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日本最大級のレディースファッション通販サイト「GRL」が実行する顧客体験向上に向けた取り組み|CX Circle Tokyo 2024セッションレポート

2024.11.12

はじめに

Contentsquare 沖本|
こんにちは。Contentsquareの沖本と申します。本セッションでは、アートデコ「GRL」の小林さんとDearOneの麻野さんをお招きして対談形式で進めていきます。

セッションは大きく2つのパートに分けて、前半をファッションアパレルブランド「GRL」における顧客体験向上に向けた取り組みの全体像を紹介いただき、後半ではContentsquareにフォーカスを当てていただき、活用事例を紹介いただくという構成です。小林さん、麻野さん、よろしくお願いいたします。

早速ですが、小林さんにアパレルブランド「GRL」の紹介と、小林さんの担当されている業務を紹介いただければと思います。小林さん、よろしくお願いいたします。

GRLとは

GRL 小林|
こんにちは、小林と申します。今日はよろしくお願いいたします。最初にGRLの紹介をさせていただきます。

GRLはレディースのプチプラファッションブランドで、リーズナブルな価格帯「9,999円で上から下まで揃う」というコンセプトです。また、SNSを活用したマーケティングが盛んで、今ほどSNSマーケティングが普及する前から実施しています。と、これはChatGPTに回答してもらったものですが、概ねこの通りです。

GRLのマーケットサイズ

続いて、我々のマーケットサイズ、ビジネスの規模感を簡単に紹介します。

ファッション業界のInstagramのアカウントとしては、国内で今3位、137万人のフォロワーがいます(2024年5月時点)。1位と2社のブランドは、レディース・メンズ・キッズ・グッズと多種多様な展開をされていますので、レディースアパレルのみでやっているGRLとしては、この辺りが限界値かなと思っています。

また、現在の会員数は900万人を超えています。平均のMAU、1か月間に使っていただいているユーザー数が平均で580万人程度。年間のピーク時には600万を超えるような規模感で、PVとしては毎月2〜3億程度です。

月間のコンバージョン、注文数は平均で60万件、夏のピークシーズンなどは70万件を超えることもあります。

GRLにおける管掌範囲

私はGRLを運営するアートデコ株式会社で、外部CIOという肩書をいただいています。8年ほど関与しており、比較的現場で実務に入っている形です。

ウェブサイトの開発・改修、アプリの開発、また、分析とマーケティング、ここをメインに担当しています。今日、一緒に登壇されている麻野さんとは最低2週間に1回は定例会をして、データの考察や改善を一緒に取り組んでいます。

また、CIOという立場ですが、代表からすると「とりあえずWEBっぽいことは一旦全部振ってみる先の人」であり、それらの案件を日々検討や対応・意思決定しています。

GRLのデジタルマーケティングとF2転換の取り組み

Contentsquare 沖本|
最初のパートに入っていきます。ここからはGRLのデジタルマーケティングを幅広く支援されていらっしゃるDearOneの麻野さんにバトンタッチして進行します。麻野さん、簡単に自己紹介していただいた上で、進行をよろしくお願いします。

DearOne 麻野|
はじめまして。DearOneの麻野と申します。よろしくお願いします。弊社はエンタープライズ向けのアプリを提供しており、また、リテールマーケティングやグロースハックに関して各種グロースマーケティングツールを使いながら、ビジネスのグロースを支援させていただいています。

GRLさんには2年ほど関わらせていただき、ほぼ毎週に近いペースで打ち合わせしています。その中でプロダクトアナリティクスやMAツール、様々なツールを導入させていただいています。Contentsquareさんとも昨年からパートナーとしてご一緒しており、現在GRLさんに導入いただき、活用しています。

※2023年 (編集部注釈)

GRLの目指す顧客体験の最大化とは

ここから「GRLの目指す顧客体験の最大化とは」というテーマで本題に入っていきます。

顧客体験の最大化

これは顧客体験の最大化というテーマに関する基本的な考え方を示したスライドです。視聴の方々には釈迦に説法だと思いますが、獲得から一連の流れをシンプルなモデルとして表したものです。

GRLにおける顧客体験の最大化に向けた施策の全体像

先ほどのモデルを前提に、具体的な方向性としては「LTVの向上とロイヤルユーザー、アクティベーションを増やしていきましょう」というところで各段階でしっかりとアクションを行っています。

EC業界ですと新規売上に対するF2転換率を課題視されている方も多いかと思いますが、GRLでも課題として取り組んできました。

ロイヤルユーザーを増やす

先ほどの「ロイヤルユーザーを増やす」というテーマに対して、継続的に取り組む中で、認知からロイヤルユーザーになるまでのゴールデンパスを分析して、適切なアクションを実施していきましょうということで、日々協議し取り組んでいます。

GRLにおけるグロースマーケティング施策の実行詳細

取り組みの考え方はシンプルで、プロダクトアナリティクスでフェーズ毎の状況をしっかり分析して改善アクションを着実にやっていくという流れで、グロースマーケティングとUIUXの改善を繰り返し実行しています。

グロースマーケティングにおける成果と成果創出に伴う追加課題【GRL】

アパレルECにおけるF2転換率は20〜30%が業界平均だと思いますが、取り組みの結果として、GRLのF2転換率は業界平均の2倍を超えるような水準まで到達しています。

GRL 小林|
いまは大体50〜60%に届くかなというぐらいのF2転換率になっています。最初に買ってくれたお客様の半分ぐらいが、F2に転換する状態です。

やってきたことは資料の通り、グロースマーケティングとしては当たり前の考え方と取り組みです。ただ、しっかり取り組めていなかったMAツールの活用等が成果につながってきたと思っています。

顧客体験の向上に取り組むうえでのハードルとは?

グロースマーケティンにおける次ステップに向けた課題

DearOne 麻野|
F2転換率のように成果もある程度出てきていますが、課題はまだたくさんあり、改善に向けて原因の特定精度をあげたいと感じていました。とくにロイヤルユーザーの増加に向けて実施しているMAやUIUXの改善施策数もかなり多く、リソースも逼迫してきますので、原因特定の精度を向上していく必要があります。

いまロイヤルユーザーの増加というテーマと並行して、次に取り組んでいる部分は、アクイジション・アクティベーションのところで生じている“離脱率の改善”ですね。ここに改善チャンスがあるということで、原因の特定と改善に向けて動いています。

ロイヤルユーザーの増加施策も引き続きやっていますが、共通して原因箇所の特定精度をあげる必要があると考えています。その中で、小林さんとは、ユーザーインサイトが見出しにくい、また、リソースをかけて開発を進めるだけの課題なのかを判断しにくいといった会話がよくありました。課題のページまでは特定できますが、ページ内のどこが原因か、また、その事象の影響するビジネスインパクトをどう推測するかということです。

GRL 小林|
アナリティクスツールを使っていくと、「ファネルのここで落ちている」という数字までは特定できるようになります。しかし、「なぜ落ちたのか?」という細かい原因の特定、分析までしようとすると、ウェブサイトのいたるところにイベントを仕込んで・・・としないといけない。そうすると、実装コストと時間ばかりかかってしまうため、悩んでいたところでした。

グロースマーケティングの実行に向けたContentsquareの導入【GRL】

DearOne 麻野|
この課題に対して、アトリビューションからF2転換までのところにContentsquareを導入して原因の特定や改善に取り組んでいます。ここから沖本さんにバトンタッチして、GRLでの導入事例を紹介していきます。

Contentsquareで実現した新規会員登録フォームの改善事例

GRLにおけるContentsquareの活用例

Contentsquare 沖本|
ありがとうございます。ここからはContentsquareの活用例、“GRLにおけるロストジャーニーを探す冒険”ということで進行していきます。

今日は2つの事例を紹介させていただきます。1つめは新規会員登録におけるお客様の取りこぼし、お客様の“迷いどころ”を見つけたという事例です。本パートは私からContentsquareにおけるGRLさんの実際の分析画面も見ながら共有し、小林さんからもコメントをいただく形で進行していきます。

Contentsquareを使った新規会員登録の導線(ジャーニー分析)

まず新規会員登録の導線における改善事例です。これはContentsquareのジャーニー分析という機能です。今回フォーカスするのは会員登録フォームのページになり、円グラフのような図の一番内側の緑色部分が「会員登録フォームを閲覧したユーザー」を表しており、円の内側から外側に向けてユーザーの行動が表されています。

中央から右上に向かう青い線は、一番内側の「会員登録フォーム(緑色)」から外側に向かって「会員登録フォームの入力確認画面(水色)」⇒「会員登録の完了画面(赤色)」と進んでいますので会員登録として狙い通りの流れです。

一方で、中央から左上に向かう赤い線。黒はサイトからの離脱を示していますので、赤い線は「会員登録フォームに来たのに、ここでサイトから離脱してしまった」ユーザーで課題がある箇所になります。

Contentsquareを使った新規会員登録の導線(ジャーニー分析)

このジャーニー分析の機能を使って、今回は「緑⇒緑⇒緑」と遷移している箇所に着目しました。これは会員登録フォームのページを繰り返し読み込んでいるユーザーです。

大きな割合ではありませんが、一定数のユーザーが同じ動きをしています。「なぜだろうか?何かユーザーが迷っているのではないか?」ということで、深掘りしていきました。

深掘りする際に使ったのは、Contentsquareのセッションリプレイという機能です。セッションリプレイは、実際のユーザーの動きを見れる機能で、今回は前述した「緑⇒緑⇒緑」、つまり会員フォームのページを繰り返しているユーザーの動きを見ていきます。

ある方は、「フォームを送信したのに、同じ入力画面に戻されてしまった・・・」と迷っているのか、会員フォームに戻った後、カーソルがしばらく動きません。「どこか間違っていたかな?」と、下にスクロールして「入力したパスワードが一致しなかったかな?」と再入力して送信。しかし、また入力ページに飛んでしまいます。もう1回パスワードを入力してみますが、上手くいきません。じつは“電話番号の桁数があっていない”ことでエラーが生じており、電話番号を入力しなおして送信したら、ようやく確認ページにたどり着きましたという動きです。

このような会員登録フォームでのエラーは、皆さんも経験されたことがある話だと思います。

【Contentsquare活用事例】セッションリプレイによる実際のお客様の行動確認

会員登録フォームを繰り返しているユーザーの動きを同じようにセッションリプレイで検証すると、入力エラーになっていることに気づかず迷っていたり、2段階のバリデーションチェックによってお客様のエラー解消ステップが増えていたり、必須項目を入力しないまま送信ボタンを押している方が意外と多かったり、様々な動きがありました。

次に「なぜ繰り返しているのか?」という原因の深掘りだけで終わるのではなく、Contentsquareを使ってこの動きがビジネスに影響しているかを見ていきました。

【Contentsquare活用事例】新規会員登録における“取りこぼし”のビジネスインパクト

具体的には、入力フォームでエラーが1回だけで済んだ方と2回以上のエラーを経験した人で、会員登録の完了率にどれくらい差が生じるのかということも検証しました。するとエラーを2回経験すると、会員登録の完了率が6pt下がることが分かりました。6ptという数字は小さく見えるかもしれませんが、入り口である会員登録の完了率が6pt下がるというのは、かなり大きな取りこぼしです。これを踏まえて、UI改善を実行しようという意思決定になりました。

【Contentsquare活用事例】新規会員登録プロセスにおける活用サマリー

新規会員登録のプロセス改善に向けて、ユーザーの行動導線からユーザーの“迷いどころ”を見つけ、具体的にどう迷っているのかをセッションリプレイで深掘りして、更に、改善するとサイト全体にどのぐらいのインパクトがあるかを定量化して改善したという事例でした。事例について小林さんのコメントも伺えればと思いますが、いかがでしょうか?

GRL 小林|
先ほどの新規会員登録のステップ率は、マーケターの方であれば絶対データを確認しているところだと思います。私もファネルのデータを見て、「ここで何か妙な落ち方をしているな・・・」ということは分かっていました。そして、何が原因かという部分の解像度がContentsquareを使うことで大きく向上しました。

また、フォームでは2段階でエラーチェックしているのですが、実はこれは私も認識できていなかった部分です。登録フォームは何度もカスタマイズをしていますので、どこかの段階で若干のデグレード(稼働中のシステムを修正した際に、それまで動作していた機能が動かなくなるトラブル)を起こしてしまっていたかと思います。現在改修しており、直近で本番ローンチします。

再購入におけるお客様の“つまずきポイント”発見事例

Contentsquare 沖本|
続いて、もう1つの事例を紹介します。今後は、Contentsquareを使って再購入、既に会員になっているユーザーが「もう1着買おうかな・・・」という再購入におけるお客様の“つまずきポイント”を見つけた事例です。

【Contentsquare活用事例】注文履歴ページにおけるコンテンツ分析

今度は分析するページが変わり、マイページの中にある購買履歴ページを分析しました。購買履歴のページで、ユーザーがどこをクリックしているのかを表した分析が左側です。購買履歴のページで、自分が購入した商品の画像をクリックする方が多いことが分かります。

隣にあるのは、同じページにおける平均クリック回数のデータです。平均クリック回数は、普通はクリックすると違うページに遷移しますので、1回です。しかし、画像のところは何度もクリックされており、2.45回や3.77回といった数字になっています。何故かというと、画像をクリックしてもどこにも飛ばないからです。しかし、ユーザーは「どこかに遷移するのではないか?」と思って何度もクリックしている。こんな状況が確認できました。

【Contentsquare活用事例】セッションリプレイによるお客様行動の深掘り

次に原因を深掘りするために、セッションリプレイを見てみました。すると、購買履歴のページで、まず商品の画像をクリックするが、動きません。GRLさんのサイトでは、購買履歴から購入した商品を「お気に入り」に登録することができます。そこでユーザーは、購買済みの商品を「お気に入り」と登録する、そして、お気に入りの一覧から商品の詳細ページに飛ぶ。そして、詳細ページでコーディネートの写真をいろいろ閲覧している。こういう動きをしているユーザーがいることを発見できました。

【Contentsquare活用事例】注文履歴から商品詳細に遷移するニーズの定量化

同じ動きをしているユーザーが少数なのか、多数いるのかが施策を実行すべきかを検討するうえで重要なポイントになりますので、そこも確認します。先ほど紹介したジャーニー分析の機能で、購買履歴のページから同じ動きをする人の比率を見てみると、注文履歴ページの訪問者の約9%が、注文履歴からお気に入り一覧ページに行って商品詳細ページに行くという動きをしていました。中を見てみると、全員が全員ではありませんが、商品詳細に行って「購入済みの商品とどんなものが合うのだろう?」とコーディネートを確認する動きです。

この動きは、GRL側でお気に入り機能の提供時にあまり意図したものではありませんでした。実際には商品写真をクリックしても動かないという状況もありますので、「購入済みの商品のコーディネートを見たい」というユーザーニーズは9ptという比率よりも更に多いのではないかと考えられました。小林さんから、この発見についてもコメントをいただけますか?

GRL 小林|
GRLのサイトで購入した後、注文履歴はよく見られるページのひとつで、ページの閲覧数自体もかなり大きい分母になっていました。

DearOne 麻野|
ロイヤルユーザーに限って分析したときも、注文履歴のページはかなり見られているページです。実はその時には、なぜ注文履歴のページが見られるのか分からなかったのですが、Contentsquareのデータを見て「なるほど!」と腑に落ちた部分はありました。

GRL 小林|
注文履歴のページから商品詳細ページに飛べないのは、敢えて飛ばさない仕様にしていました。たとえば、「購入した商品が買った時から値下がりしている」といったことがあると、お客様ががっかりしてしまうポイントになります。そういった体験が生じないように、敢えて飛べない仕様にしていましが、これだけのボリューム、ユーザーニーズがあることを確認できたので、こちらも現在、実装調整をしています。

Contentsquare 沖本|
ここまでGRLでContentsquareを活用いただいての振り返り、また、Contentsquareを検討していますという方々に小林さんから一言いただけますか。

GRL 小林|
GRLでContentsquareを入れて6〜7ヵ月ぐらいですが、「こうした方が良いよね」という施策アイディアが沢山出てきています。その中でも、先ほど話したように二重のバリデーションチェックなどは自分が認識できていなかったものが出てきます。やはりシステムやアプリを作って長く運用していると、どうしても認識漏れも出てきてしまうと思います。そうした面からもたくさんの気づきを得られています。

いまContentsquareを検討されている方も多いかともいますが、1回使ってみると、気づきと施策アイディアが沢山出てくると思います。

Contentsquare 沖本|
メッセージありがとうございます。本セッションは以上になります。ご視聴ありがとうございました。

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