ABMとは?基礎知識、実践ステップやツールを解説

2023.08.31

特定の企業(アカウント)を対象に、戦略的にアプローチを行うBtoBマーケティングの手法「ABM(アカウントベースドマーケティング)」が広がりを見せています。
本記事では、特定の条件を満たした企業にアプローチを取ることで売上につながる顧客に集中でき、ROI(投資収益率)を高めることができるABMの事例を紹介します。

ABMとは?アカウントベースドマーケティングの基礎を解説

ABM(アカウントベースドマーケティング)とは何か?

ABM(アカウントベースドマーケティング)とは、企業が自社にとって重要なターゲットとなる企業(アカウント)を選び、そのアカウントに対して個別に最適化されたマーケティング戦略を展開する手法です。従来のマーケティング手法では、大量の見込み客に対して同様のアプローチを行うため、ターゲットとするアカウントに対して十分なアプローチができなくなる問題を解決するために生まれました。

ABMでは個々のアカウントに対し、ニーズや課題に合わせた最適なアプローチを行うことが可能です。また、営業とマーケティングの連携強化にもつながり、効果的なセールスサイクルの構築が期待できます。

欧米におけるABMについての解説は こちら をご覧ください。

LBM(リードベースドマーケティング)やデマンドジェネレーションとの違いは?

ABMは、対象企業を絞り込んだ営業手法であり、営業対象との接点を徐々に拡大していく点に特徴があります。一方、LBM(リードベースドマーケティング)は、リード(見込み顧客=個人)を単位とした営業手法であり、最初から広く見込み客を獲得するところからスタートします。

デマンドジェネレーションは、営業対象が内包している隠れた需要を掘り起こす活動のことであり、営業対象を1社のみに限定せず、スコアリングに基づいて徐々に見込み客を絞っていく手法で、見込み客の中から徐々に絞り込んでいく手法という意味でLBMと共通点があります。

他方、ABMは対象企業の課題特定からスタートするため、もとから営業対象を絞り込んだモデルになっている点が異なります。また、ABMは営業対象との接点を徐々に拡大していくことで信頼を獲得していくという特徴もあります。

欧米におけるABMとLBMの違いについての解説は こちらこちら をご覧ください。

これらのアプローチ方法の違いから、デマンドジェネレーションは「網」、ABMは「銛(もり)」と表現されることがあります。つまり、デマンドジェネレーション(やLBM)は広く見込み客を獲得することが主目的である一方、ABMは対象企業に注力することに主眼が置かれるため、後者の方がより効率的な営業活動を展開することができるといえます。

欧米におけるABMとデマンドジェネレーションの違いについての解説は こちらこちら をご覧ください。

これら3つの営業手法の差異についての総合的な解説は こちら で詳しく説明されています。

ABMが必要とされる背景

意思決定プロセスにおけるボトムアップ方式普及への対応

ABMは、従来の一般的なマーケティング手法ではなく、個別の顧客アカウントにフォーカスすることから、昨今さまざまな企業で採用されるようになってきた、ボトムアップ方式の意思決定プロセスへの対応に最適です。

ABMによるターゲットとする顧客アカウントの特定と理解によって、企業は意思決定プロセスの各レベルにおけるキーパーソンと関係を築き、顧客のニーズや要求に合致した戦略を展開することができます。

意思決定におけるボトムアップ方式の重要性については以下の記事で紹介した『未来IT図解 これからのDX デジタルトランスフォーメーション』などをご参照ください。

技術革新によるMA、CRMなどのツールの普及

ABMというマーケティング手法は、近年の技術革新により進化したMA(マーケティングオートメーション)やCRM(顧客関係管理)などのツールと組み合わせることで、より効果的に実施することができます。

これらのツールを活用することにより、顧客アカウントのデータ分析やパーソナライズされたコンテンツの提供、顧客とのエンゲージメントの強化などが可能となり、目まぐるしく移り変わるビジネスの現場に臨機応変に対応したマーケティング戦略を取り、最適な施策を打つことが可能になります。

CRMやMAなどのツールについては以下の記事で詳しく解説しています。

ABMの特徴とメリット・デメリットとは?見落としがちなポイントも解説

ABMのメリット

個別に最適化されたターゲティングが可能

ABMでは、ターゲット企業ごとに個別に最適化した戦略を取ることが可能です。これは、従来のマーケティング手法とは異なり、ターゲット企業の属性やニーズに合わせて個別にアプローチすることになるため、より高い効果が期待できます。

例えば、複数のターゲット企業がある場合、従来の手法では同じメッセージを送信していたため、結果として反応のなかった企業も多かったかもしれません。しかし、ABMを活用することで、ターゲット企業ごとに最適なアプローチを行うことが可能になり、その結果ターゲット企業の中での興味関心が高まり、コンバージョン率の向上につながります。

またABMは、一般的なマーケティングと比較してROI(投資収益率)が高いという特徴があります。これはターゲット企業ごとに最適なアプローチを行うことにより、無駄なコストを削減することができるためです。このようにABMの活用は、より効果的なマーケティング手法の実践につながります。

ハイリターンが期待できる

ターゲット企業に対し、個別に最適化されたターゲティングが可能となるABMの手法を活用することで、より高い成果を得ることができます。例えば、ターゲット企業に合わせたカスタマージャーニーマップを作成することで、より具体的なニーズや課題を把握し、それに合わせたコンテンツを提供することができます。そのため、ターゲット企業からの反応率も高くなり、効果的な顧客獲得が期待できます。

このように、ABMはターゲット企業に対して直接的かつ効果的なアプローチができますが、従来のマーケティング手法と比べてコストが高いため、費用対効果もしっかりと考慮する必要があるでしょう。

営業とマーケティングの連携強化につながる

ABMの実践にあたり、営業とマーケティングの連携強化が重要なポイントとなります。通常のマーケティングでは、マーケティング部門がリードを獲得し、営業部門がそのリードをフォローアップする形態が一般的ですが、ABMでは逆の形態が取られます。つまり、営業がターゲット企業をリードし、マーケティングがその営業活動を補完する形態となります。

このように営業とマーケティングの連携が強化され、一体となってターゲット企業にアプローチすることで、より効果的なセールスサイクルを構築することができます。これにより新規顧客獲得や既存顧客のフォローアップがスムーズに進むため、収益の増加につながります。

このような営業とマーケティングの連携強化には、以下のようなメリットがあります。

ターゲット企業へのアプローチ方法がより適切になる:営業部門がターゲット企業と直接接触することで、その企業のニーズや課題を正確に把握することができます。そのため、マーケティング部門が作成するコンテンツや配信方法がより最適なものとなり、効果的なアプローチが可能となります。

リードのクローズ率が高まる:営業とマーケティングが連携することで、より効果的なリードナーチャリングが可能となります。その結果、リードのクローズ率が高まり、より多くのビジネスチャンスを獲得することができます。

顧客との良好な関係を構築できる:営業とマーケティングの連携により、ターゲット企業との良好な関係の構築が容易になります。営業部門が直接ターゲット企業とやり取りすることでその企業の信頼を獲得し、マーケティング活動にもプラスの影響を与える効果が期待できます。

以上のように、ABMの実践においては営業とマーケティングの連携強化が不可欠です。両部門が一体となってターゲット企業に対する最適なアプローチ方法を見出し、より効果的なビジネスチャンスの獲得につなげていくことが求められます。

ABMのデメリット

リソース消費が高い

ABMは特定のアカウントに焦点を当てるため、集団向けの一般的なマーケティング手法と比べて、一つ一つのアカウントに対する深い理解と、それに基づく個別の戦略が求められます。これは大きな時間と労力を要します。

効果が出るまでの時間が長い

ABMは長期的なリレーションシップ構築を目的とするため、すぐに結果が出ないのが通常です。そのため、速やかな成果を求める場合には向いていないかもしれません。

ABMを実践する上では、これらのデメリットを理解し、戦略立案に役立ててください。

ABM実践のためのステップとは?成功のためのプロセスを徹底解説

ターゲットリストの作成

ABMの重要なステップの1つがターゲットリストの作成です。これはターゲットとする企業(アカウント)を特定・リスト化することで、営業やマーケティング活動を効果的に行うための基盤となるものです。

ターゲットリストの作成には、以下のようなポイントがあります。

企業のビジネス目標に合わせたターゲット設定:ターゲット企業を選定する際には、個々の企業のビジネス目標や課題に合わせて設定することが重要です。例えば、新規顧客獲得が目的であれば、類似する業界の企業を中心にピックアップすることなどが考えられます。

各ターゲット企業の決定的な特徴を明確化:ターゲット企業特定に当たっては、当該企業に著しい特徴や問題点を把握することが必要です。これによって、ABMの具体的な施策の策定や実行が行いやすくなります。

情報収集の徹底:ターゲット企業の情報収集は、ABM実行において欠かせない重要なポイントです。営業担当者やマーケティング担当者が協力してリサーチを行い、情報を集めることが求められます。

以上のようなポイントを押さえたターゲットリスト作成によって、より具体的で効果的な営業・マーケティング活動の展開が実現できます。

ターゲット企業のニーズや課題の把握

ABMを実践する上では、ターゲット企業のニーズや課題の正確な把握が重要です。特にターゲット企業の業種や規模、市場動向などを中心に分析することで、その企業が抱える問題やニーズをしっかり把握することができます。

たとえば、BtoB企業が自社の製品を導入している企業をターゲットにABMを行う場合、ターゲット企業の業務プロセスや課題を調査することで、そこに自社の製品がどのような価値を提供できるかを洗い出すことができます。

そのためには、ターゲット企業に対してアンケート調査を行ったり、同時に既存の顧客や営業担当者からの情報を収集することも重要です。また昨今は、SNSやオンラインコミュニティなどから情報を収集することも有効です。

このようにターゲット企業のニーズや課題を正確に把握することで、よりターゲットに合わせたコンテンツや提案が実現できるため、効率的な営業活動やマーケティング施策の実践につながります。

カスタマージャーニーマップの作成

ABMにおいて、カスタマージャーニーマップの作成は非常に重要なステップです。

カスタマージャーニーマップとは、ターゲット企業の意思決定者が製品やサービスを購入するまでのプロセスを可視化し、その中でどのようなニーズや課題があるかを具体的に把握するためのマップです。

カスタマージャーニーマップを作成するメリットは以下の通りです。

・ターゲット企業の購買プロセスを理解し、営業とマーケティングの連携を強化することができる。

・当該企業の購買プロセスにおいて必要となる情報やコンテンツをピンポイントで提供することができるため、購買決定の促進につながる。

カスタマージャーニーマップの作成には次のような手順があります。

・ターゲット企業の購買プロセスを理解する。

・各段階での決定者や関係者を特定し、そのニーズや課題を洗い出す。

・当該企業の購買プロセスを可視化し、カスタマージャーニーマップを作成する。

以下は例として、ITプロダクトのクライアント企業をターゲットとしたカスタマージャーニーマップの一部を示したものです。

購買プロセスの段階決定者課題
需要発生CIO、IT部門システムの改善が必要なことに気づいていない
検討CIO、IT部門、課題担当者要件定義が曖昧である
提案課題担当者、専門部署提案内容が製品に合わない
契約法務部門、財務部門契約内容が不明確である

以上のように、カスタマージャーニーマップを作成することにより、ターゲット企業の購買プロセスを理解し、より効果的なアプローチが実現できます。

ABMや顧客体験(CX)の向上において重要なカスタマージャーニーマップや、その作成ポイントについては以下の記事もご参照ください。

コンテンツ作成や配信方法の検討

ABMでは、ターゲット企業に対して個別に最適化されたコンテンツを提供することが重要になります。そのため、コンテンツ作成や配信方法については慎重に検討する必要があります。

まず、ターゲット企業のニーズや課題を把握し、その解決策を提供するクリエイティブを作成することが重要です。またそのクリエイティブは各企業の立場や業界に合わせてカスタマイズする必要があります。例えば、医療機器メーカーに対しては医療従事者向けの技術資料や臨床事例を示すなど、業界に特化した情報を提供することが必要です。

さらに、配信方法も慎重に選ぶことが大切です。ターゲット企業がどのような情報源やコミュニケーションツールを利用しているかを把握し、そこにアプローチすることが不可欠です。例えば、SNSやブログを積極活用することで、企業のアピールポイントや特徴をこまめに伝えることができるでしょう。

ABMを実践する上で、コンテンツ作成や配信方法は重要なポイントの一つです。ターゲット企業に対し最適な情報を提供することで、良好な関係構築や効果の高い成果を期待することができます。

ABMの課題と対策!企業が実践するアカウントベースドマーケティングの役に立つツール

コストが高いという問題への対応

ABMは、個別に最適化されたターゲティングが可能なため高い成果が期待できますが、概してコストが高いという課題もあります。そのためABM実践にあたっては、同時にコストを抑えるための対策も必要です。

具体的には、以下のような対策が考えられます。

ターゲット企業数の絞り込み:ABMの場合、ターゲット企業を絞り込んで戦略的にアプローチすることが重要です。ターゲット企業数を可能な範囲で少なく絞ることで、コスト削減につなげることができます。

コンテンツの再活用:ABMでは個別のターゲット企業に向けたクリエイティブ作成が必要ですが、コスト削減の観点からはコンテンツの再活用も重要です。同じテーマで複数のターゲット企業に対して活用できるようなコンテンツを作成すれば、コスト削減につなげることが可能です。

デジタルマーケティングの活用:ABMでは対面でのアプローチも重要ですが、うまくデジタルマーケティングを活用・併用することでコスト削減が期待できます。例えば、SNS広告やリターゲティング広告など、ターゲット企業に効率的にリーチできるデジタル広告を活用することなどが考えられます。

以上の対策を実施することで、ABM実践におけるコスト削減が図れます。ただし、コスト削減にこだわるあまりアプローチの質が下がってしまっては本末転倒ですので、バランスを取りながら実践する必要があるでしょう。

ターゲット企業へのアプローチ方法の多様化と役に立つカスタマーエンゲージメントツール

ABMでは、ターゲット企業に対し最も効果的なアプローチ方法を考え選択することが重要です。従来のマーケティングにおいては広告やDMなどを一斉送信する手法が一般的でしたが、ABMではアプローチ方法を多様化することが求められます。例えば、直接訪問やイベント出展、ウェビナーや特化型クリエイティブの提供など、個々の企業に合った手法を選択することが必要です。

また、ABMではターゲット企業に合わせてセグメンテーションを行うことが有効です。その際、MoEngageやBraze、Karteのようなカスタマーエンゲージメントツールを利用すれば、個々の企業ごとに最適な手法・チャネルでアプローチすることができるため、効果的なABM実施が可能になるでしょう。

カスタマーエンゲージメントツールについて詳しくは、下記のページをご覧ください。

まとめ

近年、改めて注目を集めているABM(アカウントベースドマーケティング)は、自社にとって重要な企業(アカウント)を選び、そこに対して個別に最適化されたマーケティング戦略を展開する手法です。従来のLBM(リードベースドマーケティング)などのマーケティング手法では、大量の見込み客に同様のアプローチを取ることから、ターゲット企業に十分なアプローチができていませんでしたが、ABMでは個々のターゲットのニーズや課題に合わせた最適なアプローチを行うことが可能です。

営業とマーケティングの連携強化にもつながるABMでターゲット企業との信頼関係を構築し、迅速な検証サイクルを回していくことは、ビジネスグロースを実現していくための第一歩だといってもよいでしょう。

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