トヨタファイナンシャルサービス株式会社(以下:TFS)は、移動の価値や体験の向上を目的としたMaaSアプリ「my route」を提供しています。ルート検索機能といった従来の移動アプリ系機能に限らず、思い出の蓄積やデジタル乗車券の販売など、移動に関する一連の機能を備えている点が差別化のポイントになっています。
「my route」は2021年1月からKARTEを導入し、同年4月からDearOneのサポートのもと、アプリのグロースに取り組んできました。そこで今回は、同社グロースハックデータ分析チームのリーダーである豊田様と、メンバーの田中様に、導入の決め手や導入後の変化、具体的な改善事例についてお話を伺いました。
課題:
- エンジニア以外のメンバーがデータ分析する際、データの受け渡し・分析に多くの工数がかかっていた
効果:
- エンジニア以外のメンバーが自分たちでデータ分析を行い、施策を実施
- セグメント分けしたプッシュ配信により、配信数8倍、開封率4倍に
- データ分析により離脱ポイントの改善を実施したところ、機能登録ユーザー数が月間4,000人
- アプリ担当チームだけでなく、営業メンバーもデータ分析と施策の思考が定着
展望:
- アプリのグロースに知見と実績のあるDearOneとともに「一緒にアプリをつくっていく」
- まだ使いこなせていないKARTEの機能をフル活用する
移動の一連の体験や価値を1つのアプリで提供するMaaSアプリ「my route」
DearOne 神津|
TFS様のアプリ「my route(マイルート)」にKARTEをご導入いただき、ありがとうございます。まずは、こちらのアプリの特徴を教えてください。
TFS 豊田様|
my routeは、移動手段の検索・予約・決済まで移動に関する一連の機能をひとつのアプリ内で完結するMaaSアプリです。「”もっと移動したくなる環境づくり”を通じて、”すべての人の移動の自由”と”ずっと賑わう街づくり”に貢献したい」というビジョンのもと、「ここに行ってみたい」という興味関心から、実際にそこに行くまでの移動、さらに行った先での思い出の蓄積まで、移動の一連の体験や価値を1つのアプリで提供したいと思っています。
ご担当の業務内容
DearOne 神津|
豊田様と田中様、それぞれがご担当されている業務や役割を教えていただけますか?
TFS 豊田様|
私はメンバー3人のグロースハックデータ分析チームのリーダーとして、KARTEなどを使ってmy routeのアクティブユーザーを増やしていく役割を担っています。それぞれのグロース施策を「ユーザーの方にどう響いたか」という観点から分析してPDCAサイクルを回し、アプリを成長させていくことを日々行っています。同時に、データ分析で上がってきた数字を事業企画に生かすという役割も担っています。
TFS 田中様|
私も豊田と同じチームで、アクティブユーザーを増やすためにユーザーにアプローチしていくことを意識して、アプリプッシュやポップアップを配信する業務を担当しています。
外部のサポートを活用しグロースを加速する
KARTEを選んだ決め手は「非エンジニアでも操作が可能であること」
DearOne 神津|
KARTEを導入された目的は何だったのでしょうか?
TFS 豊田様|
my routeをグロースさせていこうとしたときに、以前から「プッシュの施策が有効」ということはわかってはいたのですが、当時はプッシュを1個送ろうとしてもエンジニアでなければ操作ができなかったり、施策を行っていくときのリードタイムがどうしても長かったり、といった課題がありました。まずはそこを円滑に進められるようにしたい、という狙いがありました。
また、データ分析についても「開発チームにデータをもらいにいく」という工数が発生していたり、ビジネスサイドでデータを見て改善のサイクルを回していくところに時間がかかってしまったりしていたので、そこの部分を解決したいと考え、KARTEをはじめ、いくつかのツールの導入を検討していました。
DearOne 神津|
KARTEを導入された2021年1月以前には、データ分析ツールは使われていましたか?
TFS 豊田様|
従前もデータの集計・分析が行えるツールを使っていましたが、もう少しユーザーに直接コミュニケーションを取りに行き、その効果を見て施策を考えるところを自分たちで進めていきたいと思っていました。当時は現在のDearOneさんのように外部でサポートしてくださるところはなく、自分たちだけだったので、工数の面やデータの可視化などの面で難しい部分があったと思っています。
DearOne 神津|
そのような課題があるなかで、KARTEを選ばれた決め手は何でしたか?
TFS 豊田様|
1つは課題の裏返しで、KARTEはエンジニアではなくても、ビジネスサイドや非エンジニアのメンバーが簡単に扱えるところが非常に大きかったと思います。プッシュやポップアップを簡単に送ることができて、その効果を施策との紐づけで見ることができるなど、データの可視化に関しても非常に使いやすいツールであると感じたところが決め手になっています。KARTE以外の他ツールとの比較検討もしたなかで、これらの部分が我々に一番合っていると感じ、最終的に導入を決めました。
DearOneにサポートを依頼した理由は「知見のある方のサポートをいただくことで、より効果が見込める」と思ったから
DearOne 神津|
KARTEを導入された21年1月時点では弊社DearOneはグロースのサポートに入っていませんでした。導入してから弊社がサポートをはじめる同年4月までは、どのように運営を進められましたか?
TFS 豊田様|
私たちのチームはデータの分析やグロースに知見のあるメンバーばかりでもなかったので、自分たちで勉強会をしたり、いろいろと実際に使ってみたりして、まずはできることからはじめました。その結果、「こういう打ち手がいいのではないか、効果的なのではないか」というところが少しずつ見えてきました。少しずつ効果が見えてきたことで、知見のある外部の方のサポートをいただければ今よりももっと効果を高められるのではないかと考えるようになりました。そんなときにご紹介いただいたのがDearOneさんで、4月からグロースのサポートを依頼しました。
DearOne 神津|
「もっと効果を高められるのではないか」というお話がありました。それは具体的にはどういったところに期待がありましたか?
TFS 豊田様|
自分たちだけでやっていたときに「プッシュを送った日にDAUが伸びる」ことはわかっていたのですが、「送ったプッシュの開封率が上がればDAUはもっと増える。じゃあどうすれば開封率が上がるのか?」という課題があり、そこを自分たちだけで考えるよりも、知見のある外部の方の力もいただきながら考えることで、効果が出るまでの時間を短くできるのではないかと考えていました。
KARTEを導入し、DearOneからのサポートを受けたことで配信数や開封率が如実にアップ
地域でセグメント分けをして、ユーザーの興味関心がある情報をプッシュ配信することで開封率が約4倍に!
DearOne 神津|
導入後の効果について教えてください。KARTEの活用によって効果を感じたところはありましたか?
TFS 田中様|
簡単にユーザーのセグメント分けができるというKARTEの機能を活かし、地域別に施策を打てていることがDAUを上げる要因になっていると思います。ユーザーの方にとっては「自分が住んでいる地域の情報か、そうでないか」によって興味関心は全く異なるので、「近くでこんなイベントをやっています」などユーザーが興味のある情報を送ることで、アプリを開いて使ってもらえるようになっていると感じています。
TFS 豊田様|
導入初期は地域でセグメントを区切ったプッシュではなく、全国のユーザーに向けて同じプッシュを送っていました。その後、福岡エリアに区切って福岡のイベントという形のプッシュを送ってみたところ、それだけでクリック率が変わりました。
田中の言う通り、「ユーザーは自分に関係する近場の情報がほしい」ということが如実に数字に出たと考えています。ここの具体的な数字でいうと、九州だけに区切って福岡のチケットに関するプッシュを送ったところ、開封率が4倍近くに跳ね上がりました。
TFS 田中様|
他にもKARTE導入の効果はいくつかあります。アプリをリニューアルしたタイミングで、おでかけ先の情報やURLを保存しておくことができる「おでかけメモ」という新しい機能をつくったのですが、それが本当に使われているか、どのように使われているかは、KARTEのようなツールがあるからこそ手軽に把握できるようになったと思っています。KARTEを導入したことによって、実際にどのように使っていただいているかを可視化することが可能になりました。また、そのデータをもとにした改善、PDCAサイクルを回すことに繋げられています。
もう1つは、KARTEのアンケート機能です。my routeは多くの交通事業者様に協力していただいてmy routeでデジタルチケットを提示しています。事業者の方が知りたいことをアンケートとして出し、ユーザーに直接答えていただくこと、その情報を事業者様へお伝えすることで、サービス改善が必要な点の明確化やユーザーサイドから見た利便性の向上等、事業者様にもユーザーにもうれしいWin-Winの関係を築くことができていると思います。
データ分析から離脱ポイントを改善することで、1か月で機能登録ユーザー数が4,000人に!
DearOne 神津|
弊社がサポートに入ってから特に変わったところでは、どのような点がありますか?
TFS 豊田様|
最初の4月の時点でDearOneの齊藤さんとじっくり話をして、「my routeをどうしていきたいか」「これまでに自分たちで運用をしてみてプッシュが有効であることがわかった」などのお話をしたところ、「まずはプッシュ配信をスケジュール化しましょう」というご提案をいただきました。配信カレンダーや配信対象を決めて、送る前に起こりうることを想定して、実際の結果をエクセルに残していき、開封率何%など、データを残して分析する癖付けをしていきましょうというお話がありました。
その通りに行った結果、以前はプッシュ配信数が月5本程度でしたが、月40本まで配信本数を増やすことができました。しかも、ただやみくもに本数を増やしたわけではなく、地域などでセグメント分けして必要なところに必要な情報を送りながら本数を増やすことができました。全体ユーザー向けに多くの通知を送ってしまうと迷惑となる可能性があるので、適切に配信数を増やすことができたのはとてもよかったと思っています。A/Bテストも実施して、内容もブラッシュアップしていきました。
DearOne 神津|
その他に戦略的に施策を進められてきたところはございますか?
TFS 豊田様|
齊藤さんに現行ユーザーと休眠ユーザーなどの区分けをしてもらい、それぞれに改善策を実施しました。現行ユーザーに関して、my routeの「myステーション」という生活圏や、近くのバス停や鉄道の駅を登録すると、アプリのトップ画面に電車の時刻などが出てくる機能の登録導線改善を行いました。課題として、この機能の登録フロー自体はすごく簡単なのですが、利用数が伸びているわけではありませんでした。
それを齊藤さんに相談したところ、どういうところでユーザーが離脱しているかというデータをレポートにまとめていただき、「離脱が多いこの画面でこんな訴求をすると使ってもらえるのではないか」とご提案いただきました。具体的には、次にするべき操作説明をポップアップでガイド的に出すことで、その通りにすれば簡単に登録できるようにしました。この改善により登録率が向上し、1か月で4,000人のユーザーが登録してくださいました。今も登録数は指数関数的に増えています。
DearOne 神津|
休眠ユーザー向けのほうはどのように実施されましたか?
TFS 豊田様|
先日まで福岡で販売していたデジタルチケットで、バスが24時間乗り放題のモビリティチケットと温泉の施設で使えるクーポンがついていて、移動と体験をセットにしたものがありました。移動だけではなく、体験もセットで販売・提供しているmy routeの価値を感じていただこうと、同じようなモビリティ+体験のチケットを販売している別の複数のエリアにプッシュを送ったところ、11~14%のユーザーが再びアプリを起動してくれました。
我々は以前から「目的がないと移動しない」と思っているので、目的をどうつくるかというところで地域の事業者の方と頭をひねっていました。その一つの形ともいえる、モビリティ+体験のチケットを軸とした休眠ユーザー向け訴求が良い成果を生んでいるのは大変喜ばしいと感じています。
「一緒にmy routeをつくっている」と思える関係
営業メンバーがKARTEの活用法を学び、思考が変化している
DearOne 神津|
KARTE導入による運用メンバーの変化などはございましたか?
TFS 田中様|
チームのメンバーの中でも「KARTEでまずやってみよう」という声が上がるようになりましたね。最近だと我々のチーム以外の営業メンバー向けに「KARTEの使い方」をnoteなどで簡単にまとめていて、簡単な分析であれば誰でもできるように伝授していっています。
また、いざやってみると、みなさん結構使ってくれることがわかりました。「どんなデータがmy routeで取れるか」を理解してくれて、その状態でお話できるので、「それならできますよ」とその場で会話したり、今後はさらにもっとアイデアが広まるようなことも我々のチーム以外のメンバーと会話できると思っています。その部分は非常に良くなったかなと思っています。
TFS 豊田様|
開発案件で進めようとすると工数や時間がかかってしまいそうな案件については、「まずKARTEでできない?」という話が社内でよくされるようになりました。それは田中が話したように、営業担当が「KARTEでいろいろなことができる」という頭になっているのでそういう話がパッと出てくるんだと思います。「まずいろいろ改善してみよう」という話が出てきている状況は、すごく良い状況かなと思います。
DearOneは外部サポートではなく「一緒にアプリをつくっていくメンバー」のよう
DearOne 神津|
今回の弊社DearOneからのサポートについて、感想を教えてください。
TFS 豊田様|
DearOneさんにサポートをしていただくことになった4月に、齊藤さんは横浜で実際にデジタルチケットを使ってくださいました。その上で、「実際に使用してみてこう思った」といった感想や指摘も、月次の報告で上げてくださったんです。「ここはボタンが押しづらいかも」など、いろいろなアドバイスがいただけたのが、凄くありがたかったですね。いろいろと話も聞いてもらって、そのうえで知見をもとにサポートをしていただけるので、外部サポートというよりも「一緒にmy routeをつくっていただいている」という感覚のほうが大きいです。
TFS 田中様|
レポートだけではなく「こういうデータや事実があります。だからこうしましょう」というご提案も一緒にいただけたりして。それについて議論したりできるので、ただ依頼されたデータをつくってきましただけじゃなくて、本当に「アプリを一緒につくってくださっている」感じが非常にして、そういう部分は僕らとしてもうれしいですし、信頼して「これはどうですかね?」と相談ができます。
TFS 豊田様|
もともとはKARTEを使ってmy routeをどうグロースさせていくかという相談がメインでしたが、そこだけじゃなく、DearOneさんにはもっといろいろな知見をいただけると思っています。既に今、そのあたりもご相談させていただいていて、KARTEに限らずUI/UXをmy routeとしてどう上げていくかというヒントをいただくようなところも一緒に伴走していただきたいと思っています。これまでにご提案いただいたところをまた1段上げて、もっともっとmy routeをグロースさせていくところにご一緒いただければ嬉しいなと考えています。
KARTEを通じて移動の体験や価値を上げていく
自動配信など「まだできていないこと、できるかもしれないこと」に挑戦していく
DearOne 神津|
将来への展望も教えてください。今後どのようにKARTEを活用していきたいですか?
TFS 豊田様|
DAUやユーザーを増やすだけではなく、移動の体験自体を上げていくツールとしても活用していきたいと思っています。今、熊本の阿蘇で売っているチケットに関しては、チケット利用中で阿蘇のエリアにいる方に対して「こんなお店に行ってみませんか?」とレコメンドをKARTEで出すようにしています。こういうことで移動価値、移動の体験自体を上げることができると思っているので、こういうところをもっと伸ばしながらKARTEを通じてmy routeの移動、体験価値を上げていきたいと思っています。
TFS 田中様|
ユーザーボリュームも増え、データが取れてきている状況なので、ユーザー体験の向上に活かしたいです。たとえば、「このユーザーはハンバーガーに興味がある」などの細かいデータもちゃんと取りためていき、そこに対してレコメンドのプッシュを送るのはもちろん、できるなら自動化もどんどんしていきたいと思っています。今、KARTEにある機能ではないかもしれませんが、いろいろな組み合わせで実現はできると思っています。そういうことをどんどんやって、フルでKARTEを活用することができれば面白いと思います。
DearOne 神津|
ありがとうございます。最後に、弊社DearOneに今後期待することを教えてください。
TFS 豊田様|
引き続きサポートをいただきながら、「一緒にmy routeをつくってください」ということですね。それが一番であり、DearOneさんへの期待の全てです。
TFS 田中様|
僕らチームの人数が少なくて、やりたくてもどうしてもできないことがあって、そういう部分も齊藤さんにフォローしていただいています。とてもありがたくて、引き続きよろしくお願いいたします。
− カスタマーサクセス 担当者コメント
▼株式会社DearOne グロースマーケティング部 カスタマーサクセス 齊藤 亘平
弊社ではKARTEを活用したmyrouteアプリのグロースハック支援をさせていただいております。プロジェクト初期ではあまり使いこなせていなかったKARTEを現在はデータの可視化・分析から施策実行までフル活用いただいております。アクティブユーザー数も順調に右肩上がりで増加し、日々myrouteアプリの成長を実感しております。引き続きお役立ちできるように尽力して参ります。