2009年からフラッシュセールを中心にファッションを始めコスメやホームグッズなど8,000ブランドを取り扱う会員制ショッピングサイトを運営する「la belle vie」。
同社で運営する2つのECサイト「GLADD」「GILT」に2020年からAmplitude(アンプリチュード)を導入。アドホック分析で時間がかかっていた分析フローをAmplitude(アンプリチュード)の標準チャート群を活用し大幅に短縮、よりきめ細やかな顧客体験の設計を進めています。
今回はサービスの立ち上げ、創立時から参加されている共同CEOの香取様(写真中央)、データ分析と基盤構築の主担当の西野様(写真左)、システム全般を担当されている落田様(写真右)にこれまでの分析の課題感とAmplitude(アンプリチュード)を用いた具体的な取り組み、導入後の変化について伺いました。
期間限定販売でブランド価値を下げず、ライフスタイルを網羅的に提案
ー 御社のサービスと特徴を教えていただけますか。
香取様|
弊社は「GLADD」と「GILT」という会員制のショッピングサイトを2009年に立ち上げ運営しています。現在の会員数は両サイトを合わせて600万人、取引をしているブランドは8,000ブランドにのぼります。
両サイトともファッションを始めコスメやホームグッズ、また、レストランやスパなどのお取り寄せグルメなどライフスタイル全般を提案しているショッピングサイトです。2年前からは海外のラグジュアリーホテルリゾートのサービスの販売なども行っています。
それぞれの特徴として、「GILT」は高級嗜好の方やハイブランド、ラグジュアリーなブランドを求める方をターゲットにエッジの効いたブランドを世界中からセレクトしており、売上の8割をファッションが占めています。
「GLADD」は、デザイナーズブランドやセレクトショップなどを中心に取扱う一方で、ファッションの視点から感度の高いライフスタイル全般の商品提案をしているサービスです。そのため、売上の半分を占めるファッションに次いでホームグッズが15%、コスメが10%と高いシェアを占めています。
ー 「フラッシュセール」の特徴を教えていただけますか。
香取様|
一つは会員制であること、そして、会員に向けて期間限定でスペシャルなディール商材を販売していることです。そのため、普段なかなかディスカウントにならない商品をどこよりも安く買い求めることができます。
また、通常だとブランドの毀損を懸念してディスカウント販売を避けるブランドが多いのですが、弊社のサービスは販売が期間限定であること、サイトのビジュアルに徹底した拘りを持って仕上げていること、そしてファッション業界で長い経験のある弊社のバイヤーが商品の選定を行っているため、取引先のブランドから信頼を置いていただき、ディスカウントで販売いただけるシステムを構築しています。
分析までにかかるマニュアル作業の時間を大幅に削減
ー Amplitude(アンプリチュード)導入のきっかけを教えてください。
香取様|
初めて知ったのは、弊社の機関投資家からの紹介です。
2017年、我々が共同CEOに変わる頃、機関投資家の方から「ヨーロッパのグロースハッキングを見せたい」との話がありました。フランスに渡航し当時は弊社と同じ2009年頃に立ち上がった100〜200億円規模の企業の、創業者やCEOに会わせていただきました。コスメのサブスクリプション、ラグジュアリー商品のCtoC、フードデリバリーなどビジネスモデルは様々でしたが、どの企業もお客様の行動を分析しプロトタイピングによりサービスを向上している素晴らしい企業ばかりでした。
その中で、その機関投資家の方が投資していた他企業の導入例として様々なツールや情報をいただき、問い合わせをしたりデモ画面等を見せていただいたりした中で、Amplitude(アンプリチュード)に興味を持ちました。
ー Amplitude(アンプリチュード)導入時に抱えていた課題を教えてください。
西野様|
Amplitude(アンプリチュード)を導入する以前はTableau(タブロー)やPythonのジュピターノートブック、SQLで分析をしていました。
また、アクセスログはElasticsearchやKibanaを使用してマニュアルで分析などを行うことが多くありました。
香取様|
弊社の西野を中心にデータの整理、一元化を行い、オンタイムで見たいデータが見られる環境や分析用のテーブルも整えアドホックの分析も容易にできる環境は構築していました。現在でも継続的に分析を行っており、これからも必要な分析だと考えています。
しかし一方で、ユーザーの行動をより深く理解することに課題があると考えていました。それは逆を言うと、利益を拡大できる可能性があるとも考えていました。
それまで使用していたTableauは、いいツールなのですが自由度が高くどこから手をつけていいのかわからなかったり、デモグラを元にした分析はできるのですが、行動を軸にした分析となると、この自由度が逆に仇になってしまって手をつけきれていない部分がありました。Tableauの導入がひと段落し、更にもっとお客様の行動をはっきり理解したいという思いがあり、弊社の要件とマッチしたAmplitude(アンプリチュード)導入を決めました。
西野様|
当時、ユーザーの行動分析ではSQLでクエリを書いてからTableauでビジュアライズし分析をするという流れを踏んでいたのですが、同時に仮説立てや指標を考えなければならず、この工程に非常に時間を要していました。
Amplitude(アンプリチュード)は、これまで行っていたフローの時間を大幅に短縮できることがメリットに感じました。
1つのデータを見るのに導入前は1週間かかっていましたが、現在はAmplitude(アンプリチュード)を使用することで1日もかからずに見ることができています。
落田様|
ユーザー行動を分析するには西野しかできる人員がおらず中々手が回っていませんでした。 Amplitude(アンプリチュード)を導入してからはチャート機能に欲しい情報が大体揃っており、簡単に自分でユーザー行動を分析できるようになったのは大きなメリットでした。
西野様|
動線分析をするためにタクソノミー設計を考えながら使用すると時間はかかってしまうのですが、ファネル機能を利用すると一度で分析ができる点が非常に楽でした。
他にも使用できる機能はまだまだあるとは思うのですが、現状使いこなせていない点もあるため、より業務を効率化できる余地はあると思います。
ー Amplitude(アンプリチュード)を実装する上で困ったことはありましたか?
落田様|
特別困ったことはありませんでした。作業自体も、タグを入力することが基本でしたので。それまで使用していたツールとも大きな違いはありませんでしたし、強いて挙げるとすると、AmplitudeはUI側のJSからのデータとサーバー側のデータを両方入れられるのが、他のツールと異なる点と言えます。
テストもリアルタイム性があったので、タグを入力してすぐに反応を確認できたため、そこまで大変ではありませんでした。
専門知識を必要とせず、感覚的に欲しい情報を取得
ー Amplitude(アンプリチュード)を実際に使用してみた感想はいかがですか?
西野様|
全体的に使用感が良い印象です。
セグメンテーション*1設定条件に合致した、ユーザー数・イベント実行数・利用率・利用頻度の集計をする機能です。やユーザーコンポジション*2ユーザープロパティに基づくアクティブユーザーの内訳確認・集計する機能です。は導入前に行っていた分析と近しいものを見ることができ、クエリを書く必要のあったリテンション*3一定期間内のユーザーの定着率を調べる機能です。などは、導入前よりもスピーディーに見られるようになりました。
また、ペルソナ*4類似したアクションを行っているユーザーをクラスタリング化。ユーザーのプロダクト利用状況を定量的に把握する機能です。はジュピターノートブックでクラスタリングをかける必要があり面倒なケースがありましたが、コホートやプロパティを利用することでユーザーの属性を絞り込み、行動ログからクラスタリングが瞬時にできるようになったため、非常に便利です。コンパスも相関で見られるため、これも非常に便利だと思います。
ダッシュボード*5作成したチャートにすばやくアクセスができたり、複数のチャートの保管・比較が可能となる機能です。も作成が比較的容易にでき、個人的にはノートブック*6メンバー間で情報共有するためのノート機能です。が気に入っています。
一方で、インパクト*7サービスの機能を利用したユーザーについて、利用前後でエンゲージメントがどのように変化したか分析できる機能です。はまだ使いこなせていません。良い機能だろうなとは感じているのですが、まだきちんと理解できておらず、もっと活用できる余地がある印象です。
社内で分析を進めながら色々と試行錯誤しているのですが、ノートブック・ダッシュボードともにチャートを作成しながら分析を進められるため、大変使いやすいです。
UIも積極的にバージョンアップをしているかと思うのですが、より感覚的に使用できるようにされているのかなと思っています。
香取様|
分析ツールの導入期(2014年頃)、まだ弊社にはエンジニアが少なくサービスサイトの改修以外でリソースを割くことが困難な状況でした。そんな中で私のようなエンジニアでもデータアナリストでもない、バイヤーというバックグラウンドを持った人間がエンジニアのリソースを使わずに使用することができるのかどうかがツール導入の重要なポイントでした。また、社内でそういった新しいツールを浸透させるためにも、誰もが直感的に操作し分析出来ることが重要と考えていたからです。
Tableauでも専門的な知識なく見られる部分はあったのですが、それでもPythonやSQLを用いないと見られない部分もありました。Amplitude(アンプリチュード)ではその点もすぐに見られるため、重宝しています。
また、統計の部分でも秀でていると感じており、大体のことがAmplitude(アンプリチュード)1つで完結する点もポイントが高いです。
ユーザーの行動分析を深く理解する、という目的で導入しましたが、自動でロイヤルカスタマーのペルソナを作成できる機能や弊社が想定した仮説を良い意味で裏切る結果が出る点、また、新規会員登録から初回購入に至るまでの行動属性、ロイヤルカスタマーになる人の行動など、新しい施策を実行していく上で欲していた情報を容易に取得できる点が非常に使用しやすいです。
Amplitude(アンプリチュード)を使用することで、既に導入済みのMAやWeb接客ツールでの施策の精度を高めていけると考えています。
「なぜその数字が出るのか」より深掘りをして理解ができるようになった
ー 現在の運用体制はどのような構成でしょうか。
西野様|
私や香取も使用していますが、実際に作業をしているメンバーはプロダクト担当に数名、マーケティング担当に数名、データ戦略室に3名います。
ただ、現状各部署への布教活動途中で、各担当部署のAmplitude(アンプリチュード)への理解度の深化や得られる成果などの説明がまだ不足している状況です。
ー Amplitude(アンプリチュード)を使用したユーザー行動分析はいかがですか?
西野様|
基本的な部分ではありますが、ファネル*8 … Continue reading機能のおかげで離脱ポイントを追いやすくなりました。
GILTとGLADDに導入してみたのですが、似通った動線なのに遷移率が異なる部分があり、「その原因は何か」という会話は今までできていませんでしたが、現在はプロダクトのチームで要因や改善のための示唆出しができるようになってきています。正直、まだまだやらなくてはならない点ではありますが、以前と比べるとより有益に、スピード感を保って進めることができていると思います。
香取様|
数字を見て原因の仮説を出すことまではできていましたが、そこからさらに深掘りをしていこうとすると、以前のツールのままだと非常に時間がかかっていました。特にトラフィック関連はデータ量も膨大なため、西野がいないと中々深掘りをして分析ができない状況でした。
西野様|
Amplitude(アンプリチュード)では深掘りをする、コホートを作成する、深掘りをする、コホートを作成する…という流れができる点が大きいです。
ー 他部署の反応はいかがでしたか?
西野様|
現在は実際に使用してもらう中で「使い方がわからない」という意見があると、私が回答をしたり、DearOne社の方に質問をしたりして対応しながら進めています。
以前もGoogle Analyticsなどを導入してプロダクトチームなどで利用できる環境は構築していましたが見られる範囲が限られている、という点が要因にあったように思います。
その時と比較すると、より感覚的に見られるようになったり、UX改善の視点でプロダクトチームの担当者自身が見られるようになったため、その点は改善されていると実感していますが、一方で分析チャート(レポート)を実際に作成してみると、仕様と感覚値があっていない部分があるため、もう少し社内での整理が必要だと考えています。
落田様|
Google Analyticsだとスナップショットは見やすいのですが、行動的な部分は見えません。フィルターなどをうまく利用する必要がありましたが、Amplitude(アンプリチュード)ではより簡単に見られるようになっていると思います。
ー 社内で勉強会も開催されているとお聞きしましたが、きっかけは何ですか?
西野様|
始めたきっかけは、10月にGLADDに導入をしてプロダクト、マーケティング、データ戦略室の各担当者へ簡単な説明を行ったのですが、活用が進まない状況があったためです。
12月頃に「このままだと使用されない」と感じ、使用してもらうためには継続して社内で勉強会を開く必要があると考え始めました。現在は月に一度の頻度で勉強会を開催しています。
正直、準備やテーマの設定など大変な部分はあります。マーケティングやプロダクトのメンバーに興味を持ってもらえるようテーマを設定したり希望を聞いたり、実際の社内の課題に沿ったものを実践してハンズオンする必要があり手間はかかりますが、実際に使用してもらうことで各部署での作業速度が上がると願い開催しています。
各部署の反応は「今までのツールでも見られるよね」という意見がある反面、「Amplitude(アンプリチュード)だとさくっと簡単に見られる」という意見など、両面の意見があります。
ここからさらに深掘りをして課題の発見ができれば、より各部署でも活用されるのではと考えています。
ー Amplitude(アンプリチュード)を使用して具体的に機能改善までできた事例などありますか。
落田様|
正直、施策の実行にまで至っている事例はまだあまりありません。最近ユーザー登録時に二段階認証の機能を追加したのですが、その影響をAmplitude(アンプリチュード)から取得できる、というような点では助かっています。
案の定、二段階認証を追加したことで離脱率が上がった、という変化を確認できました。ただこれは、一時的な側面では登録者数が減ったとみることができますが、その分しっかりと購入をしてくれるユーザーに登録をしてもらっているため、コンバージョン率は上昇した、ということも確認できました。
それと、面白い事例があったのですが、とあるお客様から「操作が思ったようにならない」というご意見をいただいた際に、該当のお客様の行動履歴をすぐに確認できたので、ユーザーがどこでつまづいているのか、行動証跡をたどりやすくなったという事例もありました。
西野様|
データを引き出す作業工数が減ったという影響もあります。
これまでは各部署で欲しい情報がある時はデータ戦略室でしかデータを引き出すことができず、全ての依頼を引き受けていたのですが、各々でAmplitude(アンプリチュード)から引き出すことができるようになったため、依頼の数自体が減りました。
データドリブンに、よりスピーディーに行動できる環境づくりを
ー 今後はどのようにAmplitude(アンプリチュード)を活用したいですか。
香取様|
弊社は今後、新しいサービスやビジネスモデルを生まなくてはならない中で、現在運営しているサービスのチームで大きく舵を切っていく必要があります。
そのため、プロダクトオーナーやグロースハッキングのチームなどを設置してよりスピーディーにUI/UXの改善を進化させていきたいと考えています。そのために、Amplitude(アンプリチュード)を活用していきたいです。
またさらに、これらをベースとし、1ステップも2ステップも進んだデータドリブンのカルチャーを浸透させていきたいです。
西野様|
今後、サイト改善やデザイン変更などがある際に、そこに対してすぐにレスポンシブに返せる環境や体制などを整えていく必要があると考えています。Tableauだけではなく、Amplitude(アンプリチュード)を活用してより早く行動に移せる環境づくりをしたいです。
ー DearOneやAmplitude(アンプリチュード)へ期待していることがあれば教えてください。
香取様|
新しい機能や使い方などあったら教えていただきたいです。
それと、ラーニングのコンテンツが現在英語のため、日本語や動画のコンテンツがあると、弊社のスタッフも自分から学びやすくなるのではと思います。
その他は、他のツールとシームレスにつなげることが出来ると分析とアクションがよりハイスピードで進められるのではと考えています。
西野様|
Amplitude(アンプリチュード)の機能に対する期待にはなりますが、分析側で保有しているタグの情報を、SDKではなくカスタマーID指定でユーザプロパティなどを簡単に入れられるような環境があればいいなと考えています。
弊社が持っている分析データや資産をもっとAmplitude(アンプリチュード)で活用したいです。テックに頼らずともトラッキングのタグデータを入れられる環境があれば、もっと早く分析できたり、ユーザー属性の情報を入れることができるのではと…。
また、アップロードしたコホート情報を手動ではなくAPI連携が出来るとさらに使用感は向上するのではと思います。
落田様|
担当の方がされている月に一度の定例会は気づきが多いので、新しい機能や取得できるデータが増えた際など、今後も情報を教えていただけると嬉しいです。
ー インタビュアー後記
▼株式会社DearOne グロースマーケティング部 カスタマーサクセス小島
フラッシュセールという特徴的なECサイトを運営、データ活用を進める企業のCEO、分析担当、システム担当の方に直接お話を伺える貴重な機会でした。実際にAmplitudeをご利用いただいている方から発せられる生で聞くご感想は私にとって大きな学びとなりました。加えて、今後もクライアント様のビジネスに貢献できるよう、我々もよりスピーディーに知見を貯めていく必要があること強く実感いたしました。
▼株式会社DearOne グロースマーケティング部 カスタマーサクセス泉
8,000ブランドを取り扱うフラッシュセールショッピングサイトのGLADDとGILT。両サイトを運営するla belle vieの皆さまにお話を伺いました。既存の分析ツールを使っていても補足しきれていない部分に対して、顧客理解を深めるためにAmplitudeの導入を決めた香取さん。見たいものを気軽に早く見られるAmplitudeの良さに加えて、これまでの分析過程や導入時の社内浸透の試行錯誤まで、まさに生の声をお伺いでき、私自身とても良い刺激になりました。
*1 | 設定条件に合致した、ユーザー数・イベント実行数・利用率・利用頻度の集計をする機能です。 |
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*2 | ユーザープロパティに基づくアクティブユーザーの内訳確認・集計する機能です。 |
*3 | 一定期間内のユーザーの定着率を調べる機能です。 |
*4 | 類似したアクションを行っているユーザーをクラスタリング化。ユーザーのプロダクト利用状況を定量的に把握する機能です。 |
*5 | 作成したチャートにすばやくアクセスができたり、複数のチャートの保管・比較が可能となる機能です。 |
*6 | メンバー間で情報共有するためのノート機能です。 |
*7 | サービスの機能を利用したユーザーについて、利用前後でエンゲージメントがどのように変化したか分析できる機能です。 |
*8 | Amplitudeへデータ連携した、オンライン・オフラインを含む複数のプラットフォームでファネル分析ができます。 コンバージョン率やユーザーの離脱したイベントの把握ができるできる機能です。 |