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“モチベーションを誘発する”組織とは?MIXIが挑む! デザイン職独自の評価指針策定と狙い|Web担当者Forum秋

2023.12.20

はじめに

株式会社MIXIの横山です。本日は「モチベーションを誘発する組織とは?」というテーマで、私たちMIXIがデザイン職のマネジメントで実施してきた取り組みをシェアします。

全体の流れですが、

 ・(概要)全体の概要と組織紹介
 ・(組織開発)どのような考え方で組織開発をしているか
 ・(評価指針)どのように評価を実施しているか
 ・(効果検証)評価指針を策定・運用したことの成果
 ・(運用体制)どのような体制でデザイン職のマネジメントを実施しているか
 ・(展望)評価指針を踏まえた今後の展望

という流れでご説明します。

概要

まず本セッションでどのような話をするかという概略です。

MIXIでは、経営とデザイン組織を接続して、デザイン組織とデザイナー個人のベクトルを合わせるためにデザイン職独自の評価指針を策定・運用してきました。

評価指針を策定することでマネジメントスタンス(マネジメント側の定義)とデザイナー個人に対する期待値の解像度を高め、デザイン組織やデザイナー個人の結果や成果の向上につなげています。

結果として、MIXIの経営とデザイン組織の連動が強まることで経営側からの信頼を獲得。デザインへの投資が増え、デザイン組織に所属するデザイナー個人の評価も向上し、モチベーションのより高い状態で組織運営できるように変貌を遂げました。

本日はこの具体的なプロセスや評価指針の内容をご紹介します。

スピーカーを務める私は、MIXIで執行役員 CDO デザイン本部の本部長を務める横山と申します。デザイン領域でずっと経験を積んでおり、直近10年ほどはIT系の事業会社で、デザイン組織のマネジメントをしています。MIXIには約5年前に入社して、今年の4月からCDO(Chief Design Officer)を務めています。

会社概要

私たちMIXIは、SNS「mixi」やスマホゲーム「モンスト」で培ってきた「近しい人とのコミュニケーションをつなぐ事業創出」をケイパビリティと位置づけています。

上記のケイパビリティを軸として、JリーグのFC東京やBリーグの千葉ジェッツ、公営競技などのスポーツ事業、「家族アルバム みてね」などのライフスタイル事業、そして先日で10周年を迎えたモンストなどのデジタルエンターテインメント事業など、事業ドメインを広げ続けています。

「豊かなコミュニケーションを広げ、世界を幸せな驚きで包む。」というパーパスを掲げていて、現在は上記3領域で事業展開している形です。

本日の内容はこうした事業を展開しているIT事業会社におけるデザイン組織の話だとイメージして聞いていただければと思います。

組織開発に対する考え方

組織開発の考え方

セッションのテーマは組織開発ですが、私はずっとデザインをやってきましたので、何をする際にもデザインをする時の視点でアプローチをしています。MIXIにおけるデザイン職の組織開発も同様です。

デザインは「デザインに触れる人に寄り添う・共感することから始まる」と言われますが、MIXIの組織開発も同じ出発点となっています。評価指針を策定する上では、マネジメントの対象である一人ひとりのデザイナーが何を考えて、どう思っているか?から始めました。

普通に考えると、みんな良い仕事をしたいわけで、良くない仕事をしたいと思っている人はあまりいないと考えています。「さぼりたいな」「手を抜きたいな」「だるいな」ということはあっても、「良くない仕事をしたい」という人は本当に稀です。

そう考えた時、問題は組織と個人の「良い」がずれる場合があることだと考えました。

個人の「良い」が、組織の「悪い」につながることが生じるとしたら、そうならないようにすることが大切です。それがどういう状態なのかを明らかにする。そして、それが生じないように期待値のすり合わせをする、約束を作っていくことができれば、マネジメントも上手くいくものです。

組織開発の考え方2

個人の「良い」の集合体が組織なのではなく、まず上位に組織の目標やマネジメントの意思、組織の「良い」があって、それを踏まえて個人が「良い」活動をする集合体であることが大切だと考えています。

言うは易しで、実際にはいろいろなことが起こりますが、基本的にはこのスタンスを軸としてマネジメントに取り組んでいます。

組織開発の考え方3

MIXIのデザイン職にはデザイナーやディレクターがいます。こうしたデザイン職における個人の「良い」には、たとえば、以下のようなものがあります。

・知的好奇心が満たされる
・個人の職人性や作家性などの専門性が満たされる
・新しい仕事や大きな仕事などのチャレンジ機会が与えられる
・「それを満たしたい」という気持ちに応えるような機会が提供される
・「このデザインの向こうに大勢のユーザーがいる」「社会課題が解決される」といった仕事のやりがいがある
・工程の中で「もっとこうすると良くなるんじゃないか」「こうした表現を試してみてはどうか?」などの切磋琢磨を通じてデザインの品質が上がる
・たくさんの仲間がいる
・納得できる承認や評価や報酬がある

こうした要素一つひとつが、デザイン職がモチベーティブであるために必要なことです。

一方で、こうした個人の「良い」が悪い方向に作用するのは、たとえば「作ったのだから評価してほしい」とか、「作るべきものではなく、自分が作りたいもの、描きたいもの、使いたい技術で作ってしまう」といったケースがあります。

こうした思考は黄色信号で、結果として組織の「悪い」につながってしまう可能性があります。したがって、マネジメントは事業と接続するところを考える、あるいは「そうではなくて、こっちに行こう」と方向転換を促す等が必要です。

上記のようなことが起こってしまった場合にはもちろん対処するわけですが、起こる前に未然に防ぐことができるようなガイドがあれば効率はよくなります。

だからこそ、組織の「良い」の中に個人の「良い」をどう散りばめていくか、デザイン職一人ひとりのモチベーションにつながっていくような機会をどう提供していくかがマネジメントする上でのポイントだと考えています。

今日のテーマは「モチベーションを誘発する組織」ですが、MIXIのデザイン部門ではモチベーティブな組織を目指して、個人の「良い」に働きかけるような様々なアクションを並行して行っています。

組織開発の施策

今日は個別の内容は省略しますが、いろいろな施策や取り組みをやった中には成功も失敗もありました。ただ、こうした個別の施策がうまく作用したり、良いものが好循環を生んでいったりしています。

今日お話しする評価指針はこうした施策の上位概念として全体を束ねるものという位置づけで、組織をマネジメントするものになります。

組織の「良い」とは何か、期待する働きは何かを言語化する。そして、達成したメンバーの評価にマネジメントがコミットして、報酬や次の新しい役割で返すということを繰り返してきたというのが評価指針を通じた組織変革の流れになります。

評価指針の具体的な内容は?

評価指針(等級定義の構成)

ここから評価指針の具体的な内容に入っていきます。

MIXIには全職種共通の人事制度ルールブックがあります。私自身、評価のたびに読み返しており、とても良くできたルールブックになっています。

一方で、全社の人事制度ルールブックは全職種共通だからこそ、ビジネス職もエンジニア職も対象になります。したがって、全体的に抽象度が高い表現になっており、マネジメントが各職種に合わせて翻訳して伝える必要があります。この翻訳して伝える過程で問題が起こりがちです。

問題は大きく2つあり、1つはここ5年から10年でデザインに期待される領域が拡張し続けていることです。

本日のWeb担当者Forumのプログラムタイトルを見ていても、「デザイン」や「UX」といった言葉が何度も登場しています。これらの言葉がデザイナーでなくても当たり前に使われる世界になってきたことは喜ばしいことです。

同時に、デザイナー組織はこのニーズの広がりに応える必要があります。学び、成果を出さなければならない領域が広がる中で、メンバーをマネジメントする難易度は高まっています。

もうひとつは技術の進化で、デザインの表現や演出・制作の専門性が高まり続けていることです。

MIXIでも様々な事業で、いろいろな表現に取り組んでいます。私がデザインの世界に20年いた中でもやってきたことがないアプローチやタッチ、デザインもあり、デザインの専門性が深まり続けていることを感じます。

その中で、時には自分がやっていない領域で「事業の目標に対して、このデザインは効くか効かないか」を判断したり、評価したりすることがあります。これもかなり難易度が高いことです。

このようにデザイン職のマネジメント難易度が上がる中で、個々の経験や「マネジメントについて学んでいるか」といったマネジメント一人ひとりの力量で、マネジメント品質にばらつきが出てしまうという実態があり、結果として「評価のエラーが起こりやすい」「退職が続いてしまう」「若手が伸び悩む」といったことが起こっていました。

そこで、マネジメントの負担軽減のためにも、また、若手が自分で成長しやすい環境を用意するためにも、全職種共通の人事制度ルールブックを翻訳する形で、デザイン職の評価指針を作るに至りました。

評価指針(等級とグレード構成)

MIXIの全職種共通の人事制度は、G1からG6まで6つの等級で定義されており、数字が大きくなるほど上位となります。これに対応する形で、デザインもJunior、Young、Middle、Senior、Master、Jediという6段階で等級を定義しています。

評価指針の3要素(視座、スキル、登り方)

デザイン職の評価指針は、視座、スキル、登り方という3つの項目を6段階のグレードそれぞれに設定する形で構成しています。

視座を高めると見晴らしが良くなります。自分たちの影響範囲を見据えて、物事の本質をより深く理解してデザインに向き合う力です。

スキルは高くなるほど、デザインの品質や技術が向上するとともに、より抽象度が高いもの、たとえば、仕組みやシステムを作るといったこともデザインしていけるという力です。

最後の登り方は、次のグレードに登るためのラダーです。「次のグレードに登るためには、これをクリアしていこう」という形で、ステップを踏んで成長していけるように定義しています。

ここから順番に全社のルールブックとデザイン職の評価指針を比較しながら話していきます。以降のスライドはグレーの部分が全社ルールブックの定義、オレンジの部分がデザイン職の評価指針で、視座・スキル・登り方という3つで構成しています。これを念頭において、話をお聞きいただければと思います。

●G1-Junior

評価指針(G1)

G1は「基礎固め」の段階であり、「指示・指導に基づいて担当業務が遂行できる」状態です。スライド右側は説明しませんが、求められる行動や能力がより具体的に書かれています。

これに対して、デザイン職のJuniorは視座が「目の前のタスクやチーム目標を見据えたクリエイティブ制作」、スキルは「ツールを使ってデザイン要件を満たせる」としています。

なお、ここでの「タスク」は、作るものが決まっていて、これを制作してくださいとアサインされている状態を指しています。

また、「デザイン要件を満たせる」というのは、デザインの作用に関する意図や目標は既に決まっていて、その意図や目標に応えるクリエイティブを制作するということで、これがデザイン職のスタートになります。たとえば、新卒のデザイン職はJuniorからスタートします。

評価指針(JuniorからYoungへの登り方)

スキルと視座を踏まえて、次のグレードへの登り方ですが、

 ・1人でタスクを回せるようになる
 ・仕事に必要な情報を能動的にとりに行ける
 ・経験や実績を積み、周りの信頼を重ねていく

これらをクリアしながら、Youngを目指して階段を登っていきます。

●G2-Young

評価指針(G2)

次のG2は「自立」の段階で、「独力で担当業務が遂行できる」状態です。

デザイン職になると、視座は「グループ目標を見据えたクリエイティブ制作」。スキルは「要件を満たした上でより良いクリエイティブを追求できる」です。

Youngになると何かを作るだけではなくて、デザインする・作る行為を通して目標への到達を意識するレイヤーです。目標に向かうベクトルの中でデザイン品質を追求していくスタンスで、デザインに取り組んでもらうことになります。

最初は周りのサポートを受けながら徐々に自立・自走して、これを定常的に行えるデザイン職になっていく工程がYoungです。

評価指針(YoungからMiddleへの登り方)

次のグレードに進むためには、

・事業や組織の計画を理解し、必要な準備を能動的に始められる
・ディスカッションの中心メンバーになっていく
・チームやグループに制作を通して良い影響を与えられる
・制作テンプレートや既存実装を活用して、独力でクリエイティブ制作ができる
・異なる職能と連携し、クリエイティブ制作の技術課題を解決できる
・他部署とも交流を深め、円滑に進行出来るようになる
・課題を分析し、最適な企画立案をしていく

これらをクリアしながらMiddleへの階段を登っていきます。

なお、登り方7項目のうち後半4つ(スライドの黄色マーカー部分)は、組織を一緒にマネジメントしているマネージャーが、「現場でマネジメントする上でこんな定義もあるとよいかも知れません」と考えてくれたものです。

少し抽象度をあげて表現すると様々な職能のマネジメントに応用できそうでしたので、元々の評価指針に加えた形となっています。

評価指針はこのような細かいバージョンアップを9回実施しています。人事評価をしたタイミングで、マネジメントチームで「今の指針で適切にナビゲーションできているか?」と話してバージョンアップしています。

●G3-Middle

評価指針(G3)

次がG3です。

G3は組織の「主力」であり、「所属組織の中心メンバーとして組織の業務遂行に貢献できる」が全社人事制度ルールブックにおける表現です。

これに対して、デザイン職のMiddleは視座が「部室目標を見据えたクリエイティブ制作や課題解決」、スキルは「課題や目的に対しうつべきクリエイティブを提案/実装できる」としています。

目標の大きさ、部署の大きさが変わるとともに、課題解決に向けてデザインでアプローチできるようになる。あるいは課題解決に向けて「こんなデザインはどうか?」と提案から実装まで責任を持って遂行できるようになるレイヤーです。

これができると、一人前のデザイン職です。この段階になると、それぞれがポートフォリオやデザイン実績を積み始めているようなフェーズになります。

評価指針(MiddleからSeniorへの登り方)

次のグレードに進むためには、

・事業や組織の施策立案からクリエイティビティを発揮/推進できる
・異なる職能や組織の価値観や文脈をきちんと理解し、制作できる
・制作の考えや思いをきちんと言語化し、納得や共感を得る努力を惜しまない
・最適なワークフロー/ツール/フレームワーク等を的確に判断し円滑導入できる
・必要なリニューアル/リプレイス/リファクタリングを事業とマージし実行できる
・事業や組織の推進と共に、メンバー育成に関わり始める
・リーダーシップの輪が職能や組織を超え広がっていく

これらをクリアしながら、Seniorへの階段を登ってもらっています。

Seniorへの階段は、今後のキャリアの主軸をマネジメントに置くか、あるいはデザインスペシャリティで個人貢献者として組織に貢献していくかを選ぶ最初のターニングポイントになります。

日々の仕事や組織への活動以外に、「自身のキャリアをマネジメントとスペシャリスト、どちらに向けていきますか?」ということを考えてもらうようにしています。

ただし、マネジメントとスペシャリストのキャリアは、一度選んだ後に変えることも可能になっています。

●G4-Senior

評価指針(G4)

続いて、G4は「現場の実行のリード」です。

徐々に難易度はあがってきます。全社人事制度ルールブックの定義は「上位方針を実現するためのプラン・方策を具体化し、周囲を巻き込みリードしながら実行する」です。

これに対して、デザイン職のSeniorは、視座「本部目標を見据えたクリエイティブ制作や課題定義や解決」ができる、スキルは「周りを巻き込みデザインリーダーシップで推進できる」となります。

Middleと比べて目標の大きさが更に広がるとともに、課題定義や課題解決に向けてデザインでアプローチできるようになるレイヤーです。

「課題を定義する」というのは目標達成に向けた打ち手の仮説をデータや定性的なユーザーの声や行動から推測して、そこにデザインでアプローチできる状態を指しています。

実現していくには、デザイン能力だけではなく、デザインに必要な開発のエンジニアを巻き込む、企画のプロデューサーを巻き込んでいくなどリーダーシップが必要です。プロダクトやプロジェクトの中心人物になっていけるレイヤーと定義しています。

これができるようになると、個人貢献者であればデザインリーダーやアートディレクター、クリエイティブディレクターと呼ばれる階層、また、マネジメント側であればデザインマネージャーレイヤーになります。

市場価値の高い貴重な人材になり始めて、仕事が少しずつデザイン業界に注目され始めるような工程になります。

評価指針(SeniorからMasterへの登り方)

Seniorから次のグレードに進むためには、

・MIXIの経営戦略や経営指標を理解し、全社視点で思考できる
・MIXIの事業ポートフォリオのスケールにクリエイティブで貢献できる
・全社にデザインの考え方を浸透させる啓発活動を推進できる
・デザイン本部や部室を代表した仕事ができる
・新しい技術を積極的に取り入れ、新たな表現や演出や制作に挑戦し続ける
・メンバーの育成や成長を促し、導くことができる

これらをクリアしながらMasterを目指して階段を上っていきます。

●G5-Master

評価指針(G5)

次はG5です。

「現場と経営の接点」であり、「経営のビジョンを具現化して現場全体を指揮し、また経営に対して、現場の視点・意見に基づいた提案・提言を行う」です。

これに対してデザイン職のMasterは、視座「経営方針を見据えたクリエイティブ制作や課題発見や課題定義や課題解決」。スキルは「事業のあるべき姿をクリエイティブで描く/デザイン組織開発の推進」です。

課題を発見するというのは、「事業やプロダクトが人や社会にどのような提供価値を広げていくといいのか?」といった視座で、デザインの専門性を発揮して事業価値や企業価値を高めていくことにチャレンジしていけるレイヤーを指しています。

また、チャレンジというのは個人に限らず、チャレンジできるチームやデザイン組織を作る、また「チャレンジを推進するデザイン組織はどうあるべきなのか?」というベクトルを指し示して、自ら率先して先頭を走れることが要件になっています。

業界でも希少性の高い、稀有な人材になり始めている段階で、社内においては若手のロールモデルになっている状態です。仕事だけでなく、個人の名前もデザイン業界で注目され始めているようなレイヤーになります。

評価指針(MasterからJedi)

次のグレードに進むためには、

・MIXIの事業やデザインを通し、社会をより良くしていく活動を主導できる
・MIXI DESIGNのケイパビリティを探索/深化する活動を主導できる
・デザインコミュニティでMIXIのプレゼンスを高める活動を主導できる(採用の魅力付けになる)
・直接的な制作以外の全社プロジェクトにも能動的に参加し、デザインをより広義に拡張できる

これらをクリアしながら、Jediを目指して階段を上ってもらいます。

●G6-Jedi

評価指針(G6)

G6は「事業/機能全体の舵取り」をする役割であり、「経営の一翼として、事業/機能全体での業績達成方針の策定・実行またはそれに準じる責任を負う」となります。

デザイン職の場合には、視座「中期経営計画の実現による企業価値の向上」、スキル「デザイン経営/デザインで全社課題解決/デザイン業界への還元」としています。

ここまでくると、自分の価値を自分で定義しなければならないレイヤーであり、それが出来なければ上がれないグレードです。

MIXIの新しい可能性を切り拓いていく人たちのグレードであり、デザインの専門性で経営をより多面的に強固にできる人材であったり、経営とデザインを直結させる存在であったりします。

活躍範囲もデザインの領域に閉じず、全社貢献の視座に立つことが必要です。更に、知見を自社に留まらずデザイン業界全体に還元して、業界発展の循環に寄与する人材でもあります。

このレイヤーは、経済産業省が定義する高度デザイン人材に当たると考えており、企業におけるCDO(Chief Designl Officer)やCXO(Chief Experience Officer)、VPoD(Vice President of Design)のようなデザイン領域の責任者を想定しています。個人としてもデザイン業界で一定の認知があり、業界で引っ張りだこの存在になり始めている状態です。

ここまでJuniorからJediまで、デザイン職にフォーカスした評価指針を説明してきました。このような形で全社の人事制度ルールブックを翻訳する形でデザイン職独自の評価指針を作り、マネジメントの負荷軽減、また、若手が自分から成長して階段を登っていくためのナビゲーションがある環境を作るために運用しています。

策定・運用の効果

評価指針を作った後、作ったものがきちんと機能しているのかが重要な論点です。「評価指針がどう機能して良くなってるのか?」を全て定量で測れるかは別として、効果検証は必ず向き合わないといけないテーマとして考えています。

評価指針の効果測定

ここまでシェアしてきた様々な取り組みを経て、現在までMIXIのデザイン組織は大きく変貌を遂げて成長しています。

会社からの期待に応えることは当然として、経営がデザインに可能性を感じる実績や成果を更に出し続ける、それを伝えて見える化し続ける組織にする。

私もCDOとして、価値をより多くの人に届け、MIXIの企業活動を通じて人や社会に心地よい豊かなコミュニケーションが広がっていくことを目指してマネジメントしています。

効果測定(グレード比)

変革を推進してきた過程でデザイン組織に所属するデザイン職の評価も大きく伸びています。スライドは組織におけるデザイナーのグレード分布がどう変化しているかを示したものです。

4年前はデザイナーの半分以上が下から2番目のYoungを占めていて、主力と呼ばれるMiddleは25%ぐらいでした。現在は主力であるMiddleが半数を超え、その上のSenior、Masterに対してピラミッドを描ける状態になっています。

私たちはデザインを通じて企業価値とか事業価値を高めたいわけですが、その過程でデザイナーの評価も上がっていることもすごく重要なことです。

今日は「モチベーティブな組織」というテーマです。モチベーティブな組織を作るためには評価でフィードバックが返ってくることは非常に大事だと捉えて、評価のサイクルをまわしています。

デザイン組織の実績のひとつを紹介します。今年、MIXIの社内アワードをオンラインとオフラインで同時開催しました。

開催したアワードでは、アートディレクションやデザイン、リアルタイム合成を使ったライブ配信をデザイン本部で担当。たくさんの新しいデザインの表現や技術が組み込まれたインタラクティブなデザインになりました。

こうしたチャレンジも、数年前はマネジメント側が「こういうことをしようよ」と伝えて、現場が「やりましょう」という感じでした。

しかし、いまは、現場が「こうしてみようよ」「デザインだけでは出来ないのでエンジニアを巻き込もう」と活動を主導して、素晴らしいアウトプットをしてくれています。これも変貌の成果です。

私たちはデザイン組織です。デザインするデザイナー側が楽しんで、もしくは、新しいチャレンジをしない限り、デザインを受け取る人に楽しい気持ちや豊かな気持ちを届けられないと考えています。

デザイン組織だからこそ、モチベーションがデザイン品質に直接的に関わります。だからこそ、モチベーティブな組織であり続けなければならないです。

社内に留まらないデザイン組織の活動

外部への発信
外部への発信2

モチベーティブなデザイン組織の活動は社内に留まらず、デザイン業界へのナレッジシェアも推進しています。今期だけでも17本のウェブメディアで、いろいろな技術や表現の発信をしています。

この活動も誰か特定の発信者がいるわけではなく、延べ29人のデザイン職がそれぞれ発信している素晴らしい状態です。

外部への発信3

こうした活動は今後もさらに続けていきますし、インターネットに留まらず、今日のようなオフラインイベントやデザインイベントにも出展して、外部といろいろな接点を持って活動しています。

もちろん事業会社ですので、外部との接点を通じて、優秀な仲間の獲得も狙っています。しかし、採用だけではなくデザイン業界への還元でもあり、デザイン組織の変貌を通じて「MIXIのデザイン組織、面白そうになっているね」といった空気を自分たちで作ることができるようになってきた成果だとも考えています。

評価指針の運用とマネジメントチームの構築

評価指針の運用体制

続いて評価指針のマネジメントの運用体制です。

今日シェアしてきた様々な取り組みは、マネジメントチームで実行しています。デザイン組織のビルドに着手し始めたとき、こういう状態は想像できていませんでしたが、リーダー、マネージャー、部室長などのマネジメントチームも気付けば大きくなっています。

組織をマネジメントしていると、時にはくじけそうになることもありますし、上手くいかないことも多々あります。そういう時にお互いに支え合える状態が「マネジメントがチームとして強くなる」ということだと考えており、良いマネジメントチーム作りが出来ていると感じています。

評価指針(マネージャー)

マネジメントが少しずつ増えていく過程で、グレードの定義と同様に、マネジメントに期待することも言語化して、役割や期待値をすり合わせながらやっています。

スライドはマネージャーの役割と期待値を抜粋したものですが、「部室目標を策定する」「実行のマイルストーンを引く」といった役割、また「目標に対してきちんとワークした人の評価は上の評価会で認められるように準備する」「目標未達メンバーにはきちんと向き合ってフィードバックする」といったスタンスなどを定義しています。

また、「デザインを学んできたのと同量、マネジメントについても学ぶ」ことも大事にしています。

デザインをメインに学んできた状態から、人柄だけでマネジメントしようとして失敗するケースをたくさんみてきた経験があるので、皆で同じマネジメントの書籍や漫画を読む、話し合うといったことをして学ぶ機会を作っています。

評価指針(部室長)

マネージャーの上位階層、部室長でも同様に定義しています。

部室長はマネージャーと比較すると、費用に対して成果がどうだったのかという責任、また、より長い時間軸、今でいえばAIなどをどう活用していくなども含めて新しいチャレンジをしたり価値を作ったりすることにコミットしています。

マネジメント同士でも、各レイヤーで役割やスタンスをドキュメント化することで期待値がすり合います。そして、一つひとつ実行して、同時に「それ出来なかったら私がやりますよ」といった補いあう関係性になるようにマネジメントチームを構成しています。

最近とあるメディアの方に「MIXIのデザイン組織のマネジメントは楽しそうにやっている。他社で同じような事例は聞いたことがない」と言われました。楽しいか楽しくないかは分かりませんが、独りでくじけさせないような仕組みを心がけています。

デザイン組織の展望

最後に、展望を簡単にご紹介します。

冒頭でお話ししたように、デザイン職が提供する価値が広がってきたことに対応する形でデザイン職独自の評価指針を作り、現在に至っています。

これからもデザイン組織として良い仕事を続ける限り、「今の評価指針だとちょっと足りない」状態になり続けることが自然だと思っています。逆にいえば、今の評価指針で十分だとすれば、デザインの価値が広がっていないということです。

これからもデザインの価値がより広がることに対応して、制度を運用し続ける、評価指針をアップデートし続けるスタンスでマネジメントしていきたいと思います。

また、MIXIは事業会社ですので、会社がある限り、事業開発・事業運営はなくなりません。

未来にはデザイン職というカテゴリーに囚われず、事業責任者やPdM(プロダクトマネージャー)やPO(プロダクトオーナー)などのポジションを評価指針に入れ込み、また登り方を提示できる未来を作っていきたいと考えています。

事業の提供価値や顧客体験がより大事になってくる時代ですので、今後もデザインでMIXIの事業創出を牽引していく必要があります。

そのためにも、デザインやもの作りの人たちがモチベーション高く働ける環境を、マネジメントとして提供していく必要があります。CDOとしても、そこにコミットしてやっていこうと考えています。

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