この記事は、2022年11月16日に開催した「@cosme のグロース戦略と顧客体験価値向上」のウェビナーレポートです。
DearOne 安田|
株式会社DearOneの安田と申します。本日は「@cosme」で有名なアイスタイル様のグロースの秘訣を伺えるということでワクワクしております。どうぞよろしくお願いいたします。
アイスタイル 渡辺|
株式会社アイスタイルの渡辺と申します。本日はよろしくお願いします。私は2017年に入社しグロースを軸に複数のプロジェクトに参画。2019年からマーケティング組織の責任者として、アプリにおけるグロースの環境整備や各チャネルにおける最適化の責任者を務めてまいりました。
その後、SEOの責任者としてユーザー数の回復に成功し、過去最高水準に引き上げることができました。
安田|
すごいですね。
アイスタイル 渡辺|
現在はWEB・アプリの集客からリテンションまでを手掛けるグロース組織の部長として業務に従事しております。
Adjust 谷口|
Adjustはモバイルアプリ向けのマーケティングプラットフォームで、広告キャンペーンの効果測定と最適化、ユーザーデータを保護するソリューションを提供しています。世界では1万社以上、日本においても700社に当社のツールを使用していただいており、日本においては80%以上のマーケットシェアを誇ります。私は、2018年の入社当時は営業として180社ほど導入のサポートをして参りました。今はパートナー企業の担当としてアライアンスやサービスの啓蒙などを行っております。どうぞよろしくお願いいたします。
Adjustは主に4つのサービスを展開しています。まず「MEASURE」が流入元の特定です。アプリのインストール経路は、アプリストアを経由していることでユーザーがどこから来たかわからなくなってしまうため、私たちの方で特定しています。次の「ANALYTICS」はアプリをインストール後、会員登録や課金を行うなどのユーザーアクションの分析。3番目の「AUTOMATE」はFacebook広告やGoogle広告などの主要媒体の配信設定が行えるダッシュボードを使った業務効率化・自動化です。「PROTECT」では、不正防止機能を提供しています。
Braze 小林|
BrazeはWeb、モバイル、Eメール、プッシュ通知などあらゆる顧客接点で、リアルタイムかつ一貫性のあるコミュニケーションで、最適化された顧客体験を提供するカスタマーエンゲージメントプラットフォームです。2011年にニューヨークで創業し、現在すでに日本を含め世界の中で1,500社以上のブランド様にご活用いただいております。
安田|
弊社DearOneについても紹介します。我々は「データドリブンマーケティングで顧客理解を深め、企業のファンを増やす伴走型パートナー」として、マーケティングの中でもトップファネルではなくボトムファネル、既存顧客の育成に特化した支援を行っています。その中でも特にグロースマーケティングというフレームワークに則り、アプリ開発からアナリティクス、CDP、MAといった領域のサービスを提供しています。
本日は、3つのテーマに沿って進めていきます。
- グロース推進部の立ち上げ
- 新規顧客の獲得
- 顧客の育成
最先端のデータベースプラットフォーム @cosme!
–CX向上には「最適なサービス・コンテンツを適切なコミュニケーションで」
安田|
まず、アイスタイル様はどのような組織なのかを教えてください。
アイスタイル 渡辺|
はい。我々アイスタイルはビジョンとして「生活者中心の市場創造」を掲げ、BtoB、BtoCのユーザー様に対しデーターベースをコアにベネフィットを提供し、ステークホルダーにとっての好循環を作り出しながら、マーケットをデザインしていく事業を展開しています。データベースを活用しながら、リアルとネット、検討から購買までフルファネルで実現している珍しい存在だと考えています。
具体的には上図のように、メディア、EC、実店舗という3つの側面から事業を営んでおります。
課題解決のため全社横断で個別最適化から全体最適化を実現!
「グロース推進部」とは?
安田|
@cosmeというと非常に有名なブランドですが、まずはなぜ「グロース推進部」を立ち上げられたのかを教えてください。
アイスタイル 渡辺|
前述の通り、アイスタイルの事業を構成する実店舗・EC・メディアの3つに対する最適化や、KPIに対するアクションは元々進んでいました。しかし、我々がその先の未来を見据えたとき、個別最適化から全体最適化へ進んでいかないとチャレンジできないような大きな「山」があることを認識していました。
そこで、全体最適を展開していくにあたって、コアとなるメンバーで事業を推進していこうという思いを込めて「グロース推進部」を立ち上げました。
安田|
個別最適化から全体最適化へ進む上での大きな山というと、具体的にどんな課題が想定されたのでしょうか?
アイスタイル 渡辺|
はい。例えば普段、ECのメンバーは購買へのコミットメントを求められ、業務・施策の最適化をしているのですが、ECサイトだけではなく、メディアとしてアイスタイル全体の体験を設計していく場合、「ユーザー様がどういう状態でいるのか」を考慮して実行してく必要性があります。
といいますのも、EC単体で考えると購買が最終目標ですが、会社としてはアプリやWEBサイトを利用してくださるユーザー様のインサイトをどう活用していくかについてのソリューションも提供していること、ユーザー様の体験を考えると、全体を通して体験の最適化を考えていく必要があります。
我々が未来に展開していきたい大きな視点から顧みると、個別最適化ではなく、体験を含めた全体最適化を考えられる状態にむけた体制を整えることが急務と考えていました。
安田|
おっしゃる通り、デジタルマーケティングはKPIを数字で管理しやすいがゆえに、反対にそのKPIだけを見てしまうと、全体の顧客体験がどうなっているかが見づらくなってしまう傾向があります。そのような課題を解決するために何から手を付けられましたか?
アイスタイル 渡辺|
まずは事業全体で目指すべき世界観を、関係する全ての部署の担当メンバーにインプットすることから始めました。
実際に動かしていくためには各部署をどのように連携すべきかと考え、Brazeを活用したCRMプロジェクトを作り、そちらにどんどんマージしていく形でさまざまな部署・部門からメンバーを組み込んでいきました。
今ではモノづくり・経営企画側のメンバーも組み込まれて、会社全体を横断する連携が実現しています。このようにまず、最初に店舗、EC、メディアなどそれぞれのマーケティングを統合した上で動かないといけないという方向性のもと、プロジェクトの体制を整えました。
Braze 小林|
一般的に、各部門が関わるとバラバラに動いてしまう傾向がありますが、一方アイスタイル様は、複数部署が関わりながらも、しっかりまとまりのある形で施策を打たれている印象があります。そこは誰かが統率しておられるのでしょうか?
アイスタイル 渡辺|
目指す姿として、組織間でシームレスな形での展開を目指しているのですが、現状はプロジェクトオーナーとして私やPMが、意思決定を下しています。メンバーの皆さんに支えていただきながら、組織・プロジェクトを運営できています。
Adjust 谷口|
プロジェクトメンバーは、例えばECチームの方ならEC部門にも在籍しつつプロジェクトにも属しているのか、あるいはプロジェクトにコミットする形で完全に転籍しているのか、どちらが多いですか?
アイスタイル 渡辺|
前者です。そこは、部署に在籍しながらプロジェクトに参画する形になります。各部門の目標数値が元々ありますので、その辺をどういう風に調整していくかと考え「やはり課題を解決するには、部門へのコミットメントと全体最適化の必要性を並列で考えていくことが必要。現時点では全社横断のプロジェクトとしてまとめるしかない」という結論に至った次第です。
元の業務もありながらプロジェクトの業務もこなしていただいているメンバーには感謝しかありません。
複数部署間でどう連携する?全社横断を実現したアイスタイルが実践するコミュニケーションとカルチャーとは
安田|
渡辺様が組織間の調整をするとき、一番気にされているのはコミュニケーションなどの部分でしょうか?
アイスタイル 渡辺|
はい。私自身、「コミュニケーションを取らないとわかりあえない」という持論があるので、そこに関してはメンバー同士、密にコミュニケーションを取るような構造をつくっています。各々に正義があるので、アウフヘーベンではないですが、良い形にミックスしていく様なコミュニケーションを心がけてます。こういったスタンスでプロジェクトを回してみた結果、今ではお互いの歩み寄りなどもかなり機能し始めているなと思います。
Braze 小林|
いつも気になっていたのですが、そうしたコミュニケーションの場は何か公式にセットされているのでしょうか?あるいは非公式に、皆さんの方で自発的にされているのでしょうか?
アイスタイル 渡辺|
そこは元々あった組織の会議を活用しながら、差分を埋めていく形を取っています。
具体的には週1でプロジェクトの全体会議を開きつつ、チームごとにメンバーを分けて「これにコミットメントしてください」という形で運用しています。チームごとに非公式の会議を定例で開いているといった設計の下、今のところ動いております。
Adjust 谷口|
元々、店舗やECなど部門ごとに目標が分かれている中で、そのように一緒に動いていくというカルチャーは元からあったのでしょうか?それともこのプロジェクトが始まってから「みんなでやっていこう」と、現在進行形でカルチャーを作られている途中なのですか?
アイスタイル 渡辺|
そのようなカルチャーは、ゆるやかにですが元からありました。そういう意味では、皆が利他的な形で互いを尊重する意志を持っていたからこそできている部分も大きいですね。本当にメンバーに助けられています。
以前、DearOneさんのウェビナーに弊社の店舗チームのメンバーが参加して、その点についていろいろお話をさせていただいた機会もありましたが、元から一定の理解があったので、それをより強固にしようと動いている最中です。
新規顧客獲得はAdjustでチャネルを超え、全流入経路を分析
安田|
次に「新規顧客獲得の流れ」について教えてください。
アイスタイル 渡辺|
まず上図の通りメディア、EC、店舗という弊社のチャネルがあります。メディアにおいては現状、Webが強いので徐々にWebからアプリの方へ転換していく施策を打ってます。ECにおいても同様で、例えばごく一般的な施策ですが、購入したユーザーに対しWebページ上に、アプリへのアテンションをしっかり出しています。
また、ぜひ前述のAdjustさん・DearOneさんとのウェビナー動画を見ていただけたらと思いますが、店舗においても新規顧客獲得のさまざまな取り組みをしており、オーガニック経由も足し上げると、相当な規模感のユーザー獲得につながっています。一見してわかるくらい際立った数値が取れているので、これまでの施策が効いているという前提ですが「@cosmeのブランド力はすごいな!」と思っています。
Braze 小林|
素晴らしいですね。
安田|
メディアや店舗も含めてさまざまな新規顧客の獲得に取り組まれているんですね。一方で、ペイド広告はそれほど打っていないとお聞きしたのですが本当ですか?
アイスタイル 渡辺|
はい。年末に毎年恒例の「@cosme BEAUTY DAY(アットコスメビューティーデー)」という大きなイベントがあり、そちらでデジタルのペイド広告を出しているくらいで、それ以外はほとんど利用していません。
安田|
何か理由があるんですか?
アイスタイル 渡辺|
本音を言えば、もっとペイド広告を投下してユーザー数を増やしていきたいと思うこともありますが、現状、自社アセットが強いので、そこからしっかりとユーザー様の心を掴み、ライフタイムバリュー(LTV)が高いユーザーを獲得していくという方針を取っています。
安田|
確かに、広告を出さずに取れるのであればそれが最良ですね。
アイスタイル 渡辺|
はい。参考のためにベンチマークしている企業様もあったりはしますが、今のところ、ペイド広告なしでそれなりに新規獲得できていますし…
Adjust 谷口|
私たちのお客様では、アプリ単体でサービスを展開しているお客様が多く「ペイド広告を打たないと新規のユーザーが取れないので止められない」というケースも多いです。
一方、アイスタイル様のように店舗を持っていたり、Webの既存ユーザーがいらっしゃる企業が、アプリのマーケティングに参加してきている今の流れはとても新鮮で、従来の企業と全く異なる取り組みをされていると感じました。
安田|
そうですね。アプリが各チャネルの集客の集約点になっているというのは新しいですね。
アイスタイル 渡辺|
おっしゃる通りです。
安田|
そういった中で、新規獲得のチャネルによって、ユーザーの行動には違いがありますでしょうか?
アイスタイル 渡辺|
はい。まず、各チャネルにおいてユーザー様が期待するUXに違いがあります。例えば、実店舗で獲得したユーザーは、会員であるメリットに着目してアプリを使ってくださっているので、ECやメディアへの接触率は低いです。反対に、ECやメディアで獲得したユーザーは、どちらも最初からデジタルで来訪されているので、お互いの親和性が高い傾向にあります。
それらに対して最適化されたコミュニケーションについては、後ほどご紹介いたします。
安田|
チャネルごとに最適化されたコミュニケーションですか!それぞれのユーザーの流入経路はどうやって把握していますか?
アイスタイル 渡辺|
そこはAdjust経由で全ての流入経路を追えるように設計しています。
Adjust 谷口|
アプリのインストール経路はアプリストアを挟むことから、一般的に流入元がわからないという課題がありますが、Adjust ではまず、ユーザーが広告に全く触れていないオーガニック経由なのか、それともどの広告に触れて来訪したのか把握することが可能です。
また、アイスタイル様にもよく使っていただいていますが、Adjustの管理画面からQRコードの発行が可能で、それをチラシやPOPに入れることで、QRコードから入ってきたユーザーがどれくらいインストール、会員登録、ログインや購入・課金をしたのかがわかるようになっています。このほか継続率を見たり、1日にどれぐらいのユーザーがアプリを使っているかを表すDAUなど様々なKPIを計測・分析することにより、その先の施策にご活用いただいています。
安田|
流入経路によってログイン、会員登録などのユーザーの行動やDAU数が異なってくるということは、他のクライアント様のケースでも結構よくあることなのでしょうか?
Adjust 谷口|
はい。例えば、ペイド広告によってたくさんインストール数が取れても、それがなかなか継続につながらないメディア様はいらっしゃいます。
反対に、あまりインストール数が取れなくても、特定の媒体から来訪したユーザーが長く使うのでLTVが高いといったケースもあります。また、実際にリアルの店舗に来ているユーザーは、デジタルのみのユーザーよりもLTVが高いといったデータが多く出ています。
アイスタイル 渡辺|
弊社も過去に実施したペイド広告も含め、さまざまなチャネルについてしっかり分析しています。「この経路で来たユーザーはLTVが高い」「継続率が高い」などの特徴にフラグ付けを施し、それを振り返るときにもAdjustのデータを活用しています。
顧客育成はBrazeで全プロセスにわたり最適なコミュニケーション施策を実施
安田|
次のテーマは、新規に獲得した顧客をどうやって育成していくかです。獲得した顧客のリテンションや購入増加のためにどんな施策を打っていますか?
アイスタイル 渡辺|
顧客・体験育成に関しては今、Brazeをメインで使っています。弊社では流入してきたユーザーに対してのコミュニケーションにずっと課題がありました。
以前は類似のツールを導入していたのですが、残念ながらその課題に対して十分なパフォーマンスを出せていませんでした。
そこで、我々が求めるより高度なコミュニケーションを実現できるツールとして、Brazeの導入を決定しました。WEB経由のインストール促進施策、アプリでの起動からアクション・購入促進に至るまでの全てのプロセスで施策を実施しています。
Braze 小林|
Brazeはさまざまなデジタルチャネルにおいて、リアルタイムにエンゲージメントを実現するためのツールです。Brazeについてはよくマーケティングオートメーションの文脈で語られますが、事実と異なることも多いので今回、正しい情報を伝えさせていただけたらと思います。
まず、マーケティングオートメーションというと、基本的には企業側の作業工数を最適化していくイメージが強いと思います。もちろんそこも重要ですが、ほかにも例えば「新しい施策を打ちたいのに、SQLを書くなどITスキルが必須なためになかなか打てない」という課題をよく聞きます。こうした課題にBrazeが有効で、もちろんデータを取り込むなどの初期実装は必要ですが、基本的にUIだけで操作ができ、ユーザー部門の方でも高速に仮説検証PDCAを回せることがキーポイントです。
また、マスに対してコミュニケーションしていてもなかなか響かないことも多いので、きちんとユーザーを理解したコミュニケーションをすることがとても重要だと考えます。さらにユーザーを知るためにはもちろんデータが必要で、そのデータも古いものでは全く意味がないのですが、Brazeはリアルタイム性を担保できるのが強みです。具体的には、データを取り込んでからアクションまで約1秒という形で、まさに「たった今」の情報を基にユーザーに向けたコミュニケーションができることが強みのカスタマーエンゲージメントツールだと言えます。
アイスタイル 渡辺|
私が驚いたのは、過去経験で海外のツールベンダーといろいろやり取りする中では、こちらから「こういうことをやりたい」「こういう機能があるといい」というフィードバックを伝える場面も多々ありまして、先日、Brazeさんにも要望をお伝えしたところ、それを今まで経験したことがないぐらいの早さで反映してもらい、未だかつてない驚きを受けました。
Braze 小林|
恐れ入ります。全世界にお客様がいらっしゃるので、全ての要望に即時に対応できるわけではないですが、Brazeとしては日本市場を重要視してお客様の声を特に大事に拾わせていただいているほか、裏側で弊社メンバーも最大限努力させていただいた結果だったと考えます。
Adjust 谷口|
先程、ツールを移行したと話されていましたが、Brazeさんのどこを高く評価して移行を決めたのですか?
アイスタイル 渡辺|
一番の決め手は、カスタマーエクスペリエンスを考える際の自由度の高さでした。APP・WEBにおける機能の種類が圧倒的に多いことに加え、高度なスキルセットがなくても使える障壁の低さも魅力的で、導入決定に至りました。
安田|
@cosmeでは、Brazeを使って実際にどのような施策を打たれていますか?
アイスタイル 渡辺|
@cosmeのアセットをアプリを軸に展開していくことを考えていたので、Webからアプリへの転換(アプリのインストール促進)施策は導入後すぐに実行しました。
以前はログインマストの仕様だったので、アプリを使っているユーザー様=ログインだったのですが、プラットフォーマーの仕様で非ログインでも使えるようにすることになり、ログイン・非ログインが混在する状況になりました。
そうなると、ログインのきっかけが必要になるため、Brazeを用いて新規獲得したユーザー様に対しまずはログインを促し、その後「こんな機能があります」とコミュニケーションを取る様な施策。また、店舗でのセールやクーポン周りのコミュニケーションをとる施策。イベントやキャンペーン・特集に関連する施策。
@cosmeのモノづくり側の機能において「こういったニーズがあるだろうか?」というフィージビリティーのテストを行う施策など、毎月60以上の施策が動いており、Brazeの活用の仕方はそれなりに先行していると考えてます。
安田|
フィージビリティーテストというと、ある機能を実装し、A/Bテストのように出しわけをして効果を見るテストでしょうか?
アイスタイル 渡辺|
その前段階ですね。例えば「ある仮説をもとにコミュニケーションを取ったとき、ユーザー様はどういう反応するか」をBrazeにデータを投入して実行してみる。その結果、統計的有意性が出るような結果が出たとする。
その結果に基づき、アイディアを昇華させて新たなサービスとして開発するか、データ連携をしてBrazeでのオートメーション化に着手するか、などをしていく取り組みになります。
安田|
なるほど。そこをアプリ側の機能に戻すのか、そのままBraze上で行うのかを見極めるわけですね。アプリの機能に取り込むか、エンゲージメントツール側で行うかの判断軸はどこにあるのでしょう?
アイスタイル 渡辺|
開発工数や費用感も含めての判断をしており、モノ作り側と議論しながら進めていく様な動きになっています。
安田|
我々DearOneもアプリ開発ベンダーなので、アプリ開発には時間やコストがとてもかかると理解しています。その前にいろいろなことを試して効果を見られるというのはすごくいいですね。
Adjust – Braze連携で流入経路に沿った施策の出し分けを実現!
安田|
Adjustを使うことで流入経路がわかり、その経路ごとのLTVを見据えてBrazeで施策を打つといったAdjustとBrazeの連携の部分はどういう状態でしょうか?
アイスタイル 渡辺|
正直まだやりきれていない部分もあります。例えば、流入チャネル別にどういうコミュニケーションをとっていけばいいかはまだ議論中で、実際の反映まで至っていない。やれることを整えている状態というステータスで今後の課題です。
Adjust 谷口|
具体的な連携の仕組みは、Adjustで計測している流入元のデータやアプリ中でのアクションのデータを、実はBrazeさんにリアルタイムにデータ転送しています。わかりやすい例だと、セールの訴求クリエイティブを見たユーザーが、その後アプリを初回起動した際に見るそのセールのページにコンテンツを表示させています。
アイスタイル様では、例えば今「初回300円のクーポン」を出されていますが、そのクーポンのクリエイティブを見て来訪した方にメッセージで300円のクーポンを出すといった、流入元との連携を展開しています。
Braze 小林|
やはり流入経路には、それぞれユーザーの興味のポイントがよく表れます。アイスタイル様は店舗もお持ちなので、店舗でアプリをダウンロードした方や広告から入ってきた方、あるいはオーガニックで検索してきた方といろいろなケースがあります。
それぞれのケースでメッセージを出し分けたり、オンボーディングの方法を変えてあげることで、ユーザーのリテンションにつながっていく可能性が期待できると考えています。
安田|
「流入経路にユーザーの興味が表れる」というのはまさにその通りですね。今回のテーマも「顧客体験価値向上」ですが、やはりユーザーさんが何を目的に来訪したのかや、それに合ったコンテンツをきちんと出せているかという意味で、流入経路と施策を的確につなぐことがとても大事になると実感しました。
実店舗で獲得したユーザーへのコミュニケーション施策については議論中とのことでしたが、他社クライアント様では既に取り組んでいる事例がありますか?
Braze 小林|
はい。いくつか例を挙げさせていただくと、まずユーザーを店舗で新規獲得した場合と広告経由の場合でコミュニケーションを分けているケースがあります。また、広告経由で来られたお客様に対しては、獲得にお金がかかっていることやLTVが低くなる可能性があることから、あえてクーポンを出さないことを検討しているお客様のケースもあります。
安田|
先ほどから顧客体験の文脈でお話を聞いていましたが、確かに企業目線でいえばCPAの文脈でそこを分けることにも意味があると思いました。
アイスタイル 渡辺|
今の話を聞いただけでもやるべきことはたくさんありますが、コミュニケーションはカスタマーエクスペリエンスの第一歩なので、それらを実現していった暁には、かなりすごい世界が待っているという夢が見えてきた思いです。それを今、手掛けることができている我々はすごく幸せだと改めて思いました。Adjustさん、Brazeさんいつもありがとうございます。
まとめ –CX向上を成功させる秘訣!
安田|
これから顧客体験価値の向上に取り組む企業は、何から始めるべきでしょうか?
Adjust 谷口|
Adjust をご利用いただくと、どこがユーザーとサービスのタッチポイントになったかを追いかけることが可能です。まずはその流入元をしっかり特定することが重要です。
2つ目は、Adjust はBrazeをはじめ色々なサービスと連携しているので、単に流入元を計測するだけでなくユーザー行動データも活用して、顧客一人一人に合わせた施策や、その先のキャンペーンにつなげることが可能です。
Braze 小林|
ユーザーを新規獲得することも非常に重要なポイントだということは理解しています。ただ一方で、2060年には日本の人口が9,000 万人を切るという予測もあり、今後も新規ユーザーを無限に獲得し続けられるわけではありません。
そこで肝心になってくるのが、獲得したユーザーをバケツから逃がさないよう、穴をふさいであげることです。全員と同じコミュニケーションを取っていても響きませんので、ユーザーを理解した上でそのユーザーが求めている情報を届けることが重要で、その鍵になるのがチャネルやタイミング、あとはコンテンツなどです。それらを基にユーザーエクスペリエンスを最適化することが、非常に重要になってくると思います。
アイスタイル 渡辺|
前提として顧客体験価値の向上に取り組むという強い意志が必要だと実感しています。まずはその覚悟と決意を持って旗を立て、その旗の下に仲間を集め、何かを成し遂げようというムーブメントを起こしていくことが一番重要だと思います。
私もこの旗の下に集まってくれた多くの仲間に支えられてここまできています。
状況によってはトップ主導で行うことも必要かもしれませんが、もしそれができない場合でも、小さいことからでも全然可能です。ぜひ皆さん自らが覚悟と決意を持って、できることから推進していっていただきたいと思っています。
安田|
大変貴重なお話をありがとうございました。
スピーカー
株式会社アイスタイル グロース推進部 部長 渡辺 智 様
2017年にアイスタイルに入社し、グロースを軸に複数のプロジェクトに従事。 2019年から、マーケティング組織の責任者を努めながら、アプリにおけるグロース環境の整備や各チャネルにおける最適化の実行責任者を兼務。その後、SEOの責任者としてユーザー数をV字回復させ、過去最高水準に引き上げることに成功。現在はWEB・アプリにおける集客からリテンションまでを手掛けるグロース組織の部長を務める。
Adjust株式会社 Senior Partnerships Manager 谷口 健二 様
大学卒業後、2006年よりセプテーニで約12年にわたりメディアプランニング、モバイルアプリ運営、アドネットワーク開発、ソーシャルゲーム運営、マーケティングツール導入支援などを担当。 2018年にモバイルマーケティング分析プラットフォームを提供するドイツAdjust社の新規セールスチームリードとして日本市場において70%を超えるマーケットシェア拡大に貢献。 現在、アドテクとモバイル業界における長年の経験と知見を活かし、シニアパートナーシップマネージャーとしてパートナーとの関係構築や連携強化を通して、モバイル業界の発展に従事。
Braze株式会社 カスタマーサービス本部 カスタマーサクセスマネージャー 小林 里帆 様
大学卒業後、事業会社を経て10年以上一貫してクライアントのデジタルマーケティングやDX推進に従事。株式会社電通イーマーケティングワン(現・株式会社電通デジタル)でデジタルマーケティングコンサルタントを経験の後、アドビ株式会社や外資系スタートアップのカスタマーサクセスマネージャーを担当、数多くのエンタープライズ企業様を中心にご支援の後、2022年1月よりBraze株式会社に一人目のカスタマーサクセスマネージャーとして参画。
株式会社DearOne マーケティング部 ゼネラルマネージャー 安田 一優
中小企業診断士資格保有。パソコン販売店店長、ITエンジニア、ITインフラSIerのマーケティングを経て、2020年よりDearOneへ参画。 DearOneではマーケティング、インサイドセールス、パートナーアライアンス等のマネージャーを担務。マーケティング、インサイドセールス、セールスの連携体制を構築。
※本セッションのアーカイブ動画配信はございません。