インスタフォロワー数137万人と若い女性からの支持を集め続ける「GRL」。SNSマーケティングによる新規集客をはじめ、分析ツールやMAツールなど、さまざまなマーケティングツールを活用し顧客体験を高めることで、サービスを成長させるグロースマーケティングにも取り組まれています。
DearOneでは、GRLのアプリ開発から行動分析ツール「Amplitude」などマーケティングツールの運用のご支援しており、今回はGRL様のECサイトをグロースさせる取り組みについて、ツールの活用方法なども交えてお話を伺いました!
自社とオンラインのみに絞った集客
DearOne 麻野|
本日はお時間いただきありがとうございます。まずGRLといえばInstagramフォロワー数、ひいては会員数やMAUの多さが圧倒的だと思います。
- Instagramフォロワー数 137万人(国内ファッション業界3位)
- 会員数 900万人
- 平均MAU 580万人
私自身、日々ご支援させていただく中でGRLは、過度な集客は行わず、施策を絞って集客しているという印象があります。「レディースファッションのみ・オンラインのみ」という枠組みですが、多くのユーザーを集めるために注力されてきたことを教えてください。
GRL 長田氏|
新規ユーザーの集客の点でいうとInstagramの活用ですね。Instagramを始めたのは結構早い方で、まだ日本で流行り出す前の10年前です。
今では当たり前になりつつある、インフルエンサーマーケティングとか、取り上げられる前から、GRLでは始めていましたね。徐々にフォロワー数や会員数も増えていき、売上につながってきています。
DearOne 麻野|
ファッション業界の集客ではInstagramは今や当たり前の施策になっていますよね。他にも、zozoや楽天などの大規模なECサイトに出店するブランドも多いですが、GRLは自社だけで運営されていることも大きな特徴だと思います。
GRL 小林氏|
ここに関しては少し他社と比べて特殊かもしれませんが、GRLはガラケー時代から運用していました。その当時は、ZOZOや楽天などのいわゆるモール型ECサイトがそこまで強くなくて。
GRL 長田氏:GRLも楽天とかいろんなモールに出していた時期もありますが、その当時もモール型ECサイトへの売上依存率がほぼありませんでした。売上の10%もないくらいでしたね。なので、他のモールに依存せず自社だけで集客できているというのはあると思います。
DearOne 麻野|
なるほど。Googleの検索画面で見ても、シンプルですよね。他のブランドだと公式の他に広告や楽天などのモールが出てきて、そっちに流れるユーザーも多いと思いますが、GRLだと、公式サイトと公式SNSが出てきて、届けたいところにダイレクトに伝わり、それが効果として出てるかなと感じています。
GRL 小林氏|
そうですね。結果的に今、これだけの規模のサイトになることができました。
シンプルにこだわり商品選びに集中できるサイト作り
DearOne 麻野|
ここからはサイトへ集客した後のお話をお伺いできればと思います。集客したユーザーの購買体験を良くするために、サイト作りでこだわっているポイントはありますか?
GRL 小林氏|
シンプルに商品をメインに置いています。ECサイトだと当たり前だと思われるかもしれませんが、ファッションECの場合、夏だと水着や浴衣の特集系のコンテンツとか、ノウハウ系ページとか、商品ページ以外のコンテンツが多いですよね。
GRLには、そのようなコンテンツ系のページが基本的にほぼないですね。
DearOne 麻野|
たしかに。ファッション系ECだとパーソナルカラー診断とか骨格診断とか、いろいろなコンテンツを作っているサイトをよく見かけますが、逆に、GRLはそういうの全くないですよね。
GRL 小林氏|
そうですね、GRLは実店舗で商品を選ぶ感覚に近いと思います。店舗に入った時、そこに飾られている商品を見るじゃないですか。単純に、実店舗で商品を選ぶという行動をECサイトの中でやっていただくという形ですね。
あと、こだわっているポイントでいうと「サイトの表示速度」です。
先ほどInstagramの話をしましたがSNSできらびやかなものを見せて、サイトに遷移したらすごく重かった、というような残念な体験を生まないように、お客さんが買い物しやすい、その売り場としての基盤を整えるということを意識しています。
DearOne 麻野|
そうですね。商品数が多くなってくるとサイトスピードはとても重要ですよね。コンテンツ見てサイトが重くて、離脱する体験ってよくありますよね。
行動分析でユーザーの理解を促進
DearOne 麻野|
続いて、ECサイトならではの顧客理解の方法についても教えてください。特に、実店舗がない中で、どのように見えないユーザーを理解し、満足度を高めているのでしょうか?
GRL 小林氏|
現在、私たちのサイトには900万人の会員がいて、MAUが500万人を超えている状態なので、一人ひとりの行動を理解するのは非常に難しいと思っています。
もちろん一人ひとりが買いやすいっていうのが理想ではあると思うんですけど、GRLでは最大公約数をいかにカバーできるかみたいなところを意識しています。見えないユーザーの、ユーザーの中の、できるだけ大きなマスに効く施策をするというイメージです。
DearOne 麻野|
あるマスに何人くらいのユーザーがいて、どのようなユーザーなのか。というのはどのように分析されているのですか?
GRL 小林氏|
主にContentsquareとAmplitudeという分析ツールでユーザーの行動を分析しています。
例えば、Contentsquareなら、インパクト分析という機能を使って、ある特定の行動をするユーザーがどれくらいいるのか、その行動がビジネスにどれだけのインパクトがあるのかを定量化してくれます。
最近の分析では、新規ユーザーを対象に会員登録時にエラーを2回経験すると、会員登録の完了率が6%下がるということがインパクト分析で算出できました。大きなマスだけでなくとも一定のボリュームがあるマスで、このようにビジネスインパクトもある場合、それに応じた対策をするという判断もします。
関連記事:Contentsquareを活用した新規会員登録促進施策
DearOne 麻野|
ありがとうございます。今年からContentsquareを導入いただいて、とても良い示唆出しができたと感じています。もう一つのツール、Amplitudeは2年以上使っていただいていますが、どのように使われていますか?
GRL 長田氏:Amplitudeは漠然とした全体像を捉えるのに、ありがたいツールだと思っています。購入金額や購入回数で分けたユーザーの属性が9象限あり、動向の定点観測という側面で活用しています。
GRL 小林氏|
例えば、9象限の中の、左下にいるユーザーが減りました、となった際、対象のユーザーと他の象限ユーザーが取っている行動に何か違いがあるか、購入に際してネックになっていそうなものを分析しています。この分析で見えてきた課題に対して、MAツールで何か施策を打ったり、課題解消にシステム改修が必要であれば随時やっていったり、というものです。
DearOne 麻野|
Amplitudeで以前、アプリのTOPページの分析をした時に、ヘッダーにあるお知らせよりも、フッターに設置したメニューにある新着やお気に入りの部分を見ているユーザーが多かったので、ユーザーがよく閲覧するモーダルのメニュー内に持ってきた方が良いのではという提案もさせていただきましたね。
GRL 小林氏|
はい、Amplitudeで分析をすると、少なくとも僕らが設計をしているものがデータとして裏付けが取れるので、社内で説明がしやすいというメリットもありますね。
アプリの改修にしても、できるだけユーザーの答えに近いものを僕らが作っていかないといけないので、「なんでこのボタンここに置くのか。」に対して数字で説明できます。
DearOne 麻野|
そうすると、やっぱりプロダクトの開発にAmplitudeってすごく重要ですよね。
GRL 小林氏|
ユーザーがいかに使いやすい土台を作れるかどうかっていうところを大事にしなきゃいけないポジションなので、アプリやサイトのデザインという部分にもAmplitudeが使われることもあります。
GRLが今後Amplitudeに期待するものとは
DearOne 麻野|
Amplitudeに関しては属性分析のお話が印象に残っています。
GRL 長田氏|
そうですね、結局私たちが一番見ている部分は特にMAUなんです。そこからの割合で売り上げが決まっていくところなので。
MAUの数でいうと去年まではすごく良かったのですが、今年に入ってくると、落ち着き始めていて、一部のユーザーについては離れ始めたんですよね。離れたユーザーたちの属性を把握する必要があるなと思っていまして、その属性分析をAmplitudeでやっていきたいです。
GRLは、コロナ禍で今まで以上に売上が伸びた会社なので、これまで特需で売れていたところが終わった、と考えているのですが、それって本当に合っているのかというのを見ていきたいですね。
去年から減ったユーザーたちがどういうユーザーなのか、コロナ禍のタイミングで来たユーザーたちが去っていったのか、ライフスタイルが変わったとか、何か不満があったとか、色んな影響があるんじゃないかなと思っています。
以前から使っていたユーザーがサイトに来なくなった、というのに対しては特に危機感を持った方がいいと思っていて、その辺りがAmplitudeの分析を通して見ていきたい部分です。
DearOne 麻野|
この辺りに関しては以前もいろいろ会話させていただいて、買わないけど来ているユーザーをちゃんと捉えようという会話をさせていただきましたね。カート投入の行動だけを見るとちょっとライフサイクル空いているんだけど商品ページはたくさん見てるみたいな人が結構いっぱいいて、買ってはないけども、それって休眠として捉えますか。サイトには来ているけど、買わないユーザーって休眠ユーザーと言えるのか?みたいな話は結構面白いなと思ってて。
GRL 小林氏|
そのユーザーが、見てるだけのユーザーなのか、買うまでの準備期間というか猶予期間に見ているのか、見ている前後のアクションやその時間軸がすごく重要だと思ってます。
我々が目指すロイヤルカスタマーと比べ、単純に購入サイクルが長いユーザーがいるんだ、というところに落ち着くような分析結果だったら全然良いのかなと思います。1ヶ月に1回必ず買ってくれるユーザーもいれば、シーズンが変わる時、浴衣だけ、福袋だけ買うみたいなユーザーもいますので。
DearOne 麻野|
僕自身前職でアパレルEC運営していましたが、他のアパレルと比べるとGRLは圧倒的にユーザー数が多いので様々な切り口の分析をしていて新たな発見が多くて個人的にも面白いなと感じることが多いです。
AmplitudeとContentsquareの相乗効果
DearOne 麻野|
デジタルマーケティング界隈ではさまざまなツールがあって、それらを使いこなせている企業は少ない印象です。GRLには、行動分析ツールのAmplitude顧客体験分析ツールContentsquareの両方を活用いただいていますが、併用する効果をどのようなところに感じられていますか?
GRL 小林氏|
AmplitudeとContentsquareは、ツールの得意としている部分が異なっているのでうまく併用できていると感じています。
例えばAmplitudeは、あるイベントをした人は何人いるか。全体ユーザーの何%か。このフローを辿った人はどれくらいいるか。など、あらかじめ私たちが思い描いているフローを定義して、そこを確認していくみたいな部分がすごく優れています。
一方で、Contentsquareは、私たちが思い描いていた以外の動きってどういうものなんだというのを、パっと視覚的に見ることができます。例えば、商品詳細ページを見たユーザーが、その次に何をしましたかというのが大雑把な割合で見れます。実は他にこういう動線を辿っている人がいるんだ、そして意外とインパクトもありそうという発見につながっています。
関連記事:Contentsquareを活用した再購入におけるお客様の“つまずきポイント”発見事例
同じ分析をAmplitudeでしようと思うと、商品詳細ページに入ったユーザーが、次このページに行った、そしてその次にこのページに行くという感じで、全部定義する必要があります。
このように得意としている部分が異なるため、その辺りがツールの使い分けとしてうまく機能していると思っています。
さらにユーザーの購買体験を高めるために
DearOne 麻野|
ここまでお話いただきありがとうございました!GRLが今後、もっとサイトを良くするために取り組んでいきたいことはありますか?
GRL 長田氏|
今後やりたいこと、これも商品の選びやすさの部分に直結するのですが、検索周りを改善したいと考えています。今、サイト全体で検索するとすると7 ,000品番くらいあって2.3年前の倍に増えているんです。ただ、私たちの検索の仕組みはアップデートされていなくて。
たくさんの商品を見てもらいたいので、ユーザーが意図して探している商品をもっと見つけやすくしなきゃいけないと思っています。例えば、トップスだったら半袖、五分袖、七分袖といった感じで。
すべての商品データとして管理されているので、カテゴリーをもう少し細分化したり、絞り込み条件を細かくしたりなど、選びやすさを実現するために、AIが活用できないかなと考えています。
DearOne 麻野|
改めてお時間をいただきありがとうございました!引き続きDearOneでは、AmplitudeやContentsquareの分析や施策を通してGRLのグロースマーケティングをご支援していきたいと思っております。