NTTドコモが提供する、スマートフォンアプリ活用の決済サービス「d払い」。
今回は、d払いアプリのUI/UXを担当されている阿部様と松本様に、Amplitude導入の決め手や導入後の変化、具体的な改善事例についてお話を伺いました。
課題
- 各部署で異なるツールを使用しており、全体像の把握やデータ分析が困難
- 専門的なデータ分析の属人化
効果
- プロジェクト全体でのデータ分析をレポート化
- 1人1人の分析レベルが向上し、各人で深掘り分析が可能に
- ユーザー像・ユーザー行動が可視化されたことによる新たな観点での施策実施
展望
- 定性調査とアクセス解析との連動
取扱高1兆2,500億円、ユーザー数4,300万人のスマホ決済サービス「d払い」
松本様|
「d払い」は、2018年4月にローンチした決済アプリで、様々な支払いに利用できるサービスです。
その他クーポンやキャンペーンも充実しており、dポイントをお得にためて使えるサービスです。
阿部様|
2021年度は、取扱高1兆2,500億円、ユーザー数4,300万人を達成しました。
UIが優れたツールで、誰でもすぐにデータ分析可能
Amplitude導入時のデータ活用に関する課題
阿部様|
Amplitude導入前は、GA(GoogleAnalytics)と自社独自の決済データを用いて分析を行っていました。ただ、GA担当部署と決済データ担当部署が異なっており、データ照合に時間がかかることもあって、双方を紐づけた分析があまりできていないことが課題でした。
他社の分析ツールとの比較、使いやすいポイント
阿部様|
導入前に資料やデモを拝見した際、何よりもUIが優れていると感じました。米国の先進企業や大手企業も次々と導入し、磨かれたUIを作成されているので、使いやすい上に分析しやすく、さらに拡張していくだろうと思いました
メジャーな分析ツールであるGAと比較しても一目で使いやすそうだと感じていました。
Amplitudeを選んだ理由、導入の決め手
阿部様|
導入前のDearOneさんからのプレゼン時に、アプリ上のどのボタンを押したか、どの画面に何秒滞在したかを取れるGAデータと、決済に関するドコモのデータを繋げて、一つの体験として分析できることを具体的にご教示頂きました。
これはAmplitudeにしかできないクロスチャネル分析だと思います。ユーザーのゴールデンパス、つまり最も理想的な体験を定めることができ、どこで離脱しているかの把握や仮説も立てられると知りました。
さらに、大手や全国展開している他社の成功事例も複数ご紹介頂きました。d払いは店舗で使って頂くことが多いサービスなので、同様にユーザー行動と体験を分析して効果を上げたいと考え、導入が決定しました。
GoogleAnalyticsは使い方を知っている方でなければなかなか見ようと思わないのですが、Amplitudeは昨日入社した人にも見やすいと思います。 誰もがデータを見れるというところがポイントで、誰もが簡単に分析できる機能が充実している点が優れています。
運用メンバーの構成とAmplitude活用人数の推移
阿部様|
Amplitudeを活用しているUI/UXチームのレギュラーメンバーは大体5〜6名です。その他の部門でもチャートを参照してデータを確認しています。
泉|
利用者は導入当初から徐々に増えていて、Amplitudeの利用者アカウント数はトータルで200名弱にのぼります。(2022年10月現在)
「Weekly Learning User(以下、WLU)」という、Amplitudeでチャートを作成し、チームメンバーにシェアしているユーザーの数は、直近で10名前後です。WLUは組織の中でどれだけ分析が浸透しているかを測定する指標です。 つまり、現在では10名程度が分析して展開を行い、190名程度がそのデータを見ているという状況です。
カスタマージャーニー全体を可視化でき、1人1人の分析レベルが格段にUP
Amplitude導入後の社内の変化
松本様|
導入後の変化は、カスタマージャーニー全体を可視化できたことと、各人が深掘り分析できるようになったこと、この2点があります。
これまでは部署ごとに様々異なるツールを契約していました。例えば我々の部署ではGAを契約しているためアクセス解析を参照し、別部署では決済のデータのみを見ている状態でした。
モバイルオーダー(旧:「予約・注文」)を担当する立場からすると、アクセス解析だけではアプリ上での動線は決済ボタンのタブに入るまでしか分からず、加盟店様のページに関してはそもそも決済以降のデータが取得できませんでした。決済を見れるチームの側も、決済がどのくらい上がったかまでしか分かりませんでした。
この二つの情報を紐づけることができなかったため、例えばある加盟店で決済している人たちがアプリ上でどう動いたかは分からず、それぞれのチームが断片的な情報のみ知っている状況でしたが、Amplitudeでその二つのデータを繋げて分析することで、カスタマージャーニー全体を可視化することができました。
また、GAやTableauの場合、ヴィジュアライズも簡単に出来る一方で、深くユーザー行動を分析する目的で使いこなすには難しいところもあり、スキルのある特定の担当者のみが利用している状況でした。つまり、何かを分析したい人は○○さんに聞く、という形でした。
さらに、チーム内だと誰に聞けばいいか分かるものの、部署ごとにツールが分かれているため、他部署へ「アクセス解析上の課題を決済で見るとどうか」といった依頼を行うと、回答が一週間後になるなどタイムロスが発生していました。
DearOneさんに勉強会(Amplitudeスタートダッシュプログラム)のご支援を頂き、まとまった単位の人数が使いこなせるようになったので、○○さんに依頼するということが発生しなくなりました。そして一人一人が分析できるようになり、ある程度自分でデータを繋げて見ることができるようになったことで、非常に議論も活性化し、効率的になったと感じています。
勉強会でメンバーのAmplitude活用スキルが向上
松本様|
導入当初は前述の勉強会(Amplitudeスタートダッシュプログラム)を頻繁に行っていただき、5セッションを1セットで、それを4回くらい開催いただきました。
GAの場合、各人が事前資料を見てわかったつもりでも、自分で手を動かして分析できるようにはなりませんでした。Amplitudeの場合は勉強会を開いて、モバイルオーダー用やキャンペーン用といったチームごとによく使う指標を交えて教えて頂いたおかげで、自ら分析ができるようになりました。
勉強会に参加するメンバーの業務特性に合わせて、例えば、Amplitude上のキャンペーン時によく使うチャートや、UIのカゴ落ちを見る時にも使えるデータや、使うイベント等もカスタマイズしながら、ケースに沿って教えていただきました。
この勉強会を受けて、最初はAmplitudeで分析できる人が数名だったのが、プロジェクト単位で広がったため皆が使えるようになりました。
以前使用していた別のツールの時は、勉強会に参加後、わからないことが出てきてもFAQで探すしかありませんでした。Amplitudeの場合は専任のカスタマーサクセス担当者から具体的に教えて頂けるので、疑問もすぐに解消できます。
ユーザー像やユーザー行動の可視化でUI/UX改善
Amplitude導入のPoC施策内容について
松本様|
昨秋にAmplitudeを使用したモバイルオーダーの改善活動を行いました。
元々部署ごとにツールがわかれていたせいで、全体的に見れるレポートが把握できない現状だったため、基盤のレポートを整えること、そこから深掘り分析を行うこと、この2点のアクションから改善活動をスタートしました。
まず、コホート*1コホート:同じ属性を持つユーザーグループのことやユーザーの対象サービスの使い方といった変化が分かるベーシックなレポートを作成して頂き、分析作業の工数や無駄を省くことができました。
レポート作成後、d払いアプリを立ち上げてモバイルオーダーを決済するところまで通しで見られるようになった時に、決済の推移から初めて気づいたことがありました。
弊社サービスには「d曜日」という、金曜と土曜にポイント還元率が高くなる施策があります。当然、「d曜日」にユーザーの回遊も高まると考えていたのですが、実際には想定程の回遊をされていませんでした。
そこでそのデータを元にプロジェクトに関わるメンバーとディスカッションを行い、一番のベネフィットをユーザーに届けられていないのではという仮説が立ちました。
そこから定性的にアンケートを取り、理解度やベネフィットの浸透が十分ではないことがわかりました。そこで、より分かりやすいベネフィット表記や還元率について改めてディスカッションを行い、これまでキャンペーン枠内にあった還元率記載を、紐づけも含めてモバイルオーダーのコンテンツで記載することになりました。
定量的な分析で原因のあたりをつけ、定性的な調査でユーザーの現状を高い解像度で把握する、という手法をとったのです。
表記を変えること自体は簡単だった上、対象の日のポイント率が10ポイント程度上がる結果になりました。
これまで気づかなかったユーザーの利用状況が見れたことで発見につながったのが、1点目のアクションです。
その後、普段のユーザー像をもう少し具体化したいとなりました。
例えばよく利用するサービスを飲食や交通系といったセグメント毎に分けたり、未利用者・利用者・ロイヤルユーザーといったライフサイクルの変化を見れるチャートがあるので、様々なセグメントでどのような利用が行われているかを確認しました。
これまでだと自分でセグメントを設定するか、様々なデータと紐づけを行う必要があったのですが、Amplitudeではこうした手動操作なく、必要な指標が簡単に出せます。
松本様|
ライフサイクル分析で利用者・未利用者・ロイヤル層の休眠復活を見るなかで一番大きな発見がありました。
これまでは月2〜3回といった一定間隔で使っているロイヤルユーザーが一定数いるのだろうと推測していましたが、実際はまばらでした。
平均利用数の形でまとめると月に1回くらいと考えていたのですが、セグメント別に分けるとかなり傾向も違い、ユーザーも結構休眠しながらたまに再利用していることがわかりました。
その結果、休眠している人たちがキャンペーンで再利用しているのでは、という仮説を立てました。定性調査のアンケートでもそのような結果が見られたため、キャンペーンではなく利便性によって再利用を促せないか、と考えました。
さらに分析を進めると、モバイルオーダーをよく利用している人は、d払いトップにある利用履歴のコンテンツが使われていることがわかりました。既に利用している人向けのコンテンツを、最も訴求力のあるトップに出し続けるのはもったいないとなりました。
そこで、未利用や利用が月1回以下と利用頻度が低くなっている人に関しては、出し分けを行い、加盟店のベネフィットを告知できるようなコンテンツを企画しています。
これまでの分析ではそこまでユーザー像の特定ができていませんでしたが、Amplitudeを使った分析ではこれらの新しい発見があり、これからも効果が出ると社内でも大きく期待しています。
Amplitudeを活用した改善事例
阿部様|
d払いは競合が多いサービスなので、UI/UXや日々の使い勝手の改善が重要になります。ユーザーに寄り添ったUI/UXの改善こそが、我々チームのミッションです。
ちょっとしたボタンの配置等で使い勝手が変わったりするのが重要だということが分かっていても、その効果が測定できていないという課題がありました。
Amplitudeで分析すると小さいボタンの配置換えでの効果も、実際の行動履歴と照らし合わせてすぐに確認できるので、この半年で数十回行った小さな改修の分析を一つ一つ丁寧に行う事ができました。
具体的に、これは何秒早かったとか、これはタップ率5%上がった、などの効果がすぐに見られるので、以前は効果が見えづらかったユーザーのUX向上につながる小さな改善策を行いやすくなりました。
阿部様|
また、d払いはドコモのサービスなので、ドコモの他のサービスと組み合わせて利用できることが強みになります。例えばdポイントカードを提示してd払いで払うとポイント二重取りができ、よりお得にポイントが貯まります。
組み合わせて使っていただくことでもらえるポイントが大きく増えることもあるので、dポイントカードとd払い両方を使って頂くことはサービスとしてかなり重要になります。
Amplitudeはドコモの決済データとも紐づいているため、コンビニやドラックストアなどの加盟店様で、dポイントカードを提示した人のうちd払い決済をした人の割合が確認できます。Amplitudeのすごいところは、このようなお店ごとのデータもすぐに分析して出せることです。
一定数の方は既にdポイントカードの提示とd払いを併用されていますが、利用率向上の余地があるとデータで分析できたので、より使いやすさを追求したUIUXの改善を7月に行いました。
これまではユーザーがdポイントカードを出して、次に決済の際にd払い画面を出すという複数の操作がレジ前で必要でした。改善後は、dポイントカードと支払いのコードは支払い画面でまとめて表示され、一度の画面操作でスムーズにdポイントカード提示と支払いができるようになりました。また、お店の方が読み込み時に見やすいよう、画面を傾けたら表示が切り替わるUIにしました。
ユーザーテストでも高評価でしたが、リリース後は、実際に多くの方に利用いただいていることが分析でわかっています。アンケートなどの調査でも「使いやすくなった」「dポイントカードの提示が増えた」「d払いの利用が増えた」などポジティブな結果が出ています。ドコモの強みを活かしたUIですが、賛否両方の声もありますので、さらに改善を重ねたいです。
DearOneカスタマーサクセスへの印象は?
松本様|
一番良かったのは、勉強会を開いて頂いたことと、我々のチーム以外からでも問い合わせ窓口としてご対応頂けることで、d払い全体のデータ分析に関して、このツールを使いこなすだけでなく、スキルのアップにもつながっています。
他社の場合、使い方を教えて終わりということが多いのですが、分析をレクチャーし問い合わせを受けるだけではなく、一緒に並走して頂けるのが良いです。
一緒に分析しながら考察し、実際にアウトプットを出して結果をディスカッションするというPDCAを一緒に出来るのが他社とは全然違うため、大変感謝しています。
今後Amplitudeをどのように活用していきますか?
松本様|
今年に入り、d払いの全体指標としてノーススターメトリック*2ノーススターメトリック:顧客満足度を高め、企業が中長期的な成長を目指すためKGIとKPIの間に設定する重要指標のことの設定を一緒に行いました。我々はアプリチームなので、今後は是非アプリの部分もブレイクダウンして、指標定義だけではなく、その後取るべきアクションや、定性調査にどう組み合わせていくかということを考えていきたいです。
DearOne社に期待すること
松本様|
定性調査とアクセス解析を分裂させずに組み合わせ、具体的部分と確実なアクセス面の数字を掛け合わせて、d払いアプリの発展に向けて伴走して頂ければと思っています。
今後ともどうぞよろしくお願いします。
− カスタマーサクセス 担当者コメント
▼株式会社DearOne グロースマーケティング部 カスタマーサクセス 泉 利也
メインの決済機能に加えて、モバイルオーダーなど多くの機能を含むスーパーアプリ。利用者数も大規模であるからこそ、微細な機能改善、UI改修が大きな経済効果を生み出す可能性を秘めているプロダクトのため、そうした変化をAmplitudeで計測することの有用性が見えた好事例だと感じています。プロダクトとして更なる飛躍ができるよう引き続きご支援ができればと思います。