本記事はAmplitude社より許諾を得て株式会社DearOneが翻訳、転載しております。
KDI(Key Diagnostic Indicator : 主要診断指標)とは、プロダクトの「真」のパフォーマンスを測定するものです。
チームを「グロース思考」に変えるには? KPI ではなく KDI が必要
可能な限り最高の機能を提供するため懸命に取り組んだものの、ローンチ直後、KPI(主要業績評価指標)が下がってしまったことはないですか?
振り返ってみても、全力を尽くしましたし、ベストプラクティスをすべて実践し、ユーザーのフィードバックも得ています。ではなぜ、業績評価指標(パフォーマンスと連動する指標)上、芳しくない値を示しているのでしょう?
KPI に照らすと、上述の感想は個人的なストーリーとなります。「その人の仕事=製品のパフォーマンス」です。これはKPI の問題点とも言えます。
グロースのリーダーは、製品のパフォーマンスとは本来、下図のように描かれることを知っているはずです。
このようなものではなく、下図です。
データに「主要業績評価指標」という名称を付けると、組織のチームは、自らの能力が優れていることを証明するためには一定のパフォーマンス水準を達成せねばならない、というプレッシャーを感じます。しかし、このような状況では、虚栄心を満たすためだけの指標、いわゆる「バニティメトリクス*1」ばかり設定されてしまいます。
「バニティメトリクス」を中心に置いてプロダクトを最適化するのは、従業員が労力を費やしたことに満足感を感じられるからと、企業の真の成長を犠牲にすることと同じです。バニティメトリクスは、ごまかしてしまう事ができます。
成功の本当の尺度は、チームが「学習」しているか、ということです。バニティメトリクスを一定水準、満たしているか、ではありません。チームの思考回路を「グロース」に切り替え、チームが確実に学習できるよう、使用している KPI を KDI に置き換える方法を解説します。
KPI を KDI(主要診断指標)に変えるには?
どの KPI がバニティメトリクスかを調べ、チームの指標から除外
バニティメトリクスには一般的に次のようなものがあります。
- ウェブサイトへのトラフィック
- リーチ
- エンゲージメント率
- 動画の視聴数/ページビュー
- 収益
プロダクトの真のパフォーマンスを測定する KDI を作成
KDI をプロダクトのライフサイクルの各段階に合わせます。
- 興味・関心
- ユーザー獲得
- アクティベーション(ユーザー活性化)
- ユーザーの習慣形成 (habitat formation)
- リテンション
収益指標が、リテンション指標との整合性が欠ける場合、収益を追加する必要があるかもしれません。収益指標がリテンション指標に沿ったものであれば、そのままにしておきましょう。収益は、水増しができてしまう指標です。企業は、製品の価値に相応の変化がなくても、割引やプロモーションで収益増を実現できます。
各指標が企業のプロダクトにとって、どのような意味があるかを特定するには、ある程度の分析が必要です。繰り返しになりますが、各種の指標が、いかにプロダクトの真のパフォーマンスを(ごまかしなく)を表すか、熟考しましょう。各指標を、プロダクトライフサイクルの各段階の製品戦略に合せることが理想的です。
以下に活用できる指標の例をいくつか挙げます。ここでは、使用できるメトリクスの例をいくつか紹介します。
興味・関心
- 単一のページビューではない訪問者
- 紹介動画を視聴した訪問者
- メールに登録したものの、コンバージョンに至らなかった訪問者
- 顧客獲得コスト
ユーザーの獲得
- ユーザー獲得
- 購入を行った
- アカウントを作成した(特に、製品が無料で使用できる場合)
- クチコミで成長
アクティベーション(ユーザー活性化)
- 製品内において、製品の価値が初めてわかる箇所を使用した訪問者
ユーザーの習慣形成
- 特定のアクションを十分な回数、実行し、長期的なリテンションが予測される訪問者の数
リテンション
- リテンション指標を、製品に最も似た代替製品の自然な使用状況に合わせ、調整しましょう
プロダクトの性能を診断するには、すべての機能について必ず明確な仮説を立てる
仮説は、次の 4つの要素で構成されるものです。
誰 (WHO)
特定の人や行動セグメント
これは、特定の行動ターゲティングの対象として定義するのが最適です。例えば、「認知度向上キャンペーンから流入してボタンをクリックし、関心があることを示した新規訪問者」などです。
何 (WHAT)
何かしらのアクションを実行
KDI のフレームワークに沿ったものである必要があります。本例では、「定義されたオーディエンスは、ボタンをクリックしなかった場合よりも、ユーザー獲得へのコンバージョンに至る可能性が高くなる」といえるでしょう。
なぜ (WHY)
リワードシステム(何かしらの報酬を提供する仕組み)が動機を喚起
通常、「なぜ」は除外されます。ボタンをクリックした人が、「なぜ購入する可能性が高いのか」という心理的な要素を加味する必要があります。本例では、ボタンをクリックした人が、クリック後により頻繁に(ユーザーとして)獲得される理由は、アクセスしたページが「フレーミング効果(認知バイアス)」を意識したコンテンツを表示していることにあります。
結果 (OUTCOME)
成功したと判断するには、ある程度の「カンバセーション率」が発生している必要があります。これは、測定戦略で定義されるものです。
カンバセーション率は、新機能が、プロダクトのグロースに資する(ユーザーの)適切な心理状態を促進していることを証明するために、確認すべき数値です。算出の方程式にはコストの影響を盛り込むことが実に重要です。例えば、最適なフレーミング・バイアス(フレーム効果・認知バイアス)を提供するパーソナライゼーション製品をホストするのに 1 日当たり 100 ドルのコストを要する場合は、1 日当たり100 ドルを超える収益を創出するだけの獲得コンバージョン率の向上が必要です。
仮説が明確に設定・記述されていれば、予想どおりに進まなかった、あるいは、想定したほどの意味のある向上がなかった事柄を、診断することができます。この例では、オーディエンスのコンバージョン率が、期待するほど高くなかったと判明した時点で、ボタンのクリック後に表示したコンテンツが適切ではなかったことが分かります。この知見は、「ボタンをクリックした人たちは、他のコホートほど興味を持っていなかった」ということとは異なります。「なぜ」、つまり原因や理由なくしては、真実ではない要素に「結果」が起因している、と考えてしまう可能性もあります。
常に「数字を達成」するのではなく、「学習する力」をチームに与えれば、「グロース思考」への道を着実に歩んでいるといえるでしょう。
本記事はAmplitude社より許諾を得て株式会社DearOneが翻訳、転載しております。
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公開日:2020/11/17
ターナースポーツ | NBA デジタル | 戦略的事業開発担当ディレクター
シェイナ・スチュワート (Shayna Stewart)氏
スチュワート氏は、ターナースポーツ社、NBA デジタルにて戦略的事業開発担当ディレクターを務めています。同氏は、各種の製品ロードマップを戦略的に進化させる上で役立つ知見を収集する様々なチームを主導しています。長年にわたり、アナリティクスのテストチームやインサイトチームを立ち上げてきたスチュアート氏は、現在、「消費者中心の製品戦略」を強化する、「消費者中心のデータへのアプローチ」を提唱しています。
引用元:Amplitude社ブログ
*1:バニティメトリクス:虚栄心の指標と呼ばれる数字で、例えば、サービスの登録者数やウェブサイトの訪問者数など、虚栄心を高めても、サービス改善や収益向上につながらないことが多い指標のこと。