本記事はAmplitude社より許諾を得て株式会社ロケーションバリューが翻訳、転載しております。
強力な製品データ管理(PDM)は、製品開発の迅速化とデータに基づく意思決定を実現し、何よりエンドユーザーの役に立ちます。
マーケティング、プロダクト(製品)、設計、エンジニアリングなど企業内のあらゆるチームが、ユーザー行動とカスタマージャーニーを素早く調査し、即座に答を得られる – これが、製品分析システムの効力です。
しかし、その前に必要なのが、製品データ管理への投資です。というのは、分析システムに送られるデータがクリーンで正確、かつ信頼性が高いことを保証するには、強力なデータ管理が必要だからです。この条件が満たされて初めて、プロダクト分析システムを介してデータにアクセスしたチームは、発見した知見に高い信頼を置くことができます。信頼できるデータは、迅速な行動を可能にします。
一方、不十分なデータ管理には様々な形態があります。システムに重複データが送られた場合、実態よりも指標が水増しされるでしょう。あるいは、イベントやプロパティの命名が一貫していなければ、プロダクトのカスタマーエクスペリエンス(顧客体験)をデータと一致させるのが難しくなります。データ管理が貧弱な状態が続くと、やがてデータ負債を引き起こす可能性があります。つまり、信頼できないデータが大量に蓄積され、混乱や意思決定の遅れ、あるいはデータ全般に対する不信感が発生するのです。
データを信頼できなければ、チームはデータに基づいた行動ができません。企業における分析の実践がいかに成熟していようとも、製品データ管理に優先的に取り組むことが不可欠なのは、このためです。役立つデータに誰もがアクセスできるようになり、カスタマーエクスペリエンスに関するあらゆる疑問を解明できれば、有益な知見が得られます。それにより、最高のデジタル体験を創造し、顧客に真の価値をもたらす道筋を、正確に把握できるようになるのです。つまり、効果的な製品データ管理は、企業のビジネスと顧客の双方にメリットをもたらします。
製品データ管理とは?
大まかにいえば、製品データ管理とは、組織内の他の人が利用できるよう、データを収集するプロセスです。強調したいのは、データを収集する理由は、製品分析プラットフォーム上で疑問の解明に使用するためである、という点です。
製品データ管理のフレームワークの構築には次の3 つの質問が伴います。
どのようなデータを収集すべきか?
プロダクト内でトラッキングするイベントを選定します。そして、タクソノミー(イベントとプロパティの両方に適用する、一貫した命名規則のガイド)を定義します。さらに、トラッキングの対象をその理由とともに明確に定義しておけば、データの正確性と信頼性を確立できます。
どこに保存するか?
Amplitude のような製品分析プラットフォームでは、リアルタイムのクエリーを可能にするためにデータを複数のクラウドサーバーに分散して保存します。一方、組織の多くはイベントのコピーを自社のデータウェアハウスに保存しています。保存の際は、データのサイロ化を防ぐため、双方のデータを同期させることも必要です。データの一部が分析プラットフォームから切り離されていると、プロダクトに関する包括的な意思決定に役立てることができません。
誰がこのデータを受け取るべきか?
十分な情報に基づいた意思決定を行うため、業務に関連するデータを各自で調査する権限をチームに与えるのが、「データ民主主義」の考え方です。しかし、民主主義にはガバナンスが必要であり、任命されたデータガバナンス責任者、またはそのチームがそのようなシステムを管理する必要があります。Avo のような分析ガバナンスプラットフォームを使えば、プロダクトマネージャーや開発者、データサイエンティストは、各チームのニーズに基づき分析を計画・実施、ガバナンスを保ちながら、製品データがクリーンで一貫性があり、信頼性の高いものであることを保証できます。
製品データ管理はなぜ重要?
プロダクト分析システム導入の初期においては、いかなるデータであれ、ないよりは「まし」だ、と多くの企業が考えます。そして、このような認識のまま、長期的な結果を考慮することなく、機能リリースの直前に大急ぎでトラッキングを実装するのです。
すると、機能リリース後に問題が発生しても、データは多くを語ってくれません。トラッキングしたイベントは適切なものであったか?(指標などを改善するには)グラフ中の機能 A と機能 B のいずれを変更すべきか? 誰にも分からない状態になります。取得後にデータ洗浄を実施しようとする人もいますが、この方法ではトラッキングのエラーを見逃してしまうことが多く、規模の拡大に対応できません。
上述のような雑然としたデータ運用のあり方は、プロダクトの反復改善の頻度が低下したり、データの正当性が疑われたり、誤った情報に基づく意思決定が行われたりと、ビジネスの足かせとなる問題が発生する原因となります。
では、解決策は? こうした問題は、製品データ管理戦略を構築することで回避できます。
まず、データガバナンスシステムを導入しましょう。併せてトラッキングの対象とするプロダクトのイベント、また、その理由を標準化するトラッキング計画を作成します。信頼のおけるデータがあれば、プロダクトをめぐる意思決定が顧客にいかに影響しているのか、チームが確実に判断できるようになります。
製品データ管理は、製品の反復改善を加速し、データに基づく意思決定を実現し、結果として強力なプロダクトの開発を可能にします。では、どのように実現すればよいのでしょう?
製品データ管理戦略を改善するには?
いかなる企業も、製品データに関し、何かしらの管理戦略を立てているでしょう。しかし重要なのは、その成熟度を高めていくことです。
クリーンアップワークフロー(分析のためのトラッキングを場当たり的に実装し、取得後にデータをクリーンアップする)に行き詰まりを感じている場合、改善の余地は大いにあります。重要なのは、小さなことから始め、進めながら改善を重ねていくことです。製品データ管理の開始は、新たな習慣を身につけることと似ています。すべてを一度に習得するのは不可能に近いものの、小さな行動を一貫して続けることの積み重ねこそ、強固な基盤の構築につながります。
データ作成者とデータ消費者の協業を促進
データ作成者とは、イベントのビーコンをコードに実装し、データを「作成」するエンジニアのことです。データ消費者とは、分析プラットフォームを使ってデータを調査し、それに基づき意思決定を行う、つまりデータを「消費」する人のことです。
データ生産者であるエンジニアは多くの場合、意思決定プロセスの最後の段階で関与することとなり、製品チームがすでに決定したトラッキングイベントをそのまま実装していま。このようなワークフローでは、エンジニアは分析の実装をこなすだけとなり、エンジニアならではの知見を戦略全体に生かすこともできません。
アプローチを変え、機能リリースごとに 30 分の目的共有ミーティングを開催してはどうでしょう? ミーティングの参加者は、次の人たちです。
- 各開発プラットフォーム(iOS、Android、Web、バックエンドなど)の担当エンジニア
- プロダクトマネージャー
- デザイナー
- その他、関連するステークホルダー(利害関係者)
このミーティングでは、リリースの目標、主要な指標、および各指標の評価のためにトラッキングすべきイベントについて、グループ全体の合意を取ります。エンジニアはリリースの目標に最初から関与するため、十分な情報を得た上で分析に必要なトラッキングの実装を決定できます。
データの精度を向上させる
データガバナンスのワークフローの一環として常に求められるのが、データのクリーンアップです。完璧なタクソノミーは存在せず、時を経るにつれて更新する必要があります。
データの正確性を向上させるための最初のステップは、データの不備を特定し、十分な情報をもとにチームが検討できるよう図ることです。プロダクト分析プラットフォーム内のデータを監査し、データウェアハウスや記録のシステム(SoR)上のものと比較します。誤った意思決定を引き起こす前に、データの不一致を発見することが肝要です。不一致が見つかった場合は原因を究明し、深刻度に応じて対処方法を決定します。
少しずつでも改善を重ねれば、信頼性と機能性の向上につながります。
トラッキング計画を作成
トラッキング計画とは、顧客ライフサイクルにおける主要ステージを定義し、各ステージに応じたデータのトラッキングや指標を決定づけるものです。
このような計画を策定・実行することで、製品データ管理の標準化、ならびに正確かつ信頼できるデータの取得が可能になります。計画自体は、チームが更新したり、共同で作業したりできる、共有可能なプラットフォーム(Googleドキュメント、wiki、専用アプリなど)上に置かれた編集可能なドキュメントであるべきです。
トラッキング計画の作成に当たっては、次の要素を加味してください。
- KPI 評価のためにトラッキングが必要なイベントが定義されている
- 各イベントおよびプロパティをトラッキングする理由、および、そのトラッキングが目標といかに関連するかが明確である
- 開発者向けの、製品コードベースにおける各イベントのトラッキング方法の指示
Avo が提供する決定版ガイドでは、トラッキング計画を一から作成する方法をご説明しています。
製品データ管理戦略をレベルアップ
数年前に製品データ管理の改善に着手していれば理想的ですが、そうでない場合は今日から即、開始しましょう。先延ばしにすればするほど、チームは誤った情報に基づいて意思決定を続けてしまうことになるからです。
製品データ管理のあり方を改善するのは、換言すれば新しい習慣を身につけることです。すぐに成果を実感できるよう、小さなことから始めるのが大切です。
本記事はAmplitude社より許諾を得て株式会社ロケーションバリューが翻訳、転載しております。
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公開日:2020/10/27
AVO 社 | 共同創業者 兼 CEO
ステファニア・オラフスドッティル(Stefania Olafsdóttir)氏
オラフスドッティル氏は、次世代データガバナンス・プラットフォーム Avo の共同創立者兼CEO です。Avo はアナリティクスを変革し、データサイエンティスト、プロダクトマネージャー、開発者が組織横断で計画策定、トラッキング、ガバナンスの実行に参加することを可能ににします。
引用元:Amplitude社ブログ