近年のマーケティングテクノロジーの発展から企業が抱える顧客データや行動データは増加傾向にあり、それらの管理や分析の重要性が高まっています。
独立系ITコンサルティング・調査会社である株式会社アイ・ティ・アールの調査*によると、CDP(カスタマーデータプラットフォーム)の市場規模は右肩上がりに増加しています。

*出典:ITR https://www.itr.co.jp/company/press/220106PR.html
国内でもCDPの重要性が少しずつ浸透し、日本発のCDPツールも登場しています。しかし「自社に合うCDPは何か?」「探しているCDPは何か?」という判断軸はまだ普及していません。
この記事ではその判断軸の一つのヒントとして、世の中のCDPツールをタイプ別に分類し、それぞれの強み/特色を紹介します。(DearOne調べ) 自社に合うCDPツールの選定・検討の一助となれば幸いです。
CDPツールの基本要件と4つのタイプ
CDPツールの定義
CDP(カスタマーデータプラットフォーム)とは顧客データを収集・管理し、マーケティング活動に活かしていくプラットフォームの総称です。
近年のグロースマーケティング領域では自社にとって最適な組み合わせで各分野の優れたMarTechツールを利用するBest of Breed思考が主流になりつつあります。しかし、その弊害として様々なツールが個々に連携することで発生するツールのサイロ化とツールごとに異なる蓄積データの粒度/仕様/ID体系が発生するデータのカオス化が課題となっています。
このような課題を解決し、Best of Breedの中核となるソリューションがCDPです。
CDPツールは国内外含めて選択肢が非常に多く、CDPと一括りに言っても各ツールが範囲とする領域は少しずつ異なります。アメリカのCDPベンダーであるmParticle社は多様化するCDPを以下の4つのタイプに分類しています。CDP製品群の中でも特徴や強みは分かれるため、用途や目的に合わせた選定が重要となります。
- All in One
- Application CDP
- Infrastructure CDP
- Unbundling

1. All in One
All in OneはSalesforce、Adobe、Oracleなどの大手ベンダーが提供している「〇〇 Marketing Cloud」のようなツールで、MarTechツール群を1つのベンダーで統一して利用するSuites思考に基づいています。
分析やエンゲージメントを兼ね備えたオールインワン製品という特徴があり、各分野の優れたMarTechツールを組み合わせて利用するBest of Breedとは反対の思想を持つ製品です。
自社が既にオールインワン製品を持つ大手ベンダーで固めている場合にはスケールメリットに期待できます。
しかし既に何かしらのMarTechツールを導入している場合にはオールインワン製品との機能重複が発生したり、オールインワン製品の個々の機能は各分野の専業ベンダーを下回るケースが多いというデメリットがあります。
2.Application CDP
Application CDPはデータ収集に加えて、AI/機械学習を用いた高度なユーザー分析やジャーニー機能に強みを持つCDPで、Treasure data、Lytics、Optimoveなどのツールが該当します。
後ほど解説するInfrastructure CDPと比べると、データ収集・管理よりも分析/施策実行のための機能に重きを置いたCDPです。
データが既に整備・統合されていて品質的な課題が少なく、AIを活用した高度なセグメンテーション作成やチャネル・MarTechツールを横断したジャーニーオーケストレーションなどのアクションを行いたい場合に適しています。
3.Infrastructure CDP
Infrastructure CDPは様々な顧客接点から発生するデータのリアルタイム収集と品質管理、外部MarTechツールへの連携に重きを置いたCDPで、Tealium、Segment、mParticleなどのツールが該当します。
Best of Breed思考の弊害である様々なツールが個々に連携することで発生するツールのサイロ化と、ツールごとに異なる蓄積データの粒度/仕様/ID体系が原因で発生するデータのカオス化を、データの上流から下流のパイプラインの構築(インフラ整備)で解決します。
データのインフラ整備を行うことで複雑化するデータの品質維持や連携を容易にし、外部MarTechツール導入の工数削減やデータの仕様変更による影響の低減が可能となります。
4.Unbundling
Unbundlingは既存のDWHに対してForward ETLやReverse ETLなどのデータ収集機能と外部へのデータ連携機能を組み合わせてCDPの機能を再現する考え方です。BigQueryやSnowflakeなど既にデータが溜まっている場所に対して、足りない機能を他のツールで補っていきます。
既にある環境を活かしながらデータの収集〜統合管理〜外部MarTech連携を実現する構想で、Reverse ETLの台頭に伴い考え方が普及しました。しかしリアルタイム性に課題があり、また複数のツールを跨ぐためワークフロー制御などの技術的なチャレンジが難しいというデメリットがあります。
選定基準の考え方
前項で解説した4つのタイプのうちパッケージとして独立したCDPツールはApplication CDPとInfrastructure CDPの2つのみです。
大手ベンダーのオールインワン製品であるAll in Oneとツールの組み合わせでCDPを再現するUnbundlingは、CDPの機能を兼ね揃えていますが単独での検討ができるカテゴリではありません。
そしてパッケージとして独立したCDPであるApplication CDPとInfrastructure CDPも、それぞれ分析機能とインフラ整備に重きを置いていることから、実は競合しない製品となります。
実際にTealium+Treasure Data、Segment+Lyticsなど、Application CDPとInfrastructure CDPを組み合わせて利用している海外事例も多く存在します。
CDPツールを選定する上で重要なのは「CDPで何を実現したいのか?」を細分化して検討することです。冒頭で述べたようにCDPと一括りに言っても各ツールが範囲とする領域は少しずつ異なります。
特に分析機能に強みを持つApplication CDPとデータのインフラ整備に強みを持つInfrastructure CDPを見たときに、どちらを必要としているか、もしくはどちらも必要としているのか、を考えることがCDPの選定では重要です。
CDPについてもっと詳しく知りたい方は、ぜひDearOneまでお問合せください。