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ウエルシアが描くLTVを向上させるアプリグロースとOne to Oneマーケティング戦略の未来|Growth Summit 2024セッションレポート

2025.01.17

Growth Summit2024_session1

リテール企業にとって顧客データ活用はこれからの事業展開に極めて重要な取組みとなります。
本セッションではウエルシア様が実践しているアプリをトリガーとした購買データ活用、ユーザー満足度向上施策、シームレスなOMO体験の方法を紹介します。リテール企業が目指すべき次世代マーケティング戦略のヒントを得られるマーケティング担当者やビジネスリーダー必見の内容です。

ウエルシアの成長戦略を担う「顧客データ基盤」

DearOne 橋川|
私はDearOneでプラットフォーム事業本部 ビジネス推進部 カスタマーサクセスのマネージャーを務めています。DearOneのカスタマーサクセスというと「グロースマーケティング」のカスタマーサクセスをイメージされると思いますが、もうひとつ「アプリ」事業としてのカスタマーサクセスもあり、その責任者をしております。よろしくお願いいたします。

ウエルシア薬局 藤村氏

ウエルシア薬局 藤村氏|
ウエルシア薬局株式会社の藤村と申します。私は大学卒業後、コンビニエンスストアのam/pmジャパンに入社して、店長やスーパーバイザーとして働いていました。その後、2007年に転職して、当時「ハックドラッグ」という名称でドラッグストアを運営していたCFSコーポレーションに入社。最初は店舗を経験しましたが、その後本部に異動し、ポイント販促やマーケティングを担当しました。

2016年にハックドラッグとウエルシア薬局が合併した後は、商品本部マーケティング部で、ウエルシアグループのアプリ、ウエルシアグループの公式X(旧Twitter)の立ち上げ、公式SNSキャラクター シロクマの「うえたん」のプロデュースなどを経験しました。

現在はポイント販促グループのマネージャーとして、WAON POINTやVポイントのポイント販促、「ウエルシアメンバー」という自社IDを使った販促、更に店内放送やアプリマーケティングまで、様々な業務を担当しております。

ウエルシアホールディングス株式会社

ウエルシアホールディングスの会社概要を簡単に紹介すると、調剤併設型のドラッグストアを運営している会社です。店舗数は、ウエルシアグループ全体で2,825店舗(2024年3月1日現在)。そのうち調剤併設店が78.0%、2,155店舗です。24時間営業の店舗も運営しており、全体の約1割、284店舗が24時間営業です。

2024年2月期で売上高は1兆2,173億円。1兆円達成キャンペーンなどもやらせていただきました。グループ企業としては「ウエルシア薬局」、青森の「ハッピードラッグ」、群馬の「マルエドラッグ」、京都の「シミズ薬品」、高知の「よどや」、広島の「ププレひまわり」、大阪本社ですが首都圏にも展開する「コクミン」、沖縄の「ふく薬品」、長野の「とをしや薬局」などをウエルシアグループとして運営しています。

ウエルシアホールディングス株式会社 地域No.1の健康ステーションのための事業拡大

国内でのM&A推進と、今まで取り組んできたASEANでの事業拡大です。左側は国内における店舗数のエリア分布です。まだ北海道、東北の店舗が少なくなっていますが、先日ニュースにもなった通り、ウエルシアでは「ツルハドラッグ」とのM&Aを控えています。ツルハドラッグと一緒になることで、北海道と東北もかなり強くなると思います。ツルハドラッグさんの力も借りて全国をカバー、強化していきます。

また、右側は海外展開の状況です。海外は主にシンガポールに店舗があり、現在13店舗です。シンガポールから展開させていただき、ASEAN地区での展開も強化している最中です。

ウエルシアホールディングス株式会社 これまでの成長戦略(4大方針×出店×M&Aによる規模追求)

ウエルシアグループでは、成長戦略として4大方針を経営の柱として実践してきました。具体的には「調剤併設」「カウンセリング」「深夜営業」「介護」という4つの柱を軸に他社と競ってきました。

また、高速出店×M&Aによる規模追求ということで、合併戦略で会社を成長させてきました。スライドの下側に売上高の図がありますが、2009年に売上2,000億円だったところから、2023年には1兆2,000億円ということで、約6倍に成長しました。

ウエルシアホールディングス株式会社 新たな戦略方針(ウエルシア2.0)

そして、先日の決算説明会で新しいウエルシアの成長戦略のモデルとして発表したのが、「ウエルシア2.0」です。

左の図を見ていただくと、一番下に「顧客データ基盤」と書いてあります。顧客データ基盤が、これからの成長戦略の柱となります。医療データ、健康データ、POSデータを駆使して、DX、プロダクト戦略、リージョン戦略、メディカルケア戦略という4つの塊を動かしていきます。データを基盤として戦略を立てていくことを通じて、「地域No.1の健康ステーション」、“地元のかかりつけドラックストア”を実現させていく構想です。

アプリグロース推進の背景・課題・効果

ウエルシアGアプリ誕生から今までの変遷

DearOne 橋川|
実際に藤村さんが担当しているアプリグロースについて話していきたいと思います。まず藤村さんからアプリグロースの推進背景を教えていただけますか。

ウエルシア薬局 藤村氏|
アプリグロース推進の背景は、ポイントカード会員の顧客分析をVポイント(当時はTポイント)の運営会社であるカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(以下、CCC社)と一緒に実施したことがきっかけです。分析の結果、一般の“板カード”と呼ばれるアプリを持ってない一般のポイントカード会員と比較して、アプリ会員の月間購買金額は非常に高いことがわかりました。結果を受けて、アプリ販促を本格的に強化することを会社として決定し、2016年9月に自社アプリを作りました。

当時は、先ほど紹介したようなウエルシアグループの店舗屋号はまだ少なく、当時私が所属していた「ハックドラッグ」と「ウエルシア薬局」の店舗屋号2つのみを対象としたアプリでしたので「ウエルシアハックアプリ」という名前でリリースしました。

そして昨年、DearOne社とパートナーシップを組んで、ModuleApps2.0の仕組みを使って、2023年4月にアプリを大幅リニューアルしました。機能としてはモバイルカードだけではなく、WAONポイントのスタンプラリー、ポイントくじ、ガッチャモール、処方せん送信など、さまざまな便利機能を搭載してリリースしました。

DearOne 橋川|
会社紹介の中で新たな成長戦略モデルである「ウエルシア2.0」では顧客データ基盤が要になってくるというお話もありました。今後、顧客データをどう活用していくか、アプリ刷新の目的を教えていただけますか。

ウエルシア薬局 藤村氏|
究極の理想としては、Amazonのような世界観を実現したいと思っています。お客様ひとりひとりに適したクーポンやお得情報が、最適なタイミングでアプリで届く状態です。たとえばシャンプーを購入した方には、約1ヶ月後のシャンプーを使い切る頃に同一商品のクーポンを届けたり、その方が好んでいる商品のお得情報をお知らせしたりすることを実現したいと思っています。

ウエルシアID活用のゴール

DearOne 橋川|
よく分かりました。ここで顧客データ活用で肝になる顧客ID、ウエルシアIDについてお伺いしたいと思います。Amazonというお話もありましたが、ID活用のゴールとして3つのことを掲げていると思います。それらについて教えていただけますか。

ウエルシア薬局 藤村氏|
まず、最終的には3つのゴールを通じて「お客さまからもお取引様からも選ばれるウエルシアへ」の実現を目指しています。

そのために3つのゴールがあります。まず「お客様の把握・理解」です。データを駆使して、そのお客さまがどのような商品を買っていて、どのような生活を送っているかを分析してきちんと把握・理解する。次に「ロイヤルカスタマー化」。“一見さん”で終わらずに、また来たくなるドラッグストアになることをアプリを介して実現する。そして、最後に「効率的販促」ということで、従来のばら撒き型の販促からOne to Oneの販促を実現して、販促の費用対効果を向上することを狙っています。

DearOne 橋川|
アプリグロースを推進する背景やゴールをお話しいただいたアプリのリニューアルという話に戻りたいと思います。元々アプリ会員の購買額が高かったという背景があってアプリグロースを推進する中で、どうしてアプリのリニューアルに至ったかを教えていただけますか。

ウエルシアGアプリ リニューアル前の課題

ウエルシア薬局 藤村氏|
アプリリニューアル前の課題としては、大きく4つの課題がありました。

1.アプリに新たなポイントを連携する必要があった
  Vポイント1種類 ⇒ Vポイント + WAON POINT

2.共通ASPを使用していた為、自社でカスタムする領域に限界があった

3.広告ID(アプリID)の活用が出来ていなかった

4.シニア会員証のデジタル化が出来ていなかった

課題の中でも一番大きかったのは一つ目で、2種類の共通ポイントカードを一つのアプリにする。とくに1画面に2つのバーコードを存在させることが非常に難しい課題でした。

日本国内で、異なる共通ポイントカードを導入してお客様がポイントを貯める/使える状態にしている企業はいくつかあります。ただ、それを1つのアプリ、かつ、1画面に異なるポイントのバーコードを表示している企業は当時存在しませんでした。

DearOne社にはスライド右上にある”TカードとWAON POINTのバーコードを1つの画面で表示する”という設計を作っていただきました。役員プレゼンでも「この世界観を実現するには、DearOneと組まないといけない」となってDearOne社と組ませていただいたほど、実現が難しいポイントでした。

DearOne 橋川|
私も携わらせていただきましたが、4月にプロジェクトを始めてリリースしたのが12月でした。DearOneはアプリフロントだけの調整でしたが、藤村さんは会社内での調整も担われていたと思います。

ウエルシア薬局 藤村氏|
ウエルシアはイオングループに所属している会社です。その中でWAON POINTの運営会社であるイオンマーケティング社、またTポイント(現Vポイント)を運営しているCCCMKホールディングス社との会社間、またウエルシア社内の調整と、非常に苦労しました。

DearOne 橋川|
その他、プロジェクトで特筆すべき部分はありましたか?

ウエルシア薬局 藤村氏|
四つ目のシニア会員証のデジタル化も解決したかった課題です。

これまで60歳以上のシニア会員様を対象に「シニアパスポート」という紙製のカード(シニア会員証)を店頭で配っていました。そして、毎月15・16日にシニアズデーという「ポイントが3倍になる」企画を実施していました。実施に際してはレジで免許証などを確認して、生年月日やお名前が合致したお客様に紙製のカードを配るという非常にアナログな販促でした。

ただ、同じ60歳以上でも、60代の方と75歳以降ぐらいの方では、スマートフォンの所有率やスマートフォンを使いこなしている割合が全く違います。肌感になりますが、60代の方は比較的スマートフォンを持っていますし、LINE等もお孫さんとのコミュニケーションツールとして使いこなしています。そして、リニューアル前から「いつになったらアプリにデジタルシニアパスポートを搭載してくれるのか?」というお声をいただいていました。

先ほどの複数ポイントカードの1画面化などと併せて、シニアパスポートのデジタル化も実現したかった施策です。

DearOne 橋川|
アプリリニューアルを実施した結果、成果はいかがでしょうか?

ウエルシア薬局 藤村氏|
成果としては、24年9月時点の累計で約660万ダウンロード、MAU率が約40%ということで、非常にアクティブ率があがりました。リニューアル後、約8カ月間で100万ダウンロード、リニューアル前の23年3月と比較してMAU数は192%、約200%伸長しました。

ウエルシアGアプリ リニューアル後の結果

DearOne 橋川|
数字としての成果以外に、お客さまや店舗からの評判はいかがですか?

ウエルシア薬局 藤村氏|
先ほど申し上げたポイントカードの1画面表示は一番喜ばれています。またシニア会員のお客様からも「今まで紙のカードを出すことが面倒くさかったが、アプリになって使いやすくなった」という声は非常に多いですね。

後ほどお話ししますが、アプリクーポンの配信も成果があがっています。リニューアル後、「あなただけクーポン」ということでセグメントしたお客様に対して、毎月クーポンを配信しています。リニューアル前と比較して、高い時だと約5倍の実績、低い時も約3倍というクーポン利用率になっており、成果だと感じています。

One to Oneマーケティング実現までの道のり

ウエルシアメンバー(自社ID)取得の経緯

DearOne 橋川|
藤村さんから「あなただけクーポン」という話もありましたが、こうしたOne to Oneマーケティングの実現というテーマに話を進めていければと思います。先ほど顧客IDの活用に関する課題もあったと仰っていましたが、自社IDの導入・活用に関して苦労や経緯などをお伺いできますか。

ウエルシア薬局 藤村氏|
「ウエルシアメンバー」という自社IDの取得ですね。ウエルシアメンバーを立ち上げる前は、ウエルシアではCCC社が保有する「TポイントID」を活用して販促を実施していました。自社IDを作るとなると、個人情報の管理を始めとして様々な取り組みが必要となります。従って「これまで通り、Tポイント(現Vポイント)だけでやっていけば良いのではないか?」といった声もありました。社内で承認を取るために、また業務が発生する店舗スタッフに、自社IDを持つ目的や意義を伝えて理解してもらうことが、まず大変なところでした。

DearOne 橋川|
共通ポイントだとOne to Oneマーケティングを実践することが難しいという課題があって、「ウエルシアメンバー」という自社IDを導入することにした形ですね。意思決定後、実現までに大変だったプロセスもお伺いできますか。

ウエルシア薬局 藤村氏|
実現までに対応すべき課題としては、まず会員規約の作成。そして、店舗マニュアルの整備、お客様へのわかりやすい説明と販促物の作成、レジとWebシステムなどの登録システム整備などがありました。

とくに会員規約の整備に関しては、私も法律の専門家ではないこともあって苦労しました。当時は顧客体験として、自ら競合他社の店舗に行ってポイントカードを新しく作る体験もしました。実際に競合他社がどんな会員規約を作っているのか、新規の入会者にどんなサービスを提供しているのかなどをベンチマークさせていただく事からスタートしました。

そのうえで、規約に関しては社内の法務部や顧問弁護士との調整。またVポイントとWAON POINTの共通ポイントカードの会員規約がありますので、共通ポイントカードと自社IDのすみ分けをどう位置づけて、会員規約上にどう表現するか、1年近く喧々諤々と議論しながら調整しました。

DearOne 橋川|
ウエルシアメンバー WP会員数の推移はどうなっているのでしょうか?

ウエルシア薬局 藤村氏|
ウエルシアでWAON POINTサービスを開始したのが23年3月です。以下のスライドは、サービス開始からWAONポイントカードのウエルシアメンバーに登録いただいた人数の推移です。24年9月現在で約950万人まで増えています。

ウエルシアメンバー WPカード登録者推移

会員を増やす中では様々なキャンペーンも実施してきました。

スライドの下側に実施してきたキャンペーンのバナーなどを貼ってありますが、左下はスタート時点で始めた誕生記念のキャンペーンです。また、左から2番目は「100万ポイント当たる」というキャンペーンです。

右下の呪術廻戦とのコラボキャンペーンも2023年にやらせていただきました。「うえたんという自社キャラクターと呪術廻戦をLINEスタンプでコラボさせたい」と制作委員会側に申し入れたところ、受けていただくことが出来ました。イラストレーターの方に頑張って作成いただいた呪術廻戦コラボのうえたんLINEスタンプを、当時小学生だった子供から「学校の友達とLINEで送り合っている」と聞いて、非常に嬉しくなった思い出があります。思い返してみると、本当にいろいろなキャンペーンをやって、現在の会員数まで漕ぎつけました。

DearOne 橋川|
「100万ポイント当たる」キャンペーンは、私も初めて聞きました。中央のバナーも「2名様」ということで、「100万ポイント当たる」キャンペーンは継続して実施されたのかと思いますが、評判や反応は良かったのでしょうか?

ウエルシア薬局 藤村氏|
評判は非常に良かったです。このキャンペーンはウエルシアで買い物をしなくても抽選に参加できる形式でした。ウエルシアメンバー登録をしたアプリ会員の方がエントリーするだけで参加できるものです。1回目で、58万~60万人程のエントリーをいただき、期間中に25~30万人ぐらいのウエルシアメンバーの新規登録者がありました。「100万ポイントをプレゼントする」企画は当時他になかったので、非常に喜んでいただいた記憶があります。

ウエルシアにおけるOne to Oneマーケティングの事例

DearOne 橋川|
お話いただいたようにウエルシアメンバーの人数を増やしてOne to Oneマーケティングを実践していくというお話でしたが、いま取り組んでいることの成果や今後の構想をお伺いできるでしょうか。

ウエルシア薬局 藤村氏|
いま実践しているのは、セグメントして配信するアプリクーポン「あなただけクーポン」を実施しています。購買データを使ったID分析を実施して、たとえば「高機能シャンプーを使っている方には、同じような高機能カテゴリーの商品クーポンを出す」、また「栄養ドリンクを継続して購入している方にビタミン剤のクーポンを出す」といった形です。ノンセグメントのクーポンと比べると、セグメントありのクーポンは約3倍程度利用率が伸びています。利用率が高いクーポンだと約5倍まで利用率が伸びたカテゴリーもあり、非常に効果的だと感じています。

DearOne 橋川|
セグメントの事例を今簡単にお話いただきましたが、こだわっているセグメントの切り方などはありますか?

ウエルシア薬局 藤村氏|
特殊な切り方はさほどしていませんが、購買カテゴリー、またペルソナ像・ショッパー像を意識して取り組んでいます。

DearOne 橋川|
ありがとうございます。他にOnet to Oneマーケティングでやっていこうと思っていることはありますか?

ウエルシア薬局 藤村氏|
先日、今後のデータ分析を一緒にやっていく外部パートナーとしてTrue Data社と組むことがきまりました。こうしたデータ分析は今後強化していきたい領域になります。

DearOne 橋川|
お話しできる範囲で、実際にどういう形でOne to Oneマーケティングに反映していくイメージでしょうか?

ウエルシア薬局 藤村氏|
True Data社とは、将来的にAI販促を実施していきたいと思っています。ウエルシアメンバーの購買履歴をAIに学習させて、人間の頭脳ではなく、AI機能で「このAさんには、このクーポンが一番刺さるはず」というクーポンの自動配信システムを作っていきたいと思っています。実装には1年間程度はかかると思います。

ウエルシアID-POSを軸としたマーケティングの理想像

DearOne 橋川|
その他、今後の展望で何かお考えのことはありますか? WAON POINT施策の文脈でもOne to Oneマーケティングをやっていかれると思いますが、そのあたりはどのような形で進める方針でしょうか?

ウエルシア薬局 藤村氏|
ここもTrue Data社と一緒に専用CDPを作って、データ分析を強化する予定です。「あなただけクーポン」をより精度高くしていく形ですね。

One to Oneマーケティングにおけるアナログとデジタルの融合

DearOne 橋川|
「リテール企業におけるLTV向上の実践」というテーマについて、藤村さんはこれまで様々な施策を実施していらっしゃいます。ウエルシアグループとしての展開や藤村さんの肌感覚というところで、何かトピックはありますか?

ウエルシア薬局 藤村氏|
One to OneマーケティングやLTV向上という文脈では、デジタル側は引き続きアプリを強化していきます。また販促における「デジタルとアナログの融合」も意識して取り組んでいます。既にリリースも出していますが、レシートクーポンに関してカタリナクーポン社とパートナーシップを組んで、フルカラーのレシートクーポンを実施します。レシートクーポンはリテールにおけるアナログ施策の代表格ですが、いま店舗へのカタリナクーポンの機械設置を順次進めています。2024年12月末には約2,800店舗、ウエルシアグループ全店に展開が終わり、来年1月以降は、今までの白黒レシートクーポンからフルカラーのレシートクーポンを実施していきます。

DearOne 橋川|
カタリナクーポンについて詳しくお伺いできますか。どういったクーポンが出るのでしょうか?

ウエルシア薬局 藤村氏|
カタリナクーポンという名前をご存知ない方も多いかもしれません。イオングループのイオンリテール、ダイエー、ライフ、いなげや等で、お会計の後に「クーポンがありますよ」と横長のレシートのようなフルカラーのクーポン券をもらったことがある方もいらっしゃると思います。そのクーポンをウエルシアグループ全店で実施します。

DearOne 橋川|
カタリナクーポンと「あなただけクーポン」のようなアプリ、デジタルでおこなうOne to Oneマーケティングはどのようなすみ分けで考えていらっしゃるのでしょうか?

ウエルシア薬局 藤村氏|
カタリナクーポンもデータ連携を通じて、アナログとデジタルを融合させたOne to Oneクーポンになります。ウエルシアメンバーID、購買履歴を分析したOne to Oneのクーポンを出しながら、「この商品を買った人には、このクーポンを必ず出す」という企画も行う形です。One to Oneクーポンをやりながら、ノンセグメントクーポンも並行する展開です。

DearOne 橋川|
WAON POINTの購買データなどを使って展開していくと、最終的に「同じ人には同じクーポンが出てしまう」ということが起こらないのでしょうか?

ウエルシア薬局 藤村氏| 
同じ人に同じクーポンが出ないようなIDの突合を各社と連携しつつ、ウエルシア内の展開は設計のイニシアチブを取って実施していく形ですね。

リテールメディアへの取り組み

DearOne 橋川|
リテールにおける販促施策という文脈の中で、いまリテールメディアが盛り上がっています。リテールメディアは、各リテールで所有するID、POSデータ、会員情報などを使って、外部メディアとオウンドメディア、とくにアプリ、サイネージ、EC等のオウンドメディアを広告媒体として使うものですね。

リテールメディアとは

リテールメディアは、購買情報などを踏まえてお客様の欲しい情報を出すと同時に、広告枠として外部に販売してマネタイズできるという点でも注目されてトレンドになっています。ウエルシアグループとしてリテールメディアへの取り組みはどう考えていらっしゃいますか?

ウエルシア薬局 藤村氏| 
今までは、アプリやLINEなどのオウンドメディアにメーカーから広告出稿いただく形で広告枠を販売してきました。今後は、従来の取り組みに加えて、ウエルシアメンバーの購買履歴を使った外部メディアへの広告配信にも取り組んでいきたいと考えています。

これはデータ分析のところでお話ししたTrue Data社とも一緒に検討して、リテールメディアの販売強化をAdInte(アドインテ)社をパートナーとして実施していきます。TVerやYoutube、Google広告など、ウエルシアメンバーの購買履歴を使った外部メディアへの広告配信を提供していく形です。

リテールメディアネットワーク「ARUTANA」

DearOne社とも「ARUTANA」という事業を一緒にやらせていただいています。「ARUTANA」は複数のリテールメディアを組み合わせて配信できるリテールメディアプラットフォームです。ウエルシア単体のリテールメディアですと、「広告を出しませんか?」と提案しても魅力を感じてくれるメーカーは限られます。

しかし、「ARUTANA」でアドネットワーク化することで、ドラッグストアだけではなく、コンビニ、ホームセンター、スーパーマーケットといった複数企業のリテールメディアに横断して広告を出せるとなると、魅力を感じてくれるメーカーが増えてきます。実際にDearOne中心に「ARUTANA」の提案をする中で「試してみたい」という前向きな反応をいただくメーカーは非常に多いです。

スライド右上に「ARUTANA」の規模感がありますが、3,385万MAU、2億3600万impです。ウエルシアアプリが660万ダウンロードですので、1社では真似できない規模感になっています。DearOne社と組ませていただき、こうした形でもリテールメディアを推進しています。

DearOne 橋川|
ありがとうございます。本日のセッションはこれで終了させていただきます。「ARUTANA」は藤村さんもお勧めですので、ご興味のあるリテール・メーカーの方がいらっしゃればぜひお声がけください。改めて藤村さん、ありがとうございました。

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