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【ウェビナーレポート】GA(UA)が終了する今、プロダクトをグロースさせるためにプロダクトチームが考えるべきこと【Growth Summit 2022|セッション5】

2022.12.09

この記事は、2022年11月16日に開催した「GA(UA)が終了する今、プロダクトをグロースさせるためにプロダクトチームが考えるべきこと」のウェビナーレポートです。

世界中に驚きと感動を!デジタルマーケティング支援のPLAN-BとDearOneのコラボレーション

DearOne 赤木|
株式会社DearOneの赤木と申します。本日は「GA(UA)が終了する今、プロダクトをグロースさせるためにプロダクトチームが考えるべきこと」と題し、株式会社PLAN-Bシステム開発部の湯川様をお迎えして進めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

PLAN-B 湯川|
本日は弊社の事例を交えつつ、ディスカッションできたらと思っています。よろしくお願いします。

赤木|
まず簡単に、PLAN-Bという企業がどういうことをされているのか、ご紹介をお願いします。

PLAN-B 湯川|
はい。弊社はデジタルマーケティング企業で、ミッションは世界中の人々に『!(驚き)』と『♡(感動)』を。つまり技術とホスピタリティーで驚きと感動を与え、いい世界を作ることです。主にデジタルマーケティングにおける集客領域が得意分野で、元々インターネット広告のほかSEO、サイト制作、データ分析のコンサルティングや支援をしていました。

ここ数年は、主にコンテンツマーケティング支援の「SEARCH WRITE(サーチライト)」と、インフルエンサーマーケティング支援の「Cast Me!(キャストミー)」という2つのデジタルマーケティング系SaaSプロダクトを提供しております。

DearOneとPLAN-Bの連携状況

赤木|
ありがとうございます。実は弊社とPLAN-Bさんは関わりが深く、まさに今ご紹介いただいたSEARCH WRITEもいつも活用しております。元々PLAN-Bさんは、弊社が日本総合代理店を務めるプロダクトアナリティクスプロダクト「Amplitude(アンプリチュード)」のフリープランを使われていたので、「こういったご縁もあるので、ぜひ有償環境も使ってみませんか」と環境を提供させていただきました。それから、記事を寄稿いただいたり、ちょうど本日のテーマであるGA4の移行について話題になっていた時期でしたので一緒にウェビナーを開催するなど、いろいろコラボレーションをしています。

GA(UA)が終了。GA4移行をめぐる状況とは?

第3世代「UA」が2023年7月に終了!第4世代「GA4」への移行が話題に

Google Analyticsの進化

赤木|
「GA(UA)が終了、GA4移行について」というのが今、業界の中でかなりホットな話題になっています。まずこれに関する経緯や、前提となる用語の認識合わせをできたらと思います。そもそも「GA4」とは何かというと、第四世代ということで「Google Analytics 4」という正式名称になっています。一方、第三世代が2010年にリリースされたいわゆる「UA」(Universal Analytics)です。このUAが2023年7月でサービス終了するという衝撃的なニュースを受け、今「GA4への移行待ったなし」ということで、いろいろなところでこの話題が出ている状況です。

UA→GA4移行の最大の変化は「計測データの粒度と分析目的」!ユーザー行動・体験(UX)を軸にしたデータ活用が容易に

UAからGA4へ

それでは、どんなところが変わるのかを見てみましょう。最大の変化は「計測データの粒度と分析目的」です。

イベントベースへの移行

いわゆる「セッションベース」の分析から「イベントベース」という、よりユーザー行動を深掘っていく分析に特化したプロダクトに変化しています。実際、どのように変わるのかを図で示しました。イベントベースというのは、ユーザーの行動・体験を軸にしたデータの分析や活用が容易に行えることが特徴です。元々のセッションベースでは、主語はあくまでサイトやプロダクト寄りの数字でした。「流入元オーガニックでPV数が何件、セッションが何件」といったイメージです。

これに対し、GA4では主語がユーザー寄りになるので、あるユーザーが「何時にLPを来訪し、商品ページを閲覧した後カートに入れたのか」といったデータを元に分析するなど、より顧客理解を深めていくような作りに変わっていることが、かなり大きな変化になります。

UA→GA4移行は単なるバージョンアップではない?もはや別のプロダクトへの乗り換えに近い大変

「GA4」の検索トレンド

検索トレンドを見るとここ1年での上がり幅が尋常ではなく、世間や市場の関心が非常に高いテーマだといえますが、湯川さんはこのニュースを聞いたときどう思われましたか?

PLAN-B 湯川|
私は元々プロダクトチームのエンジニアで、GAの導入に関してはずっと実際に手を動かす側にいましたが、今回の移行はこれまでUAを使い込んでいればいるほどやらねばならない対応が多く、大変になるだろうなというのが第一印象でした。

赤木|
はい。私もGA4に変わるということでいろいろ調べた結果、いわゆる「バージョンアップ」というよりも、全く別のプロダクトへの乗り換えになると解釈したのですが、湯川さんはここに関してはどんなご意見でしょうか?

PLAN-B 湯川|
そうですね。まず来年の7月にはUAのデータが止まってしまうので、それまでにGA4か何かに移行しておかないと昨年対比が見られなくなってしまいます。そういう意味で何らかの移行は不可欠ですが一方、赤木さんがおっしゃったようにユーザー寄りのイベントベースへの変化に応じて、これまでと根本的に違う「グロース」という観点が強くなりそうだという印象です。

赤木|
はい。マインドセットや組織のあり方、さらに言うと取るべきデータについても従来と全く異なる考え方に則った移行が不可欠だと思います。

PLAN-Bがプロダクトのグロースで実際に行った取り組みとは?

UAはWebマーケティング特化型でグロースマーケティングへの対応が大変

トップファネルからボトムファネルへ

赤木|
こういう状況で何から手を付けるべきか、PLAN-Bさんの取り組みも含めご紹介いただければと思います。

PLAN-B 湯川|
まず、大きくWebマーケティングとグロースマーケティングという2つの領域があります。Webマーケティングの方は認知や集客から始まり、ユーザー登録や商品の注文がゴールになります。そこからグロースの領域に入ってくると、例えばECだと「もっとリピート率を上げよう」とか、我々のようにBtoBのSaaS企業であれば「エンゲージメント/アクティブ率を上げよう」といった形で、究極的には解約につながらないようにしようというゴールになってきます。

顧客に継続してもらった上で、アップセルやクロスセルにつなげていくのがグロースの領域になってきます。今の第三世代のUAは得意領域がWebマーケティング側に特化したプロダクトになります。かなり頑張ればグロースマーケティングに対応した分析もできなくもないですが相当煩雑で、また運用に乗せるのがすごく大変です。UAを既に使い倒している方ほど、グロースマーケティング的観点のプロダクトであるGA4への引っ越しが大変になるでしょう。

赤木|
Webマーケティング向けに作り込んでいるがゆえに、ということですね。

PLAN-B 湯川|
はい。GA4は前述のように、イベントベースでの計測や分析がしやすくなるものなので、上図に赤で示したグロースマーケティングの部分に得意領域が広がったのだと言えます。私が普段使っているAmplitudeもグロースマーケティング寄りプロダクトで、イベントベースでの計測やユーザー行動・継続率の分析がメインになります。

こうしてWebマーケティングとグロースマーケティングを分けたとき、どういう特性の違いがあるのか私なりに考えてみました。Webマーケティングは追うべき指標が比較的明らかだと思います。最終的にはコンバージョンに至るため、指標自体は比較的シンプルで広告の費用対効果や、どれだけCVRを上げられたかが重視されます。ただ、指標は明らかですが見えない部分が多く、特にどこで認知されてCVに至ったかの計測がしづらく、なかなかアクションもしづらい領域だと思います。

反対にグロースマーケティングは「これが上がればいい」という指標を置くのが難しく、例えばSaaSであればARR*1Annual Recurring Revenue:年間経常収益。毎年繰り返し得られる収益のこと。やMRR*2Monthly Recurring Revenue:月次経常収益。毎月繰り返し得られる収益のこと。を上げるとか、あるいは解約率・チャーンレートを下げるなどの指標を置くこともできますが、これらで十分かというとそうとは言えません。

例えば年契約であれば、解約率だけ追っているとフィードバックサイクルが1年ごとなので、もっと手前でその予兆をつかむことができません。そうしたところがグロースマーケティングの難しさで、何を計測するかはプロダクトによってかなり異なります。つまり、プロダクトを毎日利用するのか週に一度だけなのか、あるいは一回の利用量はどれくらいかなど、プロダクトによってかなり差がありますので、指標をどこに置いたらいいかなかなか決められないという難しさがあります。

赤木|
Webマーケティングは確かに、追うべき指標が比較的明らかで、究極的には購入のコンバージョンを上げていくところに特化して、そこからだんだん認知や興味関心とフェーズが分かれていきますね。また、検知できる範囲が限られているというのもその通りで、フレームワーク的に体系化されてきた指標が明確にあります。

これに対し、グロースマーケティングはまさに今、サービスを利用中のお客様が対象なので、取ろうと思えばユーザー行動などのデータは全部取れます。それゆえ、何を追っていくべきなのかを絞り込むのが難しいです。追うべき数値が解約率なのか、継続率なのかなどを決めるのは、プロダクトの特性にもよって異なり千差万別でとても難しい、と改めて認識する上で非常に参考になりました。

ユーザーへの理解度を4段階でチェック!ユーザー理解レベル1:プロダクトの導入だけでわかる指標

自社ユーザーや顧客の理解レベル

PLAN-B 湯川|
「グロース領域に特化したGA4が伸びてきているが、まだ移行していなかった」「これから移行していく」という方に、ぜひ考えてみてほしいポイントがあります。それは「ユーザーや顧客をどれだけ知っているか」そして今、自分がその理解の解像度のどのレベルにいるかを把握することです。私自身の経験を基に4段階に分けてみたので、皆さん自身のサービスにおいて対応している範囲で、どこまで即答できるかを一度見てもらえたらと思います。

自社ユーザーや顧客の理解レベル1

まずレベル1は月のユニークユーザー数(マンスリーアクティブユーザー)や、またスマホの割合やPCの割合といった部分も、ECかBtoBのサービスかなどによって変わるので確認してみることが重要です。これはGAでもAmplitudeでも、導入したらすぐ確認できますね。

赤木|
そうですね。

ユーザー理解レベル2:プロダクトへの理解や学習が必須

自社ユーザーや顧客の理解レベル2

PLAN-B 湯川|
次のレベル2になると、自分たちのプロダクトへの理解が必要になってきます。例えば「アクセスが集中する時間はいつなのか」「そのとき1日当たりのアクティブユーザーのうち何割が集中しているか」などを知っていると、その後打つべき施策も変わってきます。また「年末年始やゴールデンウィークのほか、季節によって利用率がどれくらい変化するのか」などについても、特にエンジニアによる開発対応をしなくても、プロダクトを入れるだけで結構分析できると思います。

ユーザー理解レベル3:プロダクトや商材に合わせた設計や開発との連携が必須

自社ユーザーや顧客の理解レベル3

PLAN-B 湯川|
レベル3は「新規登録したユーザーが登録後1ヶ月時点でどれくらい継続しているか」や「最も利用率が高い機能・コンテンツは何なのか」などの分析です。これはGAにしてもAmplitudeにしても、分析の際にイベントの計測を仕込まないといけなかったりとプロダクトや商材に合わせた設計が必要です。

実装するためにはマーケ側で考える人だけではなく、私たちのように実際に手を動かす開発側との連携が必須になってきますので、ここに一つ壁があると思います。つまりグロースさせようと思ったときに、マーケターだけではうまくいかない領域になります。

ユーザー理解レベル4:実験を継続しサイクルを回し続ける体制と運用

ここまでがうまくいくと例えば、平均的な顧客と優良顧客でどこに利用率や利用の仕方に差があるかや、1年後の解約の予兆が検知できる利用率のしきい値などもわかるようになります。ただし、これらはほっといてもわかるようなものではなく「サイクルを回し続ける」必要があります。

それぞれの施策や結果が重要だったかどうかの答え合わせをしながら回していくことが重要で、一度作って終わりではなく「そのサイクルを継続的に回せる体制と運用」が不可欠と考えています。

赤木|
なるほど。私は自身のプロダクトを持っているわけではないですが、自分が今どのレベルにいるのか自問自答して振り返ってみると、やはり能動的にトラッキングしていかないといけない部分が多いレベル3が大きい壁だと感じます。基本的には設定しておくだけで分析してくれていた従来のUAの前提で考えていると、能動的に「この行動のデータをこのために取るんだ」と考えるグロースマーケティングでは不十分です。

そこまでやらないと多分、レベル3までは達せられないと考えられますし、GA4やAmplitudeを導入しただけで満足するのでなく、しっかりここに行き着けるかどうかが今後、グロースマーケティングにおいて計測プロダクトを使いこなせているかどうかのしきい値の一つになると思いました。

PLAN-B 湯川|
そうですね。GA4でも頑張ればできないこともなく、またより分析に適したAmplitudeのようなプロダクトもあるわけですからね。今グロースがますますトレンドになってきていると思いますが、自分たちは今、この「ユーザー理解の解像度」のどこのレベルにいて、どうレベルを上げていけるかを考えるといいと思います。

PLAN-B プロダクトチームの取り組みの変遷

PLAN-Bにおけるプロダクトチームの取り組みと変化

PLAN-B 湯川|
上図は、PLAN-Bでのこの約2年分のフェーズを4段階に区切ってみたもので、以前は私たちも元々UAだけを使っていた時代があり、マーケターが集客の領域で「とりあえずUAを入れておこう」といった状態に過ぎませんでした。UAにできることはとりあえず計測はできており、また必要なデータを入れておけば広告効果などの測定もできたので「認知・集客の部分はそれに合わせて行います」といった具合でした。

そのような状態でUAを使ってレベル3相当のことをやろうと思ってもかなり難しいです。特に弊社はSaaSということもあり、ユーザーはその導線が一直線でなく、行ったり来たりさまざまな行動を取るため、なかなかUAだけでは捉えきれないのが実情でした。以上のようにUAだけでは実装・運用がとても煩雑だとわかったのが2年前です。

PLAN-Bにおけるプロダクトチームの取り組みと変化2

その次に始めたのがDearOneさんにAmplitudeを紹介いただいてからの、ユーザーの行動分析です。プロダクトチームとして「実際にユーザーって何をしているのだろう?」「私たちの顧客ってどの機能を一番使っているのだろう?」といったところを知りたいと思ったからです。プロダクトチームとして機能を開発していくのですが、まずは「この機能はどれだけ使われているか」ということがわかって、それを作った価値を検証しないといけないわけです。

マーケの目線はいったん置いておいて、作った機能はどうだったのかや、顧客の利用率はどうなのかというところを見ようと思って、私が使い始めたのがちょうど1年前頃です。当時はまだプロダクトの使い始めで、いろいろ実験してみるのがいいと考えていました。まだ、いきなりベストプラクティスを導き出すことは難しかったですからね。自分たちのプロダクトのどの部分を知らないといけないのかすら、まだわかっていなかったので「まずはいろいろやってみよう」ということで、設計・実装をさまざまに試し、自身の経験値を上げていった次第でした。

赤木|
まさに学習ですね。

PLAN-B 湯川|
そうなんです。アウトプットとしては、上図のAmplitudeのスクリーンショットにあるように利用率、リテンションやデイリーアクティブユーザーの推移のほか、機能ごとの分布を見たりしていました。

PLAN-Bにおけるプロダクトチームの取り組みと変化3

もちろんその1年間、ずっと私一人だけでやっていたわけではなく、少しずつ他のチームメンバーを巻き込んでいきました。すると「ここの機能はこういう利用率なのか」といった視点に対し、プロダクトマネージャーや開発者から成るプロダクトチームの中で少しずつユーザー行動への認知が上がってきました

そこで「これを定点で追いましょう」「機能をリリースするときはこの機能を検証しよう」「ここに計測のポイントを仕込んでおけば、これくらいの数値になるだろう」といった予測を立てるようになったんです。専用のダッシュボードに加え、機能ごと、リリースごとに追うダッシュボードを作って分析を回していったところ、今まで知らなかった顧客の理解が皆の中で少しずつ深まっていきました。そこの理解に興味を持つというのか、表現が難しいですが「文化・気持ち」が醸成されると、ただプロダクトを作るだけでなく、さらにその先のユーザーや顧客に興味が増すわけですね。

PLAN-Bにおけるプロダクトチームの取り組みと変化4

今に至っては関わる人の範囲がもっと広がり、開発時は例えば「カスタマーサクセスやマーケターも含めた組織の目標設定や、検証プロセスを必ず入れよう」と言っています。もちろん、まだ完璧ではないですが、そのようにデータを前提に動いていくというふうに少しずつ変わってきています。前述のような取り組みをしていくと、少しずつ広がりが見られるということが実感としてありました。

赤木|
なるほど。着実にデータドリブンな組織へのステップアップが進行中ですね。

PLAN-B 湯川|
まさに進行中ですね。

赤木|
お話を聞いていて気になったのが、湯川さんが「Amplitudeで遊び出す」中でいろいろデータが見えてきて、そこにだんだん人が集まってきてという構図だったわけですよね?その中で火がついた瞬間というか、周りのメンバーがデータやその示唆するところに意味・価値があると前のめりになった瞬間が、きっとどこかであったと思うのですが、何かエピソードはありますか?

PLAN-B 湯川|
少しずつ醸成されていったという表現が一番ぴったり合いますね。例えば今では「デイリーのアクティブの時間帯って大体これくらいの数字だよね」と言うと、開発チームのメンバーはある程度肌感覚が合うので、認識の齟齬に驚く場面って滅多にないんです。

赤木|
なるほど。

PLAN-B 湯川|
ところが面白いエピソードを紹介すると、とある会議で「この機能はアクティブユーザーのうちどのくらいに使われているか」という利用率をあらかじめチームの方で出しておき、参加者がわかるか数字を隠した上で聞いてみたんです。つまり、事業に関わっている人たちに「うちのサービスの機能の利用率って、ランキングで並べるとどうだと思いますか?」とクイズを出してみたんですね。それで皆実際に「これが1位で、これが2位だと思う」などと予想を出してみるのですが、まず出してみた時点で全然合っていない。

もちろんプロダクトの中で「重要な機能はこれだ」というものはあります。しかし、その実際の利用率がどうなっているかのランキングを付けさせてみると、まず皆言っていることが実態と違う。一人くらいは合っていたのですが、ほとんどの人は合っていない。こうしてそもそも皆、顧客のことを全然わかっていないということが判明したんです。内輪のクイズ形式で「皆わかってないんだ」という気づきが得られたのだ、というふうに前向きに捉えることにしました。

赤木|
でも、これって面白い取り組みかもしれないですね。ある会議に突然、自社のプロダクト機能のランキングがマスキングされた状態で出てきて、これを予想して当たった人は顧客への理解度が高いということになりますからね。

正解のないグロースマーケティングでは正式な推進担当者がチームや組織を巻き込む分析体制が有効!

新機能リリース結果

PLAN-B 湯川|
先ほどの話とも関連して、機能の利用率の解像度も上げる必要があると考えています。例えば新機能をリリースして、利用率は40%を目指していたのですが、蓋を開けてみると全然使われていませんでした。当初は対象顧客全体のうち、上図に示したくらいの見込みを持っていたのですが、実態はかなり少なかったんです。

新機能リリース結果分析

これについて、実際に検証のプロダクトを入れることでもっと解像度が上がり、単純に使われていなかったというより、そもそも機能告知の時点で大きく数値が下がっていて、機能が良かったかどうか以前に認知されていないことがわかったんです。そこで「まずは機能をどうするかよりも、機能の認知施策をどうするかだ」と考え、実際に次のアクションにつながりました。

赤木|
この辺りの数値も、意図的に取ろうと思って取らないと計測できない部分ですからね。つまり「利用率が少ないのではないか」と機能をブラッシュアップする以前に別の課題があったとき、そこに気づけるか気づけないかということですよね。

正式な推進担当者の重要性

PLAN-B 湯川|
先ほど言ったように、プロダクトのグロースマーケティングの領域には正解がない。そこには指標の正解すらないので、実験的なサイクルが欠かせません。そこでスタート地点では、やはり実験的なサイクルを回せる体制を組むことが肝心ですが、ただしその体制を作っても皆にやる気がなければ進まないので注意が必要です。

正式な推進担当者の重要性

このように、まず一番重要なのは「正式な推進担当者」がいることです。私の場合はAmplitudeで遊んでいるうちにチームを巻き込んでいったのですが、決まった推進担当者を置く方がもちろん確実です。私は元々、データエンジニアリングの領域を担当していましたが、分析の経験はほとんどなくアマチュアに近かったんです。そういう意味では経験や技術よりも熱意が重要になってくることを実感しています。

今現在、その担当者が完璧でなくてもよくて、「顧客理解を高めよう」「プロダクトの実態を知ろう」という熱意を持って、周りを巻き込んでいくことが最も重要だと思います。そのほか、組織としても「この人が正式な推進者です」と定めた方が、動きやすいということもあります。

正式な推進担当者の重要性3

担当者にやる気があるだけでは不十分なので、チーム全体の動機付けということでまずは皆に関心を持ってもらわないといけない。一方で、長期的には協力して回さないといけないという点では、担当者主導で全部入ってしまったら意味がないので要注意です。

まず目標設定の部分から「データを前提にする」という認識が合っていないとうまくいかないのでマーケター、開発者やCSの意見だったりをもらうべきで、チームで動けるようにすると同時に、もちろん組織の協力も必要だと思います。そこでこうした人たちにより興味を持ってもらうために、正式な推進担当者が実際の分析内容を積極的に見せたりするなど、モチベーションを上げていくサイクルが別途、必要不可欠になってきます。

正式な推進担当者の重要性4

上図の青色の部分は、例えば統計・集計の基礎的な知識や、GA4やAmplitudeといったプロダクトの使い方、どうモデルを構築しデータを設計するかといったテクニカルな領域です。ここは自分たちで実験を繰り返してノウハウを蓄積することもできますし、あるいは組織のリソースが許すのであれば外部から支援を受けたり、強い人に手助けしてもらうのも有効な領域だと思います。以上のことは、特に弊社のように自社プロダクトを運営している企業にとってはとても重要で、テクニカルな領域に関してもいろいろな手段を日々模索しています。

赤木|
そうですね。我々DearOneのように、その手段を提供する側からすると、まずチームの中に熱意を持った正式な推進担当者がいて、そこにチームや組織全体が協力できている企業さまは理想的です。

もちろんどんなクライアントに対しても常に全力で臨んでいますが、そういう体制がある企業さまには下準備の期間が不要で、早い段階から高いレベルのサービスを提供できますし、支援しやすいと思います。そういう意味で、我々みたいなベンダーを手段として使ってもらうという考え方を持っていただくことも、成功の秘訣の一つではないかと感じました。

PLAN-B 湯川|
はい。もちろん自分たちだけで行っていた部分も多かったですが、DearOneさんにトライアルで手伝ってもらうなどのご縁があったからこそ、さらに成長角度が上がったと実感しています。

赤木|
はい、精度は上がりますね。

PLAN-B 湯川|
組織の協力を得られるのであれば、特にテクニカルな領域ではそういう手段が有効だと思います。

チーム力を高めるグロースマーケティングのKPI設計「North Star Metric」と「タクソノミー設計」

NSM

赤木|
先ほど「何を目指すべきなのか」の指標がプロダクトによって異なり、これを考えるのが大変だというお話がありました。これに関して今、米国を中心に「North Star Metric(NSM)」と呼ばれるKPI設計が注目を集め、また国内でも少しずつ広がりを見せています。

これは「North Star」すなわち「北極星」ということで、開封率やCTRといった施策のKPIを追うのではなく「どんなユーザーが増えていけばKGIである売上が上がるのか」「解約率が減るのか」と、いわゆる先行指標に当たるものをどう追っていくのかという観点に立つものです。この大きな「North Star」が、ユーザーの視点の「広がり」つまりユーザー数や、「深さ」つまりエンゲージメントといったより下位の軸に分解されます。

このようにKPI設計を行うことで、個々の施策に対しての評価ではなくユーザー行動に対しての評価になるわけです。この指標を考えるに当たっては、それぞれ異なるミッションを持った様々な関係者と議論しながら作っていくことでお互いの目線が合い、チーム力の向上にもつながります

NSMの3つの輪

このNorth Star Metric(NSM)は3つの輪の中心に位置するものであり、「プロダクトからユーザーが得る体験価値」「事業会社側のプロダクト戦略」、「プロダクトの収益」という3つのポイントのいずれも満たしている指標が設定されます。企業の中でこのような指標に当たるものが何なのかを、様々なパターンの意見を聞きながら徹底的にディスカッションして考えていくことになります。

NSM設計サンプル

North Star Metric(NSM)の例としては上図のように、一番上にKGIとしての売上があり、その先行指標としてノーススターメトリックがあって、さらにそこに紐づく各種のKPIという形になっています。これらを高めるためにどんな施策が打てるかを考えていくような指標設計になっています。

タクソノミー設計

これとは別に必要になるのがイベント設計です。例えばAmplitudeやGA導入の際に、そもそもどんなデータを取ればいいのかについて考える「タクソノミー設計」というフレームワークがあります。

これは自社のUI/UXやカスタマージャーニー、収益、コア行動などのほか、North Star Metric(NSM)に代表されるKPI、そしてどうデータを使い分析していくのかのユースケースといったそれぞれを意識した、戦略的な行動イベントデータ設計というものになります。このようなアウトプットを起点に、「どうデータを取ってきたら過不足がなく、使いやすいか」と意識しながら設計していきます。

タクソノミー設計には6つのステップがあります。まず最初のステップでは、AARRR*3Acquisition(獲得)、Activation(活性化)、Retention(継続)、Referral(紹介)、Revenue(収益)。グロースにおける顧客行動の分解モデル。と呼ばれるグロースのモデルに沿って、自社プロダクトにとってのコアイベントの洗い出しを行います。

2番目のステップでは、コアイベント前後の行動と導線を整理し、3番目4番目のところではデータに対し、どんな属性を持たせていくのかを精査します。5ステップ目では、そうして取ってきたデータが実際に分析/活用のユースケースに照らして妥当かどうかを確認・調整します。

そして最後、6番目のステップで整合性チェックを行います。Amplitudeなどのプロダクトはデータの量によって課金されますので、イベント数/量が契約の範囲内か確認するという以上の流れで作っていきます。

North Star Metric(NSM)やタクソノミー設計に関しては、弊社のオウンドメディア「Growth Marketing」で記事に取り上げていたり、PLAN-Bさんと開催したウェビナーでも詳細に紹介していますのでぜひご参照ください。

まとめ GA4とAmplitudeどちらを選ぶべきか?

GA4とAmplitudeの得意領域

赤木|
最後は「結局GA4とAmplitudeのどちらを選ぶべきなのか?」を見ていきます。従来、UAを使ってきていると「GA4への移行が自然な流れだ」と考える人は多いと思います。しかし、グロースの領域においてはこれまで言及してきたAmplitudeにしかできないことが多く、類似のプロダクトとして選択肢に上がってくることが多いです。実際「GA4とAmplitude、どちらの方がいいんですか?」と我々DearOneにお問い合わせいただく機会も増えています。

GA4とAmplitudeそれぞれの得意領域を整理すると、やはり基本的に異なっていると言えるでしょう。ユーザー獲得に至るまでは一部GA4の方が強い部分もありますが、一方グロースの領域においては圧倒的にAmplitudeの方が高機能で使いやすいです。

PLAN-B 湯川|
弊社の場合、図の上半分のWebマーケティング領域と下半分のグロースマーケティング領域の改善を追っているのは、それぞれマーケティングをメインに担当するチームとプロダクトをメインで担当しているチームです。まずはこの両チームのサイクルが回ることが重要だと考えました。

GA4とAmplitudeの得意領域

結論から言うと、上図のような配分でGA4とAmplitudeの両方を使っています。集客などWebマーケティングの領域はGA4メインで、一方グロースの領域は主にAmplitudeで分析しています。サービスサイトなど両方が入って、それぞれのプロダクトでしか分析できない箇所を分析している領域もあります。

マーケティングの都合で何か計測をしたいというときに、いちいちプロダクト側のチームに頼んだり、反対にプロダクトのチームでやりたいことをマーケのチームに確認をとるなどしていると、非常に時間がもったいないので、ある程度の境界を置くことでそれぞれのチームでサイクルを回せるようにしようと考えたのが、今のPLAN-Bの体制ですね。

将来、状況が変われば両チームが一つになっている可能性もありますが、今は両チームとも別々の目標を追っているので、それぞれが分析を回しやすいよう両方のプロダクトを使っている現状です。

赤木|
特にプロダクト導入後の立ち上がりの段階では、改善スピードが重要になってくるので、そこがボトルネックになるくらいであれば、いっそ両方導入して使うという選択肢もありますね。幸い、GA4とAmplitudeのどちらにも無償で使えるプランもあることですし、運用の妨げにならないのであれば、一つ一つ試しながら改善して使っていき、最終的によりフィットする方に統一するのもいいかもしれません。

Amplitudeの無料プランはこちらからご利用いただけます。

チームのWILL

最後に、GA4かAmplitudeかという観点で考えたとき、プロダクトの選定以前にチームがそれを使って何をしたいのかという「チームのWILL」が非常に重要だと改めて感じました。追うべき指標やメンバーのミッション、データドリブンの意識などがしっかり固まっているのであれば、プロダクトに関してもこのWILLを実現する手段であるだけなので、改めて「自分達がどうありたいのか」を意識することが重要だと、私自身も大きな学びになりました。

PLAN-B 湯川|
本当にその通りですね。

赤木|
湯川さん、貴重なお時間をありがとうございました。

PLAN-B 湯川|
ありがとうございました。

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スピーカー

株式会社PLAN-B システム開発本部 湯川 正洋氏
旅行・交通系予約サービスの開発・運用に約8年携わった後、2018年にエンジニアとしてジョイン。プロダクト開発のアジャイル化を中心となって推進し、複数のSaaSプロダクト立ち上げに携わる。週単位での安定的・継続的なリリースサイクルを実現する。現在はプロダクト開発・グロースにおけるデータ駆動化やデータマネジメントの推進の傍ら、デジタルマーケティング領域のデータ基盤構築・活用支援も行う。

株式会社DearOne グロースマーケティング部 ソリューションコンサルティングユニット ユニットリーダー 赤木 一平太
デジタルエージェンシーでのコンサルタントを経てDearOneにカスタマーサクセスとして参画。複数の大規模案件のプロジェクトを経て、新たにソリューションコンサルタントユニットのリーダーとしてチームを立ち上げ。 CDP・MA・Analyticsなど幅広いMarTechの知見をもとに、グロースマーケティングにおけるテクノロジースタック構築、データ活用の戦略立案・実行支援に従事。

著者:澤

References
*1 Annual Recurring Revenue:年間経常収益。毎年繰り返し得られる収益のこと。
*2 Monthly Recurring Revenue:月次経常収益。毎月繰り返し得られる収益のこと。
*3 Acquisition(獲得)、Activation(活性化)、Retention(継続)、Referral(紹介)、Revenue(収益)。グロースにおける顧客行動の分解モデル。

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