株式会社ココナラ様は、スキルマーケット「ココナラ」に行動分析ツール「Amplitude」を導入し、多くの社員が使いやすいデータ分析基盤を構築しました。Amplitudeは、誰でも簡単に分析できるツールであり、その活用には適切なデータ設計が重要になります。
今回は、Amplitudeの導入を推進されたマーケティング部部長 清水様とデータ分析領域を担当される伊藤様にデータ設計へのこだわりについて、実際の取り組みの過程と、成功のポイントを伺いました。
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先回りした設計で、誰もが使える分析基盤を実現
DearOne 麻野|
Amplitudeを用いて簡単にデータ分析を行える環境を作るため、タクソノミー設計*(イベントログ設計)の部分を入念に設計されていたかと思います。いま様々な部署の方が使われている中で、事前に設計したタクソノミーは活かされていますか?
*データの収集および活用(分析・施策)を前提として、ユーザー行動データをどのように記録・管理するかを定義・整備する作業

ココナラ 伊藤様|
そうですね。使ってみて、想定したユースケースの7割程は使ってもらえており、全体的に活かされていると思います。例えば、ユーザー属性や購入サービスの内容といった基本的な情報だけでなく、見積もり時の予算と提案額の乖離度や、電話サービス出品者の待機時間といった細かい情報まで、分析に必要そうなデータはできるだけ盛り込むようにしました。
DearOne 麻野|
かなりミニマムな粒度で設計されていて本当に驚きです。そのおかげで多数の部署の使用に不足なく対応できているのかなと思いますが、お二人のプロダクトに関する解像度がかなり高かったからこその事前設計ですよね。
ココナラ 伊藤様|
清水は以前はプロダクトマネージャーでしたので各プロダクトを知り尽くしていますし、僕も各部署から依頼を受けてあらゆる分析をしてデータ抽出もしていたので、それらの経験からよく来る依頼やAmplitudeで手早く済ませるべき分析などは感覚的に理解していました。
DearOne 麻野|
その想定が特にはまった部分はなにかありましたか。
ココナラ 伊藤様|
事前に分析依頼を想定して作っておいたところがはまった話ですと、「サービスの評価」を閲覧してる人が多いという感覚があったので、その閲覧数などをログの中に追加で仕込みました。本来そのログは加工しないと使えない状態だったのを、Amplitudeで見やすい形に加工してねじ込んだんです。そうしたらそれが実際に使われていて、事前に検討しなければ誰も見ることができなかったデータであっただろうなとは思います。

DearOne 麻野|
ココナラ様のプラットフォームはかなり領域も広く、ユーザーのニーズを網羅するのは大変だったかと思いますが、どうしてそこまでできたのでしょうか。
ココナラ 伊藤様|
本当に使う人に使い易いものを作りたいという、おせっかいの感覚で設計していました。普通に使っている分には絶対に気づかないと思うんですけれど、そんな気づかないところで色々とおせっかいを焼いて作っています。
現場の分析ニーズを汲み取ったダミーイベントという工夫
DearOne 麻野|
他のAmplitudeユーザーにも参考になるようなこだわりのおせっかいポイントを教えてください。
ココナラ 伊藤様|
ダミーイベントはとてもこだわっています。
DearOne 麻野|
ダミーイベントですか。素晴らしい発想ですね。
具体的にどのような設計でしょうか?

ココナラ 伊藤様|
本来、ログというのは、ユーザーがクリックや閲覧をしたときに発火して吐かれるものですが、ダミーイベントというのは、そういうボタンを押していない人に対してログを吐いたかのようなイベントを作る方法です。
例えば、ココナラでは出品者と購入者という二つの属性があります。購入者側から見て「サービスを買った」というイベントが発火したとき、出品者側から見ると「サービスを買われた」になるんですけど、それは出品者が何か行動をしたわけではないので、本来ログが記録されないんです。ただ、そこでログが吐かれたかのようなログをダミーイベントとして作っておくと、出品者目線でもファネル分析をできるようになるというテクニックです。
「出品者が出品しました、その1ヶ月以内にそのサービスが買われました」という数字を見たいとき、普通は出品者側のログがないせいで紐付けができないところ、ダミーイベントを作っておいたおかげでそこのファネル分析ができるということですね。
DearOne 麻野|
すごいですよね。普通の店舗だとオフラインの売上データを入れるなどの方法になってきますが、出品者と購入者両側の一連のイベントとしてファネルで見れるようにしており、サービスをちゃんと理解されて、実際のユーザーの意図を考えて設計されているということがよく伝わります。
成功を支えた二人三脚の運用体制
ココナラ 伊藤様|
実際のユースケースとしては、購入者側にメリットがあるような施策だけではなく、出品者側にメリットがある施策を打ちたいという目線も当然出てきます。それならこういうふうに設計しておかないといけないよね、という発想ですね。清水とふたりで毎日相当量のSlackで意見交換を行いながら、最初の1〜2ヶ月はタクソノミーの設計に集中していました。

DearOne 麻野|
サービスをグロースさせるためにAmplitudeで何を分析してほしいかまで想像し設計されていて、清水様と伊藤様のタッグだったからこそ実現した部分はかなり大きいと感じます。
ココナラ 伊藤様|
自社のデータに詳しく、ユースケースにも詳しいという前提に加え、マーケターの色々な意志も理解していることが必要だったので、2人のタッグは正解だったと思います。
DearOne 麻野|
タクソノミー設計で特にご苦労したことはどんな点でしたでしょうか。
ココナラ 伊藤様|
大変だったことを挙げるときりがありませんが、ログデータは粒度で言うと最小単位のデータです。それだけだと何の意味も持たないデータですが、それを価値ある使えるデータにする工程は、例えるならレゴブロックで家を建てるような作業に似ています。大きな最終アウトプットのイメージを持ちながら、扱っている小さなひとつひとつのレゴを見て、「このブロックだけ色が違うな」と小さな気付きに向き合っていくのが大変でした。
具体的に言うと、本来あるべきデータが自分の想定と違った形で入っているケースがたくさん見つかるんです。それは仕様の理解不足だったり、一時的な不具合が発生していたり、そういうものがログのレベルで次から次へと見つかるので、見つけては改善していくのが大変でしたね。見つけたときはクエリで解決する場合がほとんどですが、やっぱり基礎のシステムの不具合もあったりするので、その場合はエンジニアに直してもらいました。
DearOne 麻野|
例えばどんな発見がありましたか。
ココナラ 伊藤様|
例えば、ココナラのログを発火させる仕組みはいくつかあるんですが、発火のタイミングは少しずつ異なっているんです。ユーザーがボタンを押したときのデバイス経由で時刻を測定して発火させるものもあれば、その発火を受け取ったサーバーの時刻が入ってくるパターンもあって、それを合体させると発火のタイミングが微妙にずれて、あり得ない順番でユーザーが行動しているように見えます。
その結果、例えば、流入してきたタイミングよりも早くサービスを閲覧しているように見えて、ファネルにすると紐づかないケースがあることが途中から分かったんです。それを正しく紐付けるためには、流入のイベントを何秒か前倒しにして、実際にサービスを閲覧するログよりも先の順番にする必要が出てきます。
何秒前倒しにすべきか調べると、流入のイベントが発火するタイミングも即発火するときもあれば、10秒ぐらい遅れるときもありました。その中で1秒ずつ変えていったときに、前後のイベントの紐づき率が高く、かつ繋がりが崩れない秒数だけ前倒ししようと決めたり、そういう苦労をしました。後のほうで発覚したので大変で(笑)。
DearOne 麻野|
果てしない作業ですね。

ココナラ 伊藤様|
でも純粋に、そのときはとても楽しかったですね。だんだんログに詳しくなってきて、「なぜこのログの形式でデータが入ってくるのかな」「僕だったらこうやってデータ入れるのにな」と思っていたものに対して、どういう理由でこういう形式でログが入っていたのか後からだんだん分かってきて、その過程がすごく楽しかったです。
導入を振り返って見えてきた改善ポイント
DearOne 麻野|
かなりの導入成功事例かと思いますが、あえて、これからAmplitudeを導入する人に向けて「あの時こうしておいたら良かったな」というアドバイスなどは何かありますか?
ココナラ 伊藤様|
そうですね。強いて言えば、事前準備の段階で「これは盛り込む、これは捨てる」という作業を僕ひとりでやっていたので、もう1人技術的な担当者もいたらより良かったかなと思います。
自分だけでは明確に判断できないようなことに対して、技術的観点で「これは負債になるから捨てた方がいい」などアドバイスがもらえると、もしかしたら今後のことを考えたときに、よりよい裏側の仕組みが作れるかもしれません。
DearOne 麻野|
Amplitudeの活用には、まさに今回のようなデータ設計がとても重要になってくるので、技術的な視点とユーザー目線の両方を持つお二人だからこそ語れる、リアルで示唆に富んだお話でした。
これからデータ分析基盤を整えようとされている方々にとって、大きな参考になるはずです。本日は貴重なお話を、本当にありがとうございました。
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