ECとは?Eコマースの基礎知識と運営のメリット・デメリット

2021.12.14

パンデミックの影響を受け、デジタル化やECへの出店を検討している企業がたくさんあります。しかし、ECといってもその種類は様々で、どのタイプのECに出店するかで売上も大きく変わります。

この記事ではECとは何か、ECの種類、ECの業務やメリットについて解説しています。ECの将来性についても紹介していますので、自社にあったECを見つけ出し、コロナ禍においても売上拡大を目指してみてください。

ECとは?

ECとは、Electronic Commerce(エレクトリックコマース)の頭文字を取った略語で、日本語では「電子商取引」と訳されています。読み方は「イーシー」です。よくEコマース、ECサイトとも呼ばれています。

インターネット上でのサービスや商品の売買を行うことを指しています。Amazonが代表的なECサイトの例です。またECサイトと言っても、Amazonや楽天市場、ZOZOTOWNなど、様々な商品、ブランドが取り扱われているモール型のECサイトから、特定の企業やブランドが独自に展開しているオウンド(自社)のECサイトなど多岐に渡ります。

ECの市場規模

インターネットの普及に伴いEC市場は急速に拡大しました。国内では楽天が1997年からサービスを開始し、業界最大手で、楽天グループ株式会社2021年度第3四半期決算説明会*1出典:楽天グループ株式会社2021年度第3四半期決算説明会によると、なんと1億以上の人が楽天会員になり、楽天市場を使用しており、世界中ではなんと15億人が会員となっているのです。。

そんな日本国内におけるEC市場は年々成長しています。

2021年に経済産業省がまとめた「電子商取引に関する市場調査の結果*2出典:電子商取引に関する市場調査の結果」では、令和2年の国内BtoC EC市場規模は、前年比0.43%減の19.3兆円とほぼ横ばいでした。 BtoB EC市場規模は前年比5.1%減の、334.9兆円と、こちらも減少しました。

BtoC - ECの市場規模経年推移
出典:電子商取引に関する市場調査の結果

しかし、令和2年は新型コロナウイルス感染症拡大の対策として、外出自粛が呼びかけられた背景から、ECでのショッピングが推奨され、物販系分野では大幅な市場拡大に繋がりました。一方で、旅行サービスの市場縮小が余儀なくされたことに伴い、サービス系分野の市場は大幅に減少し、物販系の大幅な成長と相殺する結果となっています。

世界全体で見てみると、2020年のEC市場規模は前年比25.7%増の4兆2,130億ドルと大幅に成長したのがわかります。さらに、今年2021年は16.8%増の4兆9,210億ドルになると予想されています。*3出典:Global Ecommerce Forecast 2021

ECのメリット・デメリット

ECサイトで商品を販売することのメリット・デメリットを3つずつ紹介します。

メリット1. 市場が限定されない

日本は少子高齢化で人口の減少が進んでいるのに伴い、市場自体も縮小傾向にあります。このままでは価格競争に巻き込まれるのは必然です。

しかし、ECサイトはインターネット環境であればどこからでもアクセスできるため、市場が日本に限定されません。世界を市場にすることができるのです。現在であればアメリカ、中国など人口の多い先進国を相手に商売をすることで、市場拡大を目指せるでしょう。

このような日本国内から海外へ向けて商品を販売するECのことを越境ECと呼び、現在拡大を続けている市場となっています。世界規模で越境ECの市場は大きくなっており、2021年7月に経済産業省から発表された「令和2年度 産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)報告書*4出典:産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)報告書」によると、2019年に7,800億ドルであった市場規模、2026年には4兆8,200億ドルになると予測されています。

また、オンライン環境であれば、優秀な翻訳機能を利用する、または専門の翻訳家を雇うなど解決の方法はいくらでもありますので、実店舗での接客のように言葉の壁に阻まれることありません。

メリット2.時間的制限がない

ECサイトは24時間稼働しており、昼夜問わず顧客は商品を購入することができます。実際、仕事から帰宅後に購入する人や、通勤通学の電車に揺られている時間に購入する人、また、お酒を飲み酔っ払って気づけば購入していた、などということもあり、いつでも、どこでも購入できるというのは大きなメリットになります。

メリット3.データをマーケティングに活かせる

ECサイトでは顧客の年齢や性別、国籍などの属性情報を収集することはもちろん、顧客行動を収集しデータとしてマーケティングに活かすことができます。今後マーケティングで必要となるのはこの、行動をベースとした顧客理解です。商品の購買を含む顧客の行動には、顧客の「本音」が隠されており、顧客自身でさえも気付いていないニーズを見つけ出せる可能性があります。

この本音のことを「ユーザーインサイト」と呼び、これまで収集してきたデータと、ECサイト上で集めた顧客行動データを統合することで、顧客への理解がより深まることでしょう。顧客行動を理解することで、顧客一人一人に合わせたマーケティング施策を打てるようになります。これをOne to Oneマーケティングといい、ニーズの多様化が進み、同一のコンテンツを全ての顧客に提供するますマーケティングでは、訴求力が低下した現代においてとても重要なマーケティング手法です。

ユーザーインサイトについてはこちらで詳しく解説しています。

One to Oneマーケティングについては「One to Oneマーケティングの重要性・メリット・始め方とは?」で詳しく説明していますので、参考にしてみてください。

デメリット1.価格競争に巻き込まれやすい

ECサイトでは価格競争に巻き込まれやすくなってしまいます。実店舗であれば、エリア次第では競合が存在しない地域もあるでしょう。しかし、メリット1の「市場が限定されていない」ということはつまり、世界中がマーケットになり、世界中がライバルになるということでもあるのです。

デメリット2.宣伝・集客が困難

集客に高度なITリテラシーを要します。ECサイトで集客を試みる場合、SNSマーケティング、SEO、リスティング広告など、いわゆるデジタルマーケティングを行わなければいけません。ただ運用しているだけでは集客に繋がる可能性はゼロに近く、そこには様々なスキルやクリエイティビティが必要となります。

また、SNSと言ってもInstagram、Twitter、TikTok、YouTubeなど媒体はたくさんあります。それぞれが異なる特性を持っているため、ターゲットに合わせて選定する必要があり、その特性を活かすための運用が大切です。

デメリット3.顧客との生のコミュニケーションが取れない

ECサイトでは顧客と直接接する機会がありません。そのため、生の声を聞くことができず、ペルソナやニーズはあくまでも想像でしか作り上げることができません。さらに実店舗では顧客とスタッフが直接やり取りして商品購入に近づけることが可能ですが、ECサイトでは顧客とやり取りをするのはカスタマーセンターであったり、AIであることもあります。

このように顧客とのコミュニケーションが希薄になってしまうことは、ECサイトを運用する上でのデメリットであると言えるでしょう。

ECサイト構築方法

ECサイトには、上記でも触れたようにAmazonや楽天ショップなどの「プラットフォームに出店するモール型ECサイト」や、Shopifyのような「ASP型ECサイト」があります。その他にもオープンソース型ECサイト、パッケージ型ECサイト、フルスクラッチ型ECサイトなど、多岐に渡り特徴も様々です。

それぞれのECサイトについてみていきます。

モール型ECサイト

モール型ECサイトが最もオーソドックスで簡単なECサイト開設方法です。Amazonや楽天市場、ヤフーショッピングなどのモールに出店する方法です。モール内のツールは無料で提供されていることが多く、初心者でも比較的簡単に出店することができます。

モール型でECサイトを構築するメリットしては、コストを抑えて出店できる点です。また、SEOなどの集客対策を行わなくとも、ある程度の集客を見込むことができるのも大きなメリットです。

ASP型ECサイト

ASP型ECサイトとは、Shopifyのようなインターネット上のクラウドサービスを利用して構築するECサイトのことです。従来はオウンドECサイトを構築するのが一般的でしたが、ASPでは初期費用を抑えてECサイトを出店することが可能です。

ASP型で出店するメリットは、インフラやパッケージの購入が必要ないので、初期費用を抑えることができる点です。しかし、モール型同様にカスタマイズの柔軟性はなく、ECサイトを通してのブランディングや、差別化は困難となります。

オープンソース型ECサイト

無償で、商用利用可能なソフトを使用して、ECサイトを構築する方法です。代表的なオープンソースソフトには「ec-cube」、「Magento」、さらには世界一のオープンソースのブログプラットフォームである「Wordpress」などがあります。

オープンソース型でECサイトを構築するメリットは、ライセンス費用がかからずカスタマイズも柔軟に行える点です。無償ソフトのためライセンス費用は必要なく、またソースコードも開示されているため、専門知識があれば、カスタマイズも柔軟に行えるため、無償でコストを抑えながら、オリジナルのECサイトを構築できます。

パッケージ型ECサイト

パッケージ型ECとは、ECサイトに必要となる基礎機能が備わったショッピングカートシステムです。

パッケージ型でECサイトを出店するメリットは、ECサイトに必要な機能を兼ね備えている上で、カスタマイズの柔軟性が高い点です。一定のライセンス費用は必要となりますが、その分セキュリティ面でも安心して運用ができます。

フルスクラッチ型ECサイト

フルスクラッチ型ECとは、その言葉の通り、全て自社個別にシステムを開発するECサイトのことです。

メリットは、ECサイトに求めるデザイン、機能を全て兼ね備えた唯一無二のオリジナルECサイトを構築できる点です。しかし、開発には膨大な初期費用投資が必要で、さらに集客も自社で行わなければいけないため、利益化、赤字化までにはある程度の時間、費用が必要となります。

ECサイト5つの業務内容

ECサイト運営の業務内容はまず、「バックエンド」を担当する業務と「フロントエンド」を担当する業務に部類することができます。一般的にECサイトの運用といえばフロント業務をイメージすることが多いですが、実際現場においてはバックエンド業務の方が地味で苦労していることが多いです。事務作業のように直接的に売上に関わってくる業務ではありませんが、非常に重要な役割を担っています。

バックエンド業務は主に「商品情報登録」「受発注管理」「総合管理」の3つです。フロントエンド業務は「マーケティング」「マーチャンダイズ」の2つが主な業務内容になります。

それぞれバックエンド業務とフロントエンド業務について見ていきましょう。

バックエンド・商品情報登録

商品情報登録は、バックエンドの中で最も重要な業務であると言えます。ECサイトを構築しただけでは商品の販売を行えず、また一度商品を登録したからといって、基本的には永遠にそれらの商品を売り続けるわけでもありません。

商品の入れ替えが頻繁に起こるECサイトでは定期的にこの商品情報登録を行う必要があるのです。

具体的には「販売基本情報登録業務」「拡張情報の作成・登録業務」「ささげ業務」の3つに分けることができます。

販売基本情報の登録業務ではJAN、商品名称、販売開始日時などの販売に必要となる最低限の情報を登録します。

拡張情報の作成と登録業務では商品の購入を後押しするような登録商品詳細説明、スペック情報などを作成し、登録します。

ささげ業務では商品画像の撮影、画像サイズの加工、ファイル命名、商品の寸法などの商品情報登録が内容です。

バックエンド・受発注管理

受発注管理は、受注を受け、配送を完了するまでの一連の業務を指します。受発注管理業務も商品情報登録と同様に、その内容は大きく「倉庫業務」「注文管理業務」「顧客対応業務」の3つに分けることができます。

まずは倉庫業務と呼ばれるもので、注文前の行品の保管管理などを行います。次に、注文管理と呼ばれる、商品のピックアップ、包装。納品書作成、宅配業務への受け渡し、発送完了メール送信などを行います。そして最後に顧客対応業務と呼ばれる、問い合わせへの対応を行います。

バックエンド・総合管理

総合管理ではECサイトを総合的に管理し、業務内容は「数値管理業務」「外部連携業務」「システム運用業務」の3つに分けることができます。

数値管理業務では、ECサイト運営に関わる数字、売上や人件費、目標達成率などの数値を管理します。

外部連携業務では、外部サービスやツールの検討、調整などを行い業務効率化を図ります。

システム管理業務では、ECサイトや、外部サービス導入時に発生した不具合や、システムへの新規機能追加などの業務を行います。

フロントエンド・マーケティング

ECサイト市場はトレンドの流れが非常に早いです。そのため常に最新情報を追いつつ、他社との差別化を行う必要があり、波に乗り遅れてしまってはマーケティング活動の効果が薄れてしまいます。

マーケティングの業務内容は主に「キャンペーン企画」「集客施策」「サイト改善」の3つに分けられます。

キャンペーン企画では、販売促進のために企画を立案したり、プロモーションを行います。

集客施策では、ECサイトに集客するためにSEO、リスティング、メルマガ、SNSマーケティングなど、目的とターゲットに合わせてチャネルを選定し、集客を試みます。

サイト改善では、一度作ったサイトをより良いものにするために、常に改善を試みます。例えば、ボタンの配置、変色、サイズを変えるだけで大きく売上アップをアップすることも可能です。やみくもに、色を変更したりするのは効果的であるとは言えません。

何を持って改善を施すかというと、データです。メリットのセクションでも述べたように、ECサイトではデータを活用することで、大きく売上を伸ばせる可能性があります。顧客行動データを分析することで「この行動をとった顧客はコンバージョンに至りやすい傾向にある」、また反対に「この行動をとった顧客は離脱してしまっている」など、売上に大きく関わる指標を見つけ出すことが可能です。

ECサイトの分析方法についてはこちらの記事で詳しく説明しています。

フロントエンド・マーチャンダイズ

マーチャンダイズは、ユーザーニーズと商品をマッチさせることが主な業務内容で、「商品企画業務」「在庫管理業務」「価格検討業務」の3つに分けることができます。

商品企画業務では、ユーザーニーズに対して今現在販売している商品はマッチしているのか、またどのような商品であればマッチするのかなど、商品の企画や製作、またメーカーとタイアップであり着なる商品を製作するなど、販売商品の選定から調達までを行います。

在庫管理業務では、商品の販売予想やトレンドに基づき、商品の仕入れ、在庫管理を行います。

価格検討業務では、販売予想やトレンドに反して在庫が大量にある場合などに、価格が適正であるのかを検討し、調整します。商品の入れ替えなども業務内容です。

ECの将来性

最後にECの将来性について紹介します。

ここまでECの基本情報について解説してきましたが、今始めても遅くないのか、今後も伸びていく市場なのかとても気になると思います。

まず結論から述べると、これからも伸びていく市場であると言えます。

2019年に野村総合研究所が出した『ITナビゲーター2020年版*5出典:ITナビゲーター2020年版』では、2025年のEC市場は27.8兆億円になると計算されており、さらに、実店舗も含んだオムニチャネルの場合には2018年時点で54.4兆円であった市場規模が、80.6兆円に達すると見通しています。

また、経済産業省がまとめたレポートによると、世界全体のEC化率が14.1%であったのに対し、日本は6.76%と低い水準にあることから、日本のEC市場はまだまだ世界基準に達しておらず、今後もまだ成長の余地があると言えるのではないでしょうか。

まとめ

ECとはインターネット上で商品やサービスの売買を行うことを指しています。これまでもデジタル化推進により、ECは注目されてきましたが、新型コロナウイルスによる外出自粛によってECの重要性が再確認されました。

今後もECの市場規模は拡大を続けると予想されていますので、ぜひこの際にEC化を検討してみてください。

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