ゲスト:Amplitude, Inc.
日本カントリーマネージャー 米田 匡克様
分析ツールは「DXのクォーターバック」
黒瀬
今日はAmplitudeのカントリーマネージャー、米田様にお越しいただきました。今回のテーマは「これからの企業が取り組むべきグロースマーケティング」というお題です。よろしくお願い致します。
グロースマーケティングのツールは色々な企業に導入されてると思いますが、国内で今入られていたり、これから狙っていこうという業種の希望、ステージなどはどんな感じですか?
米田
これはよく頂くご質問なのですが、私も最初は色々なターゲットやセグメントごと、例えばEコマースや、音楽や映像のストリーミング企業などをターゲティングしまして、そこにご案内させて頂こうかといった計画を立てていました。ただ、蓋を開けてみたら、面白いことにもう日本でもだいぶデジタルトランスフォーメーションに移行していますので、デジタルデータを持っていらっしゃる企業、皆様が対象になってるというのに気付きました。
デジタルになって色々な「見える化」が出てくると思います。例えば「過去6ヶ月間のユーザーの推移」や「購入単価」などが見えるようになり、そこまで到達した後に「このデジタルデータてもっと使えるよね」と。ビッグデータを活用して、マシンラーニングによる未来の売上予測などのデータインテリジェンスまで行くか、その狭間のフェーズにいるお客様が、実は我々のターゲットクライアントなのだなというのを、この一年を通じて理解しました。
黒瀬
自分達が、何かやろうとしてたり、導入していて一通り回してるクライアントが狙い所ということですね。もう今日本で展開されて一年半ぐらいですが、手応えや課題はありますか?
米田
手応えはあります。コロナ禍の状況において、DX化の進行が早まってきたという形がありますので、その中で分析のニーズが以前にも増して高まってきたと思います。ただその時に、具体的にどこに行こうかを迷うクライアントさんも多いです。
具体的には、例えばMAにも色々なソリューションがあり、我々が携わっている分析や、CRM、プッシュ通知、ユーザー獲得など色々なフェーズがあります。その中で何をご提案させて頂くかは、ちょっと会話をしないと難しいところはあります。
黒瀬
企業のニーズはすごく大きく、御社が展開されるのはその中の一部だと思いますが、そこは結構広く相談されるのか、「我々のやっているのはここです」と絞るのか、どういった形でやられていますか?
米田
だいぶ手広くご案内させていただいてます。分析ツールというのは、デジタルトランスフォーメーションの中のクォーターバックみたいな存在と考えておりまして、現状の課題を抽出しその課題に対してどう示唆を求めていくのか。それをどう対策に落とすか、そこの一番最初の上流工程が我々と思ってまして、そこで示唆を間違うと効果がないので、非常に重要かなと思ってます。
例えばここの方向に行くのが一番ベストですよみたいなものを、そのデータから導いてご案内した際に、効果的な実際のキャンペーンをユーザー獲得にすればいいのか、それとも既存ユーザーに対してのプッシュ通知にしたらいいのか、もしくはABテストをしてもっとデータを集めたらいいのか、このへんも一緒に案内をしないと具現化するのが難しいです。時には、我々は
オートメーションのメジャーな企業と20社以上テクノロジーパートナーシップを持っていますので、この場合ですとどこと相性がいいですよみたいなことも一緒にターンキーソリューションみたいな形でご案内させていただいてます。
データに「意味づけ」を入れるのがトレンド
黒瀬
「Amplitudeとはどんなツールなのか」を簡単にご説明いただけますか?
米田
我々Amplitudeは「行動分析」を提供しているアメリカのユニコーン企業です。既に4万社に対してソリューションを提供しており、その中にはGAFA中の3社であったり、Fortune 100中の20数社で使って頂いてます。行動分析ができることによって、既存データを将来のサービスのグロースに使うことができます。
今までは「セッション軸」という形で、ユーザーがどこのホームページやアプリの画面にアクセスしたという、アクセスベースの分析をしていたかと思います。一方、行動分析は、例えば一つの例で「もっと多くの購入ユーザーを増やしたい」というゴールがあったとして、その購入に至るための「きっかけ」は何だったのかといった所を見出してくれます。ユーザーは購入する際に色々なきっかけがある。ある人は例えばディスカウントしてる所にすごく関心を持っていて、ディスカウントしておけば多少自分の好みとちょっと離れていても価値を決める人たちがいるかもしれません。はたまた別の人にとっては、ディスカウントはあまり関係なくて、自分の好みに合ったものを購入したいっていう人たちがいるかもしれません。
人によって、最終的に購入に至るところのモチベーションが違ったりするんですが、そのきっかけがどこなのかみたいなところを定量的に求めるのが行動分析です。
黒瀬
今はインプットのデータがいくつもあり、Webだけではなくて、スマートフォンのデータですとか、あとは広告データもある。どのデータが一番重要なのでしょうか?
米田
昨今は色々な接触ポイントが出てきまして、昔は一つのメディア、例えばWebだけで良かったのが、スマホが出てきてアプリの接触を見てみると、実際に店舗に行って物を触ってから購入するなど色々な行動形態が、様々な媒体を通じてやってきます。広告なども、何回か見た中で接触した中で最終的にご自分の興味関心をMAXレベルに持っていきアクションに起こす。これすべてを基本的にデータとしてAmplitudeに入れるみたいな形をお勧めしてまして、Amplitudeがクロスメディアであったりとか、マルチデバイスデータを集めて、行動をつなげて「何が最もきっかけになったのか」を見える化できるのが一つの大きな強みです。
黒瀬
アメリカのインプットのデータと日本企業のインプットのデータの違い、例えば「日本企業ここのデータが足りない」「アメリカはこれを出してるから凄い」といったものはありますか?
米田
実は大きな違いがあります。日本はどちらかと言うとデータのアクセスをそのままローデータとして入れてしまう。
例えばWebの話でいいますと、ユーザーがあるページにアクセスした際、URLをタイムスタンプとユーザーIDに紐付けてそれをデータに入れるのが一般的です。アメリカはそこに、メタ情報として「意味」を入れてる、そこが大きな違いだとわかりました。URLだけですと、お気に入り登録したのか、クーポンが欲しいのか、購買に至ったのか、「これは何の行動なのか」がわかりません。
例えば購買というアクションでも、チェックアウトしてサンキューページが表示された時、購買のボタンをクリックした時、オフラインでは最終的にレシートを出した瞬間と、実は色々なパターンがあります。データをそのまま渡すだけだと、これらが別々のアクションになっているわけですね。本当はそれらが「同じもの」として見えないといけない。アメリカではデータベースに入れることによって、実際に意味のある分析やマシンラーニングができるのが当たり前なので、そこの進み具合がだいぶ違うと感じます。
黒瀬
その後の設計がだいぶ違いますよね。データベースを設計するときに、社内の人が決めるのですか?
米田
おっしゃる通りです。アメリカも4〜5年ぐらい前は、出たものをそのまま入れるだけでした。しかしマシンラーニングになると、データに意味付けをする工程に大きな手間がかかりました。そのため、最初に設計する際にちゃんと意味づけを一個一個入れましょうという形になったのだと思います。
黒瀬
意味づけを入れる手法というのがアメリカのトレンドなんですね
米田
アメリカではCDPと言われる分野が急激に成長しており、そのCDPを提供しているツールベンダーも増えています。彼らがやってるのがまさしくその「意味づけ」です。
黒瀬
日本でもビッグデータの時に「ただデータを貯めるのではなく、その先を考えて設計しましょう」みたいな議論が何回もされた時期があったと思うんですが、そこがは今DMPからCDPになって、作る時にちゃんと意味づけを作っておきましょうという事になったんですね。
米田
おっしゃる通りです。日本もだんだんそこにフォーカスしてきつつあると感じています。
次の施策は過去ログの中にある
黒瀬
そうしたインプットがあった上で、アウトプット先はどのようなトレンドがあるのでしょうか?
米田
デジタルトランスフォーメーションして、デジタルデータが集まってきて、その時に何にフォーカスされてるかと言うとやはり「見える化」なのかなと思ってます。
具体的には、この6ヶ月間のアクティブユーザーの推移がどうだったとか、その中で実際にどれぐらい購入に至ったのか、そうした所をまず見える化したいと。過去のパフォーマンスを集計することによって、自分たちの今の立ち位置を明確にしたいというのがまず最初に出てくるかと思います。見える化ができたら、どこに伸びしろがあるのか課題ははどこにあるのかみたいなところも見えるようになって来ると思います。例えばアクティブユーザー数から購入に至った人を引けば、残りは購入に至ってませんので「そこが伸びしろなんだな」というのがまず最初のステップであったと思います
次のステップとしては、そのリフトアップを具体的にどういった施策でやれば良いのか。購入ユーザー数をもっと増やすのなら、クーポンを渡せばいいのか商品の訴求方法をもっと変えれば良いのか、発送をもうちょっと早くするとか、どこがポイントなのか試作設計をしなくちゃいけない。そこがまだ、特に日本においてはマーケターの属人的な勘と経験で仮設を立てて、実際に検証をかけてどれが一番効果があったかそこに合わせましょう、というようなステップがあったと思うんですね
ところがビッグデータの中には、ユーザーがどういう意図を持って商品をディスカバリーして実際に買おうと思ったか。価格だったのか、商品のバラエティだったのかどれが最も多くのユーザーに支持されてたかというのは実はもう過去ログとして残ってるんですね。それをちゃんと引っ張り出して、その中で最も確立が高いものは何だったのかというところを尖らせる。ここが、アメリカは結構行ってるんですけど、日本はそこまで行ってない場合が多いと思います。
黒瀬
優れたソリューションでも、その後のアウトプットまで使える人間がおらず、それをうまく使って成果に結びつけるかというところがまだ日本は弱いのかなと思っております。
米田
「データからどうやって施策を求めて行くのか」ここら辺は日進月歩で進んでいます。似たような人達を集めて、その人達にはどうエンゲージメントを高めていくのかといったメソッドであったり考え方というのは色々なものが新しく出てきてると思いますじゃあその新しいものをどうやってまとめて、操作性を簡単にしながら一瞬で結果が出てくるようにする、我々はそこに特化しています。
日本はポテンシャルがあるのにもったいない
黒瀬
国内における、御社の今後の戦略をお聞かせいただけますか?
米田
戦略というより精神的な話になりますが、我々のモチベーションの一つとして、日本も大きなポテンシャルの中でデジタルシフトしつつ、そこからの活用の方法がちょっと足踏みしてる事業者様も多いと思います。そうした所において「実はDXの先にこんな世界があるんだよ」という所の啓蒙活動みたいな形でご案内できるようなポジショニングを持ちつつ、いくつかのソリューションの中でAmplitudeを選んで頂きたいと思ってます
黒瀬
個人的に、こうした外資系のツールは日本を飛び越してしまう事が増えていると思います。日本は特殊なマーケットで、日本語があり、また独自の文化がある。昔はまず日本を攻略してからアジアに行きましょうという所があったのですが、今は日本が駄目だったらもうすぐアジアに行ってしまう。誰も頑張らないと、こういう優秀なツールがどんどん日本に入ってこないんじゃないかなと思いますのでその辺は是非頑張って頂きたいですよね
米田
まさしく15〜20年ぐらい前は、アジアのヘッドクォーターは日本だったのですが、今はもうアジア〜パシフィックのヘッドクォーターはシンガポールになってきているので、そこちょっと巻き返しをしなきゃなと思ってます。「日本はポテンシャルがあるのにもったいないな」みたいな所がありますので、もうちょっとデータの使い方、グロースマーケティングの本当の意味は何なのかといったところを皆さんと一緒に探っていけるような活動をやれればと思っています。
黒瀬
勝ちパターンというか、成功パターンがいくつか出てくると、それにならってやりたくなる会社が出てくると思いますので、そういうのが増えるといいですよね。
米田
おっしゃる通りです!
黒瀬
今日はありがとうございました。
【タイムライン】
0:30 Amplitudeとは何か?
1:21 行動軸・行動分析とは何か?
3:12 Amplitude社がこれから日本展開の促進を狙う業種や規模は?
5:49 日本で展開されてみて手応えは?
7:29 企業のニーズにあわせてどのように支援しているのか?
10:47 データはどんなものが必要なのか?
13:09 アメリカ企業と日本企業のインプットデータの違いは?
16:42 データウェアハウスの設計時に社内で仕様を決めるのか?
17:51 データの意味付けが方法論として明確になってきたのがトレンドですね?
19:07 日本の企業は何をしなければいけないのか?
23:54 Amplitudeのグロースマーケティングにおける領域は?
27:10 アウトプットの部分でアメリカでの成功事例はありますか?
33:26 グロースマーケティングにとってコロナ禍は追い風になったのか?
34:22 グロースマーケティング 国内での課題とは?
37:02 総合的なグロースマーケティングの実行支援はどうなっているのか?
39:10 自社に何を導入すれば良いのか分からない場合ベンダーに相談すれば良いのか?
41:35 MAツールは発展して来ていると思うが、それを扱える人が重要ですか?
46:33 既存ユーザーのエンゲージメントを温める方が利益に繋がる?
49:40 マーケティング担当者は長期的に効果を見て欲しい?
51:02 ツールだけでなく、概念と共に啓蒙しないと拡大して行かない?
52:32 Amplitude社の今後の戦略は?