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【ウェビナーレポート】トヨタ発 次世代おでかけインフラを目指すmy routeアプリのCX向上施策とは

2023.11.01

この記事は、2023年8月23日に開催した「トヨタ発 次世代おでかけインフラを目指すmy routeアプリのCX向上施策とは」のウェビナーレポートです。

my routeが実践するCX向上施策とは?

DearOne 齊藤|
DearOneグロースマーケティング部コンサルタントの齊藤と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

本日のセミナーは、「CX向上に取り組み、DAU倍増!トヨタ発 次世代おでかけインフラを目指すmy routeアプリのCX向上施策とは」と題しまして、my routeを展開するトヨタファイナンシャルサービスの豊田様、プレイドの島田様にご登壇いただきます。

トヨタファイナンシャルサービス 豊田氏|
トヨタファイナンシャルサービスの豊田と申します。新卒で鉄道会社に入社し、3年前の2020年にトヨタファイナンシャルサービスに入社しました。現在はmy routeというアプリの事業企画の他、KARTEを活用したユーザーとのコミュニケーションやデータ分析を通じたアプリのグロースを担当しております。

DearOne 齊藤|
改めまして、DearOneの齊藤です。私はお客様のデジタルマーケティングを支援する会社に所属しており、KARTEのような接客ツールの運用で、実際にお困りのお客様を支援するコンサルティングを行っております。

会社とサービスについても簡単にご紹介いたします。弊社はNTTドコモグループの会社で、事業内容は大きく2つあります。1つ目はお客様のスマートフォン向けアプリの開発、もう1つがその先にある、お客様のグロースマーケティングやデジタルマーケティングの支援になります。

プレイド 島田氏|
プレイドの島田朝香と申します。約1年半前からプロダクトのカスタマーサクセスを担当しております。弊社は、1st Partyカスタマーデータを取り扱い、各チャネルの顧客データと行動データを解析・統合し、顧客中心の企業活動を支援している会社です。

KARTEはカスタマーエクスペリエンスのプラットフォームとして、リアルタイムの解析エンジンを搭載しており、顧客1人1人の今を可視化し、解析結果に応じたアクションを提供できるプロダクトです。

また、後半でもKARTEの機能について詳しく触れさせていただきます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

DearOne 齊藤|
それでは、早速本編に入っていきましょう。

my routeサービス概要

トヨタファイナンシャルサービス 豊田氏|
my routeサービスの概要についてご紹介させていただきます。

私たちはサービスビジョンとして「“もっと移動したくなる環境づくり”を通じて、『すべての人の移動の自由』と『ずっと賑わう街づくり』に貢献したい」というものを掲げております。

トヨタグループという自動車に関わるグループのサービスではありますが、自動車を街に多く存在する様々な移動手段の中の1つとして位置づけており、ユーザーそれぞれが置かれた状況における最適な移動手段は何かという情報の提供など、“もっと移動したくなる環境”をつくること、それによってもっとにぎわう街を作っていきたいと考えています。

このmy routeが目指していく姿を図にしたのが、次のスライドになります。

私たちは、一口に「移動」といっても、様々な段階に分けられると考えています。

まず「ここに行ってみたい」という興味関心から、実際に移動するための予約、目的地への往復、そしてその場所での体験を蓄積・共有するというそれぞれの段階が、一連の移動体験になると考えています。

従来のトヨタグループでは、実際の移動に関する領域に強みがありました。私たちはmy routeというサービスを通じて、この一連の移動体験全ての時間軸にかかわりを拡げていきたいと考えています。

この目指す姿に対して、実際にどのような機能を提供しているかについて、以下3点でご説明いたします。

まず、一番左側は「おでかけ情報」という機能です。これはmy routeを開いた際に最初に表示される画面で、ユーザーの生活圏にあるレストランやイベント情報を提供しています。これにより外出のきっかけを作ることや、通勤途中に寄り道をを促すことを目指しています。

次に「地図で探す」という機能です。A地点からB地点までの移動において、鉄道やバスだけでなく、シェアサイクルや船など様々な移動手段を組み合わせて、最適な移動ルートを提示します。

最後が「お得におでかけ」という機能です。my routeに参画いただいている交通事業者様や施設様から購入できるチケットに関しては、アプリ上で購入できるだけでなく、スマートフォンでチケットを提示して乗車や利用を行うことも可能です。

my routeはトヨタ自動車の「未来プロジェクト室」で生まれ、2018年11月に福岡の西日本鉄道様との実証実験として始まりました。

その後1年間の実証を経て、2020年4月にトヨタファイナンシャルサービスに事業が移管。現在、福岡・北九州をはじめ九州・沖縄全県でご利用いただけるほか、横浜、富山、愛知、愛媛などのエリアでもご利用いただけます。

また、上記エリア以外でも「おでかけ情報」や「地図で探す」といった機能は東京、大阪、北海道など、全国でご利用いただけます。

直近のダウンロード数について、スライドには60万と記載していますが、実際には直近で62万近くまで伸びてきております。

先ほど申し上げたお得なデジタルチケットの販売枚数についても、月に8万枚以上という実績を上げております。

CX・アプリコミュニケーションで大切にしているポイント

トヨタファイナンシャルサービス 豊田氏|
続いて、このmy routeというサービスが顧客の体験やユーザーアプリとの関係で大切にしているポイントから、なぜKARTEの導入に至ったのか、KARTEを使って実際にどのようなことをしてきたのか紹介させていただきます。

まず、私たちが非常に大切にしているポイントは「あなたに合わせた情報」を届けるという点です。

先ほどご紹介したようなアプリの機能に関しては、最寄駅の時刻表や生活圏内のレストラン情報の提供など、ユーザーのアプリ上での行動や位置情報に基づいたレコメンドを通じて、真に「あなたに合わせた情報」を提供することを重要視しております。

同時に、非常に重要なポイントと考えているのは、施策を打ってみてどうだったのかを、しっかりデータでモニタリングしながら、改善につなげるサイクルを回すことです。

次に、我々がユーザーとのコミュニケーションを重視している理由を紹介します。

前述のように、現在月に8万枚以上のチケットを販売しており、アプリを通じてさまざまな移動が創出できるサービスにグロースしてきていると考えています。

そのため、ユーザーとのコミュニケーションをしっかりと取り、アプリの利用習慣をつけて頂くことで、それ自体がさらなる移動の創出につながる可能性があると考えており、ユーザーとのコミュニケーションは非常に重要なポイントだと位置付けています。

理想のCX・施策を実現する上でボトルネックだったポイント

トヨタファイナンシャルサービス 豊田氏|
次に理想のCX・施策を実現する上でボトルネックだったポイントを簡単にご紹介させていただきます。KARTE導入以前、「あなたに合わせた情報」のプッシュ通知やポップアップ通知を配信する際に、ボトルネックが2つありました。

1つ目は、施策の検討から配信まで時間がかかるという点です。導入以前はプッシュ配信を行うために開発エンジニアの協力が必要であり、1つの施策を実施するまでのリードタイムがかかっていました。

2つ目は、ターゲットを指定できないという点で、プッシュ等の配信を行う際には、いつも全ユーザーに対して送信されてしまうことが大きな課題でした。

また、データの分析をしながら改善サイクルを回す際にも、いくつかのボトルネックが存在しました。

1つはデータを取得するためには、やはりデータエンジニアとの協力が必要で、データの取得に時間がかかっていたこと。

もう1つは取得したデータの加工と可視化に時間がかかり、データを処理するツールが不足しているということです。これらの課題に対処するために、弊社では最終的にKARTE導入を決定しました。

ボトルネックを解決するKARTE導入意思決定のポイント

トヨタファイナンシャルサービス 豊田氏|
ここからはKARTEを使用して行ってきた具体的な施策について、簡単にご紹介したいと思います。

my routeが行った施策

トライアル期間を経て、2021年4月から本格的に運用を始めておりますので、そこから現在に至るまでの約2年にわたる取り組みをご紹介します。

実際の施策として2つご紹介します。1つはユーザーコミュニケーション、もう1つはデータ分析に関する施策です。

ユーザーコミュニケーションの取り組み

まずはユーザーコミュニケーションの取り組みをご紹介させていただきます。

以下のスライドが導入当初、「まずはプッシュ通知やポップアップ通知などを配信してみよう」と行った、配信内容のスクリーンショットです。

「とにかくやってみよう」ということで施策を実行し、「文言を変えたらどうか」、「見せ方を変えたらどうか」などと、反応の違いを検証していました。

ただ、初期の頃はなかなか開封率や、施策を実行した効果が上がってきませんでした。「これはどうにかしないといけないね」というのが、まずやってみてわかったことです。

「ではどのように変えていけばいいのか」とチームで考えたとき、まずは自分がプッシュ通知を受け取ったときにどう思うかなど「ユーザー体験をしっかり整理しよう」ということになりました。この点について、実際にチームで議論をしていたときの資料の一部が以下になります。

自分たちがどういう情報を出したいか、それに対して受け取った後「ユーザーがこう思うはず」、「プッシュ通知を開いた後にこういう行動をするのではないか」などといった点を1つ1つ切り分けていき、また「ここで離脱しそう」といった点もチーム全体でしっかり議論していきました。

それによって、ユーザーが通知を開くときの具体的な心情を、配信に関わるメンバー各々がイメージできるようになるという変化がうまれました。

例えば、次のスライドは「父の日」に関して訴求する施策で、実際に初期の段階で使っていた資料の一部です。

このときは「父の日って意外とプレゼントに何を送るか迷う」、「そういうときに、自分が使っているアプリで何かをリコメンドしてくれたら嬉しいのではないか?」という仮説を立てました。

その際、「送ってもらって嬉しいプッシュ通知のタイトルには、どのようなものがあるだろう?」、「どんな内容であれば開けてもらえるだろう?」、「クリエイティブを使ってアプローチしてみると良いのではないか?」という議論があったため、実際に左側にある2つの画像をデザイナーに制作してもらい、見せ方・出し方等様々な要素を検討しました。

もちろん配信のタイミングも非常に重要で、「父の日」当日に配信するのがよいのか、それとも1週間前なのか、前日なのか、当日なら何時に配信するのか、などと考慮しながら、配信内容を具体化していきました。

このような取り組みの結果、初期の段階ではプッシュ通知を送っても開封率は1%程度にとどまっておりましたが、徐々に単発のプッシュ通知で3%に達するなど、仮説を元にしたコミュニケーションが効果を発揮し、徐々に改善が進んでいきました。

こうなると次の段階として、さらに多くの施策を展開したい、効果測定を効率的に行いたいという考えが出てきます。

そのため、より効果的に施策を展開するためにDearOne様に参画いただいたことが現在に至るまで大きな影響を与えています。さまざまな面でサポートいただいており、特に初期の段階で支援を受けた、非常に印象的かつ役立つポイントを2つご紹介します。

まず1つ目は、施策をスケジュールに基づいて実行し、配信スケジュールを確立するためのサポート、2つ目はA/Bテストを計画し実施することで、配信効果の測定を効率的に行うサポートです。

これによって、以前は週に1回と月に4〜5回しか行えなかった施策の数が、月に40回まで急増し、収集するデータ量や振り返り・効果測定の部分が非常に効率的に回せるようになりました。その結果、施策サイクルが以前よりもはるかに早く回るようになるという変化も生じました。

このような取り組みを通じて、「あなたに合わせた情報」の提供方法が徐々に明確になっていきました。今もまだ100点満点ではないかもしれませんが、こうすればうまくいくというアイデアはますます明確になってきています。

次のスライドに直近の配信内容を掲載していますが、冒頭に紹介したものと比べて、プッシュ通知やポップアップ通知の表示方法などが、大きく変わったことがお分かりいただけると思います。

またmy routeにおいては、地域に密着した情報を提供することが効果的かつ重要であること、写真を活用してイメージを明確に伝えたり、ポップアップ通知もテキストだけでなく、効果的な画像を組み合わせて伝えたりすることが、非常に効率のよい方法であることが学びとして明らかになってきています。

表示方法の変化に伴う数値の改善については、以下のスライドの通りです。

まずプッシュ通知の開封率は、以前は1%台後半でしたが、現在は安定して3%以上を維持しています。一部のプッシュでは10%以上の開封率を達成するようになってきており、この部分ではまだ改善の余地があると考えています。

また、ポップアップ通知の開封率も、導入当初と比較して倍近く増加しています。

私たちにとって非常に重要な点は、プッシュ通知の開封率が安定して向上したこと、それによりDAUの増加にも寄与しているということです。以下の「ある2ヶ月間のDAUの推移」をご覧いただければ、その効果がご理解いただけるかと思います。

赤く丸で囲った部分が、実際にプッシュ通知が送信された日です。これを見るとプッシュ通知の開封率が上昇し、グラフの山の高さも高くなっていること、つまりアクティブユーザー数が増加していることがおわかりいただけるかと思います。

具体的な変化については、以下が2020年1月以降のmy routeの月平均DAUを示したものですが、KARTEの本格的な導入と施策の展開後、DAUは現在、導入当初の3倍にまで増加しています。

DAUの増加には多くの事業者の皆様にご協力頂きながら進めた、サービスエリアの拡大が関係しているのは言うまでもありません。加えて強調したいのは、従来のユーザーとのコミュニケーションでは、ここまでの成果を得ることはできなかったという点です。

ユーザーとのコミュニケーションに関わる改善を施し、「求められるものは何か」という仮説を持って取り組むことが、月平均DAUの増加に大きく貢献していると考えています。この点については自信をもって紹介させていただくことができます。

データ分析の取り組み

トヨタファイナンシャルサービス 豊田氏|
次に、データ分析の取り組みを簡単に紹介させていただきます。

私が最も伝えたいことは、こちらのようなダッシュボードがmy routeのチーム全員で共有できるようになったということです。この取り組みによって何が変わったかについてご説明します。

私たちのデータ分析チームは、データの収集と可視化に関してさまざまな取り組みを行っているのですが、さきほどお伝えした通り、そのデータはmy routeの営業メンバーやマーケティングプロモーションのチームでも、リアルタイムに見られるような形で公開・共有しております。

スライド中にはそれが「スムーズな意思決定に貢献」すると書いていますが、例えば営業のメンバーが「今関わっている事業者の方と、今後このような施策を行う際に、同じようなアプローチを取った場合、この施策はこれほどの効果があったが、今回はもう少し異なるアプローチを検討すべきだろうか?」などといった議論や会話が活発にできるようになってきており、それにより、意思決定が迅速に行えるようになっています。

このように、施策の検討が非常に活発に行われる状況をつくりだせており、これは大きな成果だと考えています。

また、行った施策に対する効果を振り返り、「あなたに合った情報」の提供ができているのかをモニタリングできるようになりました。以下は、ユーザーに特定の「おでかけ情報」記事をユーザーにレコメンドした結果、どのくらいの長さの情報が閲覧されたかを示したグラフです。

横軸はデータ区間、縦軸は閲覧頻度のボリュームです。弊社では今、これらのデータを使用して情報提供方法の改善に取り組んでおり、それに基づいて実際にやり方を変更した結果、閲覧時間(コンテンツに興味を持ってくださるユーザー)を大幅に増やすことができました。

テキスト

中程度の精度で自動的に生成された説明

ここまで、ユーザーコミュニケーションやデータ分析の施策についてお話ししましたが、これらの要素を連携させることで課題や解決策を追究し、評価段階ではユーザーの要望や機能に関する学びを得るという一連のサイクルが、現在非常に効果的に機能しています。

その結果、アクティブなユーザー数が増加し、アプリ自体も大きくグロースしていることが示されています。

これから目指していくこと

最後に、今後の展望について述べたいと思います。

まず、ユーザーとのコミュニケーション改善をさらに推進するに当たって、さまざまな視点からアプローチできるようにし、その結果多様な反応・データを得ること、それによって機能やユーザーコミュニケーション改善のサイクルを回していくことで、ユーザー数の増加につなげたいと考えています。

さらに、データの活用に関しては、内部だけでなく外部のデータについても活用しながら、より多くの方に移動を促すためのアクションを起こすことを検討し、地域の活性化などに貢献するサービスとなっていくことを目指します。

実際に行ったグロース施策

DearOne 齊藤|
ここからは、実際に行ったグロース施策をご紹介します。
実際に日々のアプリやWeb運用に携わり、特に、どのようなユーザーとどのようなメッセージを通じてコミュニケーションを取るべきか模索されている方には、ぜひ今回の内容を、施策の考え方や内容に関してご参考にしていただければと思います。

施策の内容に入る前に、まず弊社で推奨しているプロダクトをグロースさせるためのフレームワークである「アプリユーザーのライフサイクル」をご紹介させていただきます。

これは、アプリユーザーの状態を4つのサイクルの中で把握し、各サイクルに合わせた施策を個別に実施するというアプローチです。

一般的な流れとしては、まず「潜在ユーザー」が広告や他の媒体を通じてアプリをダウンロードしたら、最初の1週間または1ヶ月以内に「新規ユーザー」として評価されます。

その後、一部のユーザーはアプリを継続的に利用し「定着ユーザー(現行ユーザー)」となります。一方、アプリを一定期間(例:30日)起動しない状態に入る「休眠ユーザー」も数多く存在しますが、キャンペーンや特典などの刺激を受けて復帰することもあります。

これにより、再度「定着ユーザー」になるケースもありますが、中にはアプリを一度しか起動せずに再び休眠状態に入るユーザーもいます。

これらのライフサイクルを把握し、適切な施策を展開することが重要です。今回ご紹介するのは、実際にmy routeで「新規ユーザー」向けに実施した施策の一部です。

具体的にはKARTEを使用して、直近の大型アップデートで追加された新機能を活用したユーザーと活用しなかったユーザーの、リテンション率(アプリ利用の定着率)を比較する分析を行いました。

以下のグラフは、新機能の「myステーション」と「おでかけメモ」を利用したユーザー(赤と黄色)と、利用しなかったユーザー(緑、オレンジ、青)のリテンション率を1週間単位で比較したものです。

初週はもちろん100%ですが、1週目や2週目以降に大きな差があることが明らかになりました。この分析結果から、新機能の活用がユーザーの定着に大きな影響を与えるということが示唆されます。

したがって「施策においてこれらの機能を積極的に活用することが重要であり、訴求の一環として考慮されるべき」だということがわかります。

次のスライドが「新規ユーザー」向けの施策です。実際にKARTEのジャーニー機能を使用して、アプリをダウンロードしたばかりの「新規ユーザー」に対し、各ステップに応じたポップアップを配信しています。

具体的には、アプリを初回起動してから3時間後、まだ「おでかけメモ」を作成していない「新規ユーザー」に向けたポップアップを表示し、「おでかけメモ」のメリットやお得なポイントなどを伝えました。この施策により、1ヶ月間で約600名のユーザーに、お出かけメモを作成するきっかけを提供することができました。

続いて「現行ユーザー」向けの施策です。こちらでは「myステーション」の未登録ユーザーに対し、段階的に登録を促すポップアップを配信しています。

スライドの左から順に説明すると、まず「myステーション」に登録していないユーザーに向け、アプリ画面上の登録できる場所を示し、登録を促すポップアップを配信しました。

次に、登録ボタンが初めてのユーザーにわかりづらかった場合に備え、「ここをタップしてください」というアピールを行ったほか、「myステーション」に登録すると、時刻表だけでなく沿線のグルメ情報やおすすめのレストラン、観光スポットなどが表示されるようにしました。

この施策についても、1ヶ月間で4,000人以上のユーザーに登録を促すきっかけを提供できたため、効果的な施策の1つであったと考えています。

次に「休眠ユーザー向け」の施策です。実際に、こちらの施策を実施する前にデータを可視化した一部をご紹介したいと思います。

KARTEのダッシュボードを使用して、先ほど説明したユーザーのライフサイクル(新規、休眠、現行、復帰ユーザー)を1ヶ月単位で可視化するグラフを作成しました。

このように日々、月ごとに「新規ユーザー」の増加や定着の状況を定点観測しながらモニタリングしています。

その中での課題の1つは、アプリをダウンロードしたにも関わらず、約3割のユーザーが翌月にはアプリを使用しなくなり、休眠状態に入ってしまうことでした。この水準を改善して2割以下に抑えることを目指しました。

最後に「休眠ユーザー」向けの施策です。こちらも2つの機能を使用して「休眠ユーザー」に対するプッシュ通知のA/Bテストを実施しました。

具体的な流れとしては、直近30日間に一度もアプリを起動していないユーザーで、かつプッシュ通知を許可しているユーザーに対して、再びアプリを利用してもらえるような内容のプッシュ通知を配信するというものでした。以下が、実際に配信したプッシュ通知のプレビューです。

プッシュ通知を受信したユーザーの中で、当日に11%から最大14%のユーザーが、再びアプリを起動して利用したという結果が出ました。このように多くのユーザーからの反応を得て、「休眠ユーザー」を効果的に復帰させることができたと考えています。

またこちらの施策においては前述のように、単純に同じメッセージを繰り返すのではなく、並行してプッシュ通知のA/Bテストを行いました。スライド上の部分では、交通チケットの利用を促すメッセージを配信し、下の部分ではチケットに付随するクーポンを提供しました。

これら両方のアプローチを比較し、統計的に有意な差が明確に出たことから、チケットの訴求がユーザーにとってより効果的であることが確認されました。

以上のように施策の数を増やし、スケジュールをしっかりと組んだり同じメッセージを繰り返すだけでなく、A/Bテストを並行して行うことにより、ユーザーのクリック率やコンバージョン率(CVR)を向上させる取り組みを行いました。

以上が、弊社とプレイド様の協力による施策実施とその結果のご紹介でした。

KARTEサービス概要

プレイド 島田氏|
次に、KARTEの機能の概要についてご紹介させていただきます。

CX(顧客体験)プラットフォームKARTEは、Webサイトやアプリの訪問者の行動をリアルタイムで解析し、その結果をもとに、1人1人に合わせた体験を提供することができます。

具体的には、訪問者ごとに最適な情報を提供するために、その可視化と分析を行い、仮説に基づいた多くの実験を簡単に実施できると同時に、個々のユーザーに合わせたコミュニケーションを提供することを可能にするプロダクトです。

今回は当社が提供する機能の中から、特に2つの機能についてご紹介いたします。1つ目は「リテンションレポート」です。

これは、特定のイベントの発生回数に基づいたリテンションデータを提供する機能で、つまり特定イベントの発生回数ごとに、その後のアプリ利用の継続率を確認できるというものです。

例えば「myステーション」の登録回数が何回以上のユーザーがアプリ利用を継続しやすいかなど、特定のイベントとリテンションの関係を把握することができます。

2つ目の機能は「カスタマージャーニー設計」です。この機能は、複数のステップで構成されたプッシュ通知を簡単に設定・配信できるものです。

特定のターゲットを設定し、異なる内容のプッシュ通知を段階的に配信することが可能です。また分岐やA/Bテストも簡単に設定・実施でき、プッシュ通知のクリック率向上などに向けた効果的なコミュニケーションを実現できます。

最後に、KARTEに関してのまとめです。KARTEの特徴として以下の3点を強調させていただけたらと思います。

1つ目は、顧客行動に合わせてパーソナライズした接客配信が実現できる点。2つ目は各ツールをKARTEに統合し、データ分析と連携を行うことでエンジニアレスが実現できる点です。

そして3つ目は、集めたデータをマルチチャネルで活用し、シナリオを緻密に設計できる点になります。

まとめ

DearOne 齊藤|
最後に、豊田様から視聴者の皆様へメッセージをお願いできますでしょうか?

トヨタファイナンシャルサービス 豊田氏|
今回お話させていただいた中でも、特にユーザーコミュニケーションの部分で強調したいことが2つあります。

まず私たちが身をもって体験したこととして、しっかり仮説を持って取り組めば間違いなく施策の効果が上がってくるということ。

そしてもう1つは、ユーザーとのコミュニケーションを通じ、ユーザーがどのようなものを求めているかをしっかり把握することが、施策の効果を高めるにあたって非常に重要であるということです。

これらは、私たち自身が取り組みを進め学びとして得たことであり、それ自体がアプリをグロースさせてくれる1つの大きな要素になっていると思います。

サービスをグロースさせるという観点から、引き続きユーザーとのコミュニケーションを重視して、さまざまな施策に取り組んでいきたいと考えています。

スピーカー

トヨタファイナンシャルサービス株式会社 デジタルソリューション部 マネージャー豊田 航太郎氏
大学院修了後、2017年に新卒で鉄道会社に入社。2020年夏にトヨタファイナンシャルサービスに入社後、my routeの事業企画の他、KARTEを活用した顧客コミュニケーションの検討やデータ分析を通じたアプリグロースを担当。

株式会社プレイド CXデザイナー 島田 朝香氏
大学卒業後、大手人材会社にて採用・キャリア支援に従事後、HR Techのベンチャー企業にて、BizDevとして採用支援領域における新規事業の立ち上げや推進に従事。 その後プレイドへ入社し、CXプラットフォーム「KARTE」のカスタマーサクセスを担当。

株式会社DearOne グロースマーケティング部 グロースコンサルティングユニット兼ソリューションコンサルティングユニット コンサルタント 齊藤 亘平
同志社大学商学部を卒業後、デジタルエージェンシーにてインターネット広告の運用やWebのUI/UXデザインに従事。 2020年にDearOneに参画してからは、マーケティングオートメーションやカスタマーエンゲージメントツールを使ったサービスのグロースハック支援・コンサルティングを実施。

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