「広告を出稿したら、自社ECサイトの購入数が増えた。
この場合、広告とECサイトの購入数は因果関係、相関関係のどちらにあると思いますか?
一見、因果関係があるように思えますが、これだけで判断してしまうのは危険です。
因果関係と相関関係。この2つはよく混同されがちです。
記事では、因果関係とは何か?、因果関係と相関関係の違い、因果関係を特定するテスト方法を事例を交えながら説明します。
マーケティングで成果を出すには、ユーザーに行ってもらいたい行動(購入、継続利用など)と因果関係がある行動・要素をデータ分析から見つけ出すことが非常に重要となります。これは「グロースマーケティング」の基本的な考え方です。
記事では広告とECサイトの購入数についても解説していますので、因果関係と相関関係の違いがきちんと把握できていない、因果関係を見つけ出しプロダクトグロースを目指したい人はぜひ参考にしてみて下さい。
今注目されるグロースマーケティングとは?重要な3つの要素や事例を解説
因果関係とは
因果関係とはAという出来事やアクション(原因)によってB(結果)が起こるという「原因と結果の関係にあること」です。
因果関係の定義と2つの特徴
因果関係には、時間順序(出来事の起こる順番がある)と直接性(お互いが直接的に関係していること)という特徴があります。逆に言うと、2つの特徴がないものは因果関係ではありません。
特徴1.時間順序:原因(A)が先に起こり、それによって結果(B)が起こること。AとBが同時に起こっている場合、因果関係は成り立ちません。
特徴2.直接性の条件:AがBを直接引き起こしていること。AがBより先に起きていても、Bが他の要因によって引き起こされている場合、AとBの因果関係は成り立ちません。
因果関係の事例
例えば、「雨が降ったらお店の来店客が減る」という簡単な事例を考えてみましょう。
この場合、「雨が降った」という原因がきっかけで、「お店の来店客が減る」といった「結果」が起きています。よって、「雨が降った」(A)と「来店客が減る」(B)とには因果関係があると言えます。
上述の特徴について確認すると、時間順序は「雨が降った」(A)が「お店の来店客が減る」(B)の前に起こること、直接性の条件は「雨が降った」(A)ことが「お店の来店客が減る」(B)ことを直接引き起こしていることを指します。
この例はしっかり「来店客が減る前に雨が降る」という時間順序を満たし、「お客は雨で外出が面倒になって店に来ない」という直接性の条件も満たしており、因果関係にあると言えるでしょう。
相関関係とは
相関関係の定義と3つの特徴
相関関係とは、「片方の値ともう一方の値の大きさに関連性がある」関係のことです。たとえば、「Aが増加した際、Bも同じように増加する傾向にある」といった関係性のことを相関関係と言います。
相関関係の特徴として「出来事の起こる順番(方向性)は関係なく」、「お互いに影響(強さ)がない可能性がある」「因果関係があるとは限らない」というものがあります。
それぞれの言葉の意味を詳しく確認しておきます。
方向性:相関関係には正の相関と負の相関があります。正の相関は、片方の値が増加するともう一方の値も増加するという関係を表します。逆に、負の相関は、片方の値が増加するともう一方の値が減少するという関係のことです。
強さ:相関関係の強さは、両方の値の関係が強いか弱いかを表します。強い相関関係は、両方の値の関係がはっきりとしていることを表します。逆に、弱い相関関係は、両方の値の関係があいまいであることを表します。
因果関係の有無:相関関係は2つの値の間に存在する関係を表しますが、必ずしも因果関係を示すものではありません。
例えば、先ほど紹介した因果関係の事例、「雨が降ったらお店の来客数が減る」では「雨が降る」と「来客数が減る」という2つの出来事には相関関係があると言えます。
相関関係の事例
その他にも学歴と年収。学歴が高ければ年収も高くなりそうなイメージがあり、学歴と年収には因果関係がありそうですが、高学歴であるからといって必ずしも年収が高いというわけではありませんので、因果関係はないということになります。しかし、高学歴である人ほど高年収である傾向があることは事実としてあるため、学歴と年収は相関関係であると言えるのです。
これを上記の特徴に照らして確認すると、
・方向性:一般に、学歴と年収は正の相関関係にあるという事実に関する共通認識があります。すなわち、学歴が高い人ほど年収も高くなるという関係があると考えられています。
・強さ:学歴と年収の関係の強さは地域や業界などによって異なりますが、一般的に強い関係にあるとされています。
・因果関係の有無:学歴と年収の関係は相関関係に当たりますが、学歴が高いから年収が高いという因果関係を示すものではありません。つまり、学歴が高いからといって必ずしも年収が高くなるというわけではなく、学歴が高い人と年収が高い人に共通する何か他の要因があるため、学歴と年収の間に相関関係が見られるということが考えられます。
因果関係と相関関係の違い
ビジネスにおいて因果関係と相関関係を見分ける意義
因果関係と相関関係は似ており、混同してしまいがちですが違いを区別しておくことが重要です。特にビジネスにおいては、因果関係と相関関係の違いは重要なポイントになります。両者の違いを理解することで、正しい決定を下すことができるからです。
一見因果関係があるように見える2つの出来事でも、よく調べてみると他の要因にも影響されており、実際は相関関係であることがよくあります。ビジネスにおいて、因果関係を見つけ出すことは、そのまま収益アップに直結することもありますので、二つの違いをしっかりと理解しておきましょう。
ビジネスにおける因果関係の例:マーケティングキャンペーンにより売上が増加した
因果関係は2つの出来事が「原因と結果」の関係にあり、前者が後者にどのように影響しているかを表します。例えば、「マーケティングキャンペーンの実施により売上が増加した」というのは一般的には因果関係であることが多いでしょう。このような因果関係を確認することで、ビジネスにおいて次の重要な決定を下すことができます。
因果関係の特徴としては、
・時間順序
・直接性
・相関関係である
ということが挙げられます。
一方、相関関係はAの増加に伴い、Bも増加する傾向にあるなど、2つの出来事に「何らかの関連性がある」ことを指します。例えば、「気温が上がると売上が増加する」というのは商品によっては必ずしも因果関係ではありませんが、観察可能な事実として相関関係を示しています。このような相関関係を確認することで、自身のビジネス上の機会やリスクを把握することができます。
相関関係の特徴は、
・出来事の起こる順序は関係ない
・お互いに影響がないこともある
・因果関係であるとは限らない
です。
ビジネスやマーケティングで因果関係を把握する重要性
因果関係の把握が重要な4つの理由
因果関係の把握はビジネスやマーケティングにおいて非常に重要です。これは主に以下の4つの理由からです。
問題解決:因果関係を把握することで、問題の発生原因を特定することができます。これにより、根本的な問題を解決することができるとともに、再発防止のための措置も講じることができます。
改善提起:因果関係を明確にすることで、改善の余地を見つけることができます。これによって、より高い生産性や効率性、顧客満足度の向上などを実現することができます。
責任分担:因果関係をはっきりさせることで、責任の所在を明らかにした上でこれを分担することができます。このことはチーム全体の戦力や効率性を高め、より効果的な結果を実現する上で重要です。また、責任を明確にすることで、顧客をはじめとするステークホルダーに対するアカウンタビリティを強化することもできます。
決定支援:因果関係を把握することで、経営者がより良い決定をするための情報を整理することができます。このことは経営者が最適な戦略を選択する上での強力な支援になります。
以上が、ビジネス全体における因果関係の把握の重要性です。因果関係を把握することで、ビジネスにおける諸課題を解決し、より良い結果の実現につなげることができます。
また、特に自身のプロダクトをグロースさせるには、因果関係を見つけることが非常に重要となります。
「Aというアクションをするユーザーは、継続して利用する」という因果関係を発見することができれば、ユーザーにAという行動を起こしてもらうための施策を考えることでプロダクトを成長させることが可能となるからです。
しかし実際には、因果関係はそう容易に見つけ出せるものではありません。ビジネスにおいてはその他の要因となりうるものが多数存在し、それぞれが相互しあって継続に至っているケースがほとんどだからです。
「広告出稿したらECサイトの購入数が増えた」は因果関係か?
冒頭で記載した「広告を出稿したらECサイトの購入数が増えた」を例に説明します。
ECサイトでデジタル広告を出稿してサイトのページビューが大きく増えたタイミングと、購入数が増えたタイミングが合わされば、広告出稿がコンバージョン増加の要因であると想像されます。
これだけを見れば広告が大成功した、と考えてしまいます。しかしここで安易に「因果関係がある」と判断をしてしまうのはよくありません。
確かに広告を出稿してサイトのページビューが大きく増えたが、良く調べてみると、実は同時期に著名人がある商品をSNSで紹介しており、その結果購入が増えていたということが起こりうるのです。
この例のように、よく調べてみると出来事と結果が因果関係ではなく、実は相関関係であるといったことはよく起こってしまいます。
プロダクトをグロースさせるには、購入などのコンバージョンイベントに対して因果関係のある行動を「データ分析から」導き出すことが重要です。
広告を出稿して購入数が増えれば、成功したと思い込みたくなる気持ちは分かりますが、そこを抑えて客観的にデータを分析することは、次の施策を考える時にもとても大切となります。
データ分析に関してはこちらの記事でも紹介しておりますので、是非ご覧ください。
因果関係を見つける際のポイント
ビジネスにおいて因果関係を把握する際の5つのポイント
因果関係を見つけ出すことは、直接収益増大にも繋がり、プロダクトのグロースにおいて重要ですが、正しい因果関係を見つけ出すには、どういったポイントに気をつければいいのでしょうか。
ビジネスにおいて因果関係を把握する際のポイントには次のようなものがあります。
ポイント① 数学的アプローチ:データを分析することで因果関係を把握することができます。これには回帰分析や多変量解析などの数学的手法が含まれますが、一般的にはBIツールなどを使って自動的に分析することが多いです。
ポイント② 関係性の調査:因果関係を把握するために、関係する変数や要因を調査することが重要です。これには調査、インタビュー、アンケートなどが有効です。
ポイント③ トライアンドエラー:因果関係を把握するためには、試行錯誤を繰り返すことが重要です。実験的アプローチやPDCAサイクル、OODAループを回すことにより、因果関係をより明確にすることができます。
ポイント④ 関連要因の考慮:因果関係を把握するためには、関連要因を正確に考慮に入れることが重要です。例えば、消費者のニーズや市場動向などを把握しておくことが不可欠です。
ポイント⑤ チームワーク:因果関係を把握するためには、多様な視点を持ったチームメンバーの協力が必要です。また異なる部署間の連携によって、より正確な因果関係の把握が可能になります。
以上のように、ビジネスにおいて正確に因果関係を把握することは、ビジネスの改善や意思決定を行う上で重要な要素となります。数学的アプローチを用いてビジネス上の関連データを分析して、根本的な因果関係を可視化することができます。また、関係性の調査を通じ、因果関係に関連する要因を把握することができます。
トライアンドエラーを用いた実験的アプローチは因果関係をさらに明確にし、ビジネス上の課題解決を実現するのに役立ちます。また、関連要因の考慮も重要であり、市場動向や消費者ニーズなどを考慮することで、より正確な因果関係の把握を図ることができます。
そして、チームワークも重要なポイントとなります。多様な視点を持ったチームメンバーが協力し「データの民主化」により部署を超えた連携を実現することで、より精度の高い因果関係の把握が可能になります。
データの民主化については「データの民主化で得られる成果とは? −その実現事例4選!」をご参照ください。
まずはデータの裏にある背景を考えることが重要です。
例えば、100人に対して所得と血圧の関係性を調べる調査を行い、「給与が高い人は、血圧が高い傾向にある」という結果が出ました。これは、相関関係、もしくは因果関係どちらの関係にあると言えるのでしょうか。
これだけを見れば因果関係にある、と考えてしまってもおかしくありませんが、このデータの背景にあるものを考えることで、相関関係であると理解することができます。
それは、「年齢」という3つ目の要素が含まれていないからです。一般的に給与が高い人というのは年齢が高くなる傾向にあります。そのためデータ上では血圧が高い人は、給与が高いと見られてしまうのです。
このようにあるデータに対してそれぞれ異なる2つの出来事が相関関係にあるのか、それとも因果関係にあるのかなど、データの裏にある背景、二つの要素以外がデータに影響を与えていないかを考えることが大切となります。
その他に、因果関係と思われるデータを見つけた時には、参考にした資料やデータの他に、同じことを述べているデータがないか探すようにしましょう。
同様の意見を述べているデータが複数あれば、因果関係である可能性は高まりますが、数件しかない、もしくは参考にしたデータしかその事実について述べていない、などのことがあればもう少し深く調べていくことが必要です。
ビジネスの世界においては、都合の良いデータを見れば因果関係がある、と考えたくなりますが、まずは何が原因となっているのか、その他に何か影響を与えているものはないのか考えることで、正しい因果関係を見つけ出し、ビジネス拡大に繋げることができるでしょう。
OMO アプリユーザーの来店促進|Amplitude分析事例
米国で行動分析ツールを提供するユニコーン企業、Amplitude(アンプリチュード)もプロダクトのグロースにおける因果関係把握の重要性を以下の記事で伝えています。これまでの内容と重複する部分もありますが、ぜひ参考にしてください。
本記事はAmplitude社より許諾を得て株式会社DearOneが翻訳、転載しております。
因果関係と相関関係は同時に存在することもあり得ますが、「相関関係すなわち因果関係」というわけではありません。相関関係と因果関係は、一見、似ているように思われます。しかし、その違いを認識することは、価値の低い機能に労力を無駄に費やすか、あるいは、常に顧客が絶賛するプロダクトを開発するかの岐路となり得ます。
本文では、特にデジタルプロダクトの構築と、ユーザーの行動の理解についての相関関係および因果関係に焦点を当てます。これは、プロダクトマネージャー、データサイエンティストやアナリストにとって、特定の機能がユーザーのリテンションまたはエンゲージメントに影響するか、といった最適な知見をプロダクトグロース(製品の成長)に活用する上で役立ちます。
以下の内容を読み込むと、以下が可能になるでしょう:
- 相関関係と因果関係の主な違いを「認識」する
- 相関関係と因果関係の主な違いを「理解」する
- 因果関係の有無のテストのための、2 つの強力な手法ソリューションの活用
相関関係と因果関係の違いは?
因果関係と相関関係は同時に存在し得るものの、相関関係は因果関係を意味するものではありません。因果関係は、「アクション A」の結果として「アクション B」に至る場合には、明らかに存在するものです。一方、相関関係とは単なる「関係性」です。「アクション A」は「アクション B」に関連しているものの、ひとつのイベントが必ずしも他方のイベントを発生させるとは限りません。
相関関係と因果関係はしばしば混同されます。なぜなら人間の心理として、何かしらの「パターン」を(実際は存在しない場合でも)特定したいと考えるからです。私たちは、2 つの変動する要素が、相互に極めて密接に関連していると見られると、一方が原因で他方が発生するという誤った「パターン」を作り上げがちです。その場合、因果関係の存在を示唆し、(他方の要素により発生する)従属的なイベントは、独立したイベントの結果だということになります。
しかし、2 つのイベントが一見、同時に発生するのを目の当たりにしたとしても、単純に因果関係があるとは推察できません。というのは、まず、私たちが観察している状態は、裏付けがまったくなく、さらに他にも以下のような関連性が複数、存在する可能性があるからです。
- 逆もまたしかり: 実際は、「アクション B」が「アクション A」を引き起こしている
- 2 つには相関性がありますが、それ以上の要素が存在します: 「アクション A」と「同 B」には相関性があるものの、実際には原因は「アクション C」である
- 関連する別の変数があります: 「アクション D」が発生する限りにおいて、「アクション A」は「同 B」を引き起こす。
- 連鎖反応があります: 「アクション A」は「アクション E」を発生させ、その結果、「アクション E」が「アクション B」を引き起こす(ただし、ご自身が実際に観察したのは「アクション A」が「アクション B」を引き起こしたという現象のみ)
プロダクト分析における相関関係と因果関係の例
ご自身のプロダクトにおいて、特定のユーザーによるアクションや行動が、ある結果につながる因果関係が存在すると想定されているかもしれません。
次を例に、考えてみてください: モバイルアプリの新バージョンをリリースしたばかりだとします。そして、同アプリのユーザーのリテンションは、アプリ内での(ユーザーによる)ソーシャル的な行動に関連すると想定する、「賭け」に出ます。次に、ご自身のチームに、ユーザーによる各種「コミュニティ」への参加を可能にする新機能の開発を依頼します。
新しいコミュニティ機能をリリースおよび発表した 1 カ月後、全ユーザーにおける同機能の普及率は 約 20% でした。そこで、コミュニティがリテンションに影響を及ぼすのか否かを把握するため、無作為にユーザーを選択し、同規模のコホートを 2 つ作成します。ひとつはコミュニティに参加したユーザーのみのコホート、他方はコミュニティに参加しなかったユーザーのみのコホートです。
分析で明らかになった事実は衝撃的でした: 少なくともコミュニティ 1 つに参加したユーザーは、平均的なユーザーに比べ、はるかに高い割合でリテンションが保たれていたのです。
コミュニティに参加した人の 90% 近くは(同機能使用の)1 日目にアプリを使用し続け、参加しなかった人の 50% を上回っています。7 日目までには、コミュニティ参加ユーザーのリテンション率は 60%、不参加ユーザーのリテンション率は約 18% になりました。同機能は大成功とうかがえます。
ただ、少し立ち止まってみましょう。合理的には、コミュニティへの参加がリテンション向上につながると断言するに足る情報はないことは理解されているはずです。分かっているのは、 2 つに相関関係があることだけです。
プロダクトにおける因果関係を特定するテスト方法は?
因果関係は、偶然に発生するものではありません。
ある 2 つの変数を「原因と結果」として関連付ける誘惑にかられることもあるでしょう。しかし、確実な分析によって因果関係を確認せずに関連付けを行うと、因果関係があるように見えながら、実際はないという「誤判断(フォールスポジティブ)」につながることがあります。従属的変数と独立変数の関係について、広範なテストを実施しない場合に陥り得る状況です。因果関係が存在すると断言する前に、2 つの変数の関係性を幅広くテスト、検証しましょう。
誤判定は、プロダクトに関する知見を生成する上で問題となります。「重要な結果とユーザーの行動とのつながりを理解している」という間違った判断が生じるからです。例えば、主要なアクティベーション・イベント がユーザーの長期リテンションに帰結することが分かっている、と考えてしまう場合もあるでしょう。しかし、厳密なテストを行わない限り、誤ったユーザーの行動に基づいて、プロダクトに関する重要な意思決定を下してしまうリスクが生じます。
確実な実験を繰り返し、因果関係を特定しましょう
相関関係を特定した後は、「他の変数を管理し、差分を測定する」実験を複数、行い、因果関係に関するテストを実行できます。
プロダクトにおける因果関係を特定するために実施できるこのような実験として、以下の 2 つが挙げられます。
- 仮説検定(hypothesis testing)
- A/B/n テスト
仮説検定
最も基本的な仮説検定には、H0(帰無仮説)および(H0 が成立しない場合の)H1(ご自身の立てた 1 次的な仮説)が関与します。2 次的、3 次的な仮説を設定することもできます。
帰無仮説は、1 次的な仮説に対立する(の逆となる)ものです。というのは、100%の確度で 1 次的な仮説を証明することはできないながら(可能でも高くて 99%)、帰無仮説を「反証」することは可能だからです。
1 次的な仮説は、ご自身が調査している因果関係の存在を示唆しており、独立変数と従属変数が特定されているはずです。
まず初めにご自身の H1 を設定し、次にこれに対立する現象を特定して H0 とするのが最適です。H1では、独立変数と従属変数の間に想定する因果関係が特定されている必要があります。前述のアプリ内のソーシャル機能がリテンションに与える影響を例とすれば、独立変数はコミュニティへの参加、従属変数はリテンションとなります。したがって、ご自身の仮説は以下となります。
H1: ユーザーが(アプリ使用開始後)1 カ月以内にプロダクト内のコミュニティに参加した場合、そのユーザーは 1 年以上、顧客であり続ける。
次に、H1 を否定し、帰無仮説を立てます:
H0: アプリ内コミュニティへの参加とユーザーのリテンションの間に関連性はない。
目標は、設定した様々な仮説の間の、実際の違いを観察することです。統計的優位性により帰無仮説を棄却できる場合(理想的な信頼性:最低95%)、独立変数と従属変数の関係性の理解に近づいているといえます。上述の例では、コミュニティへの参加がリテンション率向上に帰結する事実を確認することにより、帰無仮説を棄却できる場合(– 結果に影響を与え得る交絡変数を調整しつつ — )、コミュニティとユーザーのリテンション間に何かしらの関係性が存在するという結論を下すことができます。
この仮説をテストするには、想定する原因(独立変数)と効果(結果変数)との関係を正確に反映する方程式を作成します。ご自身のモデルにおいて、露出変数に値を入れられ、また、実際の観測データを反映する結果を一貫して得られる場合は、新たな発見に至っている可能性が高いでしょう。
仮説検定を活用すべき状況
仮説検定は、事例証拠を検証するのではなく、2 つの特定の変数間に実際に関連性があるか否か、識別したい時に有用です。履歴データに注目し、時間の経過に伴う変化を調べる経時的な分析(longitudinal analysis)を行うことをお勧めします。例えば、プロダクトのリリース後、最初に使用を始めたユーザーが最大のプロダクト推奨者であるか、調査することもできます。ユーザーによるプロダクト紹介のパターンを確認し、このような関係性を、長期間における他の製品ローンチ時と比較することも可能です。
あるいは、データのスナップショットを解析するクロス・セクション分析(cross-sectional analytics)も実行できます。これは、一定期間における傾向の推移・変化ではなく、(ある要素に対する)特定の露出(エクスポージャー)および結果がもたらす影響を調べる場合に役立ちます。例として、休暇シーズン限定のプロモーションと売上の関係性を把握したい際などに役立つでしょう。
A/B/n(多変量)テストによる実験
別の手段としては、A/B/n(多変量)テストを行うことで、相関関係から因果関係の特定へと進むことが可能です。結果が(同様の傾向で)一貫して変化しているのであれば、違いを生む変数を発見したことになります。個々の変数について考察し、ひとつを変更することにより、発生する現象を確認します。
アンドリュー・チェン(Andrew Chen)氏は、次のように表現しています。「自身に合ったモデルを発見したら、次のステップはそのモデルで A/B テストを行うことです。他の何かしらの要素を犠牲にする可能性もありますが、入力変数を優先し、増加させるアクションを試してみてください」「結果として、対象ユーザーの成功体験が他のユーザーよりも増すか、確認しましょう。成功指標に大きな変化が見られる場合は、良い状態にあります。変化がなければ、あまり優れたモデルとは言えないでしょう」
「コミュニティへの参加がリテンション率向上につながる」と主張するには、結果に影響を及ぼし得る他のすべての変数を排除するべきです。例えば、ユーザーは別の経路をたどっている可能性もあり、それが最終的にリテンションに影響している場合も考えられます。
因果関係があるか否かをテストするには、コミュニティに参加しているユーザーと、アプリを長期間使用しているユーザーとの間の、直接的なつながりを特定する必要があります。
アプリのオンボーディング・プロセスから始めましょう。これから登録する最初の 1000人のユーザーを 2 つのグループに分けます。ひとつのグループ(ユーザーの半数)には初めてアプリに登録した際に強制的にコミュニティに参加してもらい、他方は不参加とします。
実験を 30 日間、行った後、2 つのグループ間のリテンション率を比較します。
コミュニティへの参加が必須だったグループのリテンション率が相対的に高いことが分かれば、コミュニティ参加とリテンションの間に因果関係があることを裏付けるエビデンス(証拠)を得たことになります。コミュニティがリテンションを促進する理由を把握するため、この関係性は、さらに掘り下げて調べる価値があるでしょう。
こうした種類の実験を実施するまで、異なる要素間の関係性について確信は持てません。
A/B/n(多変量)テストを行うべき状況
A/B/n(多変量)テストもしくはスプリットテストは、様々なバリエーション(キャンペーン、プロダクトの機能やコンテンツ戦略など)の効果を比較する上で理想的な手段です。例えば、プロダクトのオンボーディング・プロセスについてスプリットテストを行えば、以下を始めとする特性に基づき、様々な戦略の効果を比較できます。
- コピーの複数のバリエーション
- 異なるグラフィック
- サードパーティ製アプリの使用による、ユーザーの氏名と会社名の自動認識
- 登録フォーム(あれば)のフィールド数を減らす
複数の製品オンボーディング・プロセスのバリエーションをテストした後、結果を確認すれば、離脱率やコンバージョン、さらにはリテンションといった指標の比較ができます。
持続的なプロダクトグロースの実現:最適な相関関係に基づくアクションを
私たちは常に、周囲に存在する「パターン」を探しています。したがって、「デフォルトの目的」は、目にする現象を説明できるよう図ることです。因果関係を明確に特定できない限り、把握しているのは相関関係のみだと想定するべきです。
常識的にはつながっているように見える複数のイベントは、明確かつ直接的な関連性を証明できない限り、因果関係とは見なされません。また、因果関係と相関関係は同時に存在し得るものの、相関関係は因果関係を意味するものではありません。
ご自身のプロダクトにおける「真の相関関係」の明確化に精通すればするほど、ユーザーエンゲージメントとリテンションの向上に向けた施策に、より適切な優先順位を付けられるようになるでしょう。
最後に
プロダクトをグロースさせるためには、データに基づく分析や施策の実行が欠かせません。プロダクト解析ツール「Amplitude」では、海外のトップアナリストが使う14種類の分析チャートを活用して、誰でも簡単に統計的な改善示唆を得ることができます。
Amplitudeの詳細はこちら
Amplitude(アンプリチュード)|世界No.1プロダクト分析ツール
本記事の一部はAmplitude社より許諾を得て株式会社DearOneが翻訳、転載しております。
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公開日:2019/9/20
Amplitude | インストラクショナル・デザイナー
アルチャナ・マッドヘイヴン (Archana Madhavan)氏
Amplitude のカスタマーエデュケーション・チームのインストラクショナル・デザイナー。マッドヘイヴンは Amplitude のユーザー様が、より優れたプロダクトの構築に向け、顧客データの分析を進化させることができるよう、教育コンテンツの作成やコースの開発に従事しています。
引用元:Amplitude社ブログ