マーケティング活動の効率化や成果向上を目指して、多くの企業がMA(マーケティングオートメーション)の導入を進めています。しかし、効果的に活用できている企業がいる一方で、導入がうまくいかず思ったような成果が得られないケースも少なくありません。
この記事では、MAツールとはどのようなツールなのか、機能や導入して実現出来ること、導入前に検討すべきことを、代理店の目線で紹介します。
MAツールの選び方や主要なMAツールの比較は、以下の記事で紹介しておりますので、あわせてご参照ください。
関連記事:MAツール比較おすすめ13選!選び方のポイントと特徴・価格・機能
MA(マーケティングオートメーション)とは
MA(マーケティングオートメーション)とは、企業がマーケティング活動を効率化するためのプロセスであり、またそのために利用するツールを指します。
マーケティングオートメーションにより、メール配信、プッシュ通知配信、顧客の行動分析によるコンテンツの出し分けなどの作業を効率的に管理し、自動化することが可能になります。従来は人の手で行っていたこれらの作業を、自動的かつターゲットに最適化された形で実行できるのがMAの強みです。
例えば、MAツールのひとつであるMoEngageは、リアルタイムで顧客行動を追跡し、顧客の属性や行動などに基づいてセグメンテーションを行い、個々の顧客に適したメッセージやコンテンツを自動配信できます。
MAツールは、アプローチを自動化するだけでなく、人的ミスを減らす効果もあります。
MAの主な機能
BtoB向けとBtoC向けではMAツール活用の目的が若干異なり、必要となる機能も変わってきます。BtoCとBtoB、それぞれでのMA活用の目的やそれに応じて必要な機能を紹介します。
BtoCの場合
BtoCでMAを導入する主な目的は、顧客との継続的な関係構築ためのコミュニケーションや、ECサイトやアプリなど購入への誘導となります。
BtoCビジネスは、BtoBと比べると顧客数が膨大であり、また、Webやアプリ上で購入が完結することが大半です。その膨大な顧客に対して、One to Oneマーケティングを施し、一人ひとりに最適なコンテンツを最適なチャネル、最適なタイミングで提供し、購買活動を誘発したりエンゲージメントを高めたりするための機能がMAツールには求められます。
主な機能は以下の通りです。
- マルチチャネル対応‥‥メール、SNS、アプリなど複数のチャネルでシームレスな顧客対応
- セグメンテーション‥‥顧客を属性や購買履歴に基づいて細かくセグメント分けし、ターゲット別にマーケティング施策を実施
- シナリオ作成/配信‥複数の条件やトリガーに基づく自動化されたフローを設定
- 購買行動分析‥‥購買パターンや行動を詳細に分析し、将来の購入意欲を予測するためのインサイトを得る
- コンテンツ配信の最適化‥‥顧客行動や属性に基づいて、最適なタイミングでコンテンツを配信
BtoBの場合
BtoBにおけるMAツール導入の目的は、リードの獲得数を増やす、獲得したリードを継続的にケアし、インサイドセールスやフィールドセールスと連携して商談数を増やすことになります。そのために必要な機能の一例には、以下が挙げられます。
- リードスコアリング‥‥見込み顧客(リード)の行動や属性に基づき、商談につながりやすいリードをスコアリング
- リードナーチャリング‥‥メールやコンテンツ配信によって、リードを育成し、購買意欲を高める
- CRMとの統合‥‥CRM(顧客関係管理)システムとの連携で、営業とマーケティングの情報を共有
- カスタマイズ可能なレポート‥‥リードの進捗状況やマーケティング活動の効果を可視化するためのレポート作成
BtoC、BtoB同様にツールによって搭載される機能はさまざまであるため、自社に必要な機能を洗い出しておくことをおすすめします。
MA導入で実現することと期待できる効果
MA導入で実現できることや期待できる効果には以下のようなものがあります。
- マーケティング施策の精度向上
- 顧客エンゲージメントの強化
- データドリブンな意思決定
- 属人化の解消
MAで実現できることや期待できる効果を把握することで、より具体的な活用イメージを作り、成果につなげやすくなります。
マーケティング施策の精度向上
MAを導入することで、顧客の属性情報や行動データ、過去のコミュニケーション履歴などのデータに基づき、各顧客に最適なタイミングで最適なコンテンツを届けることができるようになり、マーケティング施策の精度が向上します。
また、顧客に関するデータがMAツールに統合されることで、顧客の状況や施策効果をリアルタイムで把握し、より適切なアプローチを検討することができます。これにより情報の一元管理が実現でき、データの重複や漏れを防ぐことができるので、無駄なアプローチや施策の実行を防ぐことにもつながります。
顧客エンゲージメントの強化
顧客との関係性を深めるためには、個々のニーズや関心に応じたコミュニケーションが重要です。
MAツールでは、顧客の購買履歴やアンケート回答などのデータをもとに、顧客の趣味やライフスタイルに合わせたメールやコンテンツを自動的に配信することが可能です。
例えば、ある顧客が過去に特定のブランドのアイテムを購入している場合、同じブランドの新商品情報や関連する商品のキャンペーンを提供することで、顧客は自分の好みを理解してもらえていると感じ、企業への好感度が高まります。このようなパーソナライズは、顧客のエンゲージメントが高まり、購買頻度の向上や継続的な利用、LTVの向上につながります。
データドリブンな意思決定
MAツールを活用すれば、マーケティング活動の実施履歴と成果がすべてデータ化されていき、データドリブンな意思決定が可能になります。
例えば、広告のクリエイティブやメール文章、配信時間、配信タイミングなどのあらゆる施策でA/Bテストを実施し、どのクリエイティブ、メール件名や内容、配信時間がより多くの顧客に開封され、リンクがクリックされたかといった具体的なデータを比較することはデータドリブンな意思決定の基本です。
感覚ではなく、データを基にして、より効果的な施策を選ぶことで、無駄なコストを抑えることができます。
属人化の解消
マーケティング施策が特定の担当者に依存している場合、その人が退職したり部署を異動したりすると、引き継ぎがうまくいかず、業務が停滞するリスクがあります。
MAツールを導入することで、過去の施策がツール上に記録され、誰でもデータを参照し、作業を進められる環境が整います。
例えば、どの顧客にどのようなアプローチが行われたのか、次に実行するべき施策は何か、過去にどんな施策が成功してどんな施策が失敗したのかといった情報が、ツール上に記録されることで、担当者が変わってもスムーズに業務を引き継ぐことができるでしょう。
MAツールって必要なの?
コロナ禍を機に消費者の行動が大きく変化したことで、MAツールの必要性は更に増しています。
理由は、コロナ禍でオンラインでの情報収集や購買活動が加速し、現在もその流れが続いていることにあります。「令和3年版 情報通信白書」によると、2020年以降インターネットショッピングを利用する世帯は急速に増加しており、2022年、2023年以降もインターネットショッピングは一般的な購買行動となりました。
引用:2023年 家計消費状況調査 結果の概況|財務省
このことから、Webやアプリ上での情報収集と購買が増えた中で、企業がWebやアプリなどを通して、顧客に適切な情報を届けることはこれまで以上に重要になりました。オンライン上の膨大な顧客に対して適切にアプローチを行うためには、手作業では限界があり、MAツールなどマーケティング支援ツールが必要不可欠となっています。
MAツールとSFA /CRMの違い
商品・サービスの販売活動で使われる、MAツールと混同されやすいのがCRMとSFAです。MAツールとCRM、SFAそれぞれの違いを紹介します。
MAツールとSFAの違い
SFA(Sales Force Automation:セールスフォースオートメーション)とは営業活動を効率化させるためのシステムで、日本語では「営業支援システム」と呼ばれます。顧客リスト作成、テレアポ、見積書、計画書などの書類作成から、見込み客への情報提供、商談、既存顧客へのフォローアップなど営業の仕事は多岐に渡ります。その中でも繰り返し行われる作業などを自動化する、そして、個人やチーム、組織の営業活動を効率的にマネジメントするためのツールがSFAです。
MAツールとSFAの違いは「どの部分を効率化させるか」という点で、MAツールは見込み客獲得と育成など、マーケティング活動の生産性向上を目的としているのに対して、SFAは商談管理とクロージングなど、営業活動の生産性向上を目的としています。前述の通り、人が営業活動を実施するBtoBビジネス、また、BtoCビジネスでも住宅や自動車などの高額商材等でSFAは利用されることが一般的です。
MAツールとCRMの違い
CRM(Customer Relationship Management:カスタマーリレーションシップマネジメント)は、「顧客関係管理」「顧客管理」と呼ばれ、既存顧客との関係構築、売上向上のために使用されるツールを指します。
MAとCRMの違いは、その対象です。
MAは、主に新規獲得における見込客のマーケティング活動生産性向上を目的としており、CRMは既に取引がある既存顧客と良好な関係性を構築することを目的としています。新規顧客の獲得に関わる活動を支援するのがMAツール、既存顧客に関わる活動を支援するのがCRMです。
ただし、オンライン上で購買活動が完結するBtoCビジネスにおいては、見込客向けのマーケティングと既存顧客向けのマーケティングは、デジタルマーケティングとしては重複する領域が多くなります。そのため、CRMツールの機能を内包したMAツールがほとんどです。
関連記事:CRMとMA(マーケティングオートメーション)の違いや使い分けのポイント
MA導入の前に検討すべきポイント、よくある失敗パターン
MAは適切に導入すれば、大きな効果を発揮します。しかし、無計画に導入すると、導入メリットを得られず、費用や時間だけが発生してしまうこともあります。
ここでは、MA導入が失敗しないように、導入前に検討すべきポイント、MA導入のよくある失敗パターンを紹介します。
導入目的の明確化
まずは、なぜMAを導入するのか、目的を明確にすることが最も重要です。「多くの企業が導入しているから」「業務が効率化されそうだから」といった漠然とした目的で導入を決めると、機能を使いこなせずに失敗してしまいがちです。
また、導入目的が不明確なままだと、どの機能が本当に必要かが判断できず、使わない機能を含めて契約を行い、費用が増してしまうこともあるので、まずは導入目的を明確にしましょう。
マーケティング施策設計
MAは、導入するだけでは成果を上げることはできません。事前にどのようなマーケティング施策を実施したいのか、きちんと設計しておかないと、導入後にオーバースペック(必要以上の機能を持っているが活用できない)やアンダースペック(必要な機能が不足している)が発覚することもよくあります。
例えば、MAツールの複雑な機能を持て余し、メール配信ツールになってしまっているケースや、逆に外部連携機能が不足しているため、やりたかった施策を実行できないこともあります。
こうした失敗を防ぐためには、何を自動化したいのか、どのようなデータを活用したいのか、得たデータをどのような分析をしたいのか、利用イメージを明確にした上で、適切な機能を備えたツールを選定することが重要です。
運用体制の構築
MAを導入しても、現場での運用体制が整っていなければ、効果を出すことはできません。MAツール導入後に、「操作が難しくて誰も使いこなせない」「担当者が忙しくてツールを活用する時間が取れない」といった声が現場から上がることは珍しくありません。こうした状況では、せっかくのMAツールも十分に活用されず、結果的にツールが無駄になってしまいます。
このような失敗を避けるためには、ツールの活用体制を整えることが必要です。例えば、ツールの操作に慣れるためのトレーニングを実施し、担当者がスムーズにツールを活用できるよう支援することが重要です。
また、導入後のサポート体制が充実しているベンダーや代理店を選ぶことで、導入初期のトラブルにも対応できる環境を構築することもできます。ツール選びの際には導入時のサポート有無等も確認しておくと安心です。
DearOneでは、企業のニーズに合わせて最適なMAツールの導入をご支援しております。また、導入後のオンボーディングやQA対応、マーケティング効果を高める施策の立案や効果測定など、ツールを最大化するための運用のご支援も可能です。
自社に合うツールの選び方
MAツールを導入する際には、自社のビジネスモデルやニーズに合ったツールを選ぶことが重要です。
以下にMAツールを選ぶうえで重要な要素を紹介しますので、参考にしてください。
必要な機能が揃っているか
MAツールを選ぶ際、まずは、自社のマーケティング施策に必要な機能が揃っているかを確認しましょう。前述の通り、BtoC企業とBtoB企業では、必要な機能が異なります。また、どのような機能が自社にとって必要か、MAツールの導入の目的を明確にしたうえで機能を選ぶことが大切です。
BtoC向けの主な機能
- メール、プッシュ通知配信
- 顧客行動に基づく自動メール配信
- 顧客行動予測分析
- セグメント別のパーソナライズ配信
- 広告ツールや分析ツールとの連携 など
BtoB向けの主な機能
- リード管理とスコアリング機能
- SFA(営業支援ツール)との連携
- 複数段階にわたる商談フォローの自動化
- 失注商談のナーチャリング など
既存システムと連携できるか
MAツールはSFAやCRM、アプリ管理ツール、ECサイト等のサイトマネジメントシステムなど他システムと連携することで、効果を最大化することが可能です。
例えば、CRM(顧客管理システム)やECサイトとの連携ができると、データの管理が一本化され、データ分析を効率的に進められます。
MAツールの選定時には、今使っているシステム、また今後利用する予定のアプローチチャネルと問題なく連携できるかを確認しておくと安心です。
サポート体制があるか
サポート体制が充実しているかどうかも、MAツール選びの重要なポイントです。
例えば、メールだけではなく、リアルタイムでの電話やチャット有人サポートがあると安心です。MAツールは国産のものだけではなく、海外のツールも多いので、サポートの対応時間や言語もチェックするようにしましょう。
またMAツールの導入がはじめての場合は、MAツールの初期設定のサポートや、自社での運用スタートに向けたワークショップ、社員向けのトレーニングなど、導入コンサルティングの有無も確認しておきましょう。とくにMA導入が初めての場合には、有償でも活用の伴走・コンサルティングを提供してくれるベンダーと契約した方が導入の費用対効果を得やすいかもしれません。
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MA導入による成功事例
アップセル促進で月間獲得有料会員数が28%増加
ANA X株式会社はMA実施にあたり、MAツール「MoEngage」を導入し大きな成果を上げました。
具体的には、プッシュ通知やIn-Appメッセージを駆使することで、有料会員の獲得数を28%増加させ、また、休眠ユーザーの約20%がアプリを再び利用するという結果を得ています。
スピーディーな施策実施によりCVR最大7倍改善
レディースファッション通販サイト「GRL(グレイル)」ではMA実施にあたり、データ分析ツール「Amplitude」とカスタマーエンゲージメントツール「MoEngage」という組み合わせを導入し大きな成功を収めました。
MAツール:MoEngageを導入し、ユーザー行動に応じてシナリオを分岐させ、メッセージの出し分けを実施。カートに商品を入れた後に購入し忘れているお客様へプッシュ通知を配信する「カゴ落ち」防止施策などを実施し、CVRを最大7倍改善させています。
>>MoEngageの資料請求はこちら
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まとめ
MAツールの機能や導入することで期待できる効果、ツールの選び方など、MAについて紹介しました。
MAツールは様々な機能があり、マーケティング活動の自動化のほか、業務の効率化など導入で得られる効果が大きいですが、導入の目的を明確化する、どのような施策を実行したいかなど、導入前の準備をきちんとしないと、導入が失敗に終わってしまう可能性があります。
DearOneでは、最適なMAツールの選定から導入・運用までをサポートするサービスも提供しています。ツールの選定や導入後の運用に不安がある方は、ぜひ一度お問い合わせください。