子供から高齢者まで多様な健康づくりのニーズに応えるスポーツクラブを運営する株式会社ルネサンス。
今回は、ルネサンスのスポーツクラブ事業でデジタルの接点を通じてお客様とコミュニケーションを図るチーム責任者の松尾様と、ビッグデータ解析をご担当されている重光様に、行動分析ツールAmplitude導入の決め手や導入後の変化、具体的な改善事例についてお話を伺いました。
課題
- データはあるが、事業に活用できていない
- 分析に時間がかかり、事業スピードと示唆出しのスピードが合わない
効果
- データの民主化に成功し、社内の意思決定もデータドリブンに
- 分析にかかる工数を10分の1程度に削減成功し、分析から施策実施までのスピード向上
- ROI(投資利益率)の計算ができるようになり、効果測定が可能に
展望
- 複数チャネルのデータから行動分析し、よりパーソナライズされた施策実施
- リアルとデータの融合で顧客満足度を高める
総合型スポーツクラブを核とした生きがい創りをサポート
松尾様|
弊社はテニススクールから創業し、現在は全国でスポーツクラブや介護リハビリ施設など計160か所以上の施設を運営しています。また、企業や健康保険組合の健康づくり支援や全国の自治体の介護予防事業の受託、オンライン事業、海外市場へ向けた取り組みなど、健康分野におけるサービスを多岐にわたって展開しています。
今年度より長期ビジョン「人生100年時代を豊かにする健康ソリューションカンパニー」を掲げ、さらなる成長を目指しています。
重光様|
私たちの部署は主にスポーツクラブ側のお客様向けのサービスを企画しており、マーケティングオートメーション(MA)ツールやアプリ、ビッグデータ解析等、デジタルの接点を通じてお客様とコミュニケーションを図るチームで、松尾は責任者をしています。
私は主にビッグデータ解析を担当しており、直近では、継続率を上げてLTVを向上させることを目的として、運動の習慣化やファンを増やしていくことを命題としています。
ビッグデータ活用が鍵、データの民主化実現に向けて導入
Amplitude導入時のデータ活用に関する課題
松尾様|
弊社には、実際のスポーツクラブ利用で蓄積されるリアルデータに加え、ECやアプリの導入によりデジタルデータも溜まっていました。しかし、いざデータを分析するとなるとデータ量が多くて取り扱えていませんでした。例えば、あるサービス単位での利用率は見えても、お客様おひとり単位で分析しようとすると、Excelでは限界がありました。
そこで取り組んだのが、大量のデータを取り扱うためのSQLを書ける外部スタッフの採用でした。データのSQL加工は可能になりましたが、加工したデータから示唆を出し事業に生かそうとなると、1つの課題に対して1か月以上の時間を要すこともあり、事業スピードと示唆出しのスピードが合っていませんでした。
元々、分析するデータソースについても、会員の管理基盤がまずあり、その中には購買履歴データや来館履歴、契約データもあります。さらに様々なWEBサービスをSaaS導入にて実現してきた弊社では、各サービスごとにあるデータベースを、会員IDをユニークキーにして、SQLで紐づけて、分析データを都度作成していましたので、とても大変でした。
データはあるのに事業に活用できない、という大きなジレンマを抱え、いかにビッグデータを事業に活用するか、そのスピードをいかに高めるか、といった観点で良いソリューションを探していたところ、Amplitudeという素晴らしいツールに出会えたわけです。
Amplitudeを知ったきっかけ
松尾様|
少なくとも2019年ごろにはAmplitudeの事例に触れていたと記憶しています。
当時は、別の分析ツールを導入しており具体的な検討には至ってなかったのですが、データ分析の民主化という観点で、いずれは使ってみたいと思っていたのがきっかけです。
Amplitudeで一番良いと思ったのは、海外のグロース企業のノウハウを詰め込んだ分析のテンプレートが入っているので、データを入れるとすぐに示唆を返してくれる点です。事業スピードに分析からの示唆出しをいかに追いつかせるかという課題の観点から、非常に魅力を感じていました。
他の分析ツールは使っていましたか?
松尾様|
一番最初はExcelで分析を行っており、その後データ分析ツールを導入して活用に向けたチャレンジをしていました。Amplitudeは3つ目の分析ツールになります。
最初に導入した分析ツールは、予測に用いるデータセットを投入すれば示唆を返してくれて、モデリングまで自動で行う素晴らしい物でした。しかし実際に分析を実施しようとすると、分析のトライアンドエラーを行うためのデータセットを作り込む工数の面でかなり大変でした。
そこで、データセット作成の効率化を目的とした分析ツールを導入したのですが、なにぶん専門性が高く、担当者一人で動かすところは変わらなかったため、結局スピード感のボトルネック解消には至らず、課題を抱えたままでした。
Amplitudeを選んだ理由、導入の決め手
重光様|
データ分析の民主化が最大のポイントだと思っています。
私がジョインした昨年12月はAmplitudeのPoC実施中でした。当時の業務フローはSQLサーバーからデータを抽出し、分析用のデータセットを作成し、それをPythonやSPSSに入れ込んで統計解析し、出た結果をまたExcelに戻してグラフ化しパワポ上に付けて、という一連の流れで、レポーティングまで非常に時間がかかっていました。
さらに、SQLもPythonも書けて統計もできる人が限られた状態で、私自身もそれを期待されて入ったのですが、誰かに相談しようと思っても、現場のリアルを知っている方・データの入り方を知っている方と課題を解決したい担当者が別々であったため、分析課題をトータルで把握することが困難でした。
今回、Amplitudeの導入により、データの入り方や見方、処理の仕方といった壁がなくなり、現場の方もツールに触れてデータを確認できるようになったことが、導入して一番良かった点です。
他社の分析ツールとの比較、使いやすいポイント
重光様|
何と言っても直感的な操作感がある点です。
データの中から使うデータを選ぶだけでグラフ化が始まり、結果もすぐに出てきて、そこに抽出条件やグループ化を加えていく度に表示が変わることに驚きました。他のツールでは、実行ボタンを押すまで自分の操作やプログラムにミスがないかわかりませんでしたからね。
また、処理が複雑になればなるほど、実行ボタンを押した後の応答時間が長くなるので、自分は正しい設定をできていたのか不安が募ります。けれどもAmplitudeの場合は操作するたびにパッと結果が更新されるので、自分が間違えた場合もすぐに修正でき、プロセスを一個一個確認しながら細分化できる点にも使いやすさがあると思います。
松尾様|
自動でグラフ化され、違いがはっきりと可視化される点が素晴らしいと思います。
10と100の違いが10倍というのは、数字を読んでいる人は頭の中で勝手にグラフをイメージして視覚的に違いを認識するわけですが、Amplitudeは長さや割合の違いを目の前でその場でグラフで示せるので、直感的にここにヒントがありそうだと、数字を読まなくても気づけるのがすごいなと思います。
分析をしている感覚すらないままAmplitudeでデータ活用
Amplitude実装まで
松尾様|
Amplitudeの導入に関しては、代理店であるDearOneさんのサポートが素晴らしかったです。いざツールを入れようとなった時に、データのつなぎ込みやタグの配置など、弊社に知識がなくても導入のスタートラインまで連れてきてくれたという感覚があります。
弊社の情シスも忙しいのでなかなか対応が難しく、寄り添って頂けたという印象をDearOneさんには抱いています。
導入時の運用メンバーの構成
松尾様|
重光が入る前からPoCはスタートしており、その時点でのメンバーは6〜7人くらいでした。分析を少しかじっていた私に加え、入会見込み客獲得のプロモーション担当メンバーが2人。彼らはGoogle Analytics(GA)を触っていましたが、より高度な分析を実施したいということで入りました。
さらに、自分が以前いた現場のオペレーション企画を行う部署のメンバーや、直近でEC事業を立ち上げたメンバー、オンラインスタジオ事業を立ち上げたメンバーが加わりました。
Amplitude活用人数の推移
松尾様|
ちょうど、自社でAmplitudeを使える様になるまでDearOneさんに伴走頂く「スタートダッシュプログラム」が今まさに進行中で、週1でサポート頂いており、参加メンバーは16人くらいです。元々分析や数字が好きなメンバーから、直近では育児休暇明けで戻ってきていきなりAmplitudeを触るというメンバーまで様々です。
グラフ化のところで視覚的に分かるという前出のポイントは、そのメンバーたちにとって非常に新鮮だったと思います。分析しているという感覚すらないかもしれません。興味に対して答えてくれるという感覚なのでは、と思っています。
データの民主化に成功!作業工数も10分の1程度に
Amplitude導入後の社内の変化
重光様|
今まで、現場担当者は分析課題が発生すると、分析担当者から課題のヒアリングが行われた後、レポーティングされるまで待つという状態でしたが、Amplitudeを導入してからは現場担当者自らが動かせるような期待を持ち始めています。
例えばこういう結果が出たとか、この結果ではここに違和感があるとか、これって何だろうといった議論がチャット上で行われるようになりました。画像やURLを張り付けてすぐに共有するので、あえて会議を設定することがなくなり、チャット上でラフにコミュニケーションができるようになりました。
分析も、施策までのスピード感も、10分の1くらいになった感覚です。工数もスケジュールもぎゅっと凝縮されて非常に少なくなりました。
これまでは、分析結果について人にわかりやすく説明するための書類・資料作成に多大な時間をかけてしまい、鮮度が落ちるということがありました。けれども今はAmplitudeできれいなグラフがすぐに出せますし、視覚的にもわかりやすいので、作業工数短縮と同時に、皆がこれについて話そうと席に座るスタートラインまでの時間が非常に短くなりました。
松尾様|
極端に言うと、工数が0になったくらいのイメージです。
データ分析では、こういったことも見たいと思った人が、その分析結果に触れるまでに時間がかかります。着眼点を思いついた人がまず、分析できる人に説明をして、説明された側がその内容を理解してデータを起こす作業が始まって、という流れを考えると、Amplitudeの外側のところは分析担当官でなくても分析ができるようになりました。
本人がその場で答えを知れるという意味では、工数0という考え方もあると思います。知りたい人がその場で知れる世界観を作っていただきました。
Amplitude導入での改善事例
松尾様|
Web上でルネサンスを検討されている方が実際に申し込むまでにいくつもステップがあるのですが、そのステップがどれくらいお客様の離脱を招いているのか、Amplitudeで明らかにすることができました。
今までは計測すらできていなかったので、お客様にとって多分ここは面倒くさいよね、という「多分」が「どれくらい」という風に分かってきたので、そこに投資をしたらどれくらい効果が出るか、ROIの計算ができるようになったのが弊社として一番大きかったです。
そこに投資をしたら成果として返ってくる証明ができるので、意思決定を自信を持ってできるようになりました。担当者レベルでは分かっていても、うまく説明できずに発生していた機会ロスが、計測によってなくなったのは大きな変化のひとつです。
そこで分かったポイントに対しては、そのステップをなくせるかという話であったり、離脱することがわかっているので、離脱するバツボタンを押す時にWeb接客ツールでもう一度お声がけをする等の施策が動くようになりました。
そして、特定のランディングページを経て来訪したお客様の方が成約率が高くなるとわかっているので、Web接客ツールでそこをお勧めすることや、全国で展開するスポーツクラブのクラブ間地域差をなくした方が成果が高そうだということがわかってきたので、ルールを整える動きが社内でも出てきました。まさにDXだなと思います。
データドリブンな形で社内の意思決定が行われ、それが行動に変容するという動きが本当に今始まっているので、分析もしやすくなる上に、共通のWeb施策を打てるようになり、ゆくゆくは現場がよりお客様のために時間を使えるようになると思っています。
具体的な改善施策
重光様、松尾様|
特定のサービスを利用する方の特徴を把握することができるようになりました。
例えば、購買データからどういう方がプロテインを買っているのかを、性年代だけではなく、契約の内容や利用履歴から類推される嗜好性などによって分類できたことで、特定のサービスを利用されている方にプロテインを購入いただいていることが多いなど、誰にご提案をすれば喜んでいただけるのか、が見えてきました。
松尾様|
デジタル接客を推進していくと、どうしても施策量が増えていく傾向があります。受け取り手のお客様にとっては一日にどれだけオファーが来るのかという話になります。喜んでいただこうと思って行った施策が、むしろ反感を買うことになるのは逆効果なので、気を付けながらやっています。そうすると、これは迷惑にならないだろうかと、自信を持って施策を打てなくなってきます。
そのため、どのサービスを使っている方に買われやすいというのは、その方々にとってこの情報は有益と読み解けるので、買ってもらえる、或いは喜んでもらえる方がどこにいるのか探せるようになりました。
重光様|
もともとこの属性で見てみようと狙ったわけではなくて、スタートダッシュプログラムの中で色々機能を教えて頂いたので、ここにこれを入れてみたらどうなるかな、と興味本位でやってみた結果から、予想以上によい発見が生まれた感じです。
気になったところを即座に深堀できるので、こうしてみたらどうだろうという仮説検証をその場でトライアンドエラーで行い、その結果の予測もつきやすくなったため、お客様に精度高くお届けできると思っています。
今後Amplitudeをどのように活用していきますか?
重光様|
既に様々な示唆が見えてきてはいますが、投入したいデータがまだまだ沢山あります。今は本当に基本的なデータのみ入れている状態なので、こういうデータを入れてこんな切り口で見たいというものが続々と控えています。そこを早く充実させて行動分析し、パーソナライズされた施策につなげたいと思います。
松尾様|
ミーティングやディスカッションをしている場所に円卓とモニターがあって、その画面が常にAmplitudeというイメージです。データドリブンと言いますが、事実データでこういう風なことが見えるということ、そして我々は最終的にリアルな顧客接点になるので、リアルの知見を持っている人が同じテーブルで同じ事実を見ながらディスカッションを行い、例えば現場からの声とデータで答え合わせしながら、どうやってお客様に健康を届けていくかという話がある状態が理想だと思います。
今後DearOne社に期待すること
重光様|
現在すでに十分なサポートと伴走をして頂いている最中ですが、日々の業務に追われてなかなか付いていけないメンバーや、もっと速く走りたいというメンバーもいたり、様々な個性がある中で伴走して頂いているので、その底上げと引き上げを両立しながら、より一層データ分析の民主化へと導いていただけたらと思っています。よろしくお願いします。
松尾様|
購入者・販売者という関係よりも、共通の目的に対して一緒に併走するパートナーの関係性を今後もお願いしたいし作っていきたいと思っています。もちろん我々をバージョンアップして頂く伴走も期待したいところです。
逆に弊社からも、こういう使い方をしていますとか、こういうことがあるとより良いツールになるといったフィードバックも、Amplitude を使えば使うほど要望の形で出てくると思っています。お互いがお互いを高めていけるパートナーになれたら素晴らしいと思っています。
− インタビュアー後記
▼株式会社DearOne グロースマーケティング部 カスタマーサクセス 小島健一
「分析にかかる工数が10分の1ぐらいになった」とのお言葉が聞け、非常に嬉しかったです。我々の支援からの効果を実感していただけていると思います。
WEBサイトのユーザー行動と契約、退会、スタジオプログラム受講などスポーツクラブの店舗での行動データを紐付けることにより、「実際に入会した人のWEBサイト上の行動の分析」が可能になるなど、オンライン・オフラインを跨いだ分析環境の構築として好例となっていると思っております。
今後は社内でもAmplitudeの利用者が増え、データ活用が加速していくと感じております。