昨今、現代のビジネスにおいて重要なKPIとなるライフタイムバリュー(顧客生涯価値:1顧客からある一定期間を通じて得られる利益)が重要視されていますが「LTV最大化にはどんなメリットがある?」「どうやって分析していったらいい?」などといった声もよく聞きます。
この記事ではデータドリブンマーケティングで企業のファンを増やす支援を行っている株式会社DearOneのメンバーが「LTV最大化のメリットと分析方法」を解説します。
代表取締役社長 河野
CTO 佐々木(以下 サム)
マーケティング 安田
経営企画 秋津
※この記事は、2023年5月 取材時の情報です
LTVのメリットと注意点とは?―ハンドメイドアクセサリーECの事例から
安田 今回のテーマ「LTV最大化のメリットと分析方法」について、皆さんのご経験に基づく豊富な実例も交えて、深掘りトークを行っていけたらと思います。よろしくお願いします!
河野・佐々木(以下 サム)・秋津 よろしくお願いします!
安田 LTV最大化のメリットと聞いて皆さん、何を思い浮かべますか?
サム 一般的に LTV を最大化することによって、マーケティングコストの削減や収益の安定化が図れると言われますよね。
安田 その通りです。コスト削減による増収や経営の安定化のほか、優良顧客の可視化など健全な企業経営に不可欠な示唆や指針をもたらしてくれることが、代表的なLTV最大化のメリットだと言えます。
マーケティングにおけるLTVの重要性については こちら や以下の記事もご参照ください。
秋津 「優良顧客の可視化」というと、私の近親者が営むビジネスで面白い例があります。ハンドメイドアクセサリーをECで販売するビジネスなのですが、そこでもやはり「LTVを上げないといけない」という課題があるといいます。
そこで、「一人あたりの頻度を上げるためには、ブランドを気に入ってもらえば消費者が買ってくれるのではないか?」。つまり、一度買っていただいた方とのコミュニケーションを密に取った方が、売上が上がるのではないかと考えたというんです。
河野 うんうん、LTVは上がるよね。だって期待が高まるんだから。
秋津 そうですね。一方で実は、お客さんを先につかまえておきたいと考え、アクセサリーの「1,000円企画」という施策を打っていました。
つまり、定価から「1,000円」という一定の限界まで安くすることによって、ブランドのフォロワーさんを集める試みですね。
ところが、その「1,000円企画」に乗ってくれるお客さんは、単発では買ってくれるのですが中々リピートしてくれませんでした。そこで「ちょっと待てよ?」と、いったん立ち止まって考えたといいます。
つまり、「定価だと3,000円する商品を一度買ってくれる人と1,000円の商品を3回買ってくれる人って、どちらの方がいいんだっけ?」という観点に立ち戻ったわけです。
そのように吟味してみると後者の場合、作る側の立場としてかかってくるコストは、お客さんとのやりとりも含め3回分発生してしまう。
そこで「実は1,000円で売るのはあまりよろしくないのではないか」と考え、逆に「3,000円で買ってくれている人は何に興味を持ってくれているんだろう?」という点を深掘りしてみたそうです。
安田 うんうん。
秋津 すると、この3,000円の定価購入って実はブライダル、結婚式のときに買われているということがわかったんです。
そこで、「1,000円企画」はきっぱりやめ、コンセプトをガラッと変えて、全商品をブライダルの価格帯に合わせブライダルブランドとして販売し始めたところ、何と……売上が5〜10倍にグワーッと伸びていったんです。
安田 おお〜!
河野 すごいですね!実体験でその答えを導いたとは…!
秋津 そうなんですよ。
河野 まさにそのことを先日、Growth Summit 2022に出演いただいたオルビスの小林琢磨社長もおっしゃっていたのです。
秋津 えっ、本当ですか?
河野 はい。つまり、目先の利益を求めてキャンペーンなどを行っても「欲しくもない商品を無理やり売るための『施策』が走っている」ということが、顧客に伝わってしまうというんですね。
もちろん、キャンペーンを行ったところで、無理やり買わせることなどできませんし、その上買わせようとする「施策」が満足度まで下げてしまう。
そうすると、せっかく何か気に入った商品を買ってもらおうと思っても、会社に対しての印象が悪くなり、結果として契約期間もLTVも下がるのだそうです。
サム 本来、顧客との関係強化がLTVのメリットのはずなのに、顧客の真のニーズにそぐわないキャンペーンや値下げを行っても、逆効果になってしまうことですね。
河野 はい。そこはくれぐれも注意が必要です。
≪.LTV Memo≫
LTVのメリットは
・マーケティングコスト削減
・収益安定化
・顧客との関係強化
・優良顧客の可視化 など
キャンペーンドリブンの「リテールビジネス」を「ブランドビジネス」に切り替えたオルビス社の、Growth Summit 2022セッションでのお話については以下をご参照ください。
BtoB、BtoCそれぞれのLTVの計算・分析方法とその効果!
安田 LTVの別のメリットとして、LTVを分析することでさまざまな課題解決につながるというものがあります。
ただ、一口にLTVと言っても我々のようにBtoBで、割と単価の高い商材を扱っている企業と、BtoCの比較的少額な商材を扱っているところでは、大分やり方が違う気がしますよね。
河野 かなり違ってきますね。
安田 カスタマーサクセスという概念も、BtoCではそこまで重視しないと思いますし。それぞれのケースでどのように算出・分析を行えばいいのでしょうか?
河野 僕も昔、それを考えたときに、一つ明らかに大きい違いがあると気づきました。それは「頻度」という概念です。BtoBはあくまで月額の単価、継続期間、チャーンなどがその要素です。
よって、サブスクリプションビジネスでは「LTV=平均顧客単価×100/解約率」として計算・分析するのが代表的です。
それに対してBtoC、例えば小売業やモバイルビジネスはまさに頻度、フリークエンシーの世界です。上記に加え、顧客が何度繰り返して来てくれるかという要素が入ってきます。
よってBtoCでは「LTV=平均購買単価×購買頻度×継続購買期間」で計算・分析することが多いです。
サム なるほど。
BtoCにおけるLTVの計算・分析方法については こちら や以下の記事もご参照ください。
河野 一度、そこをきちんと追えているBtoCの企業さんに、どうやってやっているのか聞いてみたいと思っていました。
それで先日、Growth Summit 2022でオルビスの小林社長と対談したとき、顧客とのコンバージョンポイントごとにLTVが違うという話題が出ました。
秋津 興味深いですね。
河野 オルビスさんの実績ベースでは、例えば1年365日のLTVを見ると、店舗に対し通販の方がはるかに数字が良かったそうです。
一般に、店舗の方がリアルで接しているからLTVが高くなりそうなものなのですが、実際に分析したところ、顧客のニーズを細分化するなどセグメントを反映した施策をダイレクトに打てる通販の方がLTVが高くなっているとのことです。
さらに通販と店舗を併用している人は、何と通販だけの場合よりさらにLTVが高かったとのことでした。
安田 感覚ベースと全く異なる実態が明らかになったんですね。
河野 今のケースは365日という期間での比較なのでリテンション率は関係なく、純粋に単価と頻度から算出したそうです。このようにLTVを分析することで、店舗より通販、そして両方併用している顧客の方が効果が高いことがわかったとのことで、素晴らしい事例だと聞いていて思いました。
安田 そのようにLTVを適切に分析して、さまざまな課題のソリューションにつなげていきたいですね。
≪.LTV Memo≫
LTVの適切な分析によってさまざまな課題の解決が可能に!
代表的な算出・分析方法は
サブスクリプション: LTV=平均顧客単価×100/解約率
BtoC: LTV=平均購買単価×購買頻度×継続購買期間
※この記事は、2023年5月 取材時の情報です