AWSのマーケティングツールとして多くの企業に利用されてきたAmazon Pinpointが、2026年10月にサービス終了することが発表されました。
これまで多くの企業が、メールやプッシュ通知などの顧客接点をPinpointで構築・運用してきた中で、
「どのサービスに切り替えればいいのか?」
「同じような仕組みは再現できるのか?」
と新たな課題を抱えている方もいると思います。本記事では、Amazon Pinpointの概要と終了の背景を整理しつつ、ユーザーが今後取るべき対応策、そして代替手段となるSaaS型MAツールやPaaS型通知インフラの選択肢まで、総合的に解説します。
移行を成功させるためのポイントも紹介しますので、ぜひお役立てください。
💡Amazon Pinpointの代替におすすめのMAツールを見る(ページ内ジャンプ)

2026年10月30日、Amazon Pinpointがサービス終了
AWSは公式ブログで、Amazon Pinpointのサービス終了日を2026年10月30日と正式に発表しました。終了スケジュールによると、2025年5月20日に新規顧客向けの提供が停止され、既存顧客は移行期間として約1年半の猶予が与えられます。
対象となるのは、SMS・Eメール・プッシュ通知などのエンゲージメント機能と各種メッセージAPIの全機能です。
ユーザー企業はサービス終了日までに代替ソリューションへの移行計画を立案・実行する必要があります。特に業務に重要な通知システムを運用している場合、計画的な移行が事業継続の鍵となります。
💡参考:Amazon Pinpoint のサポート終了|AWS
Amazon Pinpointとは?
Amazon Pinpointは、AWSが提供するマーケティングコミュニケーションサービスです。本サービスは、企業がユーザーとのエンゲージメントを高めるために設計され、以下の主要機能が搭載されています。
1. キャンペーン管理:ターゲットを絞ったマーケティングキャンペーンを簡単に作成・実行できます。
2. カスタマージャーニー:ユーザー行動に基づいた自動メッセージングフローを構築可能です。
3. 高度な分析機能:配信率やクリック率などの詳細なメトリクスを追跡できます。
4. マルチチャネル対応:Eメール、SMS、プッシュ通知、音声メッセージなど複数の通ャネルをサポートしています。
Amazon Pinpointのメリットには、AWSの他サービスとのシームレスな統合や、スケーラブルなインフラによる高い信頼性があります。特に開発者フレンドリーなAPIと柔軟なセグメンテーション機能は、パーソナライズされたユーザー体験の提供に大きく貢献していました。
Amazon Pinpoint終了に伴いユーザーが取るべきステップ
Amazon Pinpointのサービス終了に向けて、ユーザー企業は早めにに行動を開始することが推奨されます。以下に、スムーズな移行に向けた3つのステップを整理しました。
1. 利用状況の確認
まずは、現在のAmazon Pinpointの利用状況と、サービス終了による影響範囲の洗い出しを行いましょう。
- どのアプリケーションや施策がPinpointに依存しているか
- 利用中のチャネル(メール、SMS、プッシュ通知など)
- 管理しているセグメントやキャンペーン設定の内容
- AWS内で連携している他サービス(Lambda、Cognitoなど)
上記を明確にすることで、代替手段の検討やデータ移行に必要な作業量が把握できます。
2. 代替サービスの比較と検証
次に、自社に最適な代替サービスの選定に着手します。
- SaaS型MAツール
- 通知インフラ系ツール など
それぞれのツールについて、自社の要件(チャネル・自動化・分析機能・コスト)に照らして比較検討し、PoC(概念実証)を実施しましょう。検証段階でUI・APIの扱いやすさ、データ連携の可否なども確認しておくと、移行後の運用がスムーズになります。
3. データ移行と移行計画の策定
データ移行計画を立て、実行に移します。顧客データ、セグメント定義、キャンペーンテンプレートなどの移行には時間がかかるため、余裕を持ったスケジュールを組みましょう。
終了まで約15か月ありますが、システム変更の影響は広範囲に及ぶため、スムーズな移行には早期の対応が重要です。
Amazon Pinpointの代替サービス、2つの選択肢
Amazon Pinpointからの移行を検討する際には、大きく分けて以下の2つの選択肢があります。
1. 「SaaS型MAツール」への完全移行
2. 「通知インフラ(PaaS*)」としての置き換え
*アプリ開発や運用に必要なインフラ基盤や、OS、開発環境、データベース、ミドルウェアなどのプラットフォームをクラウドサービスとして提供するもの
マーケティング施策の強化を重視する場合はSaaS型、通知機能の維持や最適化が目的ならPaaS型が適しています。どちらを選ぶかは、以下の4つによって判断することをおすすめします。
①現在のPinpoint活用度
②社内の技術リソース
③予算規模
④必要な分析・自動化機能の深さ
SaaS型MAツールに移行する
「SaaS型MAツール」への移行は、Amazon Pinpointよりも高度なマーケティング機能を備えたサービスに切り替える方法です。月額の固定費はかかりますが、直感的な操作性や分析機能の豊富さが魅力で、セグメント配信やシナリオ設計、マルチチャネル配信を効率よく行えます。
SaaS型MAツールは、直感的なUIとノーコードで使える機能を備えており、エンジニア以外のマーケティング担当者でも直感的に運用できるものも多いです。また、近年ではAIによるセグメント作成や配信最適化など、自動化機能も進化しており、効率的かつ効果的なマーケティング施策が可能です。
主なメリットは以下の3点です。
- インフラ不要で導入が容易
- 非エンジニアでも扱える操作性
- 分析・自動化機能による施策の高度化
これらの特性により、SaaS型MAツールは単なる代替手段にとどまらず、マーケティング業務をさらに前進させるための強力な基盤となります。
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通知インフラとしてPaaS型に置き換える
「通知インフラ(PaaS)」としての置き換えは、メッセージ配信に特化した選択肢です。多くが従量課金制で、大量配信時にはコスト効率が高く、柔軟な設計もできます。ただし、導入には一定の開発リソースが必要です。Amazon Pinpointの代替として、PaaS型サービスに置き換える選択肢も有効でこの方法は、マーケティング機能よりも通知配信に特化したい企業に最適です。
PaaS型の通知インフラは、プッシュ通知、SMS、Eメールなどの配信チャネルを統合的に管理でき、開発者が自社のアプリケーションに柔軟に組み込める利点があります。
特に以下のようなメリットがあります。
- 高いカスタマイズ性
- サービスに応じた細かな制御が可能
- 既存システムとの連携が容易
ただし、マーケティングオートメーション機能は限定的なため、純粋な通知配信に焦点を当てたい場合や、独自のマーケティングロジックを実装したい場合に向いています。移行にあたっては、APIの互換性やスケーラビリティを事前に確認することが重要です。
💡おすすめの通知インフラ(PaaS)ツールを見る(ページ内ジャンプ)
おすすめのSaaS型MAツール5選
SaaS型MAツールは数多くありますが、機能性、使いやすさ、サポート体制などをもとに以下の5つをおすすめします。これら5つのツールはそれぞれ特徴が異なるため、自社のニーズや規模に合わせて選定することをおすすめします。
サービス名 | 料金の目安(2025年7月時点) | 主な機能 / 強み | 向いている企業・ユースケース |
---|---|---|---|
MoEngage | お問い合わせ | クロスチャネル配信(メール・SMS・プッシュ等)/AIによる自動セグメント作成、配信タイミング最適化 | B2Cアプリ・EC など、マーケ部門主導でスピーディに運用したい企業 |
Braze | お問い合わせ | クロスチャネル/キャンバスオーケストレーション/モバイル SDK 連携 | モバイルファーストの B2C サービス、大量イベントを即時活用したい企業 |
Salesforce Marketing Cloud | ¥180,000/月〜 ※プランによって異なる | CRM 連携/メール・SNS・広告一元管理/Einstein AI による予測・最適化 | 既に Salesforce CRM を導入済みの中堅〜大企業、複数部門データを統合活用したい組織 |
KARTE | お問い合わせ | Web行動解析/リアルタイムセグメント配信/LINE・メール連携 | EC・メディア・SaaSなど、Web接客を重視する国内B2C企業 |
HubSpot Marketing Hub | ¥156,000/月〜 ※プランによって異なる | インバウンド施策(ブログ・LP・SNS)+メール自動化/CRM 一体型レポート | SMB〜中堅企業、まず簡単に MA を始めたい、インバウンド重視の B2B |
MoEngage

MoEngageはクロスチャネルキャンペーン管理に優れており、メール、SMS、プッシュ通知、アプリ内メッセージングなど幅広いチャネルをカバーしています。
AIによる自動セグメンテーション機能も搭載されており、顧客データにもとづいてAIが対象ユーザーを自動的に抽出。手間をかけずに高精度なターゲティング施策を実施できます。さらに、ユーザーの行動履歴やキャンペーン成果を多角的に分析できるため、施策の振り返りや改善にも大いに活用できます。
日本語サポートも提供されており、ファッションECや不動産系サービスサイトなど、国内企業への導入も増えています。高機能MAツールの中ではコストパフォーマンスに優れており、価格と機能のバランスを重視する企業に適したツールです。
>>サービスサイトへ
💡MoEngageの導入事例
その他、ファッションECサイトや不動産系サービスサイトなど、業界や規模問わず多数の導入実績がございます。ユースケースや事例など詳しくはお問い合わせください。
Braze

「Braze」は、リアルタイムパーソナライゼーションに強みを持つMAツールです。特にモバイルアプリとの連携が優れており、ユーザー行動に基づいた即時対応が可能です。Canvas機能を使えば、複雑なカスタマージャーニーも視覚的に設計できます。
AIによる予測分析機能も搭載しており、コンバージョン率の向上に貢献します。料金は利用規模によって変動しますが、中規模以上の企業向けの価格設定となっています。
>>Brazeの導入/グロース運用支援はこちらから(NTTドコモグループ)
Salesforce Marketing Cloud

「Salesforce Marketing Cloud」は、CRMとの統合性に優れた大規模向けMAツールです。
メール、モバイル、ソーシャル、広告など全チャネルを一元管理できる点が強みです。Einstein AIによる予測分析やコンテンツ最適化機能も充実しています。日本語サポートが手厚く、導入時のコンサルティングも受けられます。料金は比較的高めですが、機能の豊富さやサポートの手厚さを重視している企業に適しています。
KARTE

「KARTE」は、Web上のユーザー行動をリアルタイムに解析し、パーソナライズされた施策を実行できる国産のMAツールです。ポップアップやバナー表示、メール、LINE通知などを、ユーザーの行動に応じて柔軟に出し分けることができます。
リアルタイムCDPと連携しながら1to1のコミュニケーションを実現できるため、Amazon Pinpointで実現していた“行動ベースの配信ロジック”の再構築にも対応可能です。また、国内導入実績が豊富で、日本語サポートやナレッジも充実しています。
HubSpot Marketing Hub

「HubSpot Marketing Hub」は、中小企業から大企業まで幅広く対応できる使いやすさが魅力のMAツールです。メール、SNS、ブログ、ランディングページなど、インバウンドマーケティングに必要な機能が揃っています。AI機能としては、コンテンツ作成支援やリード獲得の最適化ツールが提供されています。
日本語サポートも充実しており、初めてMAツールを導入する企業にも安心です。料金はプランによって異なるため、最新情報は公式サイトを確認してください。
おすすめの通知インフラ(PaaS)5選
Amazon Pinpointの代替としておすすめの通知インフラ(PaaS)サービスをご紹介します。これらは独自の通知基盤を構築したい企業に最適な選択肢です。これらのサービスを選定する際は、自社のユースケースや既存システムとの親和性を考慮することが重要です。
サービス名 | 料金の目安(2025年時点) | 主な機能 / 強み | 向いている企業・ユースケース |
---|---|---|---|
OneSignal | $9 /月〜 ※プランによって異なる ※無料プランあり | プッシュ・メール・SMS・アプリ内メッセージを単一UIとREST APIで統合。セグメント配信、A/Bテスト、自動化「Journeys」 | 通知基盤を低コストで早期に立ち上げたいスタートアップ〜中堅サービス |
Firebase Cloud Messaging (FCM) | 従量課金 ※無料プランあり | Android/iOS/Webプッシュ通知に特化。Googleインフラで高スケール、実装がシンプル | モバイルアプリ中心で push が主用途の開発者、個人〜大規模 |
AWS SNS | 従量課金 ※国、キャリアで変動 | トピック/フィルターで柔軟ルーティング。AWSリソースとシームレス連携 | AWSスタック上で通知を完結させたい企業、Pinpointからの乗り換え |
Bird | $45 /月〜 ※プランによって異なる | SMS・メール・音声・WhatsApp等を単一APIで提供。世界通信キャリアとの直接接続 | 海外顧客を抱え多チャネル対応が必要なSaaS/EC |
SendGrid Marketing Campaigns | $19.95/月〜 ※プランによって異なる ※無料トライアルあり | 高到達率のメール送信、マーケ用テンプレ・A/Bテスト、API通知 | メールが主要チャネルのSaaS・EC、ニュースレター運営企業 |
OneSignal

OneSignalは、モバイル・Webプッシュ通知、Eメール、SMS、アプリ内メッセージなどを一元管理できるマルチチャネル通知プラットフォームです。開発者向けの高機能なAPIと、非エンジニアでも扱いやすいノーコードUIが両立しており、少人数のチームでも手軽に導入・運用できます。
無料プランでも月間1万人まで配信可能で、コストを抑えながら本格的な通知基盤を構築可能です。Amazon Pinpointと同じくサービス終了が発表されているTwilio Notifyの代替としても有力で、移行用ガイドも公式に提供されています。
Firebase Cloud Messaging (FCM)

Googleが提供するクロスプラットフォーム対応のメッセージングソリューションです。モバイルアプリへのプッシュ通知に特化しており、Android/iOSの両方に対応しています。APIは比較的シンプルで、初期導入の敷居が低いのが特徴です。
Googleのインフラを利用するため、スケーラビリティは非常に高く、運用負荷も低めです。無料枠も大きく、コスト効率に優れています。
AWS SNS (Simple Notification Service)

AWSのエコシステム内で通知を扱うためのフルマネージドサービスです。Amazon Pinpointからの移行が最も容易で、既存のAWSサービスともスムーズに連携できます。トピックベースの配信モデルを採用しており、複雑な配信ルールも設定可能です。
スケーラビリティは極めて高く、運用負荷も低いですが、細かいパーソナライゼーションには追加の実装が必要になることがあります。
Bird

オムニチャネルコミュニケーションに強みを持つプラットフォームで、SMS、メール、音声、WhatsAppなど多様なチャネルをサポートしています。APIの設計が洗練されており、開発者体験に優れているという特徴があります。
また、グローバル展開を考えている企業に特に適しており、世界中の通信キャリアとの直接接続が可能です。スケーラビリティは高く、運用負荷は中程度となります。
SendGrid Marketing Campaigns

主にメールマーケティングに特化したプラットフォームですが、APIを通じて高度な通知システムとしても利用可能です。メール配信の信頼性が非常に高く、到達率の最適化に強みがあります。テンプレート機能やA/Bテスト機能も充実しており、マーケティング目的の通知に最適です。
スケーラビリティは高いですが、メール以外のチャネルは他サービスとの連携が必要になります。
移行時の注意点と成功のポイント
Amazon Pinpointから新しいサービスへの移行は慎重に計画する必要があります。最も重要なのはデータ整合性の確保です。
顧客IDの統合や属性マッピングは、事前に設計しておくことでデータの損失や不整合を防げます。また、移行時には、地域の法令に応じたオプトイン再確認のプロセスを検討してください。これは配信レピュテーションの維持にも役立ちます。
移行を成功させるための具体的なポイントは以下の通りです。
1)セグメント定義の再構築:Pinpoint特有の条件設定を再設計し、新ツールに最適化
2)配信スケジュールの見直し:チャネル特性や到達時間の違いを踏まえた最適化
3)テンプレートの最適化:新ツールのパーソナライゼーション機能を活かした改善
また、ガバナンスやセキュリティの観点では、アクセス権限の設計や監査ログの取得体制も移行時に見直しておく必要があります。最後に、小規模なPoCから始め、明確なKPIを設定することで、本格移行前の課題を特定できます。段階的アプローチが最も安全な移行戦略といえるでしょう。
MAツールの導入がマーケティング施策を強化
Amazon Pinpointのサービス終了に伴い、代替ツールの移行を成功させるためには、現在の利用状況を詳細に把握し、必要な機能要件を明確にした上で計画的に進めることが重要です。特に、データの移行やAPI連携の検証は時間を要するため、早めの着手をおすすめします。
Amazon Pinpointのサービス終了は、多くの企業にとって不安材料となり得ます。しかし同時に、より高機能で柔軟性の高いMAツールや通知基盤に移行することで、マーケティング施策の質を一段引き上げる機会にもなり得ます。
特に、MAツールは、単なる通知の代替ではなく、ユーザー行動に基づいた精緻なセグメント配信やパーソナライズ施策の実行が可能になります。
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