indicator」は日本語では「主要診断指標」と訳される、プロダクトの「真」のパフォーマンスを測定するための指標のことです。
「主要業績評価指数」と訳されるKPIですが、組織はチームとして行っている活動が正しい方向に進んでおり、成果を出していることを証明するために、一定のパフォーマンス水準を達成しなければいけない、といったプレッシャーを感じてしまいます。
しかし、このような状況では、虚栄心を満たすための指標、いわゆる「バニティメトリクス」ばかり設定されてしまうようになりますが、成功の本当の尺度は、チームが「学習」しているかということです。
この「学習」を測るための指標が「Key Diagnostic Indicator」となります。KPIをKDIに変える方法は、チームを「グロース思考」に変えるには? KPI ではなく KDI が必要で解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
KPIを設定するメリット
KPIを設定することで得られるメリットは大きく5つあります。
・指標が明確になる
・生産性が向上する
・評価基準を統一できる
・マネジメントが容易になる
・先行管理レベルが向上する
それぞれ、事業を成長させるためにも大切なポイントとなっていますので、理解しておきましょう。
指標が明確になる
まず、KPIを設定すると指標が明確になります。
指標及び進捗具合が明確になれば、目標到達のためにすべきプロセスが見えてくるでしょう。
逆に、KPIを設定せずに漠然とした指標を基に活動を進めても、途中で行き詰まりどうすれば良いのかわからなくなってしまう、何を基準に判断すればいいのかわからなくなってしまいます。社員全員がバラバラの方向に進んでしまうことは、組織において最も避けたい状況の一つでしょう。
また、指標を明確にすることは問題の可視化にもつながりますので、PDCAを回して効率よく作業を行う上で、KPIの設定は必要不可欠です。
生産性が向上する
2つ目のメリットは、生産性が向上することです。
KPIを設定して指標や進捗を明確にすると、優先すべき業務とそうでない業務を把握できるようになります。
業務を順序付けした際に必要が無いと判断した作業は削る事ができ、優先度の高い業務にその時間を割くことで、事業を成長させるための効果的な活動を行えるようにもなるでしょう。
また、KPIで設定した指標をグループで共有することで、全体のモチベーション向上も図れます。達成すべき指標が明確になり、それぞれの社員もそこに向かって何をすべきで、何をするべきでないか判断でき、その結果生産性の向上や、組織の統一にも繋がるでしょう。
評価基準を統一できる
3つ目のメリットは、評価基準を統一できることです。
KPIを設定し、具体的な数値を指標に掲げることで、感覚的ではない客観的な見方をすることが可能になります。
明確な数値が指標だと誰が見ても納得のいく評価基準を設けられるので、組織内で公平な評価を下すことが可能です。
営業と事務など普段担当が違う部署の人でも、KPIを用いればプロセスを数値として可視化できるので、評価基準の統一が容易になります。
マネジメントが容易になる
4つ目のメリットはマネジメントが容易になることです。
KPIは管理職にとって、目標達成に向けたプロセスを把握し、適切なタイミングで適切な措置を講じるための武器となります。たとえば現時点のKGI/KPI達成率を比較すれば、どこが上手くいって、どこが上手くいっていないかも一目瞭然です。また、過去のデータと現在のデータを比較することで、進捗や成長の度合いも分析できます。これにより、長期的なトレンドを把握して、意思決定を下すことができます。
なにか問題が発生した場合も、迅速に対応することができ、リーダーシップの強化に寄与します。
先行管理レベルが向上する
5つ目のメリットは先行管理レベルが向上することです。
KPIをモニタリングすることで、業績目標や事業計画に対するリスクや機会を早期に発見できます。KPIはKGIのプロセス指標であり、時間的にも先行して動くことが多いでしょう。だからこそKPIを活用することで、事前に問題を予測し、予防的な対策を講じることができ、組織全体のリスク管理能力が向上します。
また、現状を把握することで、問題解決に導く手立てを実行する先行管理ができるため、安定的な目標達成が可能になります。
KPI設定で事業を成長させた成功事例
とあるファッションECではKPIを分析することで、購入率を大幅に改善することに成功しました。同ECサイトはF2層(35歳〜49歳女性)をメインターゲットに設定しています。売上目標をKGIに置き、KGIを達成するために「購入者数を増やす」を含む、複数のKPIを設定しています。KPIのうちの一つであるこの「購入者数を増やす」に注力して、分析しました。
購入者を増やすために、ユーザーの行動分析が可能な、プロダクト分析ツールを導入して、まず「購入者がどんな行動を取っているのか」ということを4つのタイプに分けて、分析した結果クラスターAに「2回異常購入するユーザー」が多いことを発見。
そこでクラスターAのユーザーがどんな行動を取っているのかを行動分析したところ、ふかの3つのクラスターよりも、「閲覧履歴を見る」回数が多いことがわかりました。
次に「閲覧履歴を見る」という行動を深掘りするために、「閲覧履歴を見る手前でユーザーが何をしているのか」を確認した結果、「商品詳細ページ」を見た後で、閲覧履歴を見ていることを見つけ出しました。同ECサイトでは、「閲覧履歴」へ遷移できる導線は「商品詳細ページ」の下部にしかありませんでした。
そこで「商品詳細ページから閲覧履歴ページへの誘導を強化すれば、購入数が増える」と仮説を立てて、A/Bテストを行った結果、
カートへの投入率:122%
コンバージョン率:156%
購入者数:114%
という、大きな成果を得ることができました。
「売上目標を増やす」というゴールに対して、「購入者数」というKPIを設定して、分析することで、効果的な施策を見いだせた事例です。事例の詳細を見たい方は以下のページで紹介しています。
KPIの設定方法
KPIを設定するためには、KGIとKFSを分析する事が大切です。
最終目標であるKGIとKPIの繋がりを意識することで施策に一貫性を持たせる事ができるでしょう。KPIを設定するための3ステップを紹介します。
・KGIを設定する
・KGIを細分化してKFSを洗い出す
・KFSからKPIを設定する
KGIを設定する
最初にやるべきことは、最終目標となるKGIの設定です。
KGIは指標の最終地点なので、ここが定まらないことにはKPIを設定する事はできません。
KGIを設定する際のポイントは、数値として明確に定義でき、現実的に達成可能な指標を設定する事です。
具体的な数値として指標を定義しておくことにより、KPIを設定するための逆算が容易になります。
KGIを細分化してKFSを洗い出す
KGIを設定したら、続いてKGIを細分化しKFSを洗い出します。
KGIを細分化し、構成する要素を1つずつ挙げていくことで、KFSは見えてくるでしょう。
例えばECサイトの売り上げ向上をKGIとして設定した場合、SNS運用やSEO対策などがKSFに当てはまります。
WEBサイトの広告収入向上をKGIとした場合のKSFには、検索結果の占有やコンテンツの品質向上が含まれるでしょう。
KFSからKPIを設定する
上記2ステップが終わったら、最後はKFSからKPIの設定を行います。
KFSで導いた成功要因を、KPIとして可視化できる目標数値に置き換えていく作業です。
この際にKPIを多く設定しすぎると、管理が大変で作業効率が落ちてしまう恐れがあります。
KPIとして設定するものは、本当に重要なプロセスのみに留めておくことが成功の秘訣です。
KPI設定のポイント「SMART」
KPIを設定する際に意識すべきとされている項目は大きく分けて5つあります。
・S:Specific(明確性)
・M:Measurable(測定可能)
・A:Achievable(達成可能)
・R:Relevant(関連性)
・T:Time-bounded(適時性)
これらは、その頭文字を取ってSMARTと呼ばれています。
SMARTを意識する事で適切なKPI設定が可能になるのです。
S:Specific(明確性)
SMARTの1文字目であるSは「Specific」の頭文字で、日本語では明確性を意味します。
KPIは個人の視点で考えるものではなく、社内やグループ内で共有するものです。そのため、誰が見ても明確でわかりやすい指標を設定する必要があります。KPIの内容が曖昧であれば、指標の統一性が無くなり、設定しても大きな効果を期待できません。
明確性はKPI設定における基本事項なので、しっかりと意識することを心がけるようにしましょう。
M:Measurable(測定可能)
2文字目のMは、測定可能を意味する「Measurable」の頭文字からきています。
KPIにおける測定可能の意味は、目標値が定められていることを指しているのではありません。この場合の「測定可能」は、指標に向けての進捗具合や現状の数値を測定できるようにするということです。
進捗具合の確認や業務内容の確認の際に、KPIが測定可能な数値で定められていれば、課題の早期発見やPDCAの効率化に繋がります。
その一方で、数値化が難しいものをKPIに設定することは、目標の達成度を確認しにくいため、場合によっては避けるのが賢明でしょう。
A:Achievable(達成可能)
SMARTの3文字目、Aは「Achievable」、日本語では達成可能を意味します。KPIで定める指標は達成が可能であるものを選ぶようにしましょう。達成困難な指標をKPIに定めてしまうと、モチベーションの低下に繋がるだけでなく指標達成へのプロセスの設定が難しくなります。
達成が可能なKPIを設定し、その後に具体的なアクションプランを考えていきましょう。
R:Relevant(関連性)
SMARTの4つ目にあるRは、日本語で「関連性」を表すRelevantに由来しています。
KPIは企業の指標を達成するために設定するものであるため、最終目標であるKGIと直結するものを設定することが重要です。
KFSも同様で、利益の向上をKPIとして設定した場合、それに直接関連のある売上高や販売数などがKFSの値として当てはめられるでしょう。このように、KPIはKGIや他部署のKPIと関連させて設定する必要があります。
T:Time-bounded(適時性)
最後のTはTime-boundedの頭文字で、日本語に直すと適時性を表します。
業務を効率よく進めるためには期限の設定が必要不可欠です。明確なKPIを設定していても、達成期限が曖昧だとアクションプランの構築が難しく、後回しになってしまう業務も発生してしまうでしょう。期限を設けることで、具体的なアクションプランが定まり、指標達成の可能性もより明確になります。
KPI運用を成功させるポイント
KPI運用を成功させるためには、いくつかの重要なポイントがあります。以下に、効果的なKPI運用のための具体的な方法を紹介します。
適切なKPIを見出す
KPI運用を成功させるためには、まず適切なKPIを見出すことが重要です。ビジネスの戦略目標と直接関連する指標を選定し、数値で測定可能であり、具体的な行動につながるものを選びます。適切なKPIを設定することで、組織全体が同じ方向を向き、明確な指標に基づいて行動できます。
KPIを絞り込む
多くの指標を追いかけることは混乱を招き、効果的ではありません。、KPIは重要なものに絞り込むことで、焦点を明確にして、リソースを効率的に活用することが重要です。
まず、全体の目標に最も寄与する指標を特定し、それ以外の指標は補助的な位置付けにします。重要なKPIは3〜5個程度に絞るのが理想的です。
数を絞り込むことで、各チームが何に注力すべきかが明確になり、全員が同じ方向を向いて効率的に動けるようになります。
KGIを達成できるKPIである
KGIは最終目標を示す指標であり、KPIはその達成に向けた中間指標です。KPIを設定する時には、「このKPIを達成すれば、KGIを達成できる!」と思えるように設定することが大切です。このKPIを達成すればよい!と確信した状態でこそ、KPIの改善・達成に全力を注ぐことが出来ます。
当然、KPIとKGIは直結していることが重要です。
例えば、KGIが「年間売上目標」である場合、達成に必要な「月間売上」「新規顧客獲得数」などがKPIになるでしょう。KPIがKGIと連動することで、日々の業務が最終目標に向かっているかを常に確認できます。
KPIマネジメントを徹底する
KPIマネジメントの徹底は、組織全体のパフォーマンス向上に不可欠です。KPIを設定したのに、定例mtgでは、KPIをあまり確認せずに違うアジェンダばかり扱っている。個人のセルフマネジメント等でも、KPIを達成するためのアクション等ではなく、違うところに工数が投下されたり、「頑張る」といった精神論になっていたりしては、KPIは有効に機能しません。
KPIの進捗状況を日常的にレビューし、改善策を講じることで、継続的なパフォーマンス向上を図るというKPIマネジメントを、個人・チーム・部門で徹底させましょう。
KPIマネジメントの注意点
KPIを用いたマネジメントを行う際には注意すべき点もありますので紹介します。
KPIへの過剰な依存
KPIは、目標達成の進捗を測定するためのツールですが、KPIだけに頼ると、全体像を見失う可能性があります。
例えば、受注件数が増加しても、顧客満足度が低下している場合、その受注件数や売上は持続可能ではありませんし、好ましい状況とはいえません。KPIはあくまで一つの指標であり、他の要素とバランスを取って評価することが重要です。
KPIだけに固執せず他の要素も総合的に評価することを心がけましょう。
絶対値のみでの評価はNG
KPIの結果は単なる現時点だけでの絶対値のみで評価するべきではありません。
例えば、売上の増加だけを見て成功と判断するのは危険です。重要なのは、その売上がどのような過程で達成されたのか、コストやリソースの消費状況はどうだったのかを総合的に評価することです。
絶対値にこだわると、短期的な目標達成にとらわれ、長期的な視野を欠くことになります。組織の成長や持続可能性を考慮し、相対的な評価やトレンド分析を行うことが必要です。
目標のリアリティ
KPIの目標設定においては、現実的で達成可能な目標を設定することが重要です。
過度に高い目標を設定すると、従業員のモチベーションが低下し、目標未達による挫折感が広がる可能性があります。逆に、低すぎる目標は挑戦意欲を削ぎ、組織の成長を阻害します。
適切な目標設定には、現実的な状況分析とリソースの見積もりが必要です。現場の声を反映し、現実的かつ意欲を引き出す目標を設定することで、組織全体のパフォーマンスを最大化ができます。
短期的な結果に惑わされない
KPIを評価する際、短期的な結果だけに一喜一憂しないように注意する必要があります。
短期的な成果に焦点を当てすぎると、長期的な戦略やビジョンが見失われる可能性があります。短期的な数値の変動は、一時的な要因や外部環境の影響によることもあり、必ずしも組織の本質的な健康状態を反映しているわけではありません。
持続的な成長を目指すためには、長期的な視点でもKPIを設定し、短期的な結果に左右されずに一貫した戦略を追求することが重要です。
定性情報に注意を払う
KPIは主に定量的なデータに基づいていますが、定性的な情報も評価において重要です。
定性的な情報は、顧客の声や従業員のフィードバック、現場の感覚など、数値に表れない要素です。KPIの定量情報のみで判断してしまうと、目標数値に対する進捗はいいが、顧客満足度やロイヤリティが低下しているといったことが起こる可能性もあります。
定性的な情報を定量データと組み合わせることで、「量」だけでは判断が難しい「質」の面も検証できるようになり、より現実的なマネジメントが可能となります。
KPIに関連して知っておきたい最新トレンド
ここではKPIに関連する最新のマーケティングのトレンドを紹介します。
ノーススターメトリック
ノーススターメトリック(「North Star Metric)は、企業がビジネスグロースを目指すために設定する重要指標のことで、長期的な成長を実現するために注目される指標です。
NETFLIX、Facebook、Amazonなどの世界を代表する大手企業が、North Star Metricを設定して成長してきたことから、KPIマネジメントを補足するものとしてグロースマーケティングで注目されています。
これまで多くの企業では、一般的に指標設計をする際、KGIを設定し、それに伴いKPIを設定していました。KGIには「売上」が設定されることが多いでしょう。
業績目標や事業計画の達成に焦点を当てたKGI、KPIは、経営において必要不可欠なものです。しかし、業績目標や事業計画から逆算されたKGIやKPIは企業都合のものとも言えます。
一方で、事業を本質的に成長・継続させるためには、顧客満足度や顧客価値の向上が不可欠です。
この顧客目線での評価を指標に取り入れたものがノーススターメトリックです。成長してきたネット企業では、たとえば以下のようなノーススターメトリックを設定していたことが知られています。
いずれも業績等につながる直接的なKPIではありませんが、ユーザー体験が順調に進み、サービスを継続利用することにつながる指標であることがイメージできるでしょう。
ノーススターメトリックは、経営層やマーケティング部門のみならず、営業部門、開発部門、カスタマーサービス部門等、プロダクト、サービスに関わるすべてのメンバーが共有できる重要な指標となっています。
ノーススターメトリックについて更に詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
マジックナンバー分析
マーケティングにおけるマジックナンバーとは「ユーザーが特定のアクションを規定回数以上行うとサービスの継続率や収益などの重要指標が飛躍的に向上する数字」を指します。
例えばFacebookでは「10日間で7人と友達になる」をマジックナンバーとして見つけ出し、その後ユーザーの継続率を高めることに成功しました。
このように、顧客の行動分析によってマジックナンバーを特定できると、リピート購入や有料プランへのアップセルを左右するKPI設定の精度が飛躍的に向上するなど、自社にとって成果の出しやすい方程式を発見することに繋がります。また、マジックナンバーがノーススターメトリックになることもあるでしょう。
なお、マジックナンバーを求めるのは従来までは非常に大変でした。サービスの継続に関わるユーザーの行動には様々な要素があり、その組み合わせや基準を考えると、マジックナンバーを手動で求めることは困難です。
しかし、最近ではデータをしっかりと蓄積すれば、自動でマジックナンバー分析ができるツールも登場しています。
たとえば、Amplitudeという行動分析ツールを利用すれば、数秒でサービスの継続率やF2転換率、リピート等といった重要KPIと相関関係があるマジックナンバーを求めることができます。
マジックナンバー分析やAmplitudeについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
まとめ
KPIとは、目標を達成するためにプロセスが適切に実行されているかを定量的に測るための指標のことです。指標が明確になることで、生産性が向上するなど、他にもメリットを受けることができます。
KPIには、虚栄心を満たすための指標である「バニティメトリクス」が設定されることがありますが、これはなんの成果にもつながりません。成長に必要なのは「学習」であり、チームの思考回路を「グロースマーケティング」向けに切り替えるためには、KPIをKDI(Key Diagnostic Indicator)に変えることが重要です。