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モダンデータスタック実践~ファッション通販サイトGRLの分析とMA施策~|Growth Summit 2023

2023.12.19

ECビジネスを支えるモダンデータスタック

DearOne 安田|
こんにちは。本セッションは「モダンデータスタッフ実践 ファッション通販サイトGRLの分析とMA施策」というテーマでお送りします。よろしくお願いします。

本セッションのファシリテーションを担当するDearOneのマーケティング部を統括している安田と申します。よろしくお願いいたします。

セッションはパネルディスカッション形式で進めていきますが、本編に入る前にセッションのテーマともなっている「モダンデータスタック」を簡単に紹介いたします。

Modern Data Stack(モダンデータスタック)とは

モダンデータスタックは、先進的なマーケティングに取り組む企業が最近導入している考え方となり、顧客データや行動データを様々なデータソースから集め、シームレスにマーケティングに活用できるデータ活用基盤を指す単語です。

マーケティングにデータを活用されてる企業は非常に多いと思いますが、データ分析・活用をスムーズに行うためには、前段できちんとデータを整理しておく、そして、素早く活用できる状態にすることが必要です。

DearOneでは、データに基づくマーケティングを実践するためのステップを「ためる」「整える」「分析する」「つかう」という4ステップに整理しています。

上記の流れをスムーズに動かすための仕組みがモダンデータスタックという考え方であり、データ活用基盤を示すものになります。

本日はモダンデータスタックの構築に先んじて取り組まれているGRLさんの事例をお聞きできますので、楽しみにしております。

GRLの施策スピードを支える考え方と2つのMarTech ツール

DearOne 安田|
本編を始めるに際して、登壇者の方々に自己紹介いただきます。まずは小林さんお願いします。

GRL 小林氏|
初めまして。アートデコ株式会社の外部CIOをしている小林と申します。

アートデコはGRLという女性向けの通販サイトを運営しており、私は通販サイト・自社ECサイトのプロジェクトマネジメントを担当しています。PM(プロジェクトマネージャー)として携わって約3年になります。

コロナ禍のタイミングから試行錯誤して取り組んできましたが、外部環境の後押しもああって現在は1日50万人が閲覧する規模まで成長することができました。取り組みの過程では、本日一緒に登壇するDearOne齊藤さんからも多大な支援をいただきました。今日は取り組んできた内容の一部をご紹介します。本日はよろしくお願いいたします。

DearOne 安田|
ありがとうございます。自己紹介の中でも少しお話がありましたが、改めてGRLさんについてご紹介お願いできますか。

レディースファッション通販サイト「GRL」

GRL 小林氏|
GRLは「9,999円以下で全身揃うファストファッション」というコンセプト、つまり、1万円以下でトップス、ボトムス、シューズ、バッグ、アクセサリーなどの4,5点を購入いただける通販サイトを展開しています。

リアル店舗を展開していませんので、一般的な認知度はまだまだですが、若年層、とくに高校生から20代の女性にはかなり認知いただいているブランドであり、ECサイトになります。

SNSマーケティングに非常に力を入れており、2023年の夏にはInstagramのフォロワー数が130万人を超えて、国内のアパレル企業アカウントとしては、恐らく1位になりました。

著名なモデルの方々やSNSではインフルエンサーの方々と各種タイアップさせていただいており、これからも幅白い女性の皆さまにお洒落なトレンド感ある商品を届けていきたいと思います。

DearOne 安田|
フォロワー132万人というのは凄い人数ですね。

GRL 小林氏|
はい、ここまで多くの方にフォローいただくと、Instagramからの流入だけでも相当なボリュームになっています。

DearOne 安田|
続いて齊藤さん、自己紹介をよろしくお願いします。

DearOne 齊藤|
DearOneの齊藤と申します。DearOneでマーケティングオートメーション、たとえばモバイルのプッシュやWebのポップアップ通知を配信するようなメッセージ配信ツールの導入や運用を担当しています。

私は、GRLさんが活用されているMoEngageというツールの運用を支援させていただいています。セッションで紹介する事例についても裏側の仕組みなどを説明できればと思います。本日はよろしくお願いします。

DearOne 安田|
それでは本題に入っていければと思います。まず小林さんのご担当業務、GRLの中でどんな仕事をされているかを紹介いただけますか。

GRL 小林氏|
通販サイトGRLのプロジェクトマネジメントを担当していると申し上げましたが、小さなものから大きなものまで幅広く担当しています。

GRLは通販サイトですので、常に機能拡張したり、ユーザーが多くなる中で生じる不具合をいち早くキャッチアップして解消したりしています。

機能拡張や不具合の解消を社内メンバーと協議したり、DearOneさんやECサイト開発のパートナーと定例会を繰り返したりしながら意思決定していくということが一番メインの業務になります。

DearOne 安田|
サイト全体をマネジメントして「成長させつつ直していく」というイメージでしょうか?

GRL 小林氏|
そうですね。外部CIOである私とWebを担当しているメンバー、2人で常に協議してシステム、アプリ、UIなどの各施策を意思決定している形です。

DearOne 安田|
アプリやECサイトの修正はかなりのスピードで実施されているのでしょうか?

GRL 小林氏|
スピードは速いと思います。2週間から3週間に一度は何かしらのリリースをしています。外部に発信するものもありますし、不具合修正などの発信しないものもありますが、見えるところから見えないところまで色々なPDCAのサイクルを回し続けています。

DearOne 安田|
齊藤さんはGRLさんの開発や修正のスピード感について、接していてどう感じていますか?

DearOne 齊藤|
スピード感はとても早いですね。

私は分析データを踏まえた施策について定期的に打ち合わせて、支援させていただいています。その中でも、打ち合わせを実施した当日に「この施策をやりましょう」と意思決定されて、早ければ当日の午後や夕方にはメッセージ配信するというスピードで動かれており、施策の実行と分析が非常に速いサイクルで回っていると感じます。

DearOne 安田|
どういうプロセスでこのスピード感を実現しているのでしょうか?

GRL 小林氏|
一般的な企業では「これをやりたい」という起案があって、内部で承認された後に、費用の見積もりをとって、また費用の承認をとって、発注する、といった形で幾つかのプロセスになることが一般的だと思います。

GRLの場合、携わっている人間が少ないので、「これは私たちで意思決定して良い範囲か、代表にも確認したほうがいいか?」という感覚で意思決定が進んでいきます。

物販部分に関わっている2人、私ともう1人で協議して、代表に確認する場合は直接確認して返答をもらって意思決定するという流れです。一般的な企業の承認フローとは違いますが、意思決定や施策のPDCAを早く回せている理由だと思います。

DearOne 安田|
そうした意思決定と施策のスピードが、サービス自体の成長速度につながっているのだと感じます。

このようなGRLさんですが、様々なMarTech ツールをフル活用してマーケティングを展開されています。MarTech ツールの活用について、どんなものを導入されているか、また、導入された背景をおうかがいしたいと思います。

現在、分析でAmplitude、そして、MAツールとしてMoEngageを使っていただいておりますので、2つがどんなツールかを齊藤さんから紹介いただけますか。

プロダクトアナリティクスツール「Amplitude」

DearOne 齊藤|
最初にプロダクトアナリティクスツールのAmplitudeから紹介します。AmplitudeはWebサイトやアプリ内におけるユーザーの行動分析ができるツールです。

標準でさまざまな分析チャートを持っており、ユーザーのインサイトを見出したり、「こうした施策を行うと効果が上がりそう」という仮説を簡単に立てることができます。

基本的にコードやSQLを書いて操作する必要はなく、分析作業は管理画面上の項目をクリックしていくだけで完了する形になっており、高度な分析が簡単に実施できます。

更に、オフラインの店舗におけるPOSデータとオンラインのECサイトのデータを連携させる、また、普段はアプリを活用しているユーザーがWebに来た時はどういう行動をしているのかといったWebとアプリを横断した形でのクロスチャネル横断分析も可能です。

GRLさんでもAmplitudeを活用いただき、DearOneで運用支援をさせていただいています。

カスタマーエンゲージメントツール「MoEngage」(モエンゲージ)

もうひとつがカスタマーエンゲージメントツールのMoEngageです。BtoC向けのMAツールになっており、私が活用を担当しています。

MoEngageはプッシュ通知やアプリ内メッセージ、メール配信やWebのポップアップなどのマルチチャネルで、其々のユーザーに合わせてパーソナライズしたメッセージを配信できるツールになっています。

特徴として、まずは機能の充実があり、前述したようなマルチチャネル配信、また、シナリオ配信などが可能です。

AIを活用した配信の最適化やセグメント作成といった運用リソースの負担を軽減する機能も備わっています。

価格についても競合ツールと比較して比較的安価に提供されており、世界で1,200社以上の導入実績があります。

DearOne 安田|
AmplitudeとMoEngage、2つのツールをGRLさんで使っていただいていますが、先行して導入されたのがAmplitudeになります。どのような背景や課題感があったのか、導入の背景を小林さんにお聞きしたいと思います。

GRL 小林氏|
まず社内で分析工数がなかなか取れなくなってきた中で、分析業務を効率化したかったという背景があります。

また、Amplitudeを導入した当時、GRLでは分析ツールとしてGoogle Analytics(グーグルアナリティクス)を使っていました。当時のGRLは月間2億PV程度でしたが、その規模のデータを様々なセグメントを切って分析しようとすると、Google Analyticsが固まってしまう、結果が戻らずにタイムアウトしてエラーになってしまうことが頻発していました。

上記のような状況があったところにAmplitudeを提案いただいて、課題感とマッチしました。とくに2つ目の課題を解決してくれた圧倒的な処理スピードは本当に素晴らしく、AmplitudeのPRポイントだと思っています。

導入を検討していた際、Amplitudeのデモを見せていただいて「本当にこの速度が出る!?」と思うぐらいの速度感でした。いま導入・運用して2年弱ですが、約2年分のデータが蓄積している状態でも、処理速度が大きく落ちた感覚はなく、スムーズに動いてくれています。

DearOne 安田|
分析工数と処理スピードの課題感からAmplitudeを入れていただいたとのことですが、最初に提案されたときは「そんなに早くはならないでしょ?」という疑念もありましたか?

GRL 小林氏|
そうですね。米国のビッグ・テック(Alphabet:Google、Amazon、Apple、Meta:Facebook、Microsoft)にも導入されているということで、膨大なデータ処理には長けているだろうとは思っていました。

ただ、実際にデモ等を見せていただく中で、膨大なデータ処理が出来るだけでなく、それをスピード感を持って、かつ行動分析、ユーザーのイベント分析に特化して様々なセグメントを自由に絞り込めるということで、データ分析の工数は半分以下になったかと思います。

DearOne 安田|
Amplitudeを使っていただく中で、次にMoEngageも導入いただきましたが、MoEngage導入の際はどのような背景がありましたか?

GRL 小林氏|
当時はまだMAをやっておらず、MAツールを探していた状況でした。

MAも早期からやりたかったのですが、すごい勢いでユーザー数と事業が成長するなかで、ユーザーに気持ちよく買っていただける環境、ECサイトを支えるインフラやシステムの基盤整備を最優先にしていました。

ユーザー規模に対応できるインフラがある程度整って、接客ツールの導入を考えられるタイミングになった中で、いろいろなMAツールを調査していました。その中で、DearOneさんから提案いただいたのがMoEngageでした。

どのMAツールも基本的な機能は大きくは変わりませんでしたが、MoEngageであればAmplitudeと連携できることは選定のポイントでした。

将来を考えるとデータ連携させた上で、分析ツールでやるべきことは分析ツールで、MAツールでやるべきことはMAツールで、という形で専門性のあるツールを組み合わせて活用したいと思っていました。

私は元々エンジニアリング側の出身で、本当に何でも出来る万能のツールは作れない、専門性を持ったツールをいかに上手く組み合わせていくことが大事だという前提で考えています。

そのなかでAmplitudeと上手く連携できるということを踏まえて、MoEngageを選択したという流れです。

MarTech ツールの活用で大切な「組み合わせ」とは?

DearOne 安田|
小林さんの話の中で、データ連携とツールの組み合わせというコメントがありました。AmplitudeやMoEngageに限らず、MarTech ツールの活用を考えるうえで、導入したツールとデータをどう連携させて使うかは重要なテーマです。

先ほど各ツールの導入背景などを解説いただきました。次のテーマとして、GRLさんでツールをどう組み合わせて使っているのかという点をお聞きしたいと思います。

ツールの連携状況

GRL 小林氏|
はい。基本的に起点となるのはスライド左下にあるWeb(ECサイト)になります。そして、Webサイトの上に表示されているModuleApps2.0がモバイルアプリのプラットフォームになります。

送料無料や値下げのお知らせといった対象者数が大きくなるセグメントについては、ModuleApps2.0にデータを連携してアプリへのプッシュ配信をしています。

一方で、もっと細かなセグメンテーション、たとえば、「Webサイトに訪問して、どのページを閲覧して、何分経過している人」といったセグメントは常に分析の結果を踏まえて配信のシナリオが組み立てられることになります。

こうしたものはAmplitudeとMoEngageが連携して、アプリ内のプッシュやメッセージ、Web側のアップアップ通知等として配信しているという形です。

DearOne 安田|
齊藤さんから何か補足はありますか?

DearOne 齊藤|
先ほど小林さんが「連携」と話されていて、スライドでもAmplitudeとMoEngageが相互に矢印でつながっています。

連携の具体的な流れとしては、Amplitudeがプロダクト分析ツールとして「こういったユーザーに、このメッセージを配信したらいいのではないか」と分析してセグメントしたユーザーのレポートを、そのままMoEngageに受け渡して「アプリでプッシュ通知を送る」「アプリ内メッセージを表示する」等の配信につなげることができます。

逆に、MoEngageでの配信、たとえば、プッシュ通知を送ったという配信結果をAmplitude側に送り返すこともできます。従って、「MoEngageからプッシュ通知を受け取ったユーザーがWebサイトやアプリの中でどのような行動をしたか」をAmplitude側で分析することができます。

ツール間連携によって、このような施策の実行と分析のスムーズな流れが実現しています。

DearOne 安田|
ツール連携できないと今の流れはどんな形になるのでしょうか?

GRL 小林氏|
そうですね。分かりやすい例としては、MoEngageで配信した結果というのはMoEngageに貯まります。ユーザーの行動はAmplitudeでも計測していますので、Amplitude側にもデータが貯まります。しかし、両者は一致しません。組み込んでいるモジュールなどが違いますので、絶対に100%の一致は実現しません。

たとえば「MoEngage側では100人が購入しました」、つまり設定されているイベントが100回発火しましたという結果に対して、Amplitude側では120回イベント発火していますという差異が生まれたりします。

この時、GRLのデータ分析で土台となるのはAmplitudeですので、分析する土台をきちんと合わせることが大切です。

従って、AmplitudeはAmplitudeのデータ、MoEngageはMoEngageデータと分けて見るのではなく、MoEngageデータをAmplitudeに取り込んで、同じ土台で数字を見ることが必要になります。

DearOne 安田|
なるほど。非常によく分かります。数字の定義や前提がきちんと合った状態で、施策の結果を検証する必要があるということですね。

DearOne 齊藤|
AmplitudeとMoEngageで連携が出来ないと、片方のツールからCSVで吐き出したデータを、もう片方のツールにインポートするような作業も生じてきます。工数が生じますし、運用上のミスも発生しやすくなります。ツール間の連携ができれば、これが自動化されることで工数もミスも減ることになります。

DearOne 安田|
MoEngageの場合、ユーザーへのプッシュ通知といった具体的なコミュニケーションが発生しますので、ここでのミスは致命的ですね。

DearOne 齊藤|
そうですね。何十万、何百万という単位のユーザー数を連携していますので、連携のミスは大きなトラブルになりかねません。

GRL 小林氏|
そうですね。会員数が多ければ多いほど、少しの差が絶対数として大きな値になってきます。同じ1%でも、500万の1%と5万の1%では違います。

現在、GRLの会員数は800万人を超えていますので、仮に2%ずれると、16万人のユーザーに影響することになります。トラブルとしても、売上等の結果にも、大きな影響をもたらす規模ですので、こうしたリスクをツール間の連携でなくすことが大事です。

DearOne 安田|
仰る通りですね。ツール間の組み合わせを分かりやすく紹介いただきました。GRLさんでは、こういったデータ基盤、まさにモダンデータスタックを踏まえて、様々な施策を実行されているわけです。

【事例】CVRを13%引き上げた送料無料カウントダウン

DearOne 安田|
ここからは具体的な施策のお話を聞いていきます。本日は高い成果を出された施策の中でも選りすぐって2つの事例を紹介いただきます。まずは1つ目の事例をご紹介お願いします。

送料無料カウントダウン

GRL 小林氏|
はい、1つ目は非常にシンプルで分かりやすい施策です。

送料無料の期間を「残り何時間何分何秒です。ここまでに買っていただければ送料無料になります」というアップアップを出したという施策になります。

スライド右側が施策の効果を示したものです。棒グラフの下にあるOSMという単語はポップアップのことを示しており、グラフの右側、OSMを非表示にした、つまり、ポップアップに触れていなかった人のCVR(コンバージョン率)は3.96%でした。

3.96%も一般的なECサイトではかなり高い数字ではありますが、グラフの左側、OSM表示、つまり、送料無料の残時間表示のポップアップを出したユーザー群のCVRは17.1%という驚異的な数字になりました。

じつはGRLのサイトでは、送料無料というのはほぼ毎週末やっている取り組みになります。従って、私たちからすると「週末が送料無料であることは、ユーザーは知っているよね」という感覚で、この施策にそこまで大きな効果は期待していませんでした。

しかし、実際にやってみたところ、17.1%という数字になり、改めて運営側の思い込みがあることを認識しました。

私たちからすると「送料無料」は毎週末やっていることですが、たとえば、初めてGRLに来た人も一定数いるわけです。これだけ頻繁に送料無料のキャンペーンをやっているECサイトというのはあまりなく、GRLの強みです。その強みをきちんと訴求することでこれだけの成果が出ると大きな学びになりました。

DearOne 安田|
すごい数字を叩き出した施策でしたが、実施した背景にはここまで説明したようなMarTech ツールによる分析があったと聞いています。齊藤さんからどんな分析をしていたのか、説明をお願いします。

分析

DearOne 齊藤|
安田さんコメントの通り、事前にAmplitudeで分析を行っていました。

まず前提として送料無料の取り組みを実施する際は、ModuleApps2.0を通じて「今週末は送料無料です」というプッシュ通知を、土曜日と日曜日の午前中の2回、ユーザーに送っています。

スライドのグラフは、土曜日と日曜日のCVR(商品購入率)推移を時間帯別の折れ線グラフとして表示したものです。吹き出しがある箇所がプッシュ通知の送付タイミングで、プッシュ通知を配信したタイミングは非常にCVRの高くなります。

一方でプッシュ通知を配信してから時間が経過すると、CVRの水準は落ち込んでしまうという傾向になっています。そこで「夕方や夜にかけてCVRを底上げできないか?」と考えていました。

その中で、ポップアップによるカウントダウン通知で「もうすぐ送料無料が終わりますよ」というアナウンスをすればCVRを底上げできるかも知れないという仮説を立てて実施したのが本施策でした。

DearOne 安田|
分析で課題を見出してから、「カウントダウンのポップアップを出そう」という施策はアイディアが出てすぐに実行されたのでしょうか?

GRL 小林氏|
そうですね。アイディアが出てきたら「試しにやってみよう」とすぐ意思決定して進めました。

この時、意思決定する上で重視したポイントとして、カウントダウンのポップアップを試すことでのデメリットが想定されないということがあります。そして「判断基準として残時間を出してあげたほうがユーザーにも分かりやすいだろう」ということですぐに進めました。

私たちもどういう結果になるのかが楽しみでしたが、想定していた期待値を大きく上回る成果となりました。

DearOne 安田|
今回のGrowth Summit 2023、他のセッションでも施策を試す回数が大事という話が何度も出ています。

小林さんが仰っていた「デメリットがないならやってみよう」という意思決定が大切ななポイントで、それがスピード感と成果につながっているのだと感じます。素晴らしい事例のご紹介、ありがとうございます。

【事例】購入商品数1.6倍、金額1.2倍を実現したかご落ちリマインド

かご落ちリマインド

DearOne 安田|
次にもうひとつの成功事例として、かご落ちリマインドの施策をご紹介よろしくお願いします。

GRL 小林氏|
はい。かご落ちリマインドもECサイトでは比較的よくある接客施策かと思います。

商品をカートに入れた後、1時間以内に購入しなかったユーザーに対して、ECサイト画面の右上、カートアイコンのところで「カートの中に商品が残っています」とお知らせする形で施策は実施しました。

様々な施策を実施する時、常にA/Bテストで施策を実施したユーザーと実施していないユーザーでどれぐらいの差が出るのかを検証しています。かご落ちリマインド施策の場合、リマインドを入れることでCVRが4%高まるという結果になりました。

また、CVRの向上だけでなく、購入する商品点数が1.6倍、購入金額が1.2倍という成果になりました。具体的な数字は公開できませんが、月次の粗利貢献に換算してかなり大きな金額につながる貢献となっています。

この結果を踏まえて、現在はかご落ちリマインドのポップアップを定常施策として実施しています。GRLのECサイトにアクセスして、何かの商材をカートに入れて1時間待っていただくとご覧になれます。

DearOne 安田|
この施策も本当に素晴らしい成果だと思います。一方で、確かにかご落ちリマインドというのはECでは一般的によくある施策でもあります。GRLさんの場合、裏側をどんな風に動かしているのか、齊藤さんから解説をお願いできますか。

かご落ちリマインド施策内容

DearOne 齊藤|
かご落ちリマインド施策の裏側では、MoEngageの「分岐するシナリオを設定して、分岐に応じてメッセージを出し分けする」という機能を活用してメッセージを配信しています。

簡略化したシナリオの流れを説明すると、まず「商品をカートに追加」したことがトリガーになり、その先でユーザー行動が分岐するシナリオを作っています。大まかには「1時間以内に購入を完了したか?」に対するYes or Noで分岐点を設けているイメージです。

分岐後、購入したユーザーにメッセージを出す必要はありませんので、購入していないユーザーに対してのみ「カートの中に未購入の商品がありますよ」というかご落ちリマインドのメッセージを配信することで、先ほどの成果が上がりました。

DearOne 安田|
シナリオの分岐というのは、スライド中央にある「1時間以内に購入完了?」という部分でしょうか?

DearOne 齊藤|
そうです。今回の結果に至るまでには、1時間以内が最適か、それとも2時間もしくは3時間なのか等もA/Bテストを実施して検証しています。そのうえで1時間経過した時点でリマインドすることが一番効果が高いということで、今の分岐点に決定しています。

DearOne 安田|
MoEngageにセットすると、1時間以内に購入完了していない人を自動的に見つけてメッセージを送ってくれる形ですか?

DearOne 齊藤|
そうです。自動的に配信してくれます。

DearOne 安田|
もしシナリオの分岐が出来ないと、かご落ちリマインドを実装するためにはどんな作業が必要になるのでしょうか?

DearOne 齊藤|
分岐が出来ないと、例えば、ユーザーの行動や条件が追加されたときに対応ができなくなることが考えられます。

スライドでは説明を省略していますが、ECサイトでは「商品をカートに追加した後に、その商品をカートから削除する」といった行動も当然考えられます。

実際にはこうした部分もGRLさんのシナリオ分岐には組み込んでおり、「1時間以内に購入完了していない」という分岐の先で「その時点でカートの中に商品が残っているか?」といったことも見極めて配信を行っています。

MoEngageではこのように容易にシナリオ分岐を設定できので、かご落ちリマインドの配信もスピーディーに実現しました。

DearOne 安田|
分岐はかなり細かく設定されているのでしょうか?

GRL 小林氏|
はい。スライドの説明は非常にシンプルですが、実際のユーザー行動は多様です。たとえば、スライドにはトリガーを「商品をカートに追加」という形だけで書いていますが、実際には他のイベントも考慮する必要があります。

たとえば、「1時間以内に購入完了?」という分岐点の手前で起こっていることも重要です。齊藤さんが仰っていた「カートに入れた商品を削除する」というアクションもありますし、「カートに何個商品を追加した人」といった分岐も考えられます。

実装しようと思うと、上記のようにどんどんシナリオを分岐させていく、複数の条件を組み合わせて分岐を考えていく必要があります。このような分岐したシナリオを設定してメッセージを出し分けられることは、現代のメッセージ配信ツールにおける必須条件ではないかと思います。

DearOne 安田|
こういったことが出来るからこそ、いろいろ試して、その中で良い施策を見つけていくことが出来るわけですね。勉強になります。

【事例】学びを得た保有ポイントのプッシュ通知

DearOne 安田|
GRLさんで様々な施策を試す中では成果が出なかった施策もあるとお聞きしています。成果が出なかった施策の事例についても紹介をお願いできるでしょうか。

保有ポイントプッシュ

GRL 小林氏|
はい。ECサイト、また、旅行や飲食店の予約サイトなどでもよくある施策だと思いますが、「あなたはポイントがどれぐらい貯まっています」というお知らせが定期的にメール等で届くことは、視聴されている方もユーザー側で体験されたことがあると思います。

GRLでもサイト内で使えるポイント制度があります。それを使って「今あなたは何ポイント貯まっています。ポイントを使って購入しませんか?」という情報提供をプッシュ配信しましたが、ほぼ効果が見られないという結果になってしまいました。

考察してみると、恐らくポイントという概念をメッセージで素直に出し過ぎてしまったことが原因だと思っています。たとえば「300ポイントあります」と言われても、そのポイントだけでは商品は買えないことが殆どです。そうすると「300ポイントあるんだ。そうなんだ・・・」と終わってしまうユーザーが大多数だったということです。

GRLのサイトで、一番として多いのが300ポイント持っているユーザーです。これは会員登録のタイミングで、300ポイント付与しているためです。ただ、前述の通り、300ポイントで商品を無料で買えるわけではないこともあり、保有ポイントを通知しても購入意欲を高める結果にはなりませんでした。

DearOne 安田|
施策単体として成果は出ませんでしたが、学びはあったということでしょうか?

GRL 小林氏|
はい。これも実施することによるデメリットがあまり想定されないため、「まず試してみよう」と実施してみた施策のひとつになります。

DearOne 安田|
やはりトライするからこそ「この施策はダメだったから、やり方を変えてみよう」「このパターンはやめよう」といった学びと次へのヒントが得られます。いかにスピード感を持って施策を動かすかが大事だ、と改めて感じました。

未来予知を含めたセグメントの精度UP

DearOne 安田|
ここまでご紹介いただいた通り、GRLさんでは既に様々な取り組みをされているわけですが、今後の展望として考えていらっしゃることがあれば、ぜひご紹介ください。

GRL 小林氏|
今日ご紹介した3つの事例は、MAツールを使って実施している施策のごく一部です。今後の運用に関してはユーザーのセグメントをどんどん細かくしていきたいと考えています。

セッション内で、齊藤さんからAmplitudeとMoEngageでユーザーのセグメントを連携できると説明いただきました。このセグメントを、より精度高く、細かく実施していきたいと思います。

たとえば、AmplitudeもMoEngageもAIの学習機能を持っていますので、AIの力も借りることで未来予知のような要素もセグメントに加えられないかと考えています。

「このユーザーはこういう買い物をするだろう」「このユーザーはトップスを買う可能性が高い」といった未来予知的な要素も含めてデータ分析とメッセージ配信の連携が出来るのではないかと考えると楽しいですね。

DearOne 安田|
とてもワクワクしますね。

小林さん、ありがとうございました。それでは本セッションは以上で終了となります。

スピーカー

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