この記事は、2022年3月17日に開催された-ECzine Day- 2022における株式会社DearOneのセッションレポートです。
DearOne 小島|
株式会社DearOneは虎ノ門にあるNTTドコモの戦略子会社です。2011年に設立され、昨年10周年を迎えました。業界・業種を問わず幅広く150社以上のお取引があり、数多くのクライアント様からご信頼いただいてます。
弊社が提供する主なサービスは、大きく3本柱に分けられます。1つ目のアプリは、スマホアプリを短期間・低価格で開発する製品「ModuleApps2.0(モジュールアップス2.0)」です。2つ目の分析は、本日ご紹介させていただく「Amplitude(アンプリチュード)」です。ユーザー軸での行動分析ツールであり、マジックナンバーの検出なども可能です。
3つ目は、デジタルマーケティングを支援するリソース「CAMP(キャンプ)」です。デジタルマーケティングを牽引するカスタマーサクセス部隊を配備しており、人的支援をご提供します。
弊社には、クライアント様のデジタルマーケティングをワンストップでご提供する商材が揃っています。
マーケティング潮流の変化
昨今、LTV(ライフ・タイム・バリュー)が重要視されています。LTVとは、継続する顧客との関係を強化していくことで、中長期的に見たお客様からの利益を最大化する考え方です。
マーケファネルにおける2つのフェーズ
ダブルファネルとも呼ばれるマーケティングにおけるファネルは、2つのフェーズに分けられます。ファネルの上部である認知から購入までのトップファネルは、顧客に見つけてもらう関係構築のフェーズと位置付けています。
次に購入からロイヤル化してLTV・リテンション率向上までを行うボトムファネルは、使い続けてもらい、選び続けてもらうための、関係強化に向けた顧客体験を高めていくフェーズであり、非常に重要となります。
顧客体験の向上には、顧客を把握し理解するために顧客の解像度を上げることが必要不可欠です。これまでは性別・年齢・職業といった「デモグラフィック変数」の情報でユーザー顧客を捉えていました。その次の段階では、趣味・嗜好・ライフスタイルといった「サイコグラフィック変数」が重視されるようになりました。
そして現在最も重視されるのが「行動変数」です。カート落ち後の行動や店舗来店前の行動、店舗来店後のオンライン行動の特徴といったユーザー行動を見ることで、ユーザー像の解像度を上げていくことが必要不可欠です。
現代の刻一刻と変わる顧客を理解するには「行動軸」で捉えることが重要であり、行動分析はデモグラや趣味・嗜好などの比較的静的な情報に比べて、ダイナミックな生活者の今を適切に捉えることができます。
データ活用の4ステップ
データ活用ではステップを4つに分けます。最初のステップはデータを「ためる」です。次に「整える」、そして「分析する」、最後に「つかう」です。
顧客理解を基にした施策実行では、この4ステップをいかに速く回すかが勝負どころであり、顧客体験の向上ひいてはLTVの向上に貢献することができます。本日ご紹介するAmplitudeは「分析する」ところになります。
Amplitude分析デモ
Amplitudeについて
Amplitudeは米国No.1のトップシェアを誇るユーザー行動分析ツールです。世界中の企業で既に45,000サービス以上の導入実績があり、日本でも弊社の親会社であるNTTドコモのd払い、不動産ポータル大手のLIFULL、女性向けアパレルECのGRL(グレイル)といった、名だたる企業が導入済みです。
Amplitudeではデータの加工などを行うことなく、目的別の厳選されたチャートが利用可能ですので、目的に合わせてデータの見せ方をチャートの中から選び、誰でもスピーディーに、高度な分析が行えるようになっています。
期間指定やユーザーのセグメント、クラスター数の変更など、本来データエンジニアリングに相当時間がかかっていた領域も、驚くほどのスピードで分析を実現することが可能です。
マジックナンバーとは
マジックナンバーとは、ユーザーが「特定のアクションを規定回数以上行う」と、サービスの継続率や収益などの重要指標が飛躍的に向上する数字のことであり、昨今注目されている考え方です。
例えばFacebookの場合、10日間で7人と友達になるとか、Twitterであれば30人をフォローする、Slackであればチーム内で2,000通のメッセージを送信するといった、ユーザー行動の閾値をマジックナンバーと呼んでいます。Amplitudeには、このマジックナンバー検出を支援する機能も含まれています。
Amplitudeを使った分析例
それでは、Amplitunesという架空の音楽視聴・購入サービスツールを用いて、Amplitudeのデモ環境データをご覧いただきます。分析の目的は一人当たりの購入回数を増やすことです。分析から改善策に向けたアプローチとしては、購入回数が多いユーザーの行動傾向を把握して、サービスの改善策を導き出します。
分析の流れ
1 楽曲を購入しているユーザーを抽出
2 購入回数が多いユーザー(=ロイヤルユーザー)を抽出
3 さらに購入回数が多いユーザーを抽出し、ロイヤルユーザーが多く取る行動を把握
4 ロイヤル化(=ロイヤルユーザーに変化)のカギとなるユーザー行動を把握
デモ動画
画面左から使うチャートを選び、セグメンテーションを行います。次にユーザーの行動である購入者を選ぶため、イベント「楽曲の購入」を選択し、グラフが出ます。デフォルトのラインチャートではデータ期間30日の推移ですが、バーチャートに変更すると合計の数値が出ます。1月に楽曲を購入した人は約24万9千人といったデータがすぐに把握可能です。
ロイヤルユーザーを設定するため、最近の実行回数を見ます。平均楽曲購入数が平均16.7回なので、平均以上である17回以上購入を今回はロイヤルユーザーと設定します。画面右で条件付けし、期間を1ヶ月で抽出します。ロイヤルユーザーは約13万3千人となります。
次に、ユーザーをグルーピング・セグメントするコホート機能を使用します。楽曲購入者全体をコホート化し、ロイヤルユーザーもコホート化し、ロイヤルと名付けて保存します。これで購入者とロイヤルユーザー2つのコホートを作成しました。
ここからPERSONAチャートを使います。まず楽曲購入者全体を対象者に選び、含有率を求める対象コホートとしてロイヤルユーザーを選びます。期間は1ヶ月にします。そしてクラスター数は4を選びます。これは楽曲購入者全体を行動傾向により4つに分けるという意味です。
楽曲購入者は24万9千人、そのうちロイヤルユーザーが53%です。ロイヤルユーザーの含有率が最も高いのは82.6%のクラスター1です。逆に最も低いのは0.9%です。
クラスター1のロイヤルユーザーの行動傾向は画面下部に表示されます。全体の楽曲購入平均は約13.7回でしたが、ここでは21回になっています。次にコンサートページを表示すると全体では約10.8回ですが、ここでは17回になっています。このような分析がスピーディーに行えるため、ロイヤル化のキーとなるコードを抽出することが可能になります。
逆にロイヤルユーザーの割合が低いクラスターを見ると、広告表示をスキップする行動が多いことがわかり、広告がロイヤル化の阻害要因になっているのではという仮説が立てられます。アプリ内でもどのサービスがあまり使用されていないといった傾向の把握が、スピード感をもって実現可能です。
続いて、マジックナンバー抽出を支援するCOMPASSチャートです。対象コホートに楽曲を購入した全ユーザーを選び、画面右で目標コホートをロイヤルに設定すると、相関性の高い行動がリストアップされます。
すると、楽曲購入後7日以内に2回以上シェアした人、1回以上コミュニティに参加した人にロイヤル化する傾向が強く出ることが瞬時に分かります。ここからマジックナンバーにつながる行動とその閾値を把握することが可能です。
イベントセグメンテーションに戻り、実際にその行動をした人の購入回数が上がっているかを確認します。画面右で楽曲のシェアを1月に一回以上した人と条件付けをします。結果、1ヶ月の楽曲平均購入回数は前出の16.7回ですが、楽曲シェアを実行した人は21回です。このような形で、分析結果の裏付けを別のチャートでスピーディに確認することも可能です。
分析事例:ECサイト
大手アパレル企業のECサイトを分析した事例です。分析の目的は、1人あたりの購入回数を増やすことです。分析から改善施策へのアプローチとしては、購入回数が多いユーザーの行動傾向把握からサイト改善策を導き出すことです。
まず、購入回数の多いユーザーを抽出するため、購入回数1回以上と購入回数2回以上の人を各々コホート化します。そして購入回数2回以上のユーザーをペルソナチャートで4つの行動クラスターに分類し、それぞれ利用している機能の特徴を分析しました。
2回以上購入するユーザーの含有率が高いクラスターAでは、閲覧履歴を見るという行動が多いと分かりました。購入者全体では1.4回ですが、クラスターAでは9.1回と、圧倒的に閲覧履歴の利用が多いことが分かりました。
次に、Amplitudeのパスファインダーというチャートを用いて、閲覧履歴がどこから利用されているのか、行動パスを瞬時に把握します。これによると、閲覧履歴は商品詳細からよく見られていることが分かります。
実際にECサイトの商品詳細ページを見たところ、閲覧履歴に行く動線はページ下部しかありませんでした。そこで、動線を強化することによりユーザー購入回数を増やせるのではないか、という仮説を立てました。
次に仮説を補強するため、アイテムを選ぶ行動として、「閲覧履歴」と「お気に入りアイテム」の利用を比較したところ、閲覧履歴機能の方が3倍以上多く使われていることが分かりました。さらに機能利用後のCVR(コンバージョンレート)を見ると、こちらも閲覧履歴の方が高いことが分かりました。
これらのデータから、閲覧履歴の動線を強化することが有効と考え、ページ下部にスクロールすると、ある追従メニューのお気に入りを閲覧履歴に変更することにより、閲覧履歴の利用が増えるのではと改善案を提示しました。
実際にA/Bテストを実施したところ、カート投入率もコンバージョン率も閲覧履歴に変更した方が数値は上昇しました。結論としてここには閲覧履歴を設置した方が良いとなりましたが、実際にはお気に入りもユーザー体験としては重要ですので、閲覧履歴とお気に入りの両方を並列する形で施策を進めています。
KEY TAKEAWAY ~まとめ~
● LTVを向上させるにはロイヤルユーザーの行動把握が重要
● ユーザー行動分析を超スピーディーに実現する Amplitude
● DearOne はツール導入&活用を一気通貫でご支援
ご清聴ありがとうございました。
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株式会社DearOne グロースマーケティング部カスタマーサクセス
シニアコンサルタント 小島 健一
元ミュージシャンであり、大手レコード会社からCDリリースを経験後、デジマケ業界へ。サイト改善PDCAコンサルティングなど、業界大手のクライアントに対し、アクセス解析を中心としたデータ活用支援のコンサルタントとして従事。DearOne入社後は、大手不動産検索サイトへのAmplitude実装支援からのCDP活用、ECサイト運営会社へのオンボーディング支援など実績多数。