こんにちは。安田です。
アプリ開発とデジタルマーケティングを支援する株式会社DearOneでB to Bマーケティングをしています。そんな私が初心者マーケターにもわかるように解説していくこのコーナー。
今回で第14回目です。
前回第13回の記事では『これからのマーケターが見るべき数字』について解説をしました。
第1回目から順番に読んでいただければ、より理解が深まると思いますので、まだ読んでいただけていない人はぜひ読んでから戻ってきてほしいです。
それでは、今回のテーマを発表します。
「とりあえずデータ分析せよ」と言われたら
Here We Go!
DXの流行りにのりたがる経営層の最低の指示
社内でも社外でも、国内でも国外でもDXという言葉が流行り、よく理解していない、ITに疎い上層部がやたらに「うちもデータマーケティングだ。まず持っているデータを分析しろ」と指示を出してくる。
そんな指示を出されても、一体何を分析したらいいんですか?
どのように使用するかで分析するデータが変わると思うのですが、それもわからないまま分析しても意味あるんですか?
こんな風に現場が困ってしまうという声をよく聞きます。
やみくもにデータを集め始めてもうまくいきません。正しい手順に沿って効率的に進めるようにしましょう。
それでは、その正しい手順を見ていきます。
貯める
データ分析を行うためにまず、データを「貯める」ことから始まります。しかし、いきなりやみくもにデータを集めることはあまりいい方法とは言えません。集める際に大切なことは大きく2つあります。
1つ目が「テーマ設定」、2つ目が「必要データの明確化」です。
この2つを押さえておこくことでデータ分析をより効果的に行うことができるようになります。
テーマ設定では、「何のためにデータを活用するか」といった目的や「結果が良かった(悪かった)背景にはこういった原因があるのではないか」という仮説を決めておくことが大切です。
その後に必要なデータを取り込み、さらにデータを見て社内でアイディアを出し合い、施策を実施します。
ここで注意したい点が、ビジネスサイドのマーケターと、テックサイドのエンジニア間で起こりうる問題をあらかじめ考えて、解決しておくことです。
データを見たいマーケターと、実際にデータを収集するエンジニア間で話が噛み合わないということがよく起きます。
例えば、マーケターが「店舗購買直前のアプリ上でのユーザーの行動が見たい」とエンジニアに要望を伝えます。
するとエンジニアはこう答えます。
「オフラインイベントのセッション定義を教えてほしい」
マーケターの皆さんがこの回答をされたら「ん?」となりませんか?
エンジニアの回答は何を意味しているのでしょうか?
実はこれ「店舗購買直前」というデータの定義を教えてほしいということなのです。ビジネスサイドとテックサイドでは使用する言葉が違うためにこのようなことが起こってしまい、上手くデータを集められないということがあるのです。
そのため、これを解決するためにデータPM、データ司書という役割を置き、データ利活用のポイントを整理することが重要となります。
このようにデータを貯める際の障壁となりうる問題を考えて、あらかじめ取り除いておくことでスムーズにデータ分析を行うことができるようになります。
整える
データを貯めることができれば、次は「整える」です。これはデータを整理して管理し、有益に使おうということです。大企業であればすでに多様なデータを社内に蓄積されているはずですが、データが散らかった状態になっており、必要な時に使えないという場合も多いことかと思います。
例えば日本企業では下記のようなケースがよく見受けられます。
- IT部門、マーケティング部門、経営部門それぞれでデータを保有しており、共有されていない
- 分析するたびにコピーしたデータが残っていて、更新されていない
- オンプレミス*1で構築したシステムが使いづらくなっている
このような問題を解決し、収集しているデータを無駄なく、いかにマーケッタブルなデータ、全社統一の使えるデータにできるかというところがポイントになってきます。
ここでデータを「整える」作業が必須です。
溜まったデータを整えることも重要なのですが、整った状態で溜まるように貯め方を設計することも重要です。
このデータ設計方法はタクソノミー設計と言い、このタクソノミー設計がデータ分析活用において重大な役割を果たします。
顧客を行動ベースで理解するためには、ユーザーを定義し、ユーザーの行動(イベント)を細かく定義する必要があります。その、ユーザー、イベント(顧客行動)を定義し、データ取得時点から一貫性のあるデータとして貯めるようにするための準備期間作業のことをタクソノミー設計と言います。
タクソノミー設計、、、。
また新しい用語が出てきた。
と思っている方もたくさんいると思います。ここでは簡単にしか説明しませんが、第17回でタクソノミー設計の手順等詳しく説明しますので、もうしばらくお待ちください。
分析する
整えることができれば、次に行うのが「分析する」です。深く顧客を理解する段階です。「分析する」とは主に、「分析する」「可視化する」という領域です。顧客分析は大きく3つのレベルに分けることができます。
レベル1が「定点観測」
レベル2が「課題探究」
レベル3が「行動理解」
レベル1の「定点観測」とは、過去の結果数字を見ることです。例えば、広告を打った際のCV(Conversion/ コンバージョン数)、CPC(Cost Per Click/ クリック単価)、CVR(Conversion Rate/ コンバージョン率)、CPA(Cost Per Acquisition/ 顧客獲得単価)のように、アクションに対して出た結果のことです。
レベル2の「課題探究」とは、ファネル分析によって過去の離脱要因などを分析して課題を発見することです。
レベル3の「行動理解」とは、ユーザー行動に基づいて次のアクションを誘導することです。グロースマーケティングではこのレベル3「行動理解」をして初めて、ちゃんと顧客理解ができたということができます。
ここで一つ、行動分析を進める際のポイントがあります。
それは可能な限りオートメーション化してしまい、素早く施策に結びつけることです。今後ビジネスを成長させていくためには、高速に施策を繰り返し、改善を試みることが重要です。
分析に時間をかけてしまっては、施策をたくさん打つことが困難になってしまいます。可能なところは、ツールを使用して、施策を高速で繰り返せる環境を整えましょう。
使う
分析まで終了すれば、あと一歩です。
次のステップは、「使う」です。「使う」は、実際に顧客に対してエンゲージメントを構築する手を打つことです。上記「分析する」のセクションでよく言及していた「施策を打つ」ということです。
様々なツールを用いて、施策を高速で行い、フィードバックを受けながら、それらを改善に活かして、施策を常にブラッシュアップしていくことが必要です。
従来のデジタルマーケティング施策では、「分析する」まででデータの連携が中断してしまっていました。そのため、施策を打とうとしても、そのままのデータを使用することはできませんでした。
しかし、グロースマーケティングでは、「分析する」と「使う」の間で同一のデータを使用して、施策を打つことができます。
例えば、米国No.1の行動分析ツール「Amplitude」ではデータを分析して、「月に15回以上音楽再生サービスを起動しているユーザー」だけのグループを作ることができます。このグループをエンゲージメントツールに連携することで指定したグループに対してだけアプリプッシュ通知、メール配信などを行うことができるのです。
つまり、行動の流れで特定できた条件、これを満たした人だけをセグメント化して、その先のマーケティング活動に使えるようにする、ということが可能となったのです。
まとめ
この記事では『「とりあえずデータ分析せよ」と言われたら』について紹介しました。やみくもにデータ収集を始めてしまっては、せっかく時間、お金をかけて行なってもうまく進めることができません。この記事を参考に、効果的にデータ分析を行い、ぜひビジネスをグロースを目指してみてください。
お役に立ちましたでしょうか。
それではまた今度。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
次回は『最先端のビジネス指標「ノーススターメトリック」』です。AmazonやNetflixなどの世界大手で使用されているノーススターメトリック。一体何者なのでしょうか。
*1:情報システムのハードウェアを企業が自社保有したり、データセンター等の設備内に設置導入し主体的に管理する運用のこと。