この記事は、2024年11月19日に開催された「Growth Summit 2024 『データからグロースへ』インサイトが導く顧客体験革命」の一部セッションレポートです。
企業のデータ活用の動向や海外の最新トレンドについて、海外の先進ソリューションを多く取り扱うDearOneの視点から、データドリブンマーケティングの事例やオススメのデータ活用法、またそれをすばやく実現するためのコンポーザブルCDPをはじめとしたマーケティングスタックなどをご紹介。
はじめに
DearOne 小林|
「パーソナライズ配信やAI利用を最大限に活かす仕組みとは?データ活用の最新トレンドをご紹介」のセッションを始めていきます。初めに本日のスピーカー、DearOne CTOの佐々木から自己紹介をお願いします。
DearOne CTO佐々木|
DearOneの佐々木です。元々Oracleでデータ関連を様々やってきて、2019年からDearOneのCTOとして活動しています。本日はよろしくお願いします。
DearOne 小林|
私はDearOneでセールスチームに所属している小林です。DearOneで当初はAmpitudeなどのツール導入を支援するチームに所属して、Amplitudeの導入プロジェクトを実施していました。DearOneとして大手企業でのAmplitude導入などのプロジェクトを手がける中でデータ連携に関する課題を感じ、本日ご紹介するHightouchというデータ連携ツールの代理店して活動するようになりました。私自身も、現在はHightouchの営業チームに異動して活動しています。本日はよろしくお願いいたします。
本セッションでは、マーケティングに不可欠なデータ管理、インフラをどう構築し、またマーケティングツールにどう連携していけば良いのかを分かりやすくお伝えして参ります。

企業におけるマーケティングデータ活用の課題とは?
セッションの初めに、私自身がHightouchの営業をする中で感じているマーケティングデータに関する企業の課題を紹介していきます。

企業様から伺うデータ活用に関する相談としては、端的には「本当はデータを活用してこういう施策がやりたいが、今できていない」という内容です。これ自体は一般的な課題であり、皆様も抱えているかも知れません。
ただし、この数年で「やりたい施策」に対する解像度が非常に高まってきています。また、実際に施策を実施するツールとして、MAツールを始めとした様々なMarTechツールを既に導入されている企業も増えています。
その一方で、実際に出来ている施策はベーシックなものに留まっており、解像度が高まっている施策のビジョンと現実のギャップがある、それが「やりたい施策があるが、出来ていない」という悩みにつながっていると感じます。
「やりたい施策があるけど…」の解像度をもう少し高めてみます。スライド左側は、非常にベーシックな施策です。特定のタイミング、たとえば朝9時に会員様に向けてメール配信するなど、タイミングやユーザーのセグメントを点で捉えて施策を打つという内容です。
一方で、「やりたい施策」は、より高度な施策になってきます。たとえば、チャネルを横断して顧客に最適な施策を配信する。また、ユーザーのアクションを起点にして、ユーザーひとりひとりに合わせて施策をやるなど、ユーザーの行動を線で捉えて、ユーザーアクション起点で内容もチャネルもユーザー毎に最適化するような施策が各企業で「やりたい施策」になっていると思います。
「やりたい施策」の解像度をさらに高めるため、具体的な施策イメージを紹介します。私は先週末にある音楽イベントに参加してきましたので、音楽イベントに関するマーケティング施策を考えてみます。

音楽イベントを実施するに際して、ユーザーに対して企業がやるマーケティング施策としては、新規ユーザーに対してSNS広告などを使ったりしながら、マスでなるべく多くのユーザーにイベントを訴求していく施策から始まるかもしれません。
さらに、ユーザーの中でも、休眠しているユーザー、または予兆モデルを踏まえて休眠しそうなユーザーに対して、メールや通知を開封してもらえそうな週末にメルマガ配信する施策が動くかもしれません。
アプリユーザーは既にイベントの存在を認知している可能性も高いので、アプリを開いたタイミングで、イベント参加だけでなくグッズ購入の訴求も実施するでしょう。
こうしたイベント開催に紐づく施策をやっていって、イベント終了後には来場ユーザーに対して、「あなたが住んでいるエリアではこんなイベントがあります。次はこのイベントに参加しませんか?」という訴求を、そのユーザーが反応しやすいチャネルで配信する施策を出来たら、次のイベント参加につながりやすいでしょう。
こんな形で施策をやっていけると、ユーザー体験として、またマーケティング施策として良いのではないでしょうか。こうした一連の流れを本セッションのテーマである「データ」の観点で見てみるとどうなるでしょうか。

例えば広告を配信する際には、広告に反応したユーザーのコンバージョンデータを取得する必要があります。また、休眠しそうなユーザーに関する予兆モデルを作る、そして、そのデータがアプリや広告の配信システムに連携される必要があります。
また、アプリユーザーに関してはアプリ上の行動を捕捉して、それを起点に施策を展開する形になります。来場してくれたユーザーへの配信施策では、オフラインイベントである音楽イベントの来場データを取得する。更に、各ユーザーがどこに住んでいるか、どんなチャネルで反応しやすいかなどのデータも連携している必要があります。
そして、SNS広告、購買データ、アプリやサイト上の行動、オフラインイベントの参加、配信ツールなどの様々なチャネルで取得されるデータが、しっかりと1つの顧客IDに紐づいて統合されていることが重要です。これが出来ると、紹介したような一連の施策を実行していける形となります。
このように高度な施策をやるためには、データが十分に揃っている、また連携している必要があります。このようなマーケティングに必要なデータを、DearOneではマーケティングデータと呼びます。マーケティングデータにどんなものがあるのか、何が求められるのか、佐々木から説明します。
マーケティングデータに求められるもの
DearOne CTO佐々木|
マーケティングの現場で施策を考えて実施するためには、小林から説明したように様々なデータが必要になります。こうしたマーケティングデータをどう集めるか?そもそもマーケティングデータとは何か?を簡単に整理します。

まずマーケティングデータとは何かを確認します。スライド左側には顧客属性データ、たとえば、男性や女性といった性別、生年月日と年齢など、購買履歴を踏まえた会員ランク、そういったデータが入ります。こうした顧客属性データは、従来のマーケティングでもよく使われています。
これに加えて、最近使われているマーケティングデータがスライド右側にある顧客の行動データです。たとえば、いつ誰が何を買ったか、また、いつ誰がサイトやアプリ内でどんなコンテンツを見たかなどを、Amplitudeなどの行動分析ツールで計測して活用することが昨今の潮流です。

これまで使ってきた属性データに行動データを掛け合わせて、セグメントデータを作っていきます。セグメントデータを整備して、誰にいつ、どのチャネルでどういった施策を実施するかを細かくターゲティングすることが、現在のマーケティングにおけるトレンドです。
つまり、マーケティングデータを大きく分けると、属性データと行動データであり、それを掛け合わせてセグメントデータを作るということです。

マーケティングデータを見る観点として、データの種類と質、鮮度という観点もあります。
各社、マーケティングに様々なツールを使っていると思います。そして、WebサイトやECサイトの行動データ(ログ)、また提供するアプリ内のデータ、店舗のPOSデータやECの決済データなど様々なデータを取得しているはずです。
続いて、データの質という観点です。たとえば、POSデータとアプリの顧客IDが突合できていないケースもあると思います。また、顧客IDの統合に少し不備がある・精緻に出来ているなど、どれぐらいの質のデータが揃っているかという観点です。
最後に、データの鮮度です。鮮度は、データの更新頻度がイメージしやすいでしょう。POSデータであれば、たとえば、クラウドPOSを使っていて6時間に1回、地域のセンターに集約されるとします。そこから更に6時間に1回、中央のセンターに集約される場合、全てのPOSデータが集計されるのは翌日になります。このようにPOSデータの集計に1日かかるといった話も含めて、取得したデータがマーケティングに使える状態になるまでのタイムラグがあるでしょう。こうした点も考慮しながらマーケティングデータを活用していく必要があります。

マーケティングデータにはデータセット、構造化されたデータが求められます。従ってデータが綺麗に整理されていることが必要です。そして、構造化されたデータ、セグメントデータを使って施策の配信ツール、Moengageなどでターゲット配信する、また行動データを使ってログイン翌日に通知を行うなどの施策を行う形になります。

これを踏まえて、マーケティングデータのあるべき姿は、マーケティング施策を行うために必要なデータが、必要なタイミングで、必要な場所にある状態です。様々なアプリケーションを使って、顧客といろいろなチャネルで多数のタッチポイントを持っている中で、全てを先ほどのような完全に構造化されたデータにすることは現実的には不可能かもしれません。ただし、マーケティングデータの理想としては「必要なデータが、必要なタイミングで、必要な場所にある」ということになります。
必要なデータを必要なタイミングで必要な場所に届けるためのCDP
DearOne 小林|
マーケティングデータには様々な種類があり、それぞれの質や鮮度を高めていくことが求められます。そして、必要なデータを必要なタイミングで必要な場所に届けるために、各企業でデータ管理をされていると思います。そこで、マーケティングデータの管理に関して各企業でどんな取り組みがされているかという話に入っていきます。

一般的にマーケティングデータを管理するために、多くの企業でCDPが導入されています。CDPは、様々なデータソースにあるデータをCDPの基盤にまず集める。そしてCDPのプラットフォーム内で、集められた顧客関連のデータを顧客軸で統合したり、マーケティング用途に応じた形に加工したりして使える状態にする。そして、施策の配信に使われるマーケティングツールに連携する機能を持っています。

CDPに、顧客関連のデータがチャネルを横断して集約・統合・加工され、更に各チャネルのマーケティングツールに連携されます。CDPを使うことで、顧客の属性データと行動データを掛け合わせたOne to Oneマーケティングの実現に各企業で取り組まれています。
CDP導入・運用における課題
CDPを導入することで、紹介したような高度なマーケティング施策が実現しますが、一方で、CDPの導入・運用にも課題があります。CDPの導入・運用に際してどんな課題が発生しているかを佐々木から説明します。
DearOne CTO佐々木|
CDP、カスタマーデータプラットフォームは顧客に関するデータを、マーケティング施策に使う目的で蓄積・統合するツールです。CDPは直近10年間でかなり普及しましたが、その中で課題も見えてきました。

まずCDPの導入は設計が非常に大変です。顧客に関する全てのデータ、いろいろな種類のデータを全て把握する必要があります。CDPはデータの入れ物であり、データベースです。従ってどんなデータをどう格納するかを、しっかり定義する必要がありますし、データをどこから取り込むかに関しても定義が必要です。DearOneでは、トラディショナルCDP(従来型のCDP)ツールのmParticle(エムパーティクル)の代理店をやっていますが、使いこなすためには経験を持った人が時間をかけて設計を行う必要があります。

続いて、CDP運用における課題です。社内のデータを理解して設計したCDPの中に、実際のデータを投入して活用するフェーズです。運用の中で、たとえば「POSのシステムを変えます」「アプリをリニューアルします」などが起こると、CDPに取り込むデータ元が変わり、データ仕様も変わってしまいます。当然、CDPの設計も更新する必要があります。データが非連続になってしまう、ある時点の前後でデータが比較できない状態になるケースもあります。トラディショナルCDPの運用における柔軟性の課題です。

最後にコストの課題です。DearOneではCDP運用、マーケティングデータ管理に関して様々なお客様と話をします。そうすると「マーケティングデータは1年間以上は残しておきたい」という要望が大半です。たとえば「去年やったプロモーションを今年もやりたい。ただし、セグメントデータを作る際に、去年のキャンペーンで購入してくれた方のリストとはデータを当てて対応を変えたい」などになると、最低でも1年間以上のデータを残しておく必要があり、蓄積するデータはどんどん増えていきます。データが蓄積する量、またデータの蓄積に伴ってシステムが遅くなると、契約プランをもう1つ上位にアップグレードする必要が出てくるなど、様々な要因が重なって、CDPのランニングコストがどんどん上昇しがちです。
DearOne 小林|
設計、柔軟性、コストという3つの課題は、私もHightouchの営業をする中でよく伺います。とくにデータ元の変更に対する柔軟性に関してはCDPだけではなく、たとえば分析ツールやMAツールでも様々なデータソースからデータを投入していることが多くあります。こうしたツールでもデータ元になるPOSやアプリ、計測ツールの追加・変更に関する対応は大きな課題になっています。

更にHightouchの提案を本格的に始めてから痛感しますが、CDP運用では3つの課題に加えて、組織面で見た際にも課題が生じ易いと感じます。大手企業では会社全体としてのデータ基盤が既に確立されており、運用・活用されています。一方で、CDPはマーケティング文脈が使われるツールであり、ビジネス部門で独立してCDP環境を整えているケースも多く伺います。
そうすると、全社のデータ基盤と別にビジネス部門で各種データソースからデータを収集したり、また、SQLを書いてセグメントデータを作ったりする形になります。必要なリソースを自社内や外部から調達していると、データ管理の間接的なコストも増えがちです。こうした点もCDPの運用課題になっていると思います。
DearOne CTO佐々木|
全社のデータ基盤とマーケティングのデータ基盤が別になっている企業はかなり多いと思います。やむを得ない側面もあり、2つのデータ基盤は根本的に違う性質を持っています。全社のデータ基盤に保管される決済や商品に関するデータは、データの性質として正確性が重要で変わってはいけないものです。一方で、マーケティングデータというのは、多少の曖昧さを許容される側面があります。例えば「Facebook広告で類似オーディエンスに配信する」などのイメージで、ターゲティングという視点に関して曖昧さを許容して格納されるデータになります。根本的なデータの性質・思想が違うため、敢えてCDPを全社のデータ基盤とは別に構築している企業も多いでしょう。しかし、全社のデータ基盤と個別にCDPを持つことでインフラが二重になっているケースもよく聞きます。
マーケティングデータ活用に関するグローバルの潮流
DearOne 小林|
各社でマーケティングデータの管理に取り組まれている中で、トラディショナルCDPの導入・運用には様々な課題があります。目線を日本からグローバルに広げて、先進企業がマーケティングデータ管理をどのように実施しているか紹介していきます。

DearOne CTO佐々木|
現在、マーケティングデータ管理のベストプラクティスになっているのがモダンデータスタックという考え方です。
モダンデータスタックは、データチャネルとなるWeb、アプリ、SaaS、データベースなどからETL/ELTツールでDWHにデータを集約してデータ基盤とします。ETL/ELTツールに関して、日本ではprimeNumberさんのTOROCCOなどもありますが、グローバルで有名なところでは、Fivetranさんです。DWHはBigQueryがやはり強いですが、SnowflakeやDatabricksなどもキャッチアップしてきています。
モダンデータスタックの考え方のポイントは、一旦全てのデータをDWHに集約することです。その中で、必要に応じてdbt(data build tool)のような変換ツールを使ってデータ変換して格納しておきます。また、DWHに対してBIツール、たとえばTableauなどを使って可視化されている方も多いかと思います。また最近は、DataikuやHightouchに搭載されているAI DecisioningなどのAIツールを使って行動分析などを実施するケースも増えています。
そして、モダンデータスタックでは、DWHからHightouchなどのリバースETLを使って施策を実施するためのツールにデータを投入します。施策の実施ツールは、たとえば、GoogleやFacebook広告もありますし、DearOneで扱っているMAツール、MoEngage、Salesforce、Brazeなどもあります。また、Amplitudeのような分析ツールにデータを連携させることも多くあります。
実際にはいま言及した以外にも多くのSaaSベンダーがありますが、その中でも大きなブランドを取り出して、モダンデータスタックの考え方を説明するとこのような形です。DearOneでは、グローバルの潮流となっているモダンデータスタックを日本でも展開するためにHightouchやSnowflake、Databricksなどを国内に紹介しています。
マーケティングデータ活用のトレンド、コンポーザブルCDP

DeaOne 小林|
モダンデータスタックの中でも、今回のテーマとなっているCDPにフォーカスして更に説明をお願いできますか。
Dear One 佐々木|
モダンデータスタックでは、企業さんが使っているアプリなどの全データをDWHに集約する状態になっています。従って、先ほどの紹介したトラディショナルCDPにおける全社データ基盤との二重持ちの状態が解消されます。

データはDWHに集約して、Hightouchを使って、DWHのデータを広告やMAツール、分析ツールなどにデータを送る形です。またMAツールのデータが必要な際もこれまでの構成だとCDPに取りに行きますが、モダンデータスタックではHightouchに取りに行く形になります。
モダンデータスタックの利点では、全社のデータ基盤とマーケティング基盤が1つに集約されることです。Single Source of Truth(SSOT:信頼できる唯一の情報源)という考え方を聞いたことがあるかもしれませんが、SSOTを実現している形です。DWHを全てのデータソースとして、そこからマーケティングデータをHightouchで取り出して、様々なマーケティングツールに投入して活用していくというのが、グローバルにおけるマーケティングデータ活用の流れになっています。

Hightouchが提唱した概念になりますが、DWHのデータを活用する新しいCDPの形をコンポーザブルCDPと呼びます。コンポーザブルCDPはこれまでのCDPで発生していた導入時の設計、運用の柔軟性、データ管理の二重化によるコスト高などの課題を解決できます。Hightouchの場合、どこからデータを取ってきて、どのツールに投入するのかという設定をノーコードで進められるため、非常にシンプルに始めることができるツールになっています。
コンポーザブルCDPと従来CDPのメリット・デメリット
DearOne 小林|
佐々木から説明した通り、グローバルで見ると新たなSaaSツールが数多く登場しており、CDPの領域においてもSaaSツールを組み合わせることで、従来の課題を解決する選択肢が提供できるようになっています。
ただし、コンポーザブルCDPも万能というわけではなく、企業毎のデータ取得や管理環境がありますので、その環境に応じてマーケティングデータ活用の最適なツール選択も変わってきます。
DearOne CTO佐々木|
現在、マーケティングデータ管理の選択肢としては、従来型のCDP(トラディショナルCDP)に加えて、コンポーザブルCDPが存在します。それぞれのメリット・デメリットを見ていきましょう。

まずトラディショナルCDPの場合、CDPツールがオールインワンで多彩な機能を持っています。従って、CDPツールを入れることでセグメンテーションなどの諸々が全て完結します。データハブとして動くので、データの中心にCDPがあり、いろんなツールと連携できている状態が実現します。また、ベンダーのサポートも充実しています。
一方で、デメリットとしては、先ほど紹介した通り、導入や運用のコスト、データソースの複雑化、システムの柔軟性などです。また、データ量が増えていくとスピードが低下するのは否めない点です。

これに対してコンポーザブルCDPのメリットは、まず必要な機能を選べる点です。またコンポーザブルCDPは様々なツールと組み合わせることが前提になっており、市場の優れたサービス、自社の状況に合わせて連携先を容易に変更できます。スライドではDWHとHightouchの組み合わせが示されていますが、この中で全ての機能を提供しようとはしていません。様々なツールとの連携がコンセプトの一つであり、ひとつのベンダーに縛られるベンダーロックインが生じません。
皆さまも様々なマーケティングツールやMAツールを使っていると思いますが、データの投入先は自由に変えることができます。たとえば、「あるMAツールを使っていたが、少し満足できない。他のMAツールの方が合いそうだと、Moengageに乗り換えられる」という企業が居たとします。その際もHightouchの設定でデータの連携先を変えられるので、非常に簡単です。コストや機能的な点で、その時の自社にあったマーケティングツールを使えることは非常に大きなメリットだと思います。
一方のデメリットですが、DWHとHightouchの連携は非常に簡単です。ただし、データ連携するツールとは、それぞれの機能毎に設定が必要になります。様々な機能を使いたければ、それだけ設定・把握しないといけないツールが増えていきますので、全体的な設計は難しい部分は出てきます。
モダンデータスタック環境構築、活用までを伴走する「DearOneデータジャンクション」
DearOne 小林|
私はHightouchの提案をしていますが、企業の環境によっては現時点ではトラディショナルCDPを導入いただいた方が最適な場合もあります。ただし、将来的な理想像やコンセプトとしては、コンポーザブルCDPの考え方に共感頂けることがほとんどです。
一方で「自社の場合、どういったデータ基盤をどう作っていけばいいか?」という全体設計の部分をクリアして初めて、Hightouchを使ったコンポーザブルCDPは構築していけます。また「何万というSaaSツールがある中で、自社の場合、コンポーザブルCDPと何を組み合わせることが最適か?」という見極めの難しさもよくいただくご相談です。

上記のような課題に対して、DearOneとしてHightouchのツールだけを提供していては解決できません。そこでコンポーザブルCDPの導入課題を解決する新サービスとして「DearOneデータジャンクション」の提供を始めます。
DearOneデータジャンクションは、コンポーザブルCDPの構築に於いて「自社の場合、どんなツールを使ってどう構築していくのが最適か分からない」という課題を解決するサービスです。DearOneで蓄積してきたツールへの知見・活用のノウハウを踏まえて、お客様の環境に合わせたツール選定、環境構築、活用までを伴走することで、データ管理の潮流であるモダンデータスタックを実現します。

DearOneデータジャンクションが提供するのはお客様に合わせたコンポーザブルCDPの構築であり、データを集める/整える/連携する流れを構築することに伴走します。データ基盤を構築することが目的ではなく、「データをマーケティングに使える状態にする」ことがDearOneデータジャンクションのコンセプトです。

DearOneデータジャンクションでは、お客様が今使われているデータ基盤、例えばAWSやGCP、Azureなどの上にコンポーザブルCDPを構築します。データの管理環境、システム、データは、常にお客様自身で管理できる状態であり、ベンダーロックインに陥ることはありません。
そして「データ活用というゴールから逆算してデータ基盤を作る」ことがDearOneデータジャンクションを、DearOneが提供する理由です。DearOneでは、多数の素晴らしいクライアントとご一緒させていただき、素晴らしい事例、素晴らしいナレッジが蓄積されています。「どのようにデータを活用すれば成果につながるか」という実体験の集積です。DearOneデータジャンクションでは、この経験を活かして「貴社のマーケティングに必要なデータはこういうもので、そこから逆算してこういうデータ基盤を構築しましょう」という提案を実施します。
最後に、DearOneデータジャンクションはコンポーザブルCDPの利点を生かして、必要なものに絞ってスモールスタートしていくモデルになっています。
DearOneが培ってきたデータ活用の知見を生かすサービスになっていますので、ご興味あればぜひお声がけください。
「必要なデータが、必要なタイミングで、必要な場所に届く状態を実現する」という考え方
最後は再びセッションテーマに戻りたいと思います。マーケティングデータを活用していく上であるべきデータ管理の理想は、マーケティングでやりたいことから逆算した上での必要なデータが、必要なタイミングで、必要な場所に届くことです。ここを目指すことが大切です。

マーケティングデータ活用は一度構築して完璧なものが出来るわけではなく、常に更新が必要です。同時に、常に完璧であることが必要なのではなく、その時々のマーケティングでやりたいことを踏まえて、「必要なデータが、必要なタイミングで、必要な場所に届く状態を実現する」という考え方が、今後のマーケティングを加速させるために必要です。

DearOne CTO佐々木|
いま小林がまとめてくれた内容と少し重複しますが、今後のマーケティングにおいて、データ管理には間違いなくこだわっていく必要があります。ただし完全を目指す必要はありません。様々なツールを介してデータを取得する中で、全て構造化された完全なデータが揃うことはないという前提で考える必要があります。
その前提に立った上で、どんなデータを取得するかにこだわる必要があります。そして、必要なデータが、必要なタイミングで、必要な場所にあることが非常に重要です。逆に言えば、必要な時にあればよいので、常に完全である必要はありません。
これを実現するために、グローバルではモダンデータスタックの概念とコンポーザブルCDPという選択肢が潮流になっています。ただし、コンポーザブルCDPも万能ではありませんので、自社の環境に合ったCDPを選ぶことが大切です。
最後に、Growth Summit 2024における様々な事例を伺いながら感じたことをお伝えします。組織論の話になりますが、最近は「顧客志向型組織」という考え方が注目されています。顧客志向型組織は、まず顧客がいて、顧客に相対している現場がある。そして、それをサポートするために中間管理職がいて、経営層がいるというイメージです。
従前の組織は、経営層が判断をして下に落としていくというピラミッド型組織のイメージでしたが、今は逆です。顧客が求めているものに現場が対応する。それを支援するために管理職がいて、経営層がいるという考え方です。
マーケティングデータでいえば、現場で様々な施策を考えて実行する。それを支援するために必要なのがコンポーザブルCDPという考え方だと思います。なぜかというと、柔軟性が重要だからです。「何かの施策を実行するためにこのデータが欲しい」という時、そのデータはCDPにないかも知れません。しかし、コンポーザブルCDPであれば、条件を一つ書き換えるだけで、そのデータがDWHにあるものであればすぐ取ってこれます。今後のマーケティングデータ管理では、こうした柔軟性が非常に重要になってくると感じます。
DearOne 小林|
Growth Summit 2024では、様々なセッションを通じて、企業におけるデータ活用の取り組みを紹介してきました。本セッションでは、そうしたデータ活用を実現するためのデータ管理のトレンドを紹介しました。事例各社におけるデータ活用事例と、本セッションの内容が結びついて「このマーケティング施策をやるためには、こういうデータ基盤整備が必要だ」といった形で結び付ければ幸いです。以上で、本セッションを終了します。
マーケティングデータ管理や、DearOneデータジャンクションについて質問や相談があれば、お気軽にお問い合わせください。最後までご覧いただき、ありがとうございました。