マジックナンバー分析とは?概要と具体的な求め方を事例で解説

2024.01.17

マジックナンバーは、サービス継続率などの重要指数を飛躍的に向上させる数値のことで、顧客の特定の行動×回数で示されます。有名な事例として、Facebookが定めた「10日間で7人と友達になる」というマジックナンバーがあります。

記事ではマジックナンバー分析の事例と発見方法を解説していきます。

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マジックナンバー分析とは?

マジックナンバーとは

マジックナンバーと、「ユーザーが特定のアクションを規定回数以上行うとサービスの継続率や収益などの重要指標が飛躍的に向上する数字」を指します。マジックナンバー分析を通じて、自社サービスのマジックナンバーを発見できると、飛躍的に成長できる可能性が高まります。

Facebookが発見した、新規ユーザーが「10日間で7人と友達になる」とサービスを継続利用する確率が飛躍的に高まるというマジックナンバーが、分かりやすく、かつ有名な事例です。他にもX (旧Twitter)における「登録初日に5人以上フォローする」というマジックナンバーも有名です。

マーケティングや営業の現場では、活動の成果指標としてKPI(Key Performance Indicator 重要事業評価指数)を定めることが一般的です。主要なKPIとしては、営業ならアポイント件数、成約率、リピート率、平均受注単価、個人営業売上高、マーケティングなら新規獲得ユーザー数、獲得単価、獲得や購入のCVR(転換率)、購買単価、継続率などが一般的です。

KPIは一般的に最終成果目標となるKGI(Key Goal Indicator 重要目標達成指数)と呼ばれる収益目標を四則演算して分解したものが使われますが、マジックナンバーはこうした一般的なKPIとは少し異なります。

マジックナンバー分析の事例

マジックナンバーを発見するのは一般的なKPI設定のように収益目標等を四則演算で分解するわけではなく、ユーザーの行動分析を実施して導き出します。

前述の通り、Facebookでもマジックナンバー分析を通じて、新規ユーザーが「10日間で7人と友達になる」とユーザーの継続率が高まるというマジックナンバーを発見して経営上の重要指標に設定しました。このマジックナンバーはFacebookの成長を支える原動力のひとつとなりました。

それでは、Facebookのマジックナンバーはなぜ「10日間で7人」なのでしょうか?

適当に7人と設定したわけではありません。ユーザー行動分析を通じて、新規登録から10日以内に友達が7人を超えると、定着ユーザーが爆発的に増加するという事実を見つけているのです。 7人を超えると、7人だけに止まらず、もっと他の人達とも友達になろうと、どんどんと友達を増やしていきたくなるものなのです。そうすると、Facebookを開くのが楽しくなって継続的に利用しようと思うのです。

重要なことは、ユーザーの行動分析をもとに、マジックナンバーを決めるということです。例えば「10日間で10人」のようにキリがいいから、と勘と経験で定めた数字にはなんの意味もありません。

マジックナンバー分析の方法

マジックナンバーの概念を知ったマーケターや経営者は、自社サービスのマジックナンバーを見つけたいと思うはずです。まずマジックナンバー分析の基本となる考え方を解説します。

ステップ1:サービス利用ユーザーから目標達成ユーザーを抽出

まずは、サービスを利用しているユーザーから目標達成ユーザーを抽出します。

ここでは例として目標達成ユーザーを「2週間後にリテンション(継続利用)しているユーザーと設定します。

(出典:https://note.com/amplitude/n/n4ef071a5830d)

ステップ2:特定アクションを実行したユーザーを抽出

次に特定のアクションを実行したユーザーを抽出します。

ここでは例として「お気に入りに登録したユーザー」としますが、実際に求める際にはユーザーが実行する様々な種類のアクションを想定して分析していきます。

ステップ3:目標達成ユーザーとアクション実行ユーザーの重なり度合いを計算

アクション実行ユーザーを抽出したら、目標達成ユーザーと重なり合ったユーザー数を求めます。

ステップ4:マジックナンバーを決定

次に様々な異なるアクション、異なる回数でアクション実行ユーザーを抽出して、目標達成ユーザーとの重なり合いを集計します。

特定アクションは、アクションの種類×回数×期間などで規定されますが、そこには膨大なパターンがあります。

Facebookの事例で辿り着いたマジックナンバーは「10日間で7人と友達になる」ですが、必要な行動は「友達になる」ではなく、「ログイン回数」や「メッセージの送付」「投稿の閲覧回数」など、異なる行動である可能性もあります。また、友達になるという行動でも「10日間で7人」ではなく、「3日で5人」かもしれませんし、「10日で5人」かも知れません。

このようにマジックナンバーの可能性がある特定アクションは膨大なパターンがあります。各パターンと目標達成ユーザーの重なり度合いを計算して、最も重なりの大きいアクションが「マジックナンバー 」になります。

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音楽配信ツールにおけるマジックナンバー分析の実例

次にマジックナンバー分析のやり方を実例で解説していきます。世界No.1分析ツールのAmplitudeを用いてマジックナンバー抽出する事例です。

こちらの図は、行動分析ツール「Amplitude(アンプリチュード)」を使い、ある定額音楽配信サービスで、継続して利用しているユーザーに見られる特徴的な行動イベントを分析した画面です。

右側の青く塗られた数字は、各行動イベントと、ユーザーの継続利用との相関関係を数値で表しています。数値が1に近いほど相関が強く、ユーザーの継続に影響のある行動イベントであると考えられます。見ると、「コミュニティに参加する」「お気に入り登録する」「曲を再生する」といった行動イベントがユーザーの継続利用に影響していることがわかります。

さらにここから、「何回その行動イベントを行うと最も継続率が高くなるか」を見つけることができます。それがマジックナンバーになります。

ここで、先ほど見つけた「コミュニティに参加する」「お気に入り登録する」「曲を再生する」といった行動イベントがどの程度継続率に影響しているかを検証してみます。

グラフは契約してからの継続率を日時で追跡したものですが。このグラフをリテンションカーブと呼びます。

リテンションカーブを見てみると、初日では契約した人は全員がサービスを利用していることになるため、継続率は100%となっています。

そして、2日目に続けてサービスを利用した人は25%、3日目は20%と継続率が徐々に下降してしまっているのがわかります。3日目以降は継続率がほぼ横ばいですが、確実にだんだんと下がっていき、30日後には約15%になっています。

こうしたユーザー傾向は自身の体験を通じて誰もがイメージできると思います。

私自身も、ちょっと気になったアプリはダウンロードをして使ってみるけど、使い心地が良くなかったり、期待していたものでなければすぐに使用をやめてしまい、2度とアプリを開かないなんてことがよくあります。一度使用している、「違う」となればその日のうちに削除してしまうこともよくあります。

上記図のリテンションカーブは、全ユーザーの平均値ですが、ここからさらに特定の「ユーザー行動」をしたユーザーを抽出してデータを見ていきます。

グラフが全体的に上方向に移動し継続率が高まっています。

また、ただ単に曲を再生するだけではなく「お気に入り登録」をした人は、より継続率がよくなります。さらに、ある特定のアーティストなどの「コミュニティに参加する」と、継続率はもっと改善しています。

単純に曲を再生するという瞬間利用から、継続的によく聞く、さらにはコンテンツのファンとなりコミュニケーションをするというエンゲージメントまで達成できれば、利用する目的、動機も広がり、継続率はよくなることがわかります。

このようにデータ分析をさまざまな視点からおこない「ユーザーはどの段階で離脱をするのか」、「どのような行動をとったユーザーは継続して利用してくれるのか」を把握することで、マジックナンバーを見つけ出すことができます。

例:行動分析ツール(Amplitude)でマジックナンバーを求める

かなり簡易的に解説しましたので、自社サービスのマジックナンバー分析を実際にしたい方はご相談ください。

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マジックナンバー分析をするメリット

マジックナンバーを設定することで、どのようなビジネスグロースにつながるメリットを得ることができるでしょうか?

①収益の増加

まず1つ目のメリットは、顧客一人当たりの収益を上げることができることです。

マジックナンバー分析をすることで、顧客のリテンション率向上のために何が必要なのかが明確になります。そして仮説を立て施策を行い改善を行うことで、リテンション率アップに繋がり、そこから得られる収益も大きくすることが可能となります。

②コストの削減

2つ目のメリットは、コスト削減です。

マジックナンバーを分析することで、投資を続けるべきか否かを判断することができます。この場合の投資とは、新規顧客獲得に対して費やしている費用などのセールス、マーケティング活動に使用しているお金のことです。

マジックナンバーが分かると、どこに投資をすれば効果を最大化できるかという仮説が立てられるため、ユーザーの継続に繋がっていない効果の低い投資をやめ、重要な施策へ投資を行うことができるようになります。

③組織力の強化

3つ目のメリットは、組織力の強化に繋がることです。

マジックナンバーは組織全体で目指す指標となるります。マジックナンバーを発見することで、組織の一人一人がマジックナンバー達成に向け、行うべきことを把握できるようになります。

組織全体で同じ方向をみて進むことは、ビジネスグロースを目指す上でにとても重要で、各々が異なる方向に進んでいては到底辿り着けないところへもいくことができるようになります。

マジックナンバー分析のデメリットと注意点

マジックナンバーを発見して活用することは大きなメリットがありますが、実際にマジックナンバーを実施するにはには2つの大きな課題があります。

手動でのマジックナンバー分析には莫大な工数がかかる

マジックナンバーの可能性があるアクションの組み合わせは無数ともいえるパターンがあり手動でマジックナンバー分析を実施するには莫大な工数がかかってしまい、ほぼ不可能とも言えるでしょう。

Facebookの「10日間で7人と友達になる」というシンプルなユーザー行動でも、可能性のあるアクションの種類×回数×期間の組み合わせを考えると膨大なものとなります。例えば、アクションが5種類×回数が10種類×期間が10種類だとしても500パターンです。実際にはもっと大きな数となることが多いでしょう。

因果関係と相関関係の違いに注意が必要

マジックナンバー分析を実施するためには、統計的な知識や検証、そして、事業に対する知見やユーザー心理への考察も必要となります。

マジックナンバー分析で求めたいのは、目標達成ユーザーを増やすことに因果関係(原因と結果)のあるユーザー行動です。しかし、実際には因果関係がないのに目標達成ユーザーと重なり合ってしまうユーザー行動もあり得ます。これを疑似相関と言います。

疑似相関とは、実際は因果関係がない(原因と結果の関係ではない)のに、分析すると因果関係があるように見てしまう、高い相関関係(片方の増減ともう片方の増減が連動している)のことです。有名な疑似相関には、「アイスクリームとビールへの支出額」「警察官の定員と犯罪の検挙件数」「高血圧の出現率と年収」「マーガリンの消費量と離婚率」「各国のチョコレート消費量とノーベル賞の受賞者数」といったものがあります。

これらは数値だけを分析すると、高い相関関係があります。そうすると、分析結果を見て何らかの因果関係があるのではないかと考えてしまいがちです。しかし、疑似相関は因果関係ではありません。例えば「アイスクリームとビールへの支出額」であれば「気温の上昇」、「警察官の定員と犯罪の検挙件数」であれば「人口」といった共通の因子がある場合もあれば、共通因子が特定できない場合もあります。

Facebookの「ユーザーの継続率」も、たとえば「いいねを押した数」「ログイン頻度」「ユーザーの年収」といった異なる因子と疑似相関があった可能性もあります。こうした疑似相関に惑わされてしまうと「10日間で7人と友達になる」というマジックナンバーにはたどり着けなかったでしょう。

マジックナンバー分析に必要なツール

上述の通り、マジックナンバー分析には膨大なパターンへの対応、また、疑似相関に騙されないための統計的な知見が必要です。とくに手動でマジックナンバー分析を実施しようとすると、サービスによっては永遠にも似た工数がかかってしまうため、ほとんどの場合、多くの企業で手動ではなく分析ツールを使用したオートメーションでおこなわれています。

手動では数週間以上かかってしまうような作業を、高機能な分析ツールであれば、数秒で相関関係のスコアの高い順にマジックナンバーを求めてくれます。

Amplitude(アンプリチュード)によるマジックナンバー分析

今回の記事では飛躍的成長に導くマジックナンバー分析を紹介しました。マジックナンバーを発見できれば、ビジネスが飛躍的に成長させる一歩を踏み出したと言っていいでしょう。しかし、マジックナンバー分析を手動でやることは現実的ではありません。

実際にマジックナンバー分析を行う際は、Amplitudeのような高機能な分析ツールの利用がお勧めです。ツールを使うことで膨大な工数や特殊な知識を必要とせず、直感的な操作を通じて現場のマーケターがマジックナンバー分析を行えるようになります。

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